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日本マイクロソフト、Windows XPサポート終了に関する記者会見を開催
“物を大事に使う”文化ゆえに狙われる日本、Windows 8.1への乗り換えを強く推奨
(2014/2/13 15:23)
日本マイクロソフトは2月13日、東京都内にてオペレーティングシステムWindows XPのサポート終了に関する記者会見を開催した。
記者会見では、2014年4月9日をもってWindows XPのあらゆるサポートが終了することで、定例のセキュリティアップデートが無くなり、サイバー攻撃に晒される危険性が極めて高まるため、利用者においては、早期のOS入れ替えを実施し、常に最新の環境、継続的なセキュリティ対策を実施して欲しい旨が改めて要請された。
記者会見には日本マイクロソフトからは業務執行役員 最高技術責任者の加治佐俊一氏とセキュリティアドバイザーの高橋正和氏のほか、日本政府を代表して経済産業省から商務情報政策局 情報セキュリティ政策室 室長の上村昌博氏、そしてトレンドマイクロ、マカフィー、シマンテックといったセキュリティベンダーのトップが顔を揃え、それぞれ異なる見地から、Windows XPからOSを最新のものにアップデートする必要があることが説明された。
Windows XPは、Windows史上もっともゲームファンに愛されたといっても過言ではない“ゲームOS”として、今なお多くの利用者が存在するといわれる。シンプルなインターフェイス、Pentiumレベルでもサクサク動作する俊敏な動作、そして動作するゲームソフトの多さから、意図的にWindows XPのまま利用しているというゲームファンも少なくない。
しかし、今回の記者会見で識者による共通見解は、「サポートの切れたWindows XPではセキュリティは守れない」というシンプルな事実だ。数字にすると21倍。これはWindows XPとWindows 8.1でのマルウェアの感染率の違いであり、しかもサポートありでの数字となる。これがサポート無しになったら、まさにサイバー攻撃を仕掛ける側にとっては天国のような状況が生まれるというわけだ。
世間には「Windows XPを今後も使い続ける方法」などと題した書籍やガイドが存在するが、そうした事実に対して加治佐氏は一笑に付しながら、「プロの見地からするとまったく当てにならないということがご理解いただけたかと思う」と言い切り、高橋氏が「インターネットやメールしか使ってないから大丈夫と思われる方が多いが、実はそれらがサイバー攻撃の一番の糸口になっており、サポート終了後もWindows XPを使っていただくのであれば、ネットワークに繋がないほうが良い」と補足。ネットに繋げなければインターネットやメールは使えないため、事実上のWindows XPマシンの引退勧告といっていい。
経産省の上村氏は、国として、安倍政権の元で成長戦略を進めていく上で、再興戦略のひとつとしてITを掲げていることを報告。政府でもセキュリティの脆弱性に対する対策は進めているものの、サイバー攻撃の高度化、巧妙化が進んでおり、Windows XPのサポートが終了して、パッチでのセキュリティ対応がなくなる現状に対して、「日本はものを大事に使う文化があるが、古い状態でインターネットに繋がる機器を使い続けることをリスクを考えてもらうことが大事」と語り、時代に合った適切な環境のIT機器を使うことの重要性を強調した。
セキュリティベンダー側の講演では、サイバー攻撃が先鋭化、組織化、洗練化され、リスクが少なくリワードの高いプロのビジネスになっていることや、適切なアンチウィルス対策を怠った利用者の被害が急増していること、定例のアップデートによるパターンファイルの更新だけでは標的型のサイバー攻撃を防ぐことが難しいことなど、要するに極めて大きな脅威に晒されている現状が報告されたが、個人的にユニークだと感じたのは、サイバー攻撃は大企業が狙われる傾向が強いため、一般個人や中小企業は関係ない話と思いがちだが、だからこそ一般個人や中小企業が狙われているという意外な報告だ。
すなわち、大企業はしっかりとしたセキュリティ部門を持ち、意識の高い人材も多いため、一般的に高いセキュリティを備えているが、個人や中小企業は、それらの大企業と勤め先や取引先といった関係性があるにも関わらず、「自分は関係ない」と意識の低い利用者が多いため、そこを突破口に大企業を攻撃する傾向があるのだという。だからこそ個人利用のPCや、中小企業のPCは、しっかりと自衛する必要があるというわけだ。
質疑応答では、主に日本マイクロソフトに対する今後のセキュリティサポートに関する質問が相次いだ。まず、Windows XPのOSシェアについては、加治佐氏は「数字を持っていない」として明らかにしなかったが、「2014年4月の目標はインストールベースの1割、750万台まで下げること」とした。
4月9日以降の取り組みについては、同日に最後のセキュリティアップデートが実施されてサポート終了となり、それ以降、Windows XPでの脆弱性が発見された場合も、その情報を公開する予定はないとコメントした。加治佐氏は、「新しいOSは今後も継続して脆弱性に関する情報が公開されるため、Windows XPにも同様の脆弱性をはらんでいる可能性はあるが、公開することはない」と述べ、Windows XPに対するセキュリティサポートは4月9日を持って完全に終了することが改めて告知された。
最後に日本マイクロソフトからのお願いとして、現行のWindows XPユーザーに対してはWindows 8への移行を強く推奨し、移行が4月9日までに間に合わない方はセキュリティ対策をしっかり行なった上で、すぐに移行計画の策定を推奨した。そしてすべてのWindowsユーザーに対しては、セキュアな状態を維持するために、常に最新の環境を保ち、継続的なセキュリティ対策の実施を呼びかけた。