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SCEJAデピュティプレジデント織田博之氏特別インタビュー

PS4のアジア先行ローンチの手応えと、過熱するアジア市場の行方について聞く

1月25日収録

会場:SCET本社

 1月23日から27日に掛けて台湾台北市にて行なわれたTaipei Game Showが幕を閉じた。現在、台湾は旧正月の真っ只中で、ゲームファンは会場で買い求めたプレイステーション 4や最新ゲームを遊んでいる頃だろう。

 Taipei Game Show現地レポートの締めくくりとして、ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジア(SCEJA)でアジア部門を統括するデピュティプレジデントの織田博之氏と、現地法人Sony Computer Entertainment Taiwan(SCET)総経理の江口達雄氏にインタビューを実施した。

 既報のように、アジア市場ではすでに昨年12月から今年1月に掛けてPS4の販売が開始され、それぞれの地域で完売という、PS3やPS Vitaの際には見られなかったような人気ぶりを見せている。アジア市場は日本からの並行品が入りやすく、モノがだぶつきやすい傾向があるが、今回ばかりはアジア先行ということで日本からの並行品が期待できず、品薄に更なる拍車を掛ける結果となったようだ。10年以上アジア市場を見てきて、アジアメディアから「いつ品不足は解消するのか?」と問われるのは、初のケースだ。PS4は欧米に続いて、アジア市場でも成功を収めたと言っていい。日本がこの勢いに乗って好調なセールスを記録できるのかが注目されるところだ。

 今回のPS4アジア先行ローンチは、元ソニーの織田氏としては初の据え置き機のローンチ、アジア部門としても台湾・香港では6年ぶり、最後発のフィリピンから数えても3年半ぶりのローンチということで、2013年のニューヨークでのローンチイベント以来、例年以上に忙しい日々を送ることになったようだ。今回はPS4のローンチを皮切りに、アジアビジネスの現況と今後の展開について話を伺った。

Taipei Game Show 2014の感想と、台湾での取り組みについて

SCEJAデピュティプレジデントの織田博之氏(左)と、SCET総経理の江口達雄氏
連日大賑わいだったSCETブース

――まずTaipei Game Show出展の感想から聞かせていただけますか。

織田博之氏:PCオンラインゲーム、アプリ系のゲームが非常に大きな規模で出展している。我々コンソールゲームを提供する側からすると、幸いにもPS4が非常に調子の良い立ち上がりしている中、ここで改めて楽しいゲームの世界を見せたいという気持ちもあり、今回はステージショウ、遊んでいただけるタイトルについても一定のレベルで出展できたと思います。

江口達雄氏:2週間ほど前に主催のTCAが行なうプレスカンファレンスがあり、その際にメディアさんから多くの質問を受けたのが、「今まではソニーさんが1番大きなブースを構えていたが、今年は3番手の大きさになっちゃいましたけどどうですか?」というものでした。

――今までずっと最大でしたから、それは聞きたくなるかもしれませんね(笑)

江口氏:そうですね(笑)。それに対して、素直に感じていることをお話ししたのですが、ゲームショウの主役ってメーカー側ではなくお客様ですよね。

 お客様は、せっかく入場料を払って来ているわけですから、大きくて楽しいブースが増えるのは良いことじゃないですかと。主催者から初日で5万人の来場者があったと発表されましたが、今年は例年にも増して活気があると思います(編注:最終発表は36万人、昨年32万人)。

 今回は我々のブースは最大ではありませんが、昨年よりも試遊台やステージイベントの数も内容も充実させてSCETブースが1番楽しいねと言って貰えるような仕掛けも準備したつもりです。Webの書き込みを見ても、「ソニーが1番楽しかった」というコメントが数多くあり、上々のスタートとなりました。

――確かに今年は会場がTaipei World Trade Centerに戻ったこともあって来場者が例年より多かったですね。

江口氏:台湾のゲーム業界が盛り上がっていくのは、台湾を担当する僕としてはいいことだと思っています。

――TPGS初日にメディアカンファレンスがあって、台湾メディアの質問に対する回答で、織田さんが就任されて、これまでで一番大変だったのが、PS4の準備だったと仰っていたのが印象的でしたが、それは具体的にどのあたりが大変だったのですか?

織田氏:PS4自体の商品性と方向性が非常にはっきりしていたので、後はどれだけ伝えるかというカスタマータッチポイントの話だと思います。タッチポイントはやっぱりリアルチャネルとオンラインという世界ですが、台湾に関して言うとお客様がゲームショップの店頭に来ていただいて、本当に楽しめるようなお店作りをまずはやっていきましょうと。そういうバック・トゥ・ベーシックができて初めてプラットフォームが立ち上がり、お客様に楽しんでいただけるということに繋がるので、その部分の準備と実行が江口にとっても大変だったと思います。

 オンラインに関して、PS4はネットワークとの親和性が非常に高く、PlayStation Plusの会員様にPS4のオンラインのファンクションを楽しんでいただけるかということが大きなポイントとなるので、これらを含めてお客様とのタッチポイントを作り上げることが1番時間と力を費やしたところだと思います。

――台湾では、昨年、代理店を使った流通から、自社流通に変えましたが、これはどういった成果、効果があったのでしょうか?

江口氏:いろんなところがありますが、時代も変われば、流通の環境、商品を取り巻く環境も変わってくるものだと思うので、今の時代に合った流通を目指しました。

 その結果得られた1番わかりやすい効果としては、ディーラーの社長や仕入れ担当者と直接話をして、お客様の反応を聞けることです。今までは代理店経由でディーラーはこう言ってますよという報告を受けるだけでしたが、今は1件1件、1社1社、私もしくは営業セールスが訪問して話を聞くと、たとえばタイトルに関して、「これは売れますよ」、「これは厳しいかも知れない」というようなことが聞けるようになって、結果的に製販の精度が上がってきたと感じています。

 ディーラー、SCETと販売見込みや在庫の持ち方の話を事前にできるようになったので、お互いに適正在庫で回せますし、販売促進については「何月何日何時からこのポスターを貼って欲しい」とか、PS Vita TVのようなユニークな製品でも、そのコンセプトをしっかりと我々の口から伝えられるので、そのままの情報がお客様の所に届いているような気がしています。

1年ぶりに訪れた台北地下街は、ゲームショップの看板がPS4をメインにしたデザインに置き換わっていた
店頭でPS Plusのプロモーションを実施。アジアらしい取り組みだ
台湾のファミリーマートで展開しているPOSAシステムを使ったPlayStation Networkカード

――昨年インタビューさせていただいた後に、ゲームマーケットの視察で台中と高雄に行ってきました。それらの地域は、台北とは違ってXbox 360のほうが勢いが感じられて意外に思ったのですが、その辺りはこの1年間で変わりましたか?

江口氏:GAME Watchさんの記事を拝見しました。ありがとうございました。勉強になりました(笑)。あれから変わりましたね。基本的に御社の記事に、ここはXboxがって書いてある店を中心に集中的に営業をしました(笑)。確かに我々からみてもしっかりカバーできていない部分がありました。1年間で徹底的に変えましたのでぜひ再度行っていただければと思います(笑)。ちなみに台北地下街は行かれました?

――まさにこのインタビューの後に行くつもりでした。

江口氏:台北地下街も変えました。これまで看板や店頭の改装などをその都度手を加えていましたが、その結果、その年のCIに合わせて看板の色が赤色や黄色や青色だったりと統一感がなかったので、今回のPS4に合わせて11月の段階ですべて統一したCIを導入して、PS4カラーの看板に掛け替えて、しかも店名の入れ方もすべて揃えました。今回、台北地下街に行っていただけると統一感が取れたと感じていただけるはずです。

――物理流通というのは比較的わかりやすいですが、オンラインは効果が見えにくいです。先ほどおっしゃったPS Plusの会員をいかに増やすかに関して具体的な施策は何かありますか?

江口氏:これも実はリアルチャネルなんです。店頭で直接PS Plusの会員を募集したり、魅力あるものとして伝えるPOPをゲームショップさんの店頭に置いています。確かにおっしゃった通りオンラインは、すでにPS Plusをご存じの方は今でも会員になって頂ける方も多いのですが、これから会員になりたいが、PS Plusのサービスを教えて欲しい、もしくはPS Plusが何かを知らない方に向けては店頭で訴求するとユーザーに響くのですね。

 しかし、PS Plusはゲームショップさんにとってオンラインのダウンロードが増えるということに繋がり、自分たちのディスクの売り上げが減るのではないかという考え方の方もいるのですが、例えばパッケージゲームをダウンロードで購入する方はまだ多くはいらっしゃらない。PS4はオンラインで遊ぶことによって楽しみが広がり、また次のタイトルを購入していくということをお話しすると納得頂けます。とても地道な活動なのですが、ゲームショップの店頭にいって、PS Plusのポスターが貼ってあるPOPが貼ってあるというのは、なかなか今までなかったことだと思います。

――アジアは、日本とか欧米と比べてPS Plusの加入率は高かったりするのですか?

江口氏:具体的な数字は申し上げられないのですが、おかげさまで、現在会員が急激に増えていますね。特にPS4のローンチに向けて準備をしてきましたので、PS Plusと言ってもタイトルがどれだけ魅力的かとか、どれだけラインナップが揃っているかということが大事で、それがないと会員になってくださいとは言えません。PS4がネットワーク親和性が高いということで、PS Plusの魅力、遊べるタイトルを増やすという活動を1年間通して実施して順調に会員さんが増えているのは非常に良かったかなと思っています。

――アジア独自のコンテンツはなにか提供しているのでしょうか?

織田氏:台湾のメーカーさんから数タイトル、シンガポールのメーカーさんからも数タイトル。配信専用タイトルでいわゆるアジアデビューのタイトルがかなり増えてきています。前はいろいろと作っている途中ですという感じだったと思いますが、ここ1、2年の間に実際にオンセールになったものがかなり増えてきています。特に台湾製のものも既に3、4タイトルはPlayStation Storeに並んでいます。あと、もう1つ加えますと、バウチャーカードのコンビニでの販売も新たな施策のひとつです。

――ファミリーマートで見かけましたね。PSNカードが販売されていました。

江口氏:POSAカードですね。日本、欧米だとかなり進んでいて店頭に当たり前のように置いてありますが、その多くはPOSAカードです。台湾は今までPOSAシステム自体が導入されていなくて、プリペイドカードが主でした。PS4発売を機にユーザーの利便性を高めるためにPSNカードのPOSA化を行ない、このたびファミリーマートさんで展開することになりました。台湾では初の試みで、業者さんとも1年くらいかけて実現に到りました。

――ポイント以外にPS Vitaも売ってましたね。この1年で確かに感じられた変化ですよね。

江口氏:はい、ファミリーマートさんでは限定数量ながらPS4も販売していただいてます。クレジットカードを持っておらず、オンライン決済ができない方々や、クレジットカードをオンラインで使うのをちょっと躊躇される方がまだまだいらっしゃるので、PSNカードが手に入り安い環境を整えることは重要だと考えていました。PSNカードは今まではゲームショップさんでしか販売していなかったので、今すぐ遊びたいのに遠くまで行かないと買えないということがあったのですが、12月18日、PS4の発売日からPSN(POSA)カードのファミリーマートでの取り扱いがスタートしましたので、ユーザーさんのお近くのファミリーマートに行けば、すぐにPSNカードを購入でき、家に帰ってゲームをプレイする事が可能となったわけです。

 いままでいろんな手を打ってきて、その都度ユーザーさんの反応を見てきましたが、今回の展開については100%ポジティブな反応を頂いています。Webの書き込みを見ても、「ありがとう、コレはめちゃ便利」という感じでお客様に喜んで頂いています。

――とても良い話ですね。日本だと当たり前過ぎて、その辺の便利さを忘れてしまっているところがありますからね。その辺を丹念に準備していくというのはとても大事ですね。

織田氏:そうですね。オンラインのいろいろなツールをオフラインの店舗に置くというのは1つの仕掛けです。まあ当たり前のコトなのですが、やはり大事であると実感しました。

――ソニーさんの音楽サービスにはそのサービスは使えないのですか?

織田氏:Music Unlimitedはまだセールスインしてないのです。

――なるほど。SCEさんが先だったんですね。もし始まったら、当然それも導入することになりますか?

織田氏:色々なサービスをお届けしたいと考えています。

――後は今年、印象的だったのはついにPSPが完全になくなったなということですね。去年まではラインナップのひとつとしてあったと思うのですが、今年の4つのハードの中にPSPは含まれていませんでしたよね。PSPは、アジアで大ヒットして、アジアでは長く現役だったハードだったと思うので、ついに姿を消したのが印象的だったのですが。

江口氏:会場の販売コーナーでは継続販売していますが、試遊は去年のゲームショウ以降は無くなっていますね。

――もうビジネスとしてはPS Vitaに移行する形ですか?

織田氏:そうですね。その方向です。PSPの販売はまだ継続していまして、コンスタントに売れていますが、徐々にPS Vitaに移行が進んでいますので、売り上げ構成比からいうとかなり少なくなってきていますね。

――アジアの売上比率で言うと、直近ではPS4がトップに躍り出たような形ですか?

江口氏:もうまさにこの直近のPS4発売以降はそうですね。ただ、実はPS3も元気です。これは私の嬉しい誤算なのですが、PS4が出た後もPS3の売りが落ちずに、逆に品切れになっているくらいの勢いがあります。

SCETブースでは1日200台限定で1000台のPS4の販売を行なったが、毎日30分足らずで完売した
SCETが1月からPS Vita向けに配信を開始した「hichannel」。中華電信の映像コンテンツが楽しめるアプリだ
中華電信が自社のセットトップボックスと回線とセットで提供している映像配信サービスMOD。hichannelよりコンテンツが充実しており、これがPS4で提供されたらキラーコンテンツになる可能性がある

――会場の即売でもPS4だけではなくPS3も売り切れてましたね。

江口氏:そうなのです。全部売り切れてしまいました。いつも織田からもっと商品を準備しておけと怒られるんですよ(笑)。

――PS4は開場から30分足らずで売り切れて、買えない人がブーブー後ろで言ってる方がいましたね(笑)。でも今回TPGS用に1,000台というのはかなりかき集めた方ではないですか?

江口氏:実はその通りです(笑)。一般の店舗では、予約してもお届けできるのは旧正月明けになってしまいますから、旧正月前にどうしても欲しい方が大勢並ぶ結果になってしまいました。

――PS Vitaでは「niconico」アプリを先日公開しましたけど、この「NON GAME APP」という取り組みは面白いと思いました。それ以外に「hichannel」や「NBA」など日本にはないサービスもありますよね。この狙いについて教えてもらえますか?

織田氏:特に今回PS Vita TVを導入するにあたって、PS Vita TVはもちろんゲームコンソールなのですが、それ以外の特徴を積極的に出していきたい気持ちがありました。PS Vitaのゲームを大きなスクリーンでプレイできるという、テレビとの高い親和性を活かして、ゲーム以外の色々なオンラインサービスをテレビで楽しんで頂こうと考え、積極的にPS Vita TV用に導入しようというのが発端ですね。

 「hichannel」に関しては中華電信がバックにいる代理店さんと非常に時間をかけて商談してきまして、ブロードバンド契約をしたらPS Vita TVが付いてくるというプロモーションパッケージを作りました。そのブロードバンドとテレビコンパニオン的なところとの親和性、特に今までのコアゲーマー以外に非常にカジュアルに楽しんでいただけて、お値段的にもお求めやすいということで、新しいユーザー層が広がるのではないかという、そういうサービスをPS Vita TVを中心にサービス展開させています。

――今後もそういったアジア独自チャンネルは増やしていくのですか?

織田氏:もちろんそれは考えていきたいと思っています。

――中華電信だと、セットトップボックスと一緒に展開しているMODと呼ばれるサービスがありますよね。MODもいずれはやっていきたいなという感じなのですか?

織田氏:MODに関しては今すぐにはまだですね。検討はしていますけど、中華電信独自のセットトップボックスを使うシステムなので、ブラウザ系のネットワークサービスとはまた違うシステムになっていて、まだそういった意味ではハードルがあります。

――なるほど、MODのアプリを開発して提供すれば見られるというレベルの話ではないのですね。

織田氏:ないです。アプリだけの話では無いです。

江口氏:ただやはり中華電信さんからは、今回「hichannel」をやったことによって手応えを感じて頂き、是非MODもPS4で見られるようにしましょうという話はかなり熱烈にいただいています。お客様にとってもPS4がMODに対応すれば、セットトップボックスがいらないのにというご意見もあります。SCEのエンジニアサポートも必要になりますし、今後は技術的検討から進めていきたいと思っています。

――少し余談になりますけれど、PS Vita TVというのはアジアから生まれた企画なのかなと私は思ったのですが、そうでもないのですか?

織田氏:アジア発ということもないですが、アジアはPS Vitaが好調なマーケットですので、PS Vita TVがお求めやすい値段で発売されることは市場的にもおもしろいかなと感じていました。

――昨年後半に、香港から深セン、東莞といったエリアを視察にいったのですが、GoogleのAndroidベースのセットアップボックスが今すごいブームになってますよね。そうした需要に対するソニーさんとしての回答がPS Vita TVなのかなと思ったのですが、直接そこまでの意識はしていなかったのですか?

織田氏:そのような地域ではUSBドングル使用してネットワークサービスが組めるようなものがたくさん販売されていると思いますが、その部分がターゲットマーケットというわけではなかったですね。PS Vitaはゲームコンソールとしての訴求に加え、テレビとの親和性を強調したテレビコンパニオン的な使い方を検討しています。

(中村聖司)