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「World of Tanks」の次期アップデート「Update 8.10」発表会レポート
念願の日本戦車ツリーが遂に実装。「ルノー乙型」から「STB-1」まで14車種が実装
(2013/12/18 20:22)
ウォーゲーミングジャパンはオンライン戦車ゲーム「World of Tanks」の次期アップデート「Update 8.10」を12月24日に実装する。
このアップデートでは待望の日本戦車ツリーが追加され、Tier1の「Renault Otsu(ルノー乙型)」から、Tier10の「STB-1」まで計14車種が実装される。
今回はウォーゲーミングジャパンのミリタリーアドバイザーを務める宮永忠将氏より、メディア向けに発表会が行なわれ、日本戦車ツリーに対する思想や、歴史的背景、そして各戦車の具体的な内容について説明した。本レポートではその内容をお伝えしていく。
日本の戦車はなぜ弱いのか。その真実とは?
まずウォーゲーミングジャパンのミリタリーアドバイザーを務める宮永忠将氏より、ウォーゲーミングの日本戦車ツリー全体に対する思想や解釈について発表が行なわれた。
まず、そもそも「なぜ戦車が生まれたのか?」というところから説明が行なわれた。話は1914年7月28日に勃発した第1次世界大戦に遡る。この戦争は予想もしなかった「塹壕戦」が多く繰り広げられることになった。新兵器「機関銃」の台頭により歩兵に多大な犠牲が発生し、解決策が検討された。
そこで農業用トラクターに鉄の箱を被せることで歩兵を守りながら戦えるのでは、というアイデアが生まれたのだという。その中でもっとも1番兵器として実用的だったのがイギリス海軍が開発したものだった。陸上でも軍艦が作れるだろうという発想で、陸上軍艦委員会が本腰を入れて開発を進めたのが兵器秘匿開発コード「特殊水槽(Water Tank)」だったという。これが転じて戦車のことをTankと呼ぶようになったのだという。
これら新兵器の登場により戦場が様変わりしたことを身をもって経験することのなかった日本にとっては、「機関銃」の登場により、歩兵に多大な犠牲が生じること、そして「戦車」という新しい兵器が開発されたことは衝撃だったのだという。
そうした結果を受けて日本も戦車の開発に乗り出すのだが、自動車の技術が低く、また大戦終了後で軍事予算が削減されている中で、様々な政治的なやり取りがあったのだという。それは大きく分けると2つで、1つが海外から買い付ける派で、もう1つが自国開発を進める派というものだ。
最終的に自国開発派の声が採用され、1925年に独自戦車開発計画が始動し、1931年には八九式中戦車の量産もスタートした。これは世界的に見てもかなり早い導入かつ大量生産だったという。こうした戦車が1931年の満州事変、1937年の盧溝橋事件では高い戦果を残したのだという。
それでは日本戦車はなぜ弱いのか。それは1939年のドイツのポーランド侵攻から導入された「電撃戦」に端を発するのだという。1939年~1941年に各国は電撃戦に対する対応を迫られ、これまでの20年間では考えられないほど、戦車の性能や運用が一気に進化した。
しかしその間、日本は政治的な問題や予算の関係などで、戦車開発がほぼ停滞していたのだという。この2年間の差が決定的になり、日本はアメリカ軍やイギリス軍に比べるとランクの低い戦車で戦うことになってしまった。日本戦車は同時期の海外戦車に比べると弱い、と言われている理由はここにあるのだという。
Tier1の軽戦車からTier10の中戦車まで合計14車種が追加。その一部を紹介
という流れを念頭に置きつつ、それではここから実際に実装される戦車について紹介していく。
・Tier1 軽戦車「Renault Otsu(ルノー乙型)」
フランスのツリーに実装されている「Renault FT」の強化版というか最新型ということで導入した戦車。フランスから「RenaultNC」という戦車を輸入した。“NC”には“新型戦車”という意味がある。
「乙型」という名前は既に輸入した「Renault FT」があったので、甲乙で分けるために「Renault Otsu(ルノー乙型)」という名前になったという。
本車の特徴として、キャタピラ部分にある垂直3連サスペンションで戦車を支えているのだが、優れた機構ではないらしく、路面ならまだしも不整地との相性は非常に悪かったという。宮永氏は「その特徴がゲーム内でどう生かされているのかゲーム内で確かめて欲しい」と話していた。
・Tier2 軽戦車「Type 95 Light Tank Ha-Go(九五式軽戦車 ハ号)」
機動性重視の軽戦車を作ろうというコンセプトで、燃えにくいディーゼルエンジンを採用した最初の量産型戦車。
戦車の量産ラインには「イ号」、「ロ号」、「ハ号」という3つのラインがあり、その中の「ハ号」のラインで作られたので、「ハ号」という名前が採用されている。
優れた戦車で中国戦線では活躍したのだが、1つだけ欠点があるという。それは本車が搭載しているのは37mm戦車砲で、これは対戦車戦闘を想定しておらず、対戦車戦闘では不利な戦車と当時から言われていた。宮永氏は「かなりテクティカルな車両ではないか」と話していた。
・Tier3 軽戦車「Type 98 Light Tank Ke-Ni(九八式軽戦車 ケニ)」
本車は先ほどの「九五式軽戦車」のバージョンアップしたもの。鋲止めが沢山あった車体をなるべく溶接構造にし、装甲を整えて、戦車砲を少し強化された。
・Tier4「Type 5 Ke-Ho(五式軽戦車 ケホ)」
この戦車は現状の日本軽戦車ツリーの最終型である。史実ではアメリカの軽戦車「M3 Stuart」キラーとして開発された。47mmの戦車砲を搭載しており、それなりの貫通力を持っているのが特徴だという。
・Tier2 中戦車「Type 97 Test Medium Tank Chi-Ni(試製中戦車 チニ)」
この戦車は中戦車ラインの最初の戦車になる。
・Tier3 中戦車「Type 97 Medium Tank Chi-Ha(九七式中戦車 チハ)」
当時の日本が作れる戦車の中で全ての最高能力を盛り込んだ戦車。最初は57mm砲を搭載していたが、後々対戦車性能の高い47mm砲を積み替えたため、対戦車能力もそれなりに持っている戦車。実質太平洋戦争はこの戦車で戦い抜いたという。
・Tier4 中戦車「Type 97 Medium Tank Chi-He(一式中戦車 チヘ)」
「九七式中戦車」の改良型で若干車体が強くなっているのが特徴だという。
・Tier5 中戦車「Type 3 Medium Tank Chi-Nu(三式中戦車 チヌ)」
既に実装されている「三式中戦車 チヌ改」の母体となる車両。75mm砲を搭載しており、一定の対戦車能力を持っており、やっと戦える戦車が登場したと言える。だが車体は「一式中戦車」のままなので、装甲は心もとないのだという。
・Tier6 中戦車「Type 4 Medium Tank Chi-To(四式中戦車 チト)」
対空砲から作った75mm砲を搭載しており、同じ75mm砲でも「三式中戦車」に比べると段違いに高い対戦車能力を持っている。宮永氏によると「このランクになると本格的な戦車戦ができるが、車体は他に比べると1ランク低い」という印象だという。
・Tier7 中戦車「Type 5 Medium Tank Chi-Ri(五式中戦車 チリ)」
この戦車を改造していくと「半自動装填装置」が追加され、75mm砲の3連射が可能になる。宮永氏は「総合的に見るとTier7車両の中では見劣りするが、瞬間火力で見るとかなり強化されているので面白い車両だ」と話していた。
・Tier8 中戦車「STA-1」
ここからは自衛隊車両になる。本車はTier9の「61式戦車」のプロトタイプになる。開発段階ではシルエットを低くしようということで作ったが、中が狭くて使いにくいと不評だったという。
・Tier9 中戦車「Type 61 Tank(61式戦車)」
1961年に開発されたことから61式という名前がついた。映画の「ゴジラ」にも登場した車両。
・Tier10「STB-1」
この戦車は現状の日本中戦車ツリーの最終型である。74式戦車の試作型。実質74式戦車の性能をほぼ備えている。特徴は「油気圧式サスペンション」という機能があり、サスペンションで車体を左右前後に傾けられる上、砲塔の俯仰角も広くとられているため、「稜線射撃」という斜面に隠れて砲塔だけを出して撃つ射撃方法が使いやすくなっている。ゲーム内では油気圧式サスペンションのアニメーションは実装されていないとのことだが、それを加味した俯仰角になっているため上手く活用すれば重戦車とも互角に戦える戦車ではないかと期待されているという。
この他にも「Update8.10」では日本風マップの追加やゲーム内の光と影の調整など、日本戦車以外にも様々な追加要素や調整事項などが含まれているという。