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大きな進化をとげる「FIFA 14」、2人のキーマンに今作の魅力を聞く!

統括プロデューサー牧田和也氏、コンソール担当プロデューサー デビッド・ラッター氏ロングインタビュー

9月19日~22日 開催(一般開催日:21日~22日)

会場:幕張メッセ 1ホール~9ホール

入場料:1,000円(中学生以上・前売)

1,200円(中学生以上・当日)

入場無料(小学生以下)

 今年もサッカーゲームの新シーズンが近づいてきた。10月17日発売を予定しているPS3/Xbox 360/PC「FIFA 14 ワールドクラスサッカー」では、選手の動きを1歩単位で物理的にシミュレーションする新システムなどさらにリアルサッカーを意識した改良が行なわれ、そのプレイ感覚に大きな違いが生まれてきている。

 そして今回、TGS 2013の開幕に合わせ、本作の開発を統括する2人のプロデューサーが来日した。EAカナダ バイスプレジデント兼「FIFA」シリーズ エグゼクティブプロデューサーの牧田和也氏と、コンソール版「FIFA」エグゼクティブ・プロデューサーのデビッド・ラッター氏だ。

 これまで何度も来日して弊誌でも繰り返しご紹介してきた牧田氏に加え、コンソール版を統括するラッター氏が勢ぞろいするのは初のできごとだ。弊誌ではこの両氏にインタビューを行なうことができたので、今年の「FIFA」が放つ魅力について余すことなく質問をぶつけた。

 なお、TGS 2013のエレクトロニック・アーツブースでは、PS3版「FIFA 14」のデモ版相当のバージョンの試遊台が多数用意されているほか、少数ながら次世代機PS4版の「FIFA 14」の試遊ゾーンも用意されているので、ファンの皆さんはぜひお試しいただきたい。特に次世代機版は必見だ。

エレクトロニック・アーツブースの「FIFA 14」コーナー
次世代機版が遊べるコーナーは静かな環境でプレイできる

巨大フランチャイズ「FIFA」の開発を率いる2人のプロデューサー

日本の「FIFA」ファンにはお馴染みの牧田和也氏
今回が初来日というデビッド・ラッター氏

──牧田さんはいつもカナダと日本を行ったり来たりで大変そうですね。今年は3回目くらいになりますか?

牧田氏:そうですね、ソーシャル系ですとか日本のプロジェクトもあったりするので。

──モバゲーとかグリー版の「FIFA」ですか。そちらも開発の方向性なども牧田さんが見ているんですか?

牧田氏:そうなんですよ。というわけで今見ているプロジェクトはもうメチャメチャ多いですね。コンソールにモバイル、ソーシャル、韓国などで人気のあるオンライン版もありますしね。

──本当に多いですねえ。

牧田氏:(笑)。とはいえ、例えばコンソール版に関してはデビッド(ラッター氏)が中心になって担当してくれているので、僕としてはかなりの部分を任せて、安心して見ています。かわりに新しい種類のプロダクトに関してはかなりの時間をかけて見ていく感じになっています。

──デビッド・ラッターさんは今回が初来日ですね。自己紹介をお願いします。

ラッター氏:2007年8月にEAカナダに入り「FIFA 09」からプロデューサー、ラインプロデューサーをやってきまして、本作ではエグゼクティブ・プロデューサーを務めています。

──牧田さんもエグゼクティブ・プロデューサーと紹介されることが多いんですが、どういった役割の違いがあるんでしょう?

ラッター氏:私がEAに入った頃、カズ(牧田氏)はゲームプレイのリードプロデューサーをしていました。「FIFA 12」の終わりからは私がコンソール版の「FIFA」全体を見るようになったのですが、カズは現在「FIFA」以外にもEA Sports全体のクリエイティブなプロジェクトに多数関わっています。英国ではこういうのを“手当たりしだいのパイに指を突っ込む”といいます(笑)。

──なるほど(笑)。ラッターさんはコンソール版をより細かく統括しているんですね。

ラッター氏:はい。Xbox One、PS4、Xbox 360、PS3、PS2、PS VITA、3DS、PC、のバージョンを担当しています。あ、忘れてましたがPSP版も。多すぎて覚えられない(笑)。

“プレシジョン・ムーブメント”がゲームをサッカーそのものに近づける!

選手の動きを1歩単位で計算する“プレシジョン・ムーブメント”により、動きや体の使い方がこれまでになくリアルになった

──今回、ハイエンドコンソール版「FIFA 14」では、“プレシジョン・ムーブメント”という新しい試みをしましたね。かなりリスクのある機能刷新だと思うのですが、そのあたりどうでしたか?

ラッター氏:ええ、確かにおっしゃるようにリスキーな判断でした。リスクは2つあります。ひとつは、動きのシステムのまさに基礎であるために、それがダメだったら、ゲームにならないということです。嬉しい事にうまくいきましたが(笑)。

 2つめの理由は、プレイの感触を大きく変えることになるため、プレーヤーから非常に感情的なフィードバックをもらう可能性があるということです(笑)。しかし現時点では大変気に入ってもらえているようで、本当によかったです。

牧田氏:そうですね、久しぶりにすごくリスクのあった進化だと思います。このシステムは、人が動く一番ベースの部分ですからね。ただ、人が人らしく動く、ということをさらに的確に再現するためにはどうしても不可欠な部分だと考えていましたので、今回取り組みました。

──それだけ大きなベースとなる部分を刷新したのは、それがスポーツゲームの進むべき道だと考えているからでしょうか?

牧田氏:スポーツゲームの進化、というよりも、これまで我々が「FIFA」を作ってきた中で、満足できていなかった部分なんですよ。特に、その部分を作ってきたプログラマーは、もっと良くできると考えていて。

 また、HD機のレベルでゲームを作っていると、いつもいろんな限界があります。性能をフルに引き出してしまって、同じ方法ではそれ以上がなかなか難しいとかですね。だから、成功するまで何度も作りなおすという部分もあるんです。その意味で、今回の進化は必然だったと思っています。

新システムのおかげをもって強烈なフィジカルプレイが展開することも特徴。ボールをキープするシールディングというテクニックが重要になった

ラッター氏:ゲームとしては、その中に本当のビリーバビリティ(真実味)を含ませたかったのです。現実に近いプロセスで選手を加速させ、ターンさせるということです。ただ、それが良いニュースばかりというわけでもありません。例えば、スピードを下げるときは前作以前よりも時間がかかるようになりました。ですのでスピードを出しすぎて、ボールが離れてしまうと、ポゼッションを失うことに繋がりやすい。それが本作において、より的確な戦術的判断をプレーヤーに要求する、強力な動機を作り出しています。

──多分、私が「FIFA 13」をやりこみすぎているせいだと思うんですが、「FIFA 14」のデモ版では非常にディフェンスが硬く、従来のやり方ではドリブルが難しかったり、点が取りにくいと感じました。コツみたいなものってありますか?

牧田氏:おっしゃることはすごくよくわかります。そこは我々も慎重に判断をしていて、要するに、もっとサッカーっぽい戦略性であるとか、サッカー的なペースというものに、クローズアップしたかったんです。中盤では敢えて飛び込まないとか、キープして仲間の飛び出しを待つ、であるとかですね。そういう選択的なサッカーをもっとやりやすくするためには、これくらいのバランスがいいかなと判断したんです。

 なので、もっとやりこんでいただくと、あ、これのほうがよりサッカーっぽい、自分の思ったプレイができる、と思っていただけるんじゃないかと信じています。

ラッター氏:去年の“ファーストタッチ・コントロール”要素と同じ方向性で、今回はドリブルで勝つためにはきちんとした体勢、スピードでボールをタッチしなければならない、ということにに重点を置いています。ですから前作のようなダッシュの使いすぎはとても大きなリスクをはらむようになりました。

──簡単にいうと、「FIFA 13」までというのは、わりと個人技でのゴリ押しが有効であったところを、思い切って変えたということですか。

ラッター氏:そうです。今作ではディフェンスとオフェンスのポジショニングに多くの労力を割いて開発をしています。それが“プレシジョン・ムーブメント”の目的のひとつでしたし、まだ完璧にではないにしろ、私はこの部分をとても気に入っています。

── それを踏まえた上でも、さらに今作では特にディフェンスの硬さが印象的です。

牧田氏:そうですね、今回はシールディングをしてゲームを作るという部分にも注目していたので、ミッドフィールドでのバトルというのが特に作りこみたかった部分でした。その代わり、ボールサイドにディフェンスが集まるぶん、あいてくる選手も出てきます。それをうまく使うような、そういう遊び方を今回は発見していただけるかと思います。

──まさに現代サッカー的な感じですね。

ラッター氏:そこに気づいてもらってとても嬉しいです。サッカー的なチームプレイを促進するため、AIについては本当にたくさんの労力を注ぎました。特にボールへのサポートや、チーム全体でディフェンスのギャップを埋める、または使うという部分が的確になっているはずです。

デモ版から製品版、製品版から次世代機版へと続く進化

シュートの気持よさが増したのも「FIFA 14」の改善点だ

──ちなみに、デモ版の内容は製品版と同等と考えていいんですか?

牧田氏:ではないですね。どうしてもタイミング的に間に合わない部分も出てきますので、“かなり製品に近い”と考えて頂ければ。でもぜんぜん違う、ということは無いはずです。ちょっとしたバグフィクスであるとか、特殊な状況での動きの調整であったりしますので。

ラッター氏:デモ版をリリースしてから、ファンの皆さんの感想や意見をフォーラムやFacebook、Twitterなどでチェックし、フィードバックをまとめています。例えばデモ版で、ヘディングとコントロールシュートが強すぎるというフィードバックがありました。そういう悪い点は製品版までに必ず解決します。

──それから改めてお聞きしたいのが、今世代版にやや遅れて登場予定の次世代機版についてです。例えばPS4はアジアで12月、日本では来年2月ということになりましたが、「FIFA 14」はそのローンチに合わせて出てくると考えていいんですか?

牧田氏:はい、ローンチに合わせます。

──次世代機版の見どころを改めて整理するとどういう感じでしょうか?

牧田氏:基本の方向性は一緒なんですが、マシンのスペックを活かして作っているので、必然的に、次世代機版のほうがより細かな動きを出せたり、スタジアムの臨場感が上がっています。例えばボールボーイがいたりとか、カメラマンが沢山いたりとか。今はスタジアムの外のショットも作っているんですよ。

 それプラス、AIが今世代の4倍くらいの速さで回せるようになったので、さらに先を見たプレイが可能になりました。例えば、相手の選手がどう動くだろうかというのを想定した動きがよりインテリジェンスになっています。

──なるほど。ということは、今世代機版をいったんプレイしても、改めて次世代機版をプレイしてみるは価値はありそうですか?

牧田氏:はい、特に感覚的なところで大きな違いを感じられると思います。

次世代機版ではゲームそのものがさらに緻密になるほか、スタジアム内の様子も克明に描写されるようになる

(佐藤カフジ)