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【CEDEC2013】モバイルゲームもオンライン化の時代へ本格的に突入する?

GMOクラウドが多機種対応の新ミドルウェア「Photon Server」を提供開始

9月21日~23日開催

会場:パシフィコ横浜

 CEDEC 2013では例年通り多くのミドルウェア企業もスポンサーセッションを開催し、定番となったUnity や、次世代エンジンとして注目の集まるUnreal Engine 4などが会場を彩った。その中で、今後のゲーム開発動向を探るうえでひとつのトレンドとなりそうな発表を行なったのが、クラウドサーバーサービスを展開するGMOクラウドだ。

 GMOクラウドでは、去る4月に開催されたUnity開発者向けカンファレンス「Untie Japan」にて、ネットワークゲーム開発用ミドルウェア「Photon Cloud」の国内提供を開始。そして今回、CEDEC 2013のセッションにて新たに「Photon Server」の国内向け提供の開始を発表した。これによりモバイルゲームの世界も“オンライン対戦が当たり前”という時代になるかもしれない。セッションの内容をもとに、これらの革新的なミドルウェアがどのようなものか紹介しよう。

無料で始められる本格オンラインゲーム開発ミドルウェア「Photon Cloud」とは?

セッションの様子。GMOクラウドのPhotonCloud運営事務局から複数名がスピーチした
「Photon Cloud」は、現時点で最も先進的なネットワークゲームミドルウェアのひとつだ
定番OSやゲームエンジンだけでなくFlashやHTML5など考えられる限り多数の環境に対応
4月の「Unite Japan」で初公開して以降、積極的に普及活動を推進している

 GMOクラウドが国内向けに4月から提供している「Photon Cloud」は、ドイツExit Gamesが開発するミドルウェアだ。他のネットワークゲーム開発用ミドルウェアと根本的に異なる点は、専用のクラウドサーバーとセットのサービスになっていること。ゲーム開発者はクラウドサーバーをレンタルすることで、自前でサーバーを構築することなく、リアルタイムマルチプレイに対応したゲームを開発することができるというわけである。

 もちろん「Photon Cloud」のサーバーは通常のクラウドサーバーと異なり、その機能はゲームに特化。特に、低遅延な通信が可能なUDPを利用できることで、FPSやアクションなどレーテンシーに敏感なゲームの開発も可能だ。さらにサーバー上ではC#で任意のゲームメカニクスを記述できるため、小規模な対戦ゲームからMMOまで、ありとあらゆるゲームに応用できるという汎用性も備えている。

 サーバー機能としては、リアルタイムのマルチプレーヤー対戦を実現するアクション、MMOなどのひな形が用意されているほか、ロビー機能、マッチメイキング機能、クロスプラットフォーム対戦機能、ロードバランシング機能など、現代的なオンラインゲームを制作するために必要な機能を網羅。開発者はこれらの機能をチョイスするだけで自分のゲームのための最適なフレームワークを手に入れることができる。

 そして特筆したい点が、少なくとも小規模な開発・テストの段階であればこのクラウドサーバーを無料で利用できることだ。具体的には、“同時接続者数が100クライアント以下”という制限内なら永続的に無料で利用できる。それ以上の同時接続者数になると、規模に応じて月額料金が発生するが、スモールスタートを是とするモバイル向けゲームや、PC、ゲーム機上のインディーズタイトルの開発者にとって非常に有利なサービスといえる。

 インディーズ開発者による利用を重視しているということで、クライアント用のSDKは考えうるありとあらゆる環境に対応。開発者に人気のあるミドルウェアUnity にも統合済みだ。セッションで解説を行なったPhotonCloud 日本運営事務局の中村康孝氏によれば、Unityで「PhotonCloud」を利用する場合、Asset Storeからダウンロードして、数行のコードを書くだけでマルチプレイ機能が実現できてしまうという。そんなわけで先行する海外では、わりとハードコアなPC用アクションゲーム「Guns of Icarus」といったタイトルをはじめ、「Unity×PhotonCloud」で制作されたゲームがすでに配信中となっている。

 というわけで「PhotonCloud」は非常に強力なネットワークゲーム開発ミドルウェアとなっているわけだが、セッションでの説明によれば、まだまだマイナーな存在であるということで、GMOクラウドでは大勢の開発者に知ってもらうための活動に注力している。今回のCEDECのようなイベントへの出展はもちろん、これまでにはUnityと協力してのGameJamも開催。今後は全国各地で同様の取り組みを展開していきたいという。

【Unity × Photon Serverで実現された「Guns of Icarus Online」】

CEDEC 2013の開催に併せて「Photon Server」を発売。より高度なゲーム開発をサポート

「Photon Server」は、「Photon Cloud」の自前サーバー版だ
C++で構築された高速なネットワークコアの上に、C#で任意のゲームを構築できる
ロードバランサーも標準搭載
同時接続数100クライアント以内ならなんと無料で利用可能

 本セッションではGMOクラウドによるこれまでの「Photon Cloud」普及の取り組みに加えて、新たに「Photon Server」の発売が宣言された。「Photon Server」は、クラウドサーバー上にゲームを置く形の「Photon Cloud」のサーバー機能を、ゲーム開発者自身が自前のサーバーに組み込めるようにしたものだ。

 高速なUDP通信、多彩な機能、便利なフレームワークなどの特徴はそのまま共通となっているが、「Photon Server」では細かな通信設定、サーバー群を構成するプロトコル設計など、ソースレベルでのカスタマイズが可能とされている。負荷分散機能もサポートされており、プレーヤーを最大で2,000台規模のサーバー群に振り分けることができるといい、かなり大規模なオンラインゲームサービスにも適用できるミドルウェアである。

 こちらも「Photon Cloud」と同じく、同時接続数に応じたスケーラブルな料金体系をとっており、100ユーザー以内であれば無料で利用できる。サービス品質を開発者のコントロール下に置くことができるため、自前のサーバーや回線などに用意のある開発チームにとってはこちらを選択するメリットが大きそうだ。

 実際、iOS向けのカジュアルゲームを手がける AppBank GAMESの第1作となったゴルフゲーム「Dungeons & Golf」では、この「Photon Server」を利用して、独自のロードバランシングの仕組みを実装したオンラインサービスを展開している。この作品ではモバイル端末向けのゲームとしては先進的なことに3G回線を通じたリアルタイム対戦をサポートしているのだが、これまでの運営期間を通じて一度のトラブルもないというから驚きだ。

 「Photon Cloud」、「Photon Server」の普及促進を担当するGMOクラウドの木村薫氏によれば、上記「Dungeons & Golf」を皮切りに、国内でも複数の採用例が出てきており、新たなオンラインゲームの開発が進められているとのことだ。具体的なタイトル名等は現時点では開かせないとのことだったが、このような画期的なミドルウェアが登場してきたことで、モバイルゲーム分野にもリアルタイム対戦の波が押し寄せてきそうである。

 スマートフォンやタブレットの性能は年々向上してきており、最新世代の機種では据え置きゲーム機なみのグラフィックスを表現できるようになってきている。それに併せてゲームの内容も多様化が進む。ゲームコンテンツのリッチ化という大きな流れの中で、プラットフォームを選ばずに高品質なオンラインゲームを実現する「Photon」シリーズのミドルウェアが果たす役割は、我々ゲームファンにとっても大いに楽しみなものになりそうだ。

GMOクラウドでは「Photon Cloud」および「Photon Server」以外にも、ネットワークゲーム開発やリリース後の運営に役立つさまざまなサービスを準備中。それらのサービスを先行的に無料利用できるサービスモニターを募集中だ

(佐藤カフジ)