ニュース
ベセスダ/Tango Gameworks、「PsychoBreak」プレビュー
三上真司氏のデモプレイで見えてきた戦慄のサバイバルホラーの世界
(2013/4/30 00:00)
ベセスダ・ソフトワークスは開発子会社Tango Gameworksのオフィスにて、サバイバルホラー「PsychoBreak(サイコブレイク)」のジャパンプレミアを開催した。このイベントでは2013年のE3で紹介されるプレイアブルのデモを、先行公開するというもので、世界中のメディアに対して「Project Zwei」がついに秘密のヴェールを脱いだ。
「PsychoBreak」は4月19日に正式に発表された三上氏率いるTango Gameworksが開発するサバイバルホラー。ジャパンプレミアはこの発表に先立ち開催された。ちなみに、本作の海外でのタイトルは「The Evil Within」となっている。今回日本向けにデモが行なわれたものは、タイトルは「PsychoBreak」となっており、英語音声に日本語字幕がつけられたものだったが、この仕様は開発中のビルドによるもので、日本で発売する場合、音声も日本語吹き替えになるという。
今回は、このデモバージョンを、ディレクターを務める三上氏自身がプレイした。本稿では「PsychoBreak」のデモプレイから見えてくるゲームの内容と、Tango Gameworksの社内ツアーの様子を取り上げたい。
ついに姿を現わした三上真司氏が手がけるサバイバルホラー「PsychoBreak」
「PsychoBreak」のクリエイター三上真司氏は、かつてカプコンでディレクターとして「バイオハザード」シリーズを手がけ、その後「ディノクライシス」シリーズ、「デビルメイクライ」のプロデューサーを務める。「逆転裁判」の制作総指揮など数々のヒットタイトルを手がけた後、フリーとして独立、その後「VANQUISH」や「シャドウ オブ ザ ダムド」といったタイトルを手がけた。日本を代表するゲームクリエイターの1人であり、彼が次にどんなタイトルを手がけるか、世界のゲームファンが注目している。
三上氏は2010年にゲーム開発スタジオTangoを設立し、2010年の10月にスタジオ名をTango Gameworksとして、ベセスダ・ソフトワークスの親会社であるZeniMaxグループの一員になった。以前行なったインタビューでは、この“合流”は、三上氏が「世界で勝負するゲームを作りたい」という想いを持って活動していく中で、ゼニマックス側の判断として1つのタイトルに対しての制作費を支払うという形ではなく、自由にゲーム開発を行なうための協力という形で実現したという。
その後、三上氏のゲームへの思いを実現させるため、ワールドワイドに挑戦できるAAAタイトルを生み出すべく、メディアを通じた人材募集なども行なっていった。このTango Gameworksの活動は、日本の開発会社が世界で勝負できるタイトルをこれまでにないスケールで開発を行なっていくということで、日本はもちろん、世界でも期待を集めた。
それから意図的に情報を出していなかったが、2012年4月にイメージボードを公開、現在開発中のタイトルはサバイバルホラーであり、開発コードネームは「Project Zwei」であることを明らかにした。三上氏は“サバイバルホラー”について、「恐怖をプレーヤーが自らの手で破壊し、乗り越えて行くゲーム」と定義し、作品では、純粋なサバイバルホラーの実現と、恐怖と爽快感を極限まで追及していくという。
公開されたコンセプトアートは、様々なコンセプトアートをコラージュしたもので、作品の世界観が感じられるものになっていた。この「Zwei」のコンセプトアート発表時に三上氏は、「相当気合を入れて、久々の純粋なるサバイバルホラーを目指しています。現場ベタ付きの僕がクオリティに関しては保証します。期待してください」とコメントしている。三上氏はディレクターとして現場にこだわって開発を進めていった。
そしてコンセプトアート発表からおよそ1年後、正式タイトル「PsychoBreak」が発表され、三上氏自身のデモプレイで本作の一部を見ることができた。三上氏の目指すサバイバルホラーはどのような形で実現したのだろうか?
大量死亡事件の現場に開く異世界の扉。血も凍る恐怖を描くサバイバルホラー
「PsychoBreak」は3人称視点で進行する。プレーヤーは刑事セバスチャンとなって、大量死亡事件の現場へ急行するが、そこから意図せずして謎の世界に迷い込んでしまう。今回のデモプレイで、「PsychoBreak」のゲームの一端が見えてきた。現実と異世界の境界が曖昧な状況の中、恐ろしい存在と出会い追われる恐怖。脱出する場所さえ見えない絶望的な状況で、それでも生き残るために戦う刑事セバスチャンの姿が描かれる。おどろおどろしい画面はもちろん、音楽や演出も強く惹きつけられた。
「PsychoBreak」は、サイレンを鳴らしながら現場に急行するパトカーを最初に映し出す。パトカーはアメリカのもので舞台もまたアメリカのどこかのようだ。パトカーは巨大な洋館の前に到着する。洋館の前にはすでに多くのパトカーが止まっており、洋館を取り囲んでいる。現場はかなり緊迫した雰囲気だ。
現場に到着したパトカーから降りてくるのが主人公であるセバスチャン。渋い感じの白人男性で黒いコートを着ている。セバスチャンは仲間であるメガネをかけた刑事と、女刑事の2人と会話しながら館に近づいていく。館は古びた外見で歴史を感じさせる巨大な建物だ。
会話シーンからシームレスに操作可能なゲーム画面に移行する。カットシーンからアクションシーンに移行するときにロードを発生させないところは、三上氏がこだわった部分だという。画面の構成はセバスチャンを後ろから見るTPSで、グラフィックスの表現は非常に細かい。洋館の前の空間は広く、ぐるりと見渡せる。広大な空間での表現も期待できそうだ。
洋館は病院のようだ。入り口はいくつものいすが並ぶ待合室になっている。ドアを開けたとき、セバスチャンは「血のにおいがする」とつぶやく。病院の待合室にはいくつもの死体が転がっていた。患者らしき人だけでなく、白衣を着た医師も死体となって転がっている。どの死体も血まみれで死んでいる。同僚を待たせてさらに奥に行くセバスチャン。そこは警備室のようで監視モニターが並んでいた。
その監視モニターの1つに警官達が慌てている姿が映し出されている。通路で警官がカメラに写っていない何かにおびえ、そして一斉に銃を構えた。銃を乱射する警官達だが姿の見えない何かに次々と倒されていく。最後の警官が倒れたとき、姿を消した者が正体を現わした。それはフードをかぶった男だった。男はカメラに向かってゆっくりと顔を上げた。「何だこれは……」モニターに向かってつぶやくセバスチャン。しかし次の瞬間、セバスチャンの背後にフードをかぶった男が現われる。身構えるまもなく、セバスチャンは男に襲われ、昏倒してしまう。
響き渡る「G線上のアリア」でセバスチャンは目覚める。足を縛られ、逆さ吊りにされている。あたりは血でべっとりしていて、思わず目を背けたくなるような景色だ。目の前にセバスチャンと同じようにつるされている男が何人かいて、1人は瀕死だがまだ生きているようだ。そうしていると、巨大な体の男が現われ、瀕死の男に近づき、おもむろに男の体に包丁を突き刺す。声が上がるが大男はためらうことなく何度も突き刺した。
そして大男は死体になってしまったその体を運んでいった。そして台の上に置き、大きな鉈を片手に、セバスチャンに背を向ける形で、“作業”を始めた。「G線上のアリア」は大男のそばの蓄音機から流れていた。大男が何をしているかわからないが、このままではセバスチャンも切り刻まれてしまうだろう。セバスチャンは何とか手足の拘束を外し、地面に降り立った。
脱出しようとするが、扉は鍵がかかっている。大男の目を逃れこの状況から脱出しようとするが、警報装置に引っかかってしまう。鳴り響く非常ベル。大男はチェーンソーを作動させ、セバスチャンを追ってくる。もちろんこれらはイベントシーンではなく、すべて三上氏のプレイによって実現されている映像だ。
大男の振り回すチェーンソーを必死にかわすが、片足に刃を受け、それからは足を引きずって逃げる。そして部屋に何も置いていない場所に逃げ込むが、そこで大男が何らかの装置を作動させる。その瞬間部屋中から巨大な回転のこぎりが出現し、セバスチャンに迫ってくる。セバスチャンは唯一のこぎりが出ていないところに走り、何とか脱出した。
しかし大男の追跡はやまない。ロッカーの中に逃げ込み大男が通り過ぎるのを待った。大男はチェーンソーをアイドリング状態にしたままうろついており、常にエンジン音がしている。ここで三上氏は1度逃げるのに失敗し、あっという間に殺されてしまった。殺されたときは、大男のチェーンソーが首筋に当てられ、セバスチャンの頭は無残にも切り離されてしまった。
途中からゲームを再開し、次は瓶を明後日の方向に投げ込み、大男の注意をそらすという方法で、逃げることができた。そしてセバスチャンはエレベーターに転がり込むと、動きだし、病院の待合室に出た。あの異常な部屋は病院の地下にあったようだ。ともかくセバスチャンは病院の外に出る。しかし、そこには信じられないような異常な光景が広がっていた。原因は不明だが、以前と全く異なる世界になってしまっていたのだ。
三上氏によれば、これはゲームの冒頭部分だという。ホラーを意識した演出を強調したパートとなる。そして次に見せるのがこのシーンから少し先の戦闘部分を強調したパートだという。