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【GDC 2013】NASAがゲーム開発者を本気でリクルーティング
Kinectを使ったロボット遠隔操作デモも披露したNASA講演レポート
(2013/3/28 15:40)
GDC 2013の会期3日目にあたる3月27日、NASA(アメリカ航空宇宙局)による講演「We Are Space Invaders」が開催された。
NASAといえば、言わずと知れたアメリカが誇る宇宙開発のエキスパートであり、ゲーム開発者向けのカンファレンスであるGDCに登場するというのはかなりの異例。月や火星の探索がゲームとどう関係してくるのか、そして講演タイトルの「We Are Space Invaders」とは何を指しているのか、蓋を開けてみるまで何が話されるかわからないという点も含め、来場者の興味を多く惹いていた。
登壇したのは、NASA Jet Propulsion LaboratoryのVictor Luo氏とJeff Norris氏。今回はこちらのセッションの内容をお届けする。
NASAも注目するKinect。ゲーム開発者の協力募集を発表
まず2人からは、「宇宙」をテーマとしたゲームと宇宙開発の双方の発展が語られた。果ては1961年、ガガーリンによる世界初の有人宇宙飛行の成功と時を同じくして、世界初のコンピューターシューティングゲームとされている「スペースウォー!」が登場している。
以来宇宙開発と共にゲームも発展し、現在では本場の2人が驚く程のシミュレーション精度とステータスの情報量を搭載した「EVE ONLINE」へと至っている。ゲームが発展してきた今では、10代のアメリカ人の実に97%がビデオゲームをプレイしたことがあり、86%はコンソールゲーム機を所有しているという数字を示した。
これまでNASAはオンライン上で宇宙探索をシミュレーションできるフリーゲームは出してきているが、宇宙開発の未来を担うかもしれない若者が普段触れているコンソール機へのゲーム展開は積極的ではなかった。
この理由を2人は「専門家がいないために参入障壁が高く、したくてもできなかった」のだという。ここでようやく、講演の内容が見えてきた。つまりは、「宇宙開発のさらなる発展ために、ゲームの力を貸してくれませんか?」ということである。
最近では、ゲームを採り入れた広報活動も積極的に行なうようになってきた。その例として挙げられたのが、2012年7月に無料で配信されたXbox 360 Kinect用の無料ゲーム「Mars Rover Landing」だ。「Mars Rover Landing」はプレーヤーの体を使って火星探索船を操作し、火星探査機を指定された地面にいかに上手く着陸させられるか、というもの。
このほかにも、遠隔操作ロボットを模したキャラクターの両手をKinectで操作して、旗揚げゲームのように指定されたポーズを決めて点数を競う、というゲームも制作されている。
そして話は、本格的な宇宙探査の話に入っていった。Norris氏が示したのは、現在NASAで開発が進められている6本足の探索ロボット。荷物の運搬も目的のためトラックほどに巨体だが、6本足という特性のためにどんな地面でも安定したままの移動や、重心に影響しない足を使って物と掴むなどの作業ができるという。
この6本足ロボットは、遠隔操作による作業進行を視野に入れている……というのだが、ここでLuo氏はカリフォルニアにあるNASAの研究室と通信を繋ぐというサプライズを用意していた。カメラに映った研究室には、6本足ロボットが鎮座している。つまり、GDC会場から遠隔操作でロボットを動かしてみよう、という試みだ。
使用するインターフェイスは、ここでもKinectが使われた。操作者が手をKincetにかざすと、Kinectは手のひらと指先をそれぞれ認識する。手を動かすことでロボットの現在位置との差異を認知し、動かしたい場所を指定すれば本体が実際に移動する、という仕組みだ。
実際のデモでは、手を動かし位置を指定することで、カメラの向こうのロボットが動き出すのをしっかりと確認できた。ただし動きやレスポンスは非常に遅く、足それぞれの動きも緩慢なため、実用レベルからは程遠いようにも感じられた。
まだまだ開発途中ではあるが、専用のグローブや機械も使わず、Kinectという「ゲーム機器」がNASAの研究素材として採り入れられたというのは注目に値するだろう。さらに、それを多くの開発者の前でデモとして見せてしまう所にも、NASAがゲームに対する本気度合いが感じられる。
Norris氏は最後に、「本当に(Really)」、「真面目に(Seriously)」という言葉を連発しながら、「我々はどこへ向かうのか?」と話した。「コンピューターや画面を飛び出して、火星や月だけでなく、氷の広がる星や、あるいは水の中に船を進ませて、人々の住める場所を開拓できるかもしれません。星は億単位で空に広がっており、そのどこにでもいけるのです。私たちはどこへ向かうのでしょうか? それはすべての場所です。あなたたちこそが、スペースインベーダーなのです」と語った。