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【GDC 2013】GAME NARRATIVE SUMMIT「教訓あるゲームを作るテクニック」

Microsoftシニアゲームデザイナーがアドバイスする、良作の7つの条件

3月25日~29日開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Center

MicrosoftシニアゲームデザイナーのRichard Rouse III氏
アドバイスを箇条書きにする、というのはRouse氏が敬愛するレイ・ブラッドベリなどの著者に倣ったものだという

 3月25日から開催されているGDC 2013の会期中、初日と2日目では1つのテーマでセッションを構成する「サミット」が行なわれていた。

 今回はその中から「ゲームの物語」を語るGAME NARRATIVE SUMMITに注目し、いくつかの講演をピックアップしてお届けしたい。

 GAME NARRATIVE SUMMITでは、様々なコンテンツから方法論を導き出す研究発表的なものと、実際の開発過程を追ったものの2パターンに別れた。この記事では、MicrosoftシニアゲームデザイナーのRichard Rouse III氏による「Seven(Or So)Techniques for Writing a Moral Game」をご紹介する。

 セッションとしては前者の研究発表パターンとなっており、わかりやすく言えば、教訓あるゲームを描くために必要な7つ(かそれくらい)のテクニックが述べられた。今後のゲームの社会的、文化的価値を、道徳的なゲームデザインを探ることで占うという、志の高いセッションだ。

 以下には、Rouse氏が掲げた7つのアドバイスを、ダイジェスト的に記していく。

1.教訓的なゲームは、プレーヤー主体の選択が必要というわけではない

YOU DON'T NEED PLAYER-DRIVEN CHOICES TO HAVE A MORAL GAME

 教訓や道徳を伝えるのにプレーヤーに必ず選択させないといかないかというとそうではない。協力するというのもその1つで、例えば、「風ノ旅ビト」では1本道のゲームではあるが、ほかのプレーヤーとの協力も教育的な面を見せている。

2.愛されるキャラクターを争いの中に置く

PUT BELOVED CHARACTOR IN CONFLICT

 特徴的なキャラクターを争いの中に置き、前面に出てきたキャラクターの性格を知ることで、実際の人間関係のロールモデルになる。善悪だけでない、ゲームの登場人物の性格をある程度把握できるようになれば、現実世界においても人間的な特徴の傾向と対策を伺うことができる。

善悪だけでない人間関係の機微をゲームから学べるようになる

3.もし選択があるなら、終りではない場所にも影響がなくてはならない

IF THERE ARE CHOICES, THERE MUST BE REPURCUSSIONS, AND NOT JUST AT THE END

 これは「Civilization」のクリエイター、Sid Meier氏の「ゲームは興味の選択の連続だ」という言葉から引用されている。さらにステルスアクション「Dishonored」ではステルスに徹するか殺すかの選択の積み重ねであることから、選択がゲームに徐々に影響を与えることが教訓の強化に繋がっているという。

Sid Meier氏の言葉、「印象的だった」という「サイレントヒル2」のIn Waterエンディングの細かな条件、さらには「Dishonored」などを参考に、プレーヤーが選択することの意義を導き出した

4.予算は常に気にする

KEEP THE BUDGET IN MIND

 もし大予算をかければ、ストーリーの語りはカットシーンを増やせば解決するが、例えばキャラクターのスキンテクスチャや会話のバリエーションを増やすことで、物語の背景を匂わせたり、プレーヤーの選択によってゲームの状況が変わったことを示すことができる。

テクスチャーを用意するだけで、背景やストーリーを語れる場合がある。それによってゲームが洗練される可能性もある

5.簡単な答えを提供しないこと

DON'T PROVIDE EASY ANSWERS

 こちらは「不可能な選択をさせる」という意味ではない。道徳心に迫るような、困難な選択を突きつけることを指す。ゲーム版「The Walking Dead」では、極限状態の中で「女性に銃を渡すか渡さないか」など、一瞬では判断できない選択が多数登場する。

「The Walking Dead」では苦悩の選択と共に、プレーヤーがどの選択をしたかの割合が表示されるようになっている

6.利害関係者は3名以上に増やさないこと

NO MORE THAN THREE STAKEHOLDERS

 知の集合とはいえども、大人数でゲームをデザインすれば道徳部分はぼやけてしまう。見通しを明らかにするため、関係者は少なくしておく必要がある。

7.ストーリーとゲームプレイが同じ教訓を保っているかどうか確認すること

MAKE SURE YOUR STORY AND GAMEPLAY HAVE THE SAME MORAL

 例えば「バイオショック」では、ストーリーとゲームプレイが上手く噛み合うことでクライマックスシーンで衝撃的な印象を残すことに成功している。また「ファークライ3」においても、血みどろのゲームプレイとエンディングのセリフが符合してプレイ後の印象を深めている。

 以上記してきた中でも、特に7番目は重要なアドバイスとなっているようで、Rouse氏自身がベストだと思うゲームは「ゲームプレイとストーリーが同じ教訓を伝えている」ことが条件になっているという。

 プレーヤーとのインタラクションがあるからこそ、通常の物語とは違った語り口がゲームには可能だ。その特徴を上手く利用し、プレーヤーに新鮮な体験を提供することが、今のゲームには求められているのかもしれない。

未だに語り継がれる「バイオショック」の1場面
何人殺したかわからない……という独白が、プレーヤーのその姿と重なる

(安田俊亮)