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【GDC 2013】Facebook Developer Dayレポート
Unity対応でコアゲームも提供開始。新ニュースフィードやモバイル対応でゲームプラットフォーム化を加速!
(2013/3/27 19:38)
GDCで年々存在感を増しているFacebook。もともと北米市場で根強い人気のあったブラウザ型のゲーム市場をそっくりそのまま取り込み、Zyngaの大成功をプラットフォーマーとして下支えすることであれよあれよという間に30億ドルの売上を擁する大手ゲームパブリッシャーに成長している。
昨年は仮想通貨のfacebookコインの導入や各種モバイル端末へのクロスプラットフォーム対応なども行ない、従来の“Zyngaの女房役”ではなく、PC、スマートフォン、タブレットにアプリを展開する“ゲームプラットフォーマー”として大きな存在感を見せている。
2年連続の開催となったスポンサーチュートリアル「Facebook Developer Day」では、Facebookのペイメントやパートナーとのリレーション、各種エンジニアリングの担当者が入れ替わり立ち替わり登壇し、ゲームプラットフォームとしてのFacebookをアピール。Facebookにコンテンツを供給しているコンテンツホルダーも数多く登壇し、トドメとばかりにテクノロジーパートナーとして、同日別の部屋でスポンサーチュートリアル「Unity Technologies Developer Day」を行なっているUnityから、CEOのDavid Helgason氏が応援に駆けつけ、Facebookへの連携強化をアピール。場内からは待ってましたとばかりに大きな歓迎の声が上がるなど、本チュートリアルはさながらE3のプラットフォーマーカンファレンスのようだった。
「Facebook Developer Day」では、GDCだけあってプログラマやエンジニア向けの専門的な内容も数多く含まれていたが、比較的ゲームに直接関係するところをピックアップしてご紹介したい。
Facebookゲーム市場は30億ドル。今後はクロスプラットフォーム展開を一層強化
「Facebook Developer Day」の開幕はFacebookのエコシステムの紹介から入った。右肩上がりグラフ、具体的な数字を示しながら、いかに順調に成長しているかをアピールするという、Appleが得意とするプロローグだ。
まず、デスクトップ市場の概況の説明から入った。この場合のデスクトップとは、デスクで利用するPC全般を指しており、ノートPCも含まれる。
グローバルにおけるデスクトップのゲーム市場は、Lazard Capitalの推計によれば2012年で140億ドル、2013年は152億ドルを見込む。このうちFacebookは30億ドル、約2割ほどを占め、パブリッシャーに支払われるロイヤリティは20億ドルにも達するという。
売上の中身は、カジノがトップで3割ほど、シミュレーション、ストラテジー、パズル、HOG(Hidden Object Game)の4つで5割ほど。アクション、アドベンチャー、スポーツというコンソールゲームのメインを飾る人気ジャンルは、デスクトップゲーム市場においてはわずか2割ほどに留まる。「日本人の視点からすると、やはりカジノはそんなにデカいのか」と驚かざるを得ない結果だ。
こうした状況下でFacebookがゲームプラットフォーマーとして力を入れているのが、Facebookを通じてミッドコアゲーム、コアゲームを提供することと、同じFacebook IDで、デスクトップはもちろん、スマートフォン、タブレットでも続きが楽しめるクロスプラットフォーム対応の2つだ。
ちなみに、今年のGDCでよく耳にするミッドコアとは、Facebookが得意としてきたカジュアルゲームと、コンソールゲームが得意としてきたコアゲームの中間に位置するゲーム(ユーザー層)で、どのメーカーも判で押したように、ミッドコアを連呼するのが今年のGDCの特徴である。
Facebookの事業には、いわゆるFacebookページであるキャンバスと、スマートフォンやタブレット向けに提供しているモバイル版の2つがある。将来的には同一のコードで、3つに一気に対応できるようになる見込みだが、現時点ではブラウザ版とモバイル版は別々にコードを用意しなければならない。このため、デベロッパーによってはブラウザには出しても、なかなかモバイルまで手が届かないのが現状である。
「しかし」とFacebook担当者はいったん話を切り、現在大人気のFacebookゲーム「Candy Crush Saga」を例に、後からモバイル版をリリースすることで、DAU(Daily Active User)やユーザーのリテンションを大きく高められることをアピールし、クロスプラットフォームに対応することは大きなメリットがあると結んだ。
FacebookページにUnityを統合。コア&ミッドコアゲームがFacebookでも手軽に遊べるように
続いて、ゲーム機能に関する具体的な話に移った。Facebookのアクティブユーザー数は10億人以上、このうちGamer MAU(月に1度はゲームを遊んでいるゲーマーの数)は2億5,000万人。これ以上のスパンでゲームを楽しむとは考えられないため、この数字がほぼFacebookのゲームユーザーの実数となると考えて良いだろう。そしてさすがに実数は出さなかったが、有料会員数も24%増大しており、Facebookのゲームビジネスは、Zyngaの不調とは裏腹に極めて順調に推移しているようだ。
こうした結果の背景には、Facebookならではの目に見えない努力の数々がある。具体的には好きなゲームを探せる「App Center」の開設や、プレイ履歴に応じて似たゲームをオススメしてくれるレコメンデーション、そしてバナー広告やブックマーク、プレイ中のフレンドからの告知などキャンバスを最大限に活用した告知によってFacebook利用者は知らず知らずのうちにゲームに誘い込まれる。
ところでFacebookは、3月上旬にFacebookページのリニューアルを発表し、ニュースフィードも一新することを明らかにした。3月27日現在、まだ新ニュースフィードは導入されていないが、本チュートリアルでは、新ニュースフィードにおけるゲーム周りの変更点についても開設が行なわれた。
Facebookページのリニューアルの基本方針が「煩雑さの軽減」ということで、ゲーム周りにおいてもスッキリ見やすくなり、各種検索機能の向上に重点が置かれている。これはデスクトップ版、モバイル版共に変わらない。1点大きく違うのは、「ゲームで遊ぶ」ボタンと同じサイズで、「Unity Web Playerをダウンロードする」ボタンが表示されるようになっていることだ。
FacebookのUnityとの連携強化は、今回のハイライトのひとつで、Facebookが力を入れているコア&ミッドコア向けのゲームの供給は、このUnityの連携強化が背景にある。この連携強化により、フル3Dで描かれたアクションゲームやアドベンチャーゲームがFacebook上で遊べるようになり、フルスクリーンにしてあたかもフルプライスのPCゲームのような没入感でコアゲームが楽しめるようになる。
もちろん、Flashでもコアゲームは作れるし、フルスクリーンで遊ぶこともできる。それでは何が違うかというと、クロスプラットフォーム展開を考えた場合のスケーラビリティの高さだ。PC、スマートフォン、タブレットのクロスプラットフォームタイトルを開発することを考えた場合、あるいはパブリッシャーサイドの思惑で、他のゲームプラットフォームへのマルチ展開を考えた場合、もっとも汎用性が高いのがUnityであり、その汎用性の高さはFlashとは比較にならない。
ここで担当者は、今回のために準備したらしい、新型ゲームコンソールのプロモーションでよく作られる、新規大型タイトルを次々に見せていくタイプの「Unity on Facebook」バージョンのトレーラーを公開し、Unityとの連携強化によって、これまでほとんど提供できていなかったコア&ミッドコアゲームを今後強化していくことをアピール。今後、Facebook SDK for Unityをデベロッパーに配布し、普及促進に努めていくという。
続いてスペシャルゲストとして登壇したUnity CEOのDavid Helgason氏は上記の発表を受けて、笑顔で挨拶し、7,500万人のUnityインストール済みのFacebookユーザーに向けて、Webベースのコアゲームを提供できることを嬉しく思うとコメント。ちなみにUnityは、同日、先月のPS4の対応に続いて、Wii Uの対応も表明。汎用性という点では、もはや完全に敵なしのゲームエンジンとなった。この枠組みが、ゲームクリエイターにどのように活用されるのか非常に楽しみだ