無料通話・メールアプリ「カカオトーク」をゲームプラットフォーム化

韓国の大ヒットパズル「Anipang」など3タイトルを配信


11月20日 提供開始



カカオジャパン代表取締役社長のパク・チャジン氏
日本では競合アプリの「LINE」にシェアを奪われているが、韓国では独占状態で、広告、さらにはEコマース媒体として大きな成功を収めている

 カカオジャパンは、スマートフォン用の無料通話・メールアプリ「カカオトーク」をゲームプラットフォームとする「カカオゲーム」サービスを11月20日に開始した。これに伴い、記者向けの発表会も開催されたので、この様子もお伝えする。

 「カカオトーク」は、アプリを所有するユーザー同士で無料の通話・メールが楽しめるコミュニケーションアプリ。サービスはNHN Japanが提供する「LINE」とほぼ同じだが、無料での通話に加えて最大5人まで同時に話せる「グループ通話」、動く絵文字・スタンプなどが特徴だ。

 日本では、コミュニケーションアプリは「LINE」がシェアを多く占めている一方で、韓国では「カカオトーク」の独占状態となっており、世界での利用者数は11月時点で6,700万人に達している。特に韓国での成功は著しく、サードパーティーが参加する広告、Eコマース媒体として現在約4,000社が参入相談待ちになっている。

 この成功は、カカオジャパン代表取締役社長のパク・チャジン氏によると「設立5年目にして10月に初の黒字化、しかもこれまでの累積赤字を一気に解消するほどの勢い」だという。

 今回発表された「カカオゲーム」は、韓国では7月より先行オープンしていたゲームプラットフォームとなる。今回は日本を含む他の国での一斉公開となり、日本では3タイトルが遊べる。

 先日開催された「G-STAR 2012」のモバイルゲーム事情レポートでも少しだけお伝えした通り、「カカオゲーム」はゲームプラットフォームとしても韓国で成功している。

 その筆頭は今回のラインナップにも含まれている「Anipang(エニパン)」。同じ動物を3つ揃えて消していくシンプルなパズルゲームで、韓国では2,000万ダウンロード、DAU(Daily Active User)は1,200万人を達成し、韓国の4人に1人は「Anipang」を遊んでいるという大ヒット作となった。


カカオジャパンサービス運営チームプロデューサーの野田昭博氏
リアルなソーシャルグラフにゲームが付いてくる、というのが「カカオゲーム」の基本方針
韓国のApp Storeでは、「カカオゲーム」のタイトルがランキング独占状態

 「カカオゲーム」の展開について、カカオジャパンサービス運営チームプロデューサーの野田昭博氏は、「日本のモバイルソーシャルゲームの主流は、最終的にはゲームファンが作るソーシャルグラフ、というものを狙っているが、『カカオゲーム』はもともとソーシャルグラフがあって、そこにゲームが付いてくるような感じ」と話した。

 野田氏は韓国で「Anipang」がヒットした要因には、リアルに近いユーザー同士のコミュニティがまずあったことを挙げ、「その中で、ゲームをプレイしたことのない人でも楽しめるようなカジュアルなゲームを提供したことがあると思う」と語った。

 3タイトルすべてがパズルゲームとなった今回のラインナップについては、「まずは韓国で実績のあるものを取り入れて日本市場の反応を見たい。箱庭系も順次出していきたいなと考えている」と述べた。

 その一方で、「『LINE』とはどう差別化を図っていくのか?」との質問には、パク氏は「差別化しにくいところではあるが、パートナーのヤフーには『カカオトーク』は高品質だよ、という話をした。日本でのスマートフォンのシェアはまだ30数%なので、これから新しくユーザーになる人が多い。よりメリットのあるサービスを1個1個積み重ねるのが大事」と語り、グループ通話、人数制限のないチャットルーム、動くスタンプなどそれぞれにクオリティの高さを求めていくことを示した。

 またサードパーティーに対しては、「カカオゲーム」SDKを提供している。「カカオゲーム」独自の機能としては、カカオアカウントでユーザー認証をするAPI、友達リスト情報を読み込むAPI、チャットルームに直接メッセージを送れるAPIといったものが挙げられる。

 開発環境は「自由度を高めることが重要」という方針を示しており、プラットフォーマーとして主張をするわけではなく、サードパーティーにどう「カカオトーク」を利用してもらえるかを考えながら、コンテンツを作り込めるような環境を提供したいとしている。

 「カカオトーク」は、日本での知名度は低いものの、利用者数は韓国に次いでアメリカ、その次が日本となっている。この状況を逆手にとって、パク氏は「海外には強いので、日本のデベロッパーが海外に挑戦できるチャンスになる」ことも合わせてアピールした。

 以下に今回のラインナップを個別に紹介する。利用料金はいずれも無料で、ビジネスモデルはアイテム課金制。対応はAndroidのみとなる。iOS版については「なるべく早く、遅くとも年内には配信したい」そうだ。



■ Anipang

 「Anipang」は、ズラリと並んだ動物たちを3匹以上揃えて消していくパズルゲーム。制限時間が1分と短く設定されており、その中でいかに多くの点数を取れるかを競う。ゲーム性は「Bejeweled Blitz」や「ズーキーパー」と言うとピンと来る方も多いだろう。

 特徴は制限時間が短い中でも連続で消していくことで「コンボ」が発動し、動物がどんどん消えてより高い点数を獲得できるという点。さらに「カカオトーク」の友達よりも高い点数を取れば、ランキングが入れ替わる演出が入るほか、「自慢する」ボタンで順位を抜いた相手に直接メッセージを送りつけることもできる。


【スクリーンショット】
韓国の4人に1人は遊んでいるというパズルゲーム。内容はシンプルだが、ランキング変動のアニメーションなど、競争心を煽られる演出がニクい。したり顔で相手にメッセージを送信できる「自慢する」ボタンもユニーク


■ 手軽に! 四川省

 「手軽に! 四川省」は、麻雀牌を使ったパズルゲーム「四川省」をカジュアルにアレンジしたもの。制限時間50秒以内に牌を消していき、時間内にすべての牌を消すと次のステージへと進むことができる。牌にはそれぞれ動物の絵が描かれてビジュアル面もかわいく仕上げられており、「カカオトーク」の友達とのランキングにも対応している。


【スクリーンショット】
こちらは「四川省」をカジュアルにアレンジしたパズルといった印象で、牌の種類を絞ることでより気軽に楽しめるようなものになっている


■ パズルズーズー

 「パズルズーズー」は、制限時間1分間で動物を3つ以上並べて消すというパズルアクション。「Anipang」とは違い、積み上がった動物のブロックを上に吸い上げ、吐き出すという動作を繰り返してブロックを揃えていくというものになっている。スコアボードにも対応。


【スクリーンショット】
動物を吸い上げては落としていくパズルゲーム。「Anipang」とは違ったプレイで楽しめる。なお提供はネクソンが行なっている

(2012年 11月 20日)

[Reported by 安田俊亮]