「リネージュ2」と「アイオン」新ビジネスモデルインタビュー

月額課金の良さに基本無料の気軽さをプラスした日本独自モデル


11月20日 実施予定


 エヌシージャパンは11月20日、Windows用MMORPGの2タイトル「リネージュ2」と「タワー オブ アイオン」(以下、アイオン)においてビジネスモデルを月額課金制から基本無料化へと変更する。ビジネスモデルの変更についてはこちらなどでも紹介しており、今回はこれに伴ったインタビューを実施できたので、この模様をお伝えする。

 インタビューに応えてくれたのは、エヌシージャパンGame Unitシニアマネージャーのパク・ジェフン氏と同ヘッドマネージャーのシン・ミンス氏。パク氏はエヌシージャパンのタイトルを統括して最終的な監修を務めており、今回のビジネスモデルも監修している。

 シン氏は主にコンテンツ内容やイベントなどの企画を行なっており、新ビジネスモデルの企画に関わっている。両氏には、ビジネスモデル変更のきっかけや意図、これからの展望などを伺っていった。



■ 新規ユーザーを取り込む“誰も損しない”ビジネスモデル

エヌシージャパンGame Unitシニアマネージャーのパク・ジェフン氏
同ヘッドマネージャーのシン・ミンス氏
エンドコンテンツにしか人が集中しないという問題を解決するための、ハイブリッド型課金モデルとなる

――今回のビジネスモデルを大きく変更したきっかけはなんですか?

シン・ミンス氏: 「リネージュ2」や「アイオン」のコンテンツが徐々に増えていく中で、MMORPGとして徐々にハードルが高くなっていくのを感じていました。そうしたハードルを取って、まずは初心者や“休眠”ユーザーにゲームを経験して楽しいなと感じてもらいたいと思いました。準備を始めたのは今年の初めくらいからです。

――楽しみ方としてはどのようなことを想定していますか?

パク・ジェフン氏: 序盤は気軽にRPGを楽しんでほしいですね。「アイオン」は1人でもある程度は進むことができると思います。レベル50以降になると「ドレドギオン」など、対人戦のコンテンツが充実してくるので、まずはゲームに慣れて、そこから本格的にコンテンツを楽しむという感じですね。

 「リネージュ2」も同じで、レベル85になるタイミングで「覚醒」できるようになるので、ちょうどプレイスタイルが変わるところになります。序盤から中盤でゲームの面白さをしっかり覚えてもらって、とことん楽しんでほしいと思います。

――はっきりと新しいユーザーの獲得をしたい動きということですね。

パク氏: やはりオンラインゲームは人がいることで楽しいものですから、それならやってみよう、戻ってみようと思っていただきたいなと考えています。今回の発表以後の反応は我々の思っていた以上に好評で、この際戻ってみよう、ついに安くなるのかといった嬉しい意見が見られます。既存のユーザーの方からも、人が増えるかもというところに期待して喜んでいただけているようです。

シン氏: 無料になることでコンテンツが薄くなったり、アイテムの課金が重くなるのでは、と心配される方もいるのですが、そんなことは考えていません。無料と有料の区間は同じバランスで見直し、アップデートしていきます。そこは今まで通りの運営方針のままですね。

 ただ、ゲームのアップデートとしてエンドコンテンツを拡張していくことはあります。無料区間は、新規や休眠ユーザーに手軽に楽しんでもらえるようなFS(ファンサポート:ユーザーと直接やり取りをしてゲームを盛り上げるスタッフ)イベントなどを行なって、これまでとは違うイベントも実施していきたいと考えています。

――無料区間の心配と言えば、不正の問題もあります。これについてはいかがでしょう?

シン氏: 無料化によってゲームを制限するようなことはしたくないので、運営としては不正対策をより強化していきます。具体的には、同じIPから一定時間内に一定数以上のログインが発生するとそれらを自動的に感知して対応をすることなどです。不正が発生するような根本的な原因はこれからも排除していきたいと思います。

――今回は無料区間の設置と共に、上級レベルへの対応として登場した新課金モデル「ゲージ」も特徴的です。無料の区間の上に「ゲージ」を付けた狙いは?

パク氏: メディア向けのカンファレンスでもお話しましたが、基本無料と月額課金の“いいとこ取り”をしたかったということです。始めたばかりの人が気軽にできる環境を整えたかったですし、一方で後半では、きちんとプレーヤースキルが必要になるようなものにしたかったので、こちらは月額課金をベースにして設計してします。

――「ゲージ」の料金はこれまでと比べて割引になっていますね。

パク氏: これはユーザーからずっと高いと言われていたというのがありました。その分だけクオリティの高いものを作っていたという自負もありましたが、この際だから値段を一斉に割引にしようとなりました。

 既存ユーザーにとってはそれだけでメリットがありますし、一見弊社の収益が減るように思いますが、新ビジネスモデルによって新しいユーザーが増えてゲームが活発になれば、既存のユーザーも今まで以上に活発になって収益をカバーできるのではないかという考えです。そのため、ギリギリのところまで値引きをしました。

――活発になること見込んでいるし、活発になってくれないと困ると。

パク氏: 困ります(笑)! 一時的に収益は減るかも知れませんが、安くなるし、遊びやすくなって、結果的に誰も損しない形になっていると思います。

シン氏: 「ゲージ」を購入すると、15日ごとに特典がもらえるという要素も入れてあります。今までのようにただ支払って終わりではなく、楽しみを入れることで、支払うこと自体も遊びに繋げていければと思います。



■ 日本発のハイブリッドモデル。今後も採用の可能性あり

日本独自のビジネスモデルがどこまで功を奏するか

――今回の新ビジネスモデルは日本独自なのでしょうか?

パク氏: 日本発のビジネスモデルです。国によって定額課金だったり基本無料だったりしますが、こうなったのには日本特有の状況が関係しています。

 韓国では今ではMMORPGからカジュアルゲームまで様々な基本無料タイトルが出てきて、もはや当たり前になっています。ところが日本では基本無料、アイテム課金制のゲームに抵抗感があって、最近でもソーシャルゲームで話題になったように、基本無料であることに対するマイナスのイメージも多くあります。

 とはいえ、月額課金のままでは人が増えませんし、それをどう解決するかというところにも発想のきっかけがありました。

――基本無料の他のタイトルへの導入は考えていますか?

パク氏: そこまでは考えていません。このモデルは月額課金をベースにしていて、月額課金の良さを残しつつどう気軽さを組み込んでいくか、という考えですので、他の基本無料タイトルに当てはめるというのは、少し違うかなというところです。

――今後のタイトルはいかがでしょう?

パク氏: 今回の施策が成功したり、マーケットの状況次第ではありえます。ないとは言い切れないですね。

――では最後に、読者にメッセージをお願いします。

パク氏: 料金体系が変わったからと言って運営の質が落ちるわけではありません。むしろこれをきっかけとして、質を高めたいと思っています。既存のお客様は、ぜひご安心して今後も長く遊んでください。

 新規のお客様には、どちらも年季の入ったゲームですが、どこにだしても恥ずかしくないゲームだということをお伝えいたします。この機会に「リネージュ2」と「アイオン」の楽しさを体験していただきたいと思います。

シン氏: コンテンツについて言いますと、両方のタイトルとも大きなアップデートを用意しています。詳しくは言えないのですが、過去のオフラインイベントでお約束したものだったり、今までに見たことのないものになっていますので、これを機にゲームをスタートさせて、新しいコンテンツの中身を知ってもらえればと思います。

――ありがとうございました。


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(2012年 11月 9日)

[Reported by 安田俊亮]