「スリーピングドッグス」、「クウォンタム コナンドラム」インタビュー

潜入捜査官としての葛藤を描くオープンワールドアクション
直感的なわかりやすさとユーモアを込めたパズル


6月5日~7日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center



 本稿ではスクウェア・エニックスブースで出展されていた「スリーピングドッグス」、「クウォンタム コナンドラム」のプレビューと、開発者のインタビューをお伝えしたい。

 「スリーピングドッグス 香港秘密警察」はプレイステーション 3/Xbox 360/Windows PC用オープンワールドアクションゲームで、日本では2012年秋に発売する。香港アクション映画へのオマージュと、仲間すら欺いてマフィアに迫るダークでハードなストーリーが展開する。

 「クウォンタム コナンドラム 超次元量子学の問題とその解法」はプレイステーション 3/Xbox 360/PC用アクションパズルで、価格は未定。CEROレーティングはA(全年齢対象)。本作はダウンロード販売で、プレイステーションネットワーク、Xbox ライブアーケード、Steamを通じて発売される。





■ 格闘とド派手な演出に注力したオープンワールド「スリーピングドッグス」

United Front Gamesで本作のプロデューサーを務めるDan Sochan氏
ブースの試遊台で、激しい戦いを体験できた

 「スリーピングドッグス 香港秘密警察」は今回のスクウェア・エニックスブースでは、プレイアブルのバージョンが出展され、さらにクローズドブースでのデモプレイが行なわれた。

 そして、それらの内容を踏まえた上で、開発元のカナダのUnited Front Gamesで本作のプロデューサーを務めるDan Sochan氏にインタビューすることができた。「スリーピングドッグス」から感じられるのは、「男達の挽歌」や、「インファナル・アフェア」など、香港ノワール映画への“愛”である。開発者達はその愛する世界をどのようにゲームへと昇華したのだろうか。

 「スリーピングドッグス」で主人公のウェイは、香港マフィアの「トライアド」に潜入しようとする潜入捜査官だ。彼はトライアドに認められるため、危険な仕事に手を染めていく。仲間さえも裏切り、大きな危険に常に身をさらしながら、ウェイは目的に向かっていく……。

 まず、プレイアブルと、デモプレイの内容をかいつまんで紹介しよう。プレイアブルバージョンでは、香港内での「生身の追跡と格闘」が目玉となる。逃げる男を追うウェイ。香港の市街は人でごった返しており、中々前に進めない。逃げる男は屋台や棚をひっくり返して逃げていく。飛び散る食材が派手にばらまかれるところなどは、香港映画そのままだ。

 ガラスの天井を突き破り、レストランのど真ん中に飛びこむことになっても、ウェイは追跡をやめない。男が広場に逃げこむと、彼を守るようにチンピラ達が立ちふさがる。そして格闘戦のバトルへと発展する、タイミング良くボタンを押すことでコンボが繋がり、グラップルやキックなどを組み合わせることでさらに派手な技が出せる。E3来場者は、ド派手なチェイスと、格闘が楽しめたのだ。

 デモプレイは「銃撃戦とカーチェイス」がテーマだった。このシーンはゲーム中盤とのことだが、完全に関係が切れたギャングの幹部を仲間と共に追うところからスタートする。部屋から出ると派手なクラブのホールに出るが、幹部の部下達が大勢待ちかまえている。ウェイは仲間と共に幹部の部下を撃ち倒す。ウェイがカウンターなどの障害物を飛び越すと「スローモーション」になる。「バレットタイム」のような効果で、テンポよく複数の敵を始末することができる。

 そしてクラブから出て路上での派手な撃ち合いの後、カーチェイスとなる。ここでは仲間が運転する車に乗り、ウェイは窓から身を乗り出して追跡者を撃つ。ここで面白いのが、追跡者のタイヤを撃つと、まるで車が爆発したかのように浮き上がるところだ。結果、車が木の葉のように舞い続けるシーンが連続する。このド派手な演出が、チェイスシーンを一層面白くしてくれる。ついにはウェイ達の車も回転し仰向けになってしまうが、ウェイは車から這い出し追跡を続行する……というところで、デモは終了した。

 デモプレイの後に、Dan Sochan氏にインタビューを行なった。本作はまだ北米でも発売前であるが(北米では8月発売)現在のところ、欧米メディア、ユーザー共に「スリーピングドッグス」の評判は上々だという。特に格闘要素が好評だと言うことだ。格闘攻撃は技を増やすことができるほか、強化することもできる。

 そしてスキルツリーにより、カンフー、マーシャルアーツ、レスリングなど様々な体系の技を取り入れて、自分なりの戦い方を育て上げることができるという。さらに、壁の近くだと敵を壁に叩きつけたり、火を吹くグリルに相手を押しつけたり等周囲の環境に合わせて戦いのバリエーションが広がるというところに、ユーザーが興味を持っていると言うことだ。

 ゲームでは「コップポイント」、「トライアドポイント」があり、コップポイントは市民を助けるなどの警察的な行動をしたとき、トライアドポイント反対に戦いに市民を巻き込むなどで加算される。それぞれのポイントで覚えられるスキルが違う。また、服や拠点もカスタマイズ可能で、服の場合は戦闘などに役立つ特殊なボーナスが得られる場合も。

 車に関しては改造などはできないが、レースなど様々な要素がある。本作には「ニードフォースピード」に関わった開発者もいて、かなり作り込まれている。ボートなど65種類以上の乗り物が登場する。

 自由度の高さは本作の大きなセールスポイントだ。警察とトライアド常に2つの間で揺れるウェイだが、ストーリーの分岐要素はない。驚きの展開も用意されているが、ストーリーラインは1つだ。仲間を欺きながら、マフィア壊滅を狙う緊張感のあるストーリが楽しめるという。

 メインストーリーは極めてシリアスだが、サブミッションにはユニークなものも多い。結婚式を手伝うため、ウエディングケーキを運んだり、特別な花を見つけたりもする。ウェイ自身もガールフレンドを作ったりできる。「私達がリスペクトする香港ノワールにもユニークな要素もあります。様々な要素を入れることで、よりシネマティックな作品になると考えました」とSochan氏は語った。

 Sochan氏が特にお気に入りのシーンは、走ってる車から車に飛び移るアクション要素だという。これはトライアドポイントを貯めて習得できるスキルで、走ってる車に次々と飛び移り、中の運転手を蹴り飛ばす。路上に落とされた犠牲者はごろごろと転がっていって遠ざかっていく。こういった演出も含めて特に好きだとのこと。ゲームは進めていくと、どんどん派手に、過激になっていきそうだ。

 最後にSochan氏は「このゲームは開発に4年と半年かかりましたが、ようやく世に出せることで、とても興奮しています。現在はバグフィックスを行ない、完成へ磨きをかけています。特に格闘に注力した、他のオープンワールドではない部分に期待してください」とユーザーに語りかけた。  


香港ノワールへの愛に満ちている作品だ
格闘、ドライブ、激しいアクションに注目




■ ゲーム性を重視し、分かりやすいアートデザイン「クウォンタム コナンドラム」

AIR TIGHT GAMES「クウォンタム コナンドラム」のアートディレクターを務めるKasey Quevedo氏
4つの次元を切り替えるのは一見複雑だが、徐々に学びながら進められる

 「クウォンタム コナンドラム」は米Valve Softwareの「Portal」を手掛けたKim Swift氏が率いるAIR TIGHT GAMESの開発するアクションパズルゲームだ。[ふわふわ][おもおも][のろのろ][さかさま]の4つの次元を切り替え、様々な仕掛を突破していく。

 スクウェア・エニックスブースではプレイアブルのデモバージョンが出展されていた。目の前にはガラスがあって、その向こうには箱を吐き出し続ける装置がある。ここではまず[ふわふわ]の次元に切り換え、箱の飛距離を伸ばし、箱がガラスにあたるタイミングで[おもおも]に切り替えることでガラスを破ることができる。

 [さかさま]の次元を使うと、物体が“上に落ちて”いく。ノーマル状態で物体を落下させた場合、連続して切り替えることで物体が上下移動を繰り返し、こちらに向かって移動してくるようにすることもできる。ここからさらに、落下速度がゆっくりになる[のろのろ]を使って、物体を足場として使うこともできる。コツを覚えることで、どんどん先に進むことができるようになる。

 次元を切り替えると世界全体の見た目が変わるところも面白い。箱は通常空間ではダンボールで持ち運びができるが、[おもおも]にすると“金庫”に変わり、ずしりと重くなる。重いものを置くことで作動するスイッチを押すときなどは、ダンボール状態で運び、スイッチの上で金庫に切り替えて押す。視界全体のオブジェクトも、[ふわふわ]だと壁や床も柔らかそうなものになり、[おもおも]だと鉄製の物になる。デザインセンスも面白い作品だ。

 今回は「クウォンタム コナンドラム」のアートディレクターを務めたKasey Quevedo氏に話を聞くことができた。Quevedo氏はSwift氏がもつ「ゲームのビジョン」を実現させるためのコンセプトアートを手掛け、そこからブレインストーミングを行なう“材料”を提示し、その上で作品の方向性をきちんと管理する、というのが、本作におけるアートディレクターの役割だという。

  「クウォンタム コナンドラム」は“幅広いユーザー向けに作る”、“簡単に理解でき、楽しめるゲームとする”、“ユニークな要素を入れる”という3つのテーマを盛り込んで開発されている。Quevedo氏は「アートがゲームプレイを阻害しない」ということを気をつけたという。あくまで中心に置くのはゲーム性であり、“面白さ”にフォーカスすることを命題とした。また、「Portal」とは全く違う見た目の作品にするという点も気をつけたとのことだ。

 見た目が変わっても、ユーザーを混乱させてはいけない。テーブルは次元が変わって見た目が変化してもユーザーにテーブルであることを認識させ続けなくてはいけないのだ。次元を切り替えたことをユーザーがはっきり認識できる事に加え、ゲーム性としては、オブジェクトそのものの役割は変わらないという、難しいバランスを要求される“視覚情報”は特に試行錯誤を重ねた。「軽い物体はダンボールが良い」というように、見た目ではっきりと物体の役割がわかるように気をつけて開発を進めていった。

 作品のデザインラインとしては、「子供の絵本」のような、暖かく、かわいらしいものが取り入れられている。この方向性は幅広いユーザー向けを意識したためだ。もちろん子供だましのゲームではなく、後半はハードコアゲーマーもうならせるような、やり応えのあるステージも用意されている。絵本風の絵柄は仕掛やものの役割をシンプルにユーザーに説明するのにも有効だったという。「4つの次元を組み合わせるというと複雑に感じるかもしれませんが、最初は2つくらいの次元を組み合わせコツをつかませるといった、ステップアップを意識した構成にしています」とQuevedo氏は語った。

 Quevedo氏は、各要素を組み合わせてパズルを作っていく際に、その組み合わせの面白さを改めて認識できたという。ちょっとしたオブジェクトの変化で、まったく違うパズルになる。また、パズル要素だけでなく、飾りとしてのオブジェクト、例えばパイプを人の顔を思わせるようなものにしてみたり、ふんだんに面白い要素も入れており、スタッフの遊び心も楽しんで欲しいという。

 アートディレクターとして、Quevedo氏のお気に入りは[ふわふわ]の次元。部屋全体がぬいぐるみのようなような柔らかい素材に変わり、「実際にあれば昼寝をしたくなるような部屋」になっている。この他にもあちこちに飾ってある「絵」はデザイナーの力作なので、見て欲しいとのことだ。

 「クウォンタム コナンドラム」は50以上のパズルを解いていく。解放が複数あるパズルも用意されており、また1つの部屋が分からなくても他の部屋を先に挑戦するという遊び方もできるため、一本道のゲームにはなっていない。初心者へのアドバイスとしては、「複数の次元を組み合わせられる」ということを、常に意識し、試行錯誤していくことだとQuevedo氏は語った。周りをよく見て、いろいろなパターン、組み合わせを試す。“ひらめき”によるパズルを解く楽しさをたっぷり楽しんで欲しいと言うことだ。

 最後にQuevedo氏はユーザーへのメッセージとして、「とにかく“探険”を楽しんで下さい。パズル要素だけでなく、絵やオブジェクトからは博士のこれまでの人生を感じさせる“歴史”も感じさせるようにしています。そこかしこにユーモアを込めていますので、色々発見してみてください」と語った。


4つの次元を切り替えると、目の前の風景そのものが変わる奇妙な味のある作品だ

Sleeping Dogs (C) 2012 Square Enix Ltd. Published by Square Enix Co., Ltd. 2012. Developed by UNITED FRONT GAMES. SQUARE ENIX and the SQUARE ENIX logo are registered trademarks or trademarks of Square Enix Holdings Co., Ltd. SLEEPING DOGS and the SLEEPING DOGS logo are registered trademarks or trademarks of Square Enix Ltd. Sleeping Dogs uses HavokTM: (C) Copyright 1999-2012. Havok.com Inc. Dolby and the double-D symbol are trademarks of Dolby Laboratories. This software product includes Autodesk(R) Scaleform(R) software, (C) 2012 Autodesk, Inc. All other trademarks are the property of their respective owners. All rights reserved.

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※画面は開発中のものです

(2012年 6月 9日)

[Reported by 勝田哲也]