Game Developers Conference 2012レポート
【GDC 2012】comcept稲船敬二氏が日本ゲーム市場を“叱咤激励”
自分自身がヒーローになる! 「The Future of Japanese Gaming」
GDCも3日目に突入し、1時間1コマで1つのテーマを扱う通常セッションがスタートした。今年も様々な日本人スピーカーの講演が予定されているが、まずは日本のゲーム業界では数少ない辛口のビジョナリストとして知られる稲船敬二氏のセッションをお届けしたい。
稲船氏は講演では、台本を用意せず、思いつくままのフリートークを好むが、今回はメッセージを正確に伝えるのと、通訳がキッチリできるようにあえて台本を用意したという。ただし、デモのようなものは一切なく、スライドも稲船氏のコミカルなイラストのみで、ただひたすら喋りまくるといういつものスタイル。
今回は独立してから初のGDCでの講演とあって、非常にメッセージ性が強く、内容は激烈で、稲船氏の数ある講演の中でも非常に興味深いものだった。その稲船氏のメッセージを寸分違わず日本のゲームクリエイターやゲームファンに伝えるべく、若干イレギュラーではあるが、今回はその発言をそのまま掲載する。読みやすくする以外は内容に手を加えていない。ぜひ、発言そのもののエネルギーを感じて貰いたい。
■ 「日本は負けを認め、勝つために何をすべきなのか学ぶべき」
comcept代表取締役社長稲船啓二氏 |
「JAPAN “GAME OVER”」という刺激的なスライドからスタート |
日本の方には、耳の痛い話をせざるを得ないと思っています。あと、日本のゲームが大好きな方も多いと思いますが、その人にもやだなと思うかもしれません。ですが、今回は日本の状況をキッチリお話ししたいと思っています。
日本のゲームはどうなってしまったのか。このまま衰退するのか、それとも復活するのか。日本のゲームクリエイターはどう考えているのか、どこへ向かっているのか。私自身が考える、日本のゲームの未来についてお話ししたいと思います。
数年前、私自身が“日本のゲームは死んだ”と発言しました。日本のクリエイターや経営者から総スカンを食って怒られたものです。「日本のゲームは死んでない、いい加減なことを言うな」と。しかし、今は稲船の言葉は直接的に批判する人は減ったと思います。予言というか、すでに当時そういう状況にありましたが、いまの日本の現状を予言しただけですが、今は稲船の言葉を認めざるを得ない状況になっているのではないか。当時、海外でも反響を呼んで、メディアの取材でもその部分について質問を受けました。海外の反応は、「そうだね」と言う声と、「そうじゃない」という声が半々ぐらい。そのあたりを見ると、海外のほうが判断が冷静だったのではないかと思っています。
稲船がなぜそんな発言をしたのか。カプコンは当時、日本のゲーム会社の中で、任天堂を除いて、唯一といっていいぐらい海外に向けたゲーム作りができていた会社だったとおもいます。海外を意識してグローバル視点で開発をしていたことが良かったのですが、なのに稲船はそういう発言をしました。それはグローバルで見ていたからこそ出来た発言だと思っています。世界で勝つことを考えれば考えるほど、日本のゲーム業界に足りないものが見えてきた。日本のゲーム業界に喝を入れるために、あえてそのような発言を行ないました。
じゃあ日本のゲーム業界に足りないモノは何ですか。それは簡単なことです。“勝つ”という意識が足りません。勝つために何をするのか、どんな努力が必要なのか。そんな当たり前のことが日本は足りないのではないか。かつて日本のゲームは、勝つと言うことに慣れていて、勝者の道を歩んでいました。しかし、いつのまにか、勝者だと思っていた自分たちが敗者に変わっているということを気づかずに、歩き続けていると僕自身思ってます。敗者だと認めずにいることが日本の悲劇ではないかと感じています。世界への視野を広げることを拒んだ結果、井の中の蛙になってしまったのが日本のゲーム業界だと思います。
勝つためにやらなければならないことは、負けを認めるということです。やり直すという覚悟がいまもっとも重要だと思っています。当然人間はプライドがありますが、プライドにしがみついていても勝てません。勝つためには勝ちたいという意識ではなく、勝つというもっと強い意志。負けないではなく、勝ちたいという意志が必要になります。大きな覚悟がないと、勝利はありません。何年ものあいだ日本は勝ち組の人生を歩んできました。うぬぼれてしまうと勝つという簡単な言葉の意味さえわからなくなってしまうのではないかと思っています。大手にいた僕自身はその状況をずっと見てきました。恥ずかしい話ですが海外にきて思うことは、日本のゲームは過去の思い出になりつつあるということ。ビートルズの音楽は最高だった、スティーブ・マックイーンはいい役者だった。1963年型のコルベットは素晴らしい。これは全部思い出です。素晴らしいのは確かですが、でも過去の思い出ですね、これは。それと日本のゲーム業界は変わらなくなっているではないか。
日本は、ちょんまげをして、着物を着ていた鎖国時代と変わらなくなっている。海外から日本を見ると、時代遅れな部分がストレートにつたわってきます。ただ、思い出でビジネスができる範囲は限られます。ビートルズは4人揃って新曲出せません。スティーブ・マックイーンも新しい映画にはでられない。ただ、DVDで観るだけです。日本でも新しい作品がでてこないのはそういうことではないかと思っています。日本のゲームも過去の栄光におぼれてると、少しだけいじっただけのHD版や移植版ばっかり出さなければならなくなる。それをユーザーは求めてません。新しい作品を求めているはずです。
私自身、こういう所に来ると「Mega Man!」「Mega Manが大好き」(編注:稲船氏の代表作「ロックマン」の英題)といってくれて大変嬉しいです。「Mega Man」は、自分自身誇りに思っていますし、いまもセッション前にサインを求められて、つい「Mega Man」を描いてしまいました(笑)。でも、あくまでこれは過去の作品であり、過去へのリスペクトだと割り切っています。だから、僕自身うぬぼれたくはありません。稲船敬二に期待してくれるユーザーは「Mega Man」もいいが、「Mega Man」を超えるゲームを期待してると思っています。だから、その覚悟が必要なんだと思っています。
甘やかされた日本。人間は1度楽をすると、2度と苦労したくありません。昔、こんなことがありました。カプコン時代、プロデューサーに成り立ての頃、15年以上前の話です。「Mega Man Legends」の制作に関わりました。「Mega Man」のプレステの作品、3Dで作る新しいものです。内容も自信ありましたし、私自身とても気に入ってる作品です。しかし、プロデューサーとしては道は険しかったです。「Mega Man」自体、たくさんのものを出してきて、あまり売れなくなっていました。だから、その作品に対する期待はそれほど高くありませんでした。だから、「Mega Man」の新しい作品を出すと発表しても、それほどプレスやゲームファンも期待してくれなかった。インタビュー依頼もあまりありませんでした。だから地道にプロデューサーとしてがんばって作品を売っていこうとしました。世の中は甘くなくて、販売実績的には悲惨なものでした。いまでこそ「Mega Man」ファンの間では語り継がれる存在になりましたが、当時はそうではありませんでした。稲船のゲーム人生の中では、最大の失敗であり、最大の宝であります。
そして「Resident Evil 2(バイオハザード2)」が稲船の今を作ったといっても過言ではありません。どうして? なぜ? 成功したから? 作品の出来が良かったから? メジャーだから? 色んな理由があると思いますが、全部違います。これは前作の大ヒットを受けて作った作品で、ご存じのように三上真司がディレクションをした作品です。彼にディレクションに集中してもらうために、私がプロデュースをして、世界で多く売るために頑張りました。前作の「Mega Man Legends」ではなかなかページが取れなかったが、「RE2」の時は何もいってないのに、どんどんインタビューさせてくれと依頼が来ました。前作が大ヒットしたものだから、会社としてもこれにかける想いは大きくて、プロモーションコストも簡単とは言わないが、割と簡単に手に入りました。それまで、期待されていない作品にかかわった稲船は、この期待される作品との違いにびっくりして、「こんなに楽にプロデュースできるんだ」という気持ちになりました。もし、最初がこの作品のプロデューサーだったら、これが当たり前で、プロデューサーとして仕事することは簡単だと思ったに違いありません。日本語では勝ち馬に乗ると言います。
ただ、楽はできますが、本質は見えてきません。私自身、最初の「RE」の苦労も見てきています。1度は制作中止を宣告されて、誰からも期待されず、誰からも売れないと思われていました。でも、三上真司はそうは思ってなかった。彼の会心の一撃だったと思います。その三上の会心の一撃にただ乗っかっただけで、いまの人生があれば、きっとこんな話はしていません。「Mega Man Legends」があって、「RE2」があるから、いまの自分がいる。
学んだのはブランドの確立と、ブランドに絶対に頼りすぎないことです。comceptのマスコットキャラ。ブタです。覚えておいてください(笑)。人はブランドに惹かれるものです。それは仕方がありません。大ヒットゲームの続編にはブランドがあります。そんな作品にユーザーは注目します。努力は必要ないとはいいませんが、最小限で済みます。ブランドのない作品や、人気のない作品は、売るために多大な努力が必要になります。もしブランド力があって、多大な努力ができればどうなるか。簡単ですね。それは成功に最も近いということです。日本にはまだブランド力がかすかに残っています。ないのは多大な努力だけ。過去のブランドに頼って、楽して努力を怠ったら、うまくいかないのは当たり前です。その結果、現在の日本のゲームがあるんだとおもいます。いま日本のゲーム業界の中で中心になりつつある人は、単に勝ち馬にのっているだけかもしれない。そういう認識をしてみてください。
日本の中で、世界で戦える作品を作った人たちは、先輩達なんだと思ってください。日本には素晴らしい先輩達がいっぱいいます。その先輩達のおかげでいまの自分たちがいます。いま日本のゲーム業界を牽引する人たちが考えなければいけないのは、ブランドの維持ではなく、発展させ、再構築する事だと思います。Appleが過去の栄光のPCとかOSとか、そういうものに縛られていたら、きっと今はないと思います。ジョブズはブランドの維持ではなく、発展を選んだ結果、いまのAppleがあると思います。ジョブズなき今、Appleはブランドを発展させ続けることができるかが問われています。日本のゲーム業界も、ブランドの発展、ダメになったモノの再構築、これが求められていることに早く気づいてほしいと思っています。ブランド力が完全に消えてからでは間に合いません。残された時間は限られています。日本のゲーム業界は死んだと警告したときに、いち早く気づくべきでした。
苦しいときに苦難を選べるかがポイントだと思います。良いときにやるのは簡単です。お金がいっぱいあるから少しぐらい冒険しても損しても大丈夫。しかし、そんな考え方で成功するとは思えません。覚悟が足りないとダメです。楽と苦難、そんな選択の分かれ道に人間は常に立たされています。そんな場面で大半の人は楽を選ぶ。あたりまえの話です。しかし成功する人は、そんな場面で楽を選んでいません。苦難の先にしか、成功がないということを知ってるか、知らなくても感じ取っています。それが勝つということです。日本に足りないのは勝つという意識。成功への執念です。成功のままバトンを渡された人が歩んでいる悲劇かも知れません。苦難を乗り越える覚悟も勇気も、経験がなければ常に不安の中にいると思います。
シンプルに考えてください。勝ちたいのか。成功したいのか。いまのままでいいのか。世界とのレベル差を悔しいと思わないのか。俺は勝つ、絶対に勝つ、苦労なんか気にしない、勝つためにはなんでもやってやる。そんなふうに思うだけで僕はいいと思います。ゲーマーがゲーム内の主人公に何を求めているか。ゲーム内で何をかっこよいと思っているか。ゲームの主人公が楽をするゲームはおもしろいですか? 「RE」の中で、レオンは楽をしていますか? クリスは楽を選んでいるのですか? そんなゲームは見たことない。常に苦難に立ち向かう。それは映画でもゲームでも一緒です。苦難に立ち向かった人が勝利を収めるからゲームはおもしろいんです。ゲームコントローラーを持った自分自身も苦労しています。「Mega Man」に相当やられたひとはいっぱいいると思います。あんな難しいゲームをクリアするわけですから、相当苦労したはず。自分の理想のキャラ設定をすれば、あなたたちもピンチを乗り越えられるのではないでしょうか。
楽を選択肢続ける人生はつまらないと思います。苦難があるから乗り越えられたときの喜びがあります。苦労は乗り越えたときのためにあります。私も1年前苦難を選びました。大手のカプコンを辞め、新しい道を歩き始めました。たぶんカプコンに残っていた方が、一時的には楽だったと思います。それは仕事の質と報酬のバランスから言えることです。このぐらいでいいと割り切ればきっと楽だったと思います。でも私自身、そんな割り切りはできなかったし、楽を選びませんでした。カプコンの900人の部下を捨てて、たった20人の会社を立ち上げました。
いま、その苦難を選んだことが、成功だったと思っています。すごくのびのびと楽しく仕事をしています。コンテンツのコンセプトを考えるcomcept、ゲームをとにかく作っていくintercept、この2社を立ち上げて、縄張り争いのない世界のなかで、いろんなことをやっていける会社になっています。新しいことをやれる会社です。とにかく、新しいと思ったらすぐにやれる会社。何にもしばられず、誰からも邪魔されず、ゲームも、新しいハードが出た、そのときやりたいと思えばやれるし、新しいゲームを考えたら、そのときがチャンスと思える会社です。
カプコン時代、プレステができたときに「RE」が出て大ヒットしました。PS2のときに「鬼武者」が出て大ヒットしました。PSPが出たときに「モンスターハンター」がでてこれも大ヒットしました。そしてXboxが出たときに「デッドライジング」、「ロストプラネット」が出て、これも大ヒットしました。これらは新しいハードに合わせた新しいフランチャイズです。新しいハードがでたときに、新しいことをやるのがチャンスです。新しい会社で、新しいことをやるチャンス。ニンテンドー3DSが出たので「海王」というタイトルを発売に向けて作っています。ソーシャルゲームがこれだけ世の中にできるのでソーシャルゲームにも挑んでいます。新しい作品を、新しいハードでやっていく、それが勝ちパターンだと思っています。
何がいいたいかというと、日本に必要なのは、「初心に返る」ということ。25年前NES(ファミコン)を作っていた頃の私たちに戻ってほしいということです。経営者も開発者もうぬぼれてなかった時代です。とにかく無心でヒット作を作ることを考えて欲しいと思います。その頃の勝つことの貪欲さを思い出して欲しい。その頃を知ってる人はたくさんいる。年をとって、家庭を持って、家のローンをかかえて、苦労している人たちかもしれない。でも、勝つという喜びを忘れてはいけません。守るだけでは何も変わりません。勝つためになんでもしてほしい。
私は韓国によく行きます。大好きだから。日本から近いし、とてもパワフルな国だから。いま、世界的には日本企業よりも韓国企業のポスターをよく見ます。昔はスポーツイベントがあると、だいたいトヨタ、ソニー、パナソニックばっかりだったが、サムスン、LG、ヒュンダイばっかり。韓国は勝つという意識を強く持った国だと思っています。日本ではKポップといって韓国のスターが大活躍しています。彼らは、勝つために努力を惜しみません。日本語を勉強して、ダンスや歌のレッスンをして、すごく一生懸命にしている。日本のスターもみならうべきですね。
日本と韓国の間には過去の歴史的問題もあって、いろいろ交流ができなかった時代もありますが、韓国の人たちは勝つために問題をいったんおいておいて、日本を認めて、学んで、日本でさらに商売する、それは勝つためにやっているんだと思います。その結果、彼らは日本を超えてしまいました。じゃあ日本はどうなのか。日本には韓国の製品がほとんどない。さっきいった、サムソン、LG、ヒュンダイ、皆無です。韓国人のスターは受け入れたが、まだ足りないです。韓国の電化製品を受け入れる力、余裕がありません。まだまだ時間がかかるかもしれません。そうやっているうちにグローバルスタンダードから置いて行かれてしまうのではないかと思っています。勝つという意識を、韓国のように考え、取り戻せば、自ずとグローバルスタンダードが見えてくると思います
ゲーム業界だけでなく日本中に必要なのは「勝つ」という意識です。ここアメリカでも忘れないでほしいと思います。ずっと勝つ、勝ち続けうという意識をもってほしい。そうすればあなたたちが大好きなヒーローでいられると思います。もちろん日本からも、また新たなるヒーローを私自身が出してみたいと思います。日本に足りないものはヒーローです。そのヒーローに私自身がなって、皆さんと一緒に世界中のみんなと一緒に闘っていきたいと思っています。協力してもらえればありがたいと思います。今日はこういう形でお話しさせてもらいましたけど、日本にたりないものを日本人は理解して、がんばって世界に立ち向かっていってほしいと、叱咤激励をしたいと思います。
質疑応答ではいくつか厳しい質問も飛び出し、さすがの稲船氏も苦笑いで防戦に回るケースの方が多かった |
講演が終わるとサインや記念撮影を求める列ができた |
残り時間はQ&Aが行なわれたので、こちらもそのままの形で収録しておきたい。
Q:稲船氏がカプコンを去ってから、世界中の「Mega Man」ファンがこのシリーズはどうなってしまうんだと絶望してると思うが、どうなるのか。新しい会社で新規IPを立ち上げるときのポイントはどのようなものか教えて欲しい。
稲船氏: 「Mega Man」は僕自身が作ってきたが、カプコンの作品なので、その権利を持っていないのが正直なところ。僕自身も「Mega Man」のことを1番心配していますし、子供だと思っています。できればちゃんと育てたいと思ってるが、それを決めるのはあくまでカプコンで、カプコンの意思に任せようと思っています。comceptで何をするかというと、カプコンでできなかったことをしたい。同じ事をしてもカプコンには勝てないので、何をするにしてもカプコンができないことやスピードを大事にしてやっていきたいとおもっています。
Q:日本にもアメリカで勝つことを目指しているメーカーはいると思うが、稲船氏から見て、勝つためのハングリー精神を持ってるデベロッパーはいると考えているか?
稲船氏: 難しい質問をしますね(笑)。これを言うと敵を作ってしまうよね。ここに挙げなきゃそういう意識持ってないと思ってるのかと怒られちゃう。攻めろと言っていますが、ここは守りたいと思います(笑)。
Q:最近では日本のゲームが死んでる理由のひとつは予算が欧米より小さいことが上げられると思うが、逆に欧米ではたくさんの予算を使いすぎて失敗して、スタジオごと倒産するという話もある。バジェットは開発会社が意識すべきだと思うか?
稲船氏: 当然です。ここが開発が甘えた部分。ここが日本の開発の甘えた部分。安く作れば、たくさん儲かるというわかりやすい理論がある。「Angry Birds」の開発費はいくらだったんですかという話。デベロッパーはいいものを作るだけじゃなくて、おもしろいゲームはおもしろい。ゲームデベロッパーの経営者はいかに安くつくれるかということを考えるべき。安くて良いものを作るということを考えないとパブリッシャーはお金を出してくれません。そうしないとコンソールゲームは死ぬと思います。コンソールゲームはお金が掛かるので、コンソールゲームを生き残らせたいのであればバジェットを考えるのは当たり前の話です。
Q:稲船さんが正直に語るということで、心から本音を語ってくれてありがとう。生で聞ける機会はあまりないのでありがたい。ただ、稲船さんはカプコンを去ってから、「日本は負け、死んでいる」という発言を繰り返しているが、発言の根拠となる具体的なデータがあるのか?
稲船氏: データはありませんが、やっぱり新しい作品がでてこないという事実があります。アメリカでもそうですが、クリエイターにそうした機会を与えていないのがあると思います。それは経営者と開発側の相互の信頼関係がなければできないことです。なかなかそこに踏み込めない。クリエイターも甘えていて何十億ないとできないという言い方をしますし、経営も何億以内で作れといったりして、噛み合わないところがあります。海外ではまだすごくお金をかけているタイトルはあるが、日本はほぼ壊滅です。それを考えていくと、経営者と開発者を信頼関係を高めるか、僕のように開発者が経営者になるような方法を採る必要があると思います。
Q:日本のゲーム業界も勝ちたいという気持ちを持っている人はまだたくさんいると思うが?
稲船氏: 勝ちたいじゃダメなんです。勝ちたいと勝つということは違う。たばこを止めたいと止めるは違う。止めたいでは止められないし、勝ちたいでは勝てません。今日は言いたいことを言えたのでスッキリした気持ちで帰れます。皆さんにどれだけ響いたかわかりませんが、良い話ができたのではないかと思っています。久々に絵を見せることができたので良かったなと思ってます。ありがとうございました。
□「GDC 2012」のホームページ(英語)
http://www.gdconf.com/
(2012年 3月 8日)