「ファイナルファンタジーXIV」パッチ1.20体験レポート
蛮神バトルはモーグリの王! バトルアクションも全面刷新
12月16日以降に最初にログインすると、課金手続きの開始が案内される |
ついに課金開始日が2012年1月6日に決定したWindows用MMORPG「ファイナルファンタジーXIV(FFXIV)」において、大型アップデート「パッチ1.20」が12月16日に実装された。
「パッチ1.20」は、課金開始前としては最後となる大型アップデート。本作のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏が、このアップデート後の「FFXIV」を体験してから、課金するか否かを判断してほしいとフォーラムでコメントしていたように、「FFXIV」にとっては大きな分岐点といえる。
本稿では、「パッチ1.20」で実装された新要素や変更されたシステムを、実際に体験した感想をまじえながら紹介する。
■ アクションが全面刷新されたバトルシステム
前回の「パッチ1.19」で実施された計算式の一新に続き、今回はアクションの全面刷新が行なわれた。アクション名こそ、一部以前のものを受け継いでいるものの、全く別のゲームといっていいほどの変更内容となっている。
アクションパレットの編集画面も刷新。以前より使いやすくはなったが、マウスでのドラッグ&ドロップはできない |
コンボ条件を満たすとアクションアイコンの縁が明るい紫色に光り教えてくれる |
ソーサラークラスも攻撃魔法をコンボさせることで威力アップ。いきなりぶちこむとヘイト(敵視)が上がりすぎるのでタイミングには注意したい |
ゼーメル要塞はパッチ1.20で難易度が若干下がった印象だ |
まずファイタークラス(剣術士、斧術士、格闘士、槍術士、弓術士)は、従来の場面に応じてアクションを使い分けるタイプから、最大4つのアクションをつなげるコンボタイプに変更。各アクションには、攻撃方向(正面、側面、背面)や前提アクションなどがコンボ条件として設定されており、これを満たすことでダメージアップやバインド(足止め)などのコンボ効果が発動する。また、コンボ中は、2段目以降のアクション使用時にTPを消費しない仕様となっているため、きちんとコンボをつなげていくことが重要になる。
本作でいう「コンボ」とは、格闘ゲームにあるようなポンポンポーンと早いテンポで叩き込むものではないし、姉妹作「FFXI」の連携システムとも異なる。次のアクションを発動するまで10秒ほどの猶予が設けられていて、コンボ条件に合わせて順番につなげていくといったシステムで、前提条件さえ満たしていれば、コンボ中にターゲットを変更することもできる。コンボ効果にはダメージアップだけではなく、ヘヴィ(移動速度低下)やバインド(足止め)といったCC(クラウドコントロール)効果が設定されているものもあり、従来より戦略性の高い戦い方が可能となる。
コンボの長すぎるとも思える猶予は、途中に「捨身」など補助スキルを挟んで強化したり、「キーンフラーリ」でリキャストタイム(再使用までの時間)を短縮するといったことも想定しているためだろう。攻撃方向などの条件などから、筆者が以前プレイしていた「Dark Age of Camelot」の攻撃スキルに近いと感じたものの、オートアタックとアクションが別になっている分、柔軟な運用ができそうな感じだ。
なお、「パッチ1.19」で大幅に弱化された弓術士は、コンボによってやや火力を持ち直した印象。ただし、コンボ初弾の条件が“距離8メートル以上”となっており、ソロよりもパーティーでの活躍を指向しているようだ。
ソーサラークラス(幻術士、呪術士)は、幻術士に土と風のダメージ魔法と回復(ケアル系)、バフ(プロテス、ストンスキン)、呪術士に雷、火、氷のダメージ魔法と再配置され、ヒーラー(回復役)とダメージディーラー(火力役)へと明確に役割分担が行なわれた。一方、エレメント(火、水、氷、土、雷、風)以外の星撃や霊撃などの属性魔法やデバフ魔法(弱化魔法)はなくなり、シンプルに整理された。
そして魔法にもコンボシステムが採用され、サンダー→サンダラ→サンダガというように、上位魔法へとつなぐことで、ダメージが大幅にアップできるようになった。ただし、ファイタークラスと違い、コンボ中であってもMPは消費するし、途中で魔法をレジストされるとコンボは途切れてしまう。安定感こそないものの、決まったときの瞬間最大火力がソーサラーの魅力といえる。
実際にさまざまなコンテンツでモンスターと戦ってみた感触としては、ファイターの範囲攻撃が一気に減ったことで、大量に釣ってまとめてフルボッコといった大味な戦い方よりは、バインドやスリプル、リポーズなどを使って1匹ずつ集中攻撃で倒すといった戦術にシフトしていきそうな気配を感じる。ただ、呪術士のファイア→ファイラ→ファイガはすべて範囲攻撃なので、呪術士の火力でまとめて倒す戦術も健在だ。
また、全クラスに言えることだが、まだアクションの数が少なく、バリエーションに乏しい印象を受けるが、パッチ1.21で実装されるジョブの先鋭化を見据えた変更と思われる。あと、最初から増やしすぎてしまうと、バランスをとるのに時間がかかりすぎるという事情もあったのかもしれない。
■ 新コンテンツ ~モーグリの王と対決! 「第七霊災」へと進むクエストも登場
「パッチ1.19」の「真イフリート討滅戦」に続き、「パッチ1.20」では新たな蛮神バトルとして「善王モグル・モグXII世 討滅戦」が登場。「真イフリート」と同様に、特定のクエストを進め、インスタンスエリアで戦うコンテンツで、ここでしか手に入らない装備アイテムが獲得できる。
「善王モグル・モグXII世 討滅戦」は、これまでの“1対多”のボス戦とは違い、8匹のモーグリと戦う“多対多”が楽しめるバトルコンテンツ。各モーグリは回復役や強力な範囲攻撃を使うモーグリ、他のモーグリを一定時間無敵化するモーグリなど、それぞれタイプが異なるため、倒す順番を考えたり、バインドやスリプルなどで止めるといった、パーティー全体での戦略的な戦いが求められる。実際にプレイしていても、これまでのコンテンツにはない楽しさで、吉田氏の目指す多対多への意志が感じられた。
公式ツイッターによると、パッチ当日の12月16日15時18分に北米のプレーヤーによって達成されたという。「真・イフリート」では数日かかった最速クリアタイムがさらに更新されたことになる。
現時点での攻略用のパーティー構成は、剣術士1人、弓術士5人、幻術士2人がベストな情勢だが、攻略パターンの構築が進み、パーティーメンバー募集の要件もだいぶ緩和されているようだ。新コンテンツが実装されるたびに、使えないクラスが出てくるため、フォーラムでもたびたび話題になっているが、これはほとんどのMMORPGでも存在する問題であるし、アーマリーシステムがある分、「FFXIV」ではマシといえるのではないだろうか。
モーグリたちのコミカルなムービーから始まる「善王モグル・モグXII世 討滅戦」。小さいモーグリたちと戦っていると、メメント攻撃とともに巨大な王が出現。バトル中に流れるBGMは必聴だ |
さて、そんな「善王モグル・モグXII世 討滅戦」だが、公式フォーラムでも話題となっている、その前提となる要石を集めるクエストにも触れておきたい。このクエストでは、5種類のノートリアスモンスター(NM)を倒して、5つの要石を集めることになるのだが、このNMがいるエリアには、ガーディアントレントという大きな木のモンスターが多数うろついている。
このモンスターは、走っているプレーヤーを見つけるとアクティブになり、問答無用で9,999ダメージという即死攻撃を繰り出してくる。これだけなら歩けばいいのだが、その道中にアクティブなモンスターが配置されており、これに攻撃されるとガーディアントレントがリンクし、即死してしまうという寸法だ。
クエストのゲーム性そのものは楽しいと評価している人も多いのだが、これを「善王モグル・モグXII世 討滅戦」に勝利するたびに再度やり直すのは、あまりにもつらいと不満を漏らす人も多い。吉田氏も不満の意見が多いことを受けて、ガーディアントレントや要石の仕様に関して見直すことをフォーラムでコメントしており、近日中には変更が入ると思われる。
大きな木のモンスター「ガーディアントレント」。これだけ大きなモンスターが細い道に密集し、視界をふさぐことも。戦闘モードで移動すると走るため、移動するときはパッシブモードに戻らなくてはならない | 討伐の報酬でもらえる槍。かわいいモーグリがくっついている |
■ 新機能「アイテムサーチからの直接購入」と「プレーヤーサーチ」
吉田氏が「課金させていただくにあたって最低限の機能」と語っていた競売所に類する機能と「プレーヤーサーチ」が実装された。ただし、「アイテムサーチからのアイテム直接購入」の機能については、「パッチ1.20」公開時点では見送られ、12月20日に改めて実装されている。
アイテムサーチの右に表示されているのが取引履歴。あいまいだった相場が安定するかも? |
新機能のプレーヤーサーチ。ここからパーティーへの招待やtellを送ることができる |
「アイテムサーチ」は、リテイナー街で販売しているアイテムを全検索して、どのリテイナーがいくらで販売中なのかをリストアップする機能。この機能自体は以前から存在したが、これまではサーチで調べて、該当するリテイナー街に入り、そのリテイナーのところまで足を運ぶ必要があった。その手間を購入価格の5%のギルを支払うことで省き、すぐに購入できるようになったというのが今回の新機能。
個人的にもっと注目しているのは、サーチした際に一緒に表示される購入履歴。そのアイテムが最近いくらで販売されたかが一目でわかるため、これまではあいまいだったアイテムの売買相場が、かなり固定化されるのではないだろうか。今後のアイテム売買がどう変化していくのか見守りたいところだ。
「プレーヤーサーチ」は、各プレーヤーが設定したオンラインステータス、クラス、レベル、現在地、所属グランドカンパニー、使用言語といった項目で絞り込み検索を行ない、条件にマッチするプレーヤーを見つける機能。サーチ結果に表示されたプレーヤーを選択すると、習得クラスなどのほか、そのプレーヤーがあらかじめセットしたコメントも参照できる。
既存の「パーティ検索」では、個人がメンバーを募集しているパーティーを探して参加申請するシステムだが、「プレーヤーサーチ」ではパーティー側から参加希望のプレーヤーを探すという逆方向での人集めが行なえる点が大きな特徴となっている。現状では新コンテンツに人が集中していることもあり、あまり使われているようには見えないが、今後コンテンツが増えてくるにつれ、必要とする場面も出てくるだろう。
■ グランドカンパニーに新要素!「第七霊災」へ向かうクエストも登場
グランドカンパニー(GC)では、GCへの貢献度に応じて上がる階級制度がスタートした。階級は、グランドカンパニークエストやグランドカンパニーリーヴ、キャラバン護衛、補給資材の納入などで集めた軍票を一定数上納することで上げることができる。階級が上がると、軍票で交換できるアイテムの種類が増え、所持できる軍票の上限が上がるほか、新たなクエストを受けられるようになる。
今回新たに実装されたGCクエストでは、「第七霊災」らしきストーリーが展開。ネタバレになるため、内容については触れずにおくが、これが今しか体験できない物語ということだろう。筆者がプレイしたのは黒渦団の「王狼へのはなむけ」だが、これまでのクエストにはないちょっとしたギミックが用意されていた。
キャラバン護衛では、レベル45~50向けの高難易度のものが新たに登場。ルール自体はパッチ1.19で実装された低レベルのものと変わらないが、出現するモンスターが強くなっているほか、獲得できる軍票が増える代わりに非常に過酷なキャラバン護衛が発生する場合もあるという。
リムサ・ロミンサのGC「黒渦団」所属のプレーヤーのみが受けられるクエスト「王狼へのはなむけ」 | 高レベル向けのキャラバン護衛。軍票稼ぎの手段の1つ | 軍票を上納するとGCでの階級を上げることができる |
■ 称号やアイテムがもらえるアチーブメントシステム登場
特定の条件を満たすことで達成となる「アチーブメントシステム」が実装された。これは、全ファイタークラスレベル50到達や全NM討伐、全エーテライト制覇など、あらかじめ設定された条件の達成を目指すシステム。実際にはもっと段階的にいろいろな項目が用意されており、プレーヤーに新たなモチベーションを与えてくれるだろう。
称号はステータス画面で設定可能で、キャラクタのプロフィールのところに表示される。また、新生時にはネームプレートに表示されるようになる。アチーブメントの項目は、今後も順次追加される。
アチーブメントは最初、すべてロックされた状態。ロックされているだけでカウントはすでにスタートしている | 各地のNPCを訪れることで各項目のアチーブメントがアンロックされる | 項目によっては報酬アイテムが用意されているものもある |
■ クラフターとギャザラーのアクションとゴッドセンドも刷新
クラフターとギャザラーについても、アクションとゴッドセンドの見直しが行なわれ、すべてレベルアップによって取得するようになったほか、ほぼ使われていなかった「○○識」が廃止された。
クラフターのレシピでは、パッチ1.19で不評だった染色による性能の付加がなくなり、着色加工で色のみを付けられるようになった。また、高品質アイテムがすべて「+1」に統合され、高品質アイテムの性能アップの内容が、ステータスごとに見直しが行なわれている。
現在開催中の季節イベント「星芒祭/雪人の儀」でグリダニアに登場したツリー | イベント限定のエモート「雪玉を投げる」。これを使ったクエストイベントも用意されている | ゲーム中から直接クライアントを終了するコマンドが実装された。今までなかったことが不思議な機能だ |
■ 着実に前進している「FFXIV」。課金するか否かは実際に体験して決めたい
相変わらず膨大な量のアップデート内容で、パッチノートを一通り読むだけでもかなり大変だった。特にバトルシステムは、アクションが一新されて全く別のゲームかというほどに変貌している。実際に運営しながら、ここまで変貌を遂げたゲームもないのではないだろうか。
今回も新たな蛮神バトルの実装や、プレーヤーの声を受けたゲームシステムの大幅改修が行なわれ、着実に前進していることは確か。プレーヤーサーチなどの新機能を実装してきたことも、現開発陣を評価したい気持ちはある。しかし、冷静な見方をすれば他のMMORPGでは普通に用意されている機能が揃っただけの話であり、一足飛びに課金するというところまでは至らないのが正直なところだろう。
しかし、パッチ1.19そして1.20と続いてきたバトルシステムの刷新によって、ようやく吉田氏が目指すバトルが、形になって見えてきた気がする。また、蛮神バトルも、MMORPGにありがちなログばかりを見るゲーム(いわゆる“ログ見ゲー”)からの脱却を目指し、敵モンスターを見て動くアクション性を実現していることも好印象を持っている。
パッチノートを読んでイメージしていても、実際にプレイしてみるとだいぶ異なる感触を受けることもあるので、課金してプレイを継続するか迷っている人は、この年末、無料期間のうちに実際にパッチ1.20を体験してみていただきたい。その上で、自分に合うかどうかを判断してほしい。
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□「ファイナルファンタジー XIV」のページ
http://lodestone.finalfantasyxiv.com/
(2011年12月21日)