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「ファイナルファンタジーXIV」プロデューサー吉田直樹氏インタビュー(前編)
「まだやってるの?」とはもう言わせない。サーバー、マップ、UI全差替えで挑む新生「FFXIV」の全貌を聞く


10月収録

会場:スクウェア・エニックス本社



 スクウェア・エニックスが前代未聞の偉業をやり遂げようとしている。オンラインゲームの歴史ではほぼ前例のない、1度ローンチに失敗したMMORPGをリローンチするという偉業をである。しかも、現行サービスへのアップデートはそのまま継続しつつ、2012年第3四半期に、サーバーとクライアントを一端すべて破棄し、すべて新しいものに入れ替えるという、離れ業を使ってのリローンチ。まさにマンガのような話である。

鮮烈な印象を与えた新生「ファイナルファンタジー XIV」のスクリーンショット。PC版、PS3版とも、基本的にこのクオリティでゲームが楽しめるという

 クライアントとサーバーを差し替えるのではないかという噂は、2010年12月のプロデューサー交代直後からあった。しかし、就任直後にインタビューに応じた新プロデューサーの吉田直樹氏は、その疑問には答えず、代わりに「運営を継続しながら調査する」とだけ回答。2011年冒頭に何事かの始まりを予感させる謎のメッセージを公式サイト上に公開したものの、遊びにくいUIや起伏に欠けるマップ、サーバーパフォーマンスといった根本問題には、明確な指針を出さないまま、その後、パッチという単位での逐次改修作業に入った。

 この吉田氏の大方針そのものに不満を覚えたユーザーも少なくなかったはずだ。「“吉P”の不眠不休の努力は認めるし、フォーラムでの真摯な受け答えも好感を覚えるが、このままパッチを当て続けても、有料化やPS3版のリリースは永久に無理なのではないか?」と。メディアの立場としても、「これほど大がかりにパッチ作業を継続しているということは、もはや差し替えはないのではないか。とすると、このまま“改修の逐次投入”という戦術上の下策に終始し、『FFXIV』はその歴史を終えてしまうのではないか」と不安を覚えざるを得なかった。

 しかし、すべては杞憂だった。吉田氏は、継続的なパッチ作業でユーザーの信頼を獲得しながら、その一方で、サーバー/クライアントの再開発に着手していた。10カ月余りの長い長い沈黙を守り続け、ようやく準備が整ったとして今回正式発表に踏み切った。もちろん、発表したからといって、ビジネス的な成功が確定したわけでも、多くのユーザーが集まることが確定したわけでもないが、今回の発表は「ひょっとしたら奇跡が起こるのではないか」と初めて実感できた瞬間だった。

 このプロジェクトが本気の本気である証拠に、新生「FFXIV」の実装を待たずして、有料化に移行する。つまり、「この10カ月間の積み上げと、今回開陳した未来を見て、もし信頼してくれるのならお金を払って頂けませんか?」というわけだ。この野心的なプロジェクトの成否はまだ見えないが、メディアの立場としては未だかつて無い展開の連続に、非常にワクワクさせられている。

 というわけで、新生「FFXIV」の発表経緯とその内容について吉田氏に話を伺った。吉田氏渾身のロングインタビューとなったため、前後編にてお届けするのでたっぷりお楽しみ頂ければと思う。



■ 新生「ファイナルファンタジーXIV」発表の経緯について

「ファイナルファンタジー XIV」プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏
新生「FFXIV」のイメージイラスト。従来の武器を主体としたイメージから、「FF」シリーズお馴染みの“ジョブ”を前面に押し出した親しみやすいものに変更されている。ちなみにジョブシステムは2012年2月のパッチ1.21での実装が予定されている
吉田氏が資料の中で打ち立てている5つの改修項目

編集部: 遂に新生「FFXIV」が発表されましたね。まずは発表の経緯から教えてください。

吉田直樹氏: 昨年の12月に開発体制を一新させていただいて、ものすごい勢いでゲームの調査、テクノロジー周りの調査を行なってきました。「FFXIV」が僕たちの描くMMORPGとして、どこまで何をすればよいのかという調査をした結果、1月の時点で根幹に関わるいくつかのシステムについて作り直しを決断しました。

 まず、「FFXIV」に足りなく、将来的に必要となるものは何なのか、それをすべて客観的に洗い出し、今すぐにでもプレーヤーの皆さんにお届けしなければならないもの、根本的に作り直しが必要になるもの、技術的に対応が難しくても地道に改修しなければならないもの、将来的に必要になるもの、それらを基礎仕様としてまとめ、分類を行なった後に、全力で運営を続けつつも、完全に作り直すものは、今すぐスタートを切らないと、時間的に苦しくなるなと考えました。そこで、開発体制を2分しました。同時並行にやろうという決断をしたというわけです。

 公式フォーラム上でも、僕のプロデューサーレターでも伝えさせていただきましたが、マップの全作り直し、サーバーの再設計、サーバープログラム自体の修正、ユーザーインターフェイスの全差し替えを、これまで偽り無く、きちんと計画を立てて開発を投入して続けてきた成果というのが、かなり目に見えるところまで出てきました。同時に、全精力を上げて「FFXIV」のクライアントに対して、サービスの質と遊びを向上させるために改修を続けてきました。その双方が空想の産物ではなく、いかに前代未聞のプロジェクトであっても、目に見えるものとして、ご呈示できるところまできたので、今回発表させていただきました。

 では、なぜここまで一切の発表を控えてきたかと申しますと、新体制に対する信頼性の問題があったというのがやはり大きいです。仮に、新体制発足時の2011年1月に、この計画を発表したとしても、たぶんプレーヤーの皆さんには、真剣に受け取って貰えなかったのではないかと思います。そもそも「吉田って誰?」という状態でしたし。

 次にスクウェア・エニックスに対しての信頼性の問題。サービス開始当初、ローンチに失敗し、お客様の期待と信頼を裏切ってしまった状態から、スクウェア・エニックスの信頼を回復させていただくためには、言葉で語る以上にまずモノを作り、それを見ていただくこと、改修に対して有言実行することがすべてだろうと考えました。

 そこから約10か月、改修を全力で行ない、これから向かう「FFXIV」というものに関してプレーヤーコミュニティの皆さんにアナウンスを続けさせていただきながら、平行して大規模な作り直しを実行してきました。僕らが運営を片手間にやっているわけではない、ということを1番理解していただけているのはプレーヤーの現役の皆さんだろうと考えています。その上で、想像を遙かに超えるくらい、僕らがどれだけ本気かということを、今回の発表で、伝えさせていただきたかったのです。

 中でも、サーバー、ユーザーインターフェイス、マップに関しては、今回、全世界のプレーヤーの皆さんに公開させていただいた資料通り、嘘偽り無く、再開発を進めてきています。プレーヤーの皆さんも「この3つの修正はいつになるのだ!」という気持ちもあるかと思いますので、そろそろ状況をお伝えしたいと思いました。その際にはやはり「やります、やってます」という言葉でけではなく、一定の成果を示したかった、というわけです。

 僕はMMORPGというゲームは「この先の未来に面白いものが待っている!」という期待感とともに「今」をプレイするゲームだと考えています。その未来に不安感があるままプレイを続けていくのはプレーヤーの皆様にはストレスだと思いますので、このタイミングでこれまで僕らがやってきたことを公開させていただき、安心して今のゲームをプレイして欲しいと考えました。皆さんが想像している以上の目標を掲げて、僕らは全力で引き続き走ります、というお話をさせていただきたかったのです。

 それと同時に、本当に尋常ではない規模での開発を行なっていますので、プロジェクトを預かっている身としましては、これからも本気でサービスを続けさせていただくために、サービス開始当初から継続している無料のままではなく、サービス利用料金を頂かなければならないという時期にさしかかっていることもあります。これまでのアップデートによって、もし我々を信用し、この先にある「FFXIV」に期待をしていただけるのであれば、「未来に向かってプレイするためのお金を頂戴しても良いですか?」とお願いさせていただきたく思っています。

 ただし、「FFXIV」はアカウントに対して利用料金の自動更新を認証していただかないと、プレイできないという仕組みを使っているので、このままいくらアナウンスをしてもアナウンスに気づかれない方は、下手をすると、そのまま利用料金が自動引き落としになってしまいます。今回課金開始予定の2カ月前にご報告させて頂いた理由でもあります。

 そしてできる限りお客様が望まない課金が発生しないように、さらに開発/運営の決意として、我々の側から自動更新を1度停止させていただいて、改めてお客様に課金の同意をしていただいて、前に進んでいきたいと思っています。お金を頂く以上、できるだけ誠実でありたいという思いから、前代未聞ですが、新生運用開始までの、全スケジュールも公開させていただきました。

編: 現行のサービスと、新生のサービス、この2つのサービスについて同時平行期間は置かずに、一旦完全に止めて、一気に新生「FFXIV」に切り替えを行なうのでしょうか?

吉田氏: そうです。基本的に2012年第3四半期に、PC版をお持ちのプレーヤーの皆さんに「新生版クライアント」を配布させていただき、サーバー上のキャラクターデータを弊社側で一括して、新サーバーに差し替えさせていただきます。タイミングをおかずに一気に置き換えます。それに伴うキャラクターのワイプはありません。新生クライアントは作り直したマップデータが膨大になるため、再インストールをお願いすることになりますが、キャラクターデータやこれまで皆さんが育てていただいたものや、貯めていただいたアイテムなどのものにつきましては、一部データの拡張に対応していますので、すべてコンバートさせていただき、プレーヤーの皆様には不利益の無いように取り計らいます。

編: 私は、新サービスではキャラクターデータのワイプはある程度避けられないと思っていたのですが、現在のキャラクターデータはそのまま残るのですか?

吉田氏: ワイプする覚悟があるのでしたら、昨年、体制変更させていただいた時にサービスを止めていたと思います。体制変更自体はまだ10カ月ですが、「FFXIV」のローンチ自体からは丸1年経ち、その間、プレーヤーの皆さんは、ある程度楽しんでいただきつつも、かなりストレスフルだったと思います。自分たちが楽しんでいるつもりでも、例えば周りやネットの評判、ご友人からは、「どうにもならないだろうあのゲーム、まだやっているの?」と言われてきたのではないかと……。そして「今後も続けて良いのだろうか?」という、ゲームをプレイする以外のストレスを大きく感じられていたと思います。

 プレイを続けて頂いているプレーヤーの皆さんは「FFXIV」を支えてくれているだけでなく、スクウェア・エニックスとしても、もっとも大事にすべきお客様だろうと思っています。ですから、サーバーを止めるという選択肢は取りませんでした。運営とサービスを止めない、という選択をしたからには、きちんとプレイされたデータを引き継いでみせるのが、僕らがプロとしてやらなければならないことだろうと考えました。

 最初から、それがリスクとわかっている分、慎重に設計をしてコンバートしてみせようと考えています。テクニカルディレクターである橋本(善久氏、スクウェア・エニックスCTO兼「FFXIV」テクニカルディレクター)の発案と指示により、新生側の開発ラインは、基礎仕様が固まり、ある程度詳細に計画が出来上がるまで、一切のプログラムコーディングを止めていました。とにかく設計と計画と見積もりをしようと。何をどう新生でやるのかと。これは非常に大きかったし、今猛烈なスピードで新生クライアントが構築されて言ってるのは、この思想のおかげだったと思います。僕が400セル以上のシートを作って、1つ1つのシステムの基礎概要を書き、それを達成するためのサーバー設計をどうすべきか、ユーザーインターフェイスの設計をするべきかということを5年〜10年先まで見据えた状態ですべて考えて、設計だけを丸3カ月行ないました。

 その間も全力で「FFXIV」の運営とアップデートは続けており、昼夜問わず、仕様決めと調整、プレーヤーの皆さんとの対話をさせて頂きつつ、現行クライアントの致命的な問題箇所と戦ってきました。これは今後も変わりませんし、これからも、少しでもプレーヤーの皆さんに、未来だけでなく「今」も楽しんで頂きたいと、常にそう思っています。

編: と、同時にPS3版の開発も平行して行なっているわけですか?

吉田氏: そうです。

編: それでは「FFXIV」アップデート、新生「FFXIV」、PS3版という3つの開発パイプラインがあるというイメージですか?

吉田氏: PS3というのはリリースされてからある程度期間が経っているハードですので、橋本が率いるテクノロジーに強いスタッフ達には、多くの経験と技術の蓄積があります。そこを根幹にし、更にスタッフを会社中からかき集めて、最適な開発体制を敷かせて貰っています。ただし、新生クライアントとPS3版は完全互換で開発しているので、正確に3ラインではないですね。アップデートと新生の2ラインで、新生にはPS3版も含まれます。



■ サーバー差し替えによって「ワールドレスなサービス」を実現

「Dark Age of Camelot」を始め、多くの北米産MMORPGをプレイしてきた吉田氏は、サーバーの差し替えに合わせてワールドのクラスター化に踏み込む
現在のワールド選択画面。4〜5つのワールドが1つのクラスターとなり、この枠内でマッチングが可能となるという

編: その新生クライアントではマップとユーザーインターフェイス、サーバーシステムの3つを変えるということですが、具体的にどのように変化するのですか?

吉田氏: もっとも変更があるのはサーバーだと思っています。サーバーはMMORPGにとって地球にも等しい存在です。マップは大陸ですかね。ですので、サーバーの上にはマップが載り、マップの上にはシナリオやイベント、バトル、クラフト、ギャザリングが乗る。やはり、根本的にサーバーを新設計し、コードを新規に書くというのは、とてつもなく大きな作業です。

 そのリスクを冒してでも、僕が目指しているのは「ワールドレスなサービス」です。 これはワールドという概念を無くすという意味ではなく、ホームワールドはこれまでと同様に存在しつつ、ワールドの垣根を越えてパーティーを編成できたり、アイテムが行き来しても問題のない「思想設計」を指します。サービスの質とも言えると思います。

 「FFXI」も「FFXIV」も1つのサーバーを1ワールドという呼び方をします。例えば海外のタイトルではシャードという言い方もされますね。そして、このワールドという狭い単位でのプレーヤーコミュニティだけでは、この先のMMORPGを長く運営していくのは、しんどいだろうと考えています。

 MMORPGのコミュニティには、プレーヤーの進行速度差というものがあり、後発で始めたプレーヤーは、最先端を走るプレーヤーに対して、時間的にもレベル的にも、プレーヤー経験的にも、距離が開いていきます。これを1つのワールドの中だけで解決しようとすると、そのキャパシティの中だけで、新規に入ってきた人たちや、後発の人たちを引っ張りあげる仕組みが必要になるのですが、ワールドレスならその問題の解決はグッと簡単になる。

 例えば5,000人収容のワールドで、プレーヤーをマッチングしようとすると、進行速度差によってマッチングに苦労することも、ワールド4〜5個分で考えれば、20,000人から25,000人でマッチングできる。当然、同じコンテンツを嗜好する人にも、出会いやすくなるし、パーティーも組みやすい、ということです。これを僕らはワールドの「クラスター」とか「クラスタリング」と呼んでいます。

 「FFXIV」はレベリングの間隔が第1世代のMMORPGに比べて短く、プレーヤーの方には「エンドコンテンツ型のMMORPGになります」と説明させていただいています。レベルがサクサクあがるようにしていますので、どんどん上の人たちに追いついていただいて、新しいコンテンツにアタックしてもらう仕組みを作りたい。そのためにはワールドレスな設計をしなければならない。当然それぞれのワールドで手に入れたアイテムを区別する必要があるので、アイテム自体にもワールド固有のIDを持っておかないと、ごちゃまぜになってしまう。ですから、そこは最初に設計しておかなければなりません。これがサーバーシステムを根本から作り直している1番大きな要因です。

 どのようなサービスを行なうか、どのように運営を長く続けるか、どのように進行速度差のあるプレイヤー同士を結び付けていくのか、コミュニティデザインも、運営デザインも、理想があってこそのサーバー設計だと思うのです。運営を続けながら、地球をデザインしなおし、環境を作り直すことは、想像以上に困難ですが、今プレイしてくれているお客様のためにも、開発一丸となって、絶対にやりきって見せます。

編: 最終的な目標はすべてのワールドを単一の世界として扱うわけですか?

吉田氏: 12個すべてを1つにクラスタリングするためには、相当なインフォサーバーパフォーマンスが必要になってしまうので、おそらく初期は4つか5つのワールドを1つのクラスターとして、複数のクラスターになっていることを想定しています。実際に他のMMORPGを見ても内部的にはクラスターになっている場合が多いです。サーバーは時代によって安価になっていきますので、性能を上げられるようになればクラスターサイズをもっと増やしていく、というのは可能になるだろうと思います。

編: キャパシティはいかがでしょうか。「FFXI」でも5,000人くらいだと思いますが、新生「FFXIV」の1クラスターは何名ぐらいを想定していますか?

吉田氏: 「FFXIV」も基本的には1ワールド5,000人で設計しています。横のクラスターは4ワールドの場合で20,000人がマッチング可能なので、横のつながりのワールドレスという考え方が重要になると考えています。現在のサーバーではそれが達成できない以上、絶対にサーバーシステムを入れ替える必要があるかというのは就任当初から話をしていました。当然、それ以外にもパフォーマンス等で問題がありましたので、それを全部解消するには作り直したほうが早いだろうと

 当然ゼロからではなく、根本改修を続けた場合も想定していました。特に運営を続けていますので、運営も手を抜かない、が新体制のポリシーです。サーバーシステムを作り直すにしても、運営サーバーにもフィードバックを施す必要はあります。いずれそれは不要のコストになったとしても、現在プレイして頂いている皆さんには、できる限りの品質向上をお届けする責任が我々にはあります。結果、両方全方位の見積もりを行ない、比較検討した結果、特に10年先まで新しいコンテンツに耐えられるようにするためには、現行サーバーに手を入れつつ、新設計のサーバーを作り直した方が早かったということです。

 サーバーという、地球そのものを作り変えた後はマップです。現在「FFXIV」が採用しているシームレスの概念は、MMORPGのマップ技術的には非常に難しいことをしています。1つのゾーンサーバーですべてのエリアをコントロールしているわけではなく、必ずエリアにはゾーンサーバーがあって、隣のエリアにいくと別のゾーンサーバーがある。しかしシームレスな方式では、このゾーンサーバーの境界線が目に見えません。このゾーンサーバーをシームレスにまたいで処理を行なうのは、とてつもなく難易度が高いのです。さらに見た目のシームレスにこだわった分、マップの仕様にも悪影響を及ぼしていて、繰り返しの印象が非常に強いマップになってしまっています。

 MMORPGはプレーヤーの皆さんに、その世界の住人になっていただけるゲームです。新しいエリアに入ったときに、ワクワクしてもらえることは、とても大事だと思っています。向こうへいってみたい、あの建物はなんだろう、海岸線にある沈没船の山はなんだろうと。風景が変わらなければワクワクできないのです。ですから同じようにゾーンシームレスの考え方は再考しなければならず、今の仕様にこだわればどうしてもダイナミックなマップは作れない状態です。

 今の仕様のまま、拡張パックでシームレスにこだわらない新設エリアを、というのは基礎システムがある以上、実現不可能です。大陸とも呼べるマップの基礎仕様は、描画にも絡んで、どこまでもくっついてきてしまいます。これは10年運営を続ける上では、根本から仕様面も作り直しだろうな、と思いました。



■ 新マップ群はゾーニングを採用し、よりドラマティック、ファンタジックへ

あっさりゾーニングすることを認めた吉田氏。テクノロジー的には後退するが、ゲーム的には前進となると考えているようだ
新生マップのひとつ「北ザナラーン」。ランドマークとして帝国拠点、帝国海上要塞、クリスタルタワーと、あともうひとつ何かあるようだ
ラノシアの広大な風景。既存のエリアがどのようにゾーニングされるのかも注目したい
イメージイラストには「使えなくなったエーテライト」と意味深な存在も

編: なるほど。それではサーバーが変わることで、マップは具体的にどのように変わりますか?

吉田氏: (手元の資料を見せながら)このマップは北ザナラーンというエリアを設計しなおしたものです。これと同じマップの再設計したものを4枚、プレーヤーの皆さんに公開させていただいています。公開は4枚ですが、開発では既に20マップくらいの白地図が完成していて、すでにモックアップ(荒いポリゴンでの設計用地形)も製作されています。毎日チェックしているので、ちょっと混乱気味です(笑)。今回公開した4枚をみていただければ、どれほど変わるのか、その雰囲気の一端は感じて頂けるのかなと。そのマップに入ったときに、最低3つのランドマーク、3つの要素を盛り込んでいます。コンテンツだったり目指すべきものだったり、拠点だったりというものを最低3要素盛り込む。そしてもっとも大きいのが「ファンタジーを感じられること」をテーマにしています。

編: 現在のマップはすべて廃棄でしょうか。テクスチャも含めて?

吉田氏: すべて廃棄です。テクスチャは一部使うとは思います。床のテクスチャまで新しくしてもあまり意味が無いと思いますからね(笑)。とはいえあまりに高解像度のものをたくさん使っている部分はPS3のクオリティに最適化して作り直します。

編: 街はどうなりますか?

吉田氏: 街はあれだけの規模のものを作るのは、非常にコストがかかるので、一部改修という形です。その代わり、マップはどこになにがあるかというミニマップの機能を盛り込み、便利になります。あとは広すぎる部分は今回実装しているグランドカンパニーに合わせてグランドカンパニーの階級が上がっていくと、街内テレポのように自分たちの街を便利に使えるようになっていく遊びを入れようとしています。これは新生を待たず、アップデートで実装予定です。

編: 基本的に街に関しては利便性を高めるので基本的にそのまま使ってくださいということですね。

吉田氏: そのまま使ってくださいという部分が比較的多いかもしれませんね。街の中にも見えないゾーンサーバー境界線がありますので、その部分を分離する可能性はあります。ただ、街に関しては快適であることが第一ですので、分かりにくい部分は手を入れて、作り直しますので、まったくそのままということはありません。

編: 念のため確認ですが、新生「FFXIV」ではゾーニング(エリアチェンジ)する?

吉田氏: します。人によってはテクノロジー的に後退だ! と言われるかもしれませんが、それがあることによって得られる恩恵は大きいのです。どちらかを取って、どちらかを捨てないと難しいと思います。その代わり、ガラッと変わる遊びというものを提供させていただきます。逆に見た目のストリーミング、サーバーのシームレスというのは、テクノロジー的には罠な部分があって、広く作ってしまいがちなのです(笑)。ストリーミング技術で、どこまでも繋がるため、嘘がつけなくなって、マップ全域を使ってしまおうとするので、端折れないのです。

 例えば、ストリーミングの場合、山を1つ越えるというのに、本当にふもとから山頂まで作らなければならない。でも、みんな本当に山登りがしたいわけではない。山頂にある「大鷲の巣」を攻略したいだけなのに、なんで麓から登山道をひたすら歩く必要があるんだ、と。「登山オンライン」がプレイしたいわけではないですし。ストリーミングのオープンフィールドでは、結果的に広大な登山ルートを作らなければならない。結果的にポリゴン数を食う、テクスチャを食う、だから通路が多くなる。通路が多くなるとモンスターを置きづらい、配置すると邪魔ということで、良いことは何も無いのです。

 山のエリアに入ったらゾーニングすることで、途中をすっ飛ばせるのです。そこでダイナミックなつくりを1点集中、一体成型で作るほうが面白いだろうと思っています。オープンワールド型のゲームは、個人的にとても好きですが、広大なMMORPGのフィールド全域で、コンテンツ密度/面白さ/景観という3点をオープンワールド的にすべて実現するのは、不可能だと思っています。

編: なるほど、マップが入れ変わり、ゾーニングするとなると、ゲームの風景も大きく変わりそうですが、たとえばゲームの序盤の展開はどうなるのですか?

吉田氏: そこは普通のゲームデザインの範疇の話になりますが、最初に世界に下りた冒険者は街からスタートして、外に出てこの世界はどんな世界なのだろうと探索を始めます。冒険者とはいえ、いきなりもの凄いモンスターと戦えるレベルではないと思いますので、そこは動物とちまちま戦いつつ、その向こうにいってみたいというオブジェクトや街を配置します。強さに見合った進行というのを初期エリアに関しては特にレベルデザインチームと僕自身が中心になって、導線を引きなおしています。

編: チュートリアル等はいかがですか。

吉田氏: それに合わせて実装します。パッチ1.19では序盤のインターフェイスチュートリアルを実装しました。引き続きパッチでもアップデートを続け、新生では集大成になる予定です。

編: これまでは、いきなりエーテライトに向かわされて、あとはギルドリーヴをどうぞという、突き放したゲームデザインになっていましたが、そこがガラッと変わると?

吉田氏: 変わります。新生開始のタイミングからになってしまいますが、ゲーム序盤の導線もギルドリーヴではなくなります。

編: なるほど、ギルドリーヴはどうなるのですか?

吉田氏: 何度もレターを通じてお話させていただいている通り、僕はゲームにログインして、難しいことを考えなくても、コツコツやることがある、というのは素晴らしいことだと考えています。ただ、それがメインであってはいけないだろうとも思っています。引き合いに出すのは第1世代のMMORPGです。まさにジェットコースターだらけのテーマパークといった感じで、たとえば、某タイトルのように、ダンジョンの奥底で午前5時くらいに全滅するともう地獄です。装備が全部床に落ち、裸一貫で外に出され、その時点で2週間分くらいの経験値をロストして、全員でバインドポイントに戻って古い装備を取り出しながら、もう1度あの装備を取りに行かないと会社なんか行ってられないぞ! と。再チャレンジして2次遭難するのですけどね(笑)。僕はあの尖ったデザインがとても好きです。今でも。でも、今でもプレイできるかどうかは別問題ですけどね。

編: 今となってはなかなか実現が難しい、超コア向けの要素ですね。

吉田氏: ええ。すごく尖ったデザインで、あの要素を捨てるつもりはないですし、高い頂点として残したいと思っていますが、これだけ現実世界も大変、人間関係も大変という中で、他社のゲームだけがライバルではなくなり、他のエンターテインメントコンテンツはたくさんあります。さらに家に帰ってきても、PCに電源を入れて、つまみとビールを用意してってやるぐらいなら、もうシャワーを浴びて寝たくなりますよね(笑)。それが会社から帰ってきて1時間でも2時間でも世界に入りたいというときに、シンプルなコンテンツがあるのは重要だと思っています。

 ギルドカウンターに行ってリーヴを受けて2〜3個終わらせればレベルも経験値もそれなりに上がる。LSのメンバーや、新しく搭載する「フリーカンパニー」のメンバーとちょっとチャットしながら、週末みんなでフリーカンパニーコンテンツに行こうねと。毎日平日はその繰り返しで終われる安心感は、とても大事だと思っています。そのためにギルドリーヴは残そうと思っています。

 ただ、初期の導線はギルドリーヴではないだろうと思っています。まず世界を知ってもらうことと、ゲームを知ってもらうことが大事だと思っています。冒険者ギルドまでは、これまでと同じような導線を引くつもりですが、そこから先はクエストで引っ張っていくつもりです。クエストについては、現時点でも継続して実装させていただいていますが、今後もガシガシ続けます。冒険者ギルドで最初の導線が終わると、NPC全員の頭にビックリマークが出ているという状態(編注:クエストを受けられる状態)からスタートしたいなと。チュートリアルも、このクエスト群に混ぜてもらって、遊びながら覚えられるように、というのがコンセプトですね。

編: クエストはかなり飛び飛びでの実装でしたからね。

吉田氏: メインクエストはそうですね。メインクエストは規模が大きいので、メインクエストだけを行こうとすると飛び飛びになりますが、間を埋めていくエピソードやサブクエストをチュートリアル込みで埋めていこうと思っています。あと、レベル10になるまで、アーマリーシステムも封鎖してしまおうと思っています。1つ目の職業がレベル10になって、各ギルドマスターに認められないと他のクラスに転職できないというシステムです。初めてプレイされる皆さんが、戸惑わないようにしたいのです。まずレベル10を目標にしていただこうかなと。

 おおよそ、色々見て回ってクエストをこなして、7〜8時間でレベル10になるだろうと思いますが、10になったらそのクラスの基本、「FFXIV」の世界の基本がわかる区切りにします。1つ目のクラスクエストをクリアできたあたりで他のクラスをやってみても良いよと。同時に冒険者ギルドからギルドリーヴが発行される。レベル10で半人前と認定するので、君にもギルドリーヴからのオファーを出すよと。そこから1つ1つシステムやコンテンツが広がっていくという考え方を持っています。その先にパーティープレイですね。

【新生マッププラン】
肝心の部分が黒く塗りつぶされているが、新マップでは多くのランドマークが設定されることがわかる。「歩きやすく!ひっかからない」などの指示もユニークだ



■ ユーザーインターフェイスの改良について。サーチシステムに「コンテンツファインダー」を搭載

吉田氏の話しぶりから本音ではMMORPGはマウス+キーボードを推奨したがっているが、スクエニとして改めてキッチリゲームパッドにも対応していくという
この新生「FFXIV」のスクリーンショットを見るとわかるが、UIがまるで別のゲームになっている。UIの改良は非常に期待できる部分だ

編: 次にユーザーインターフェイス(UI)についてはどのように変わりますか?

吉田氏: 運営中はとにかく、少しでも快適になるように、ひとつずつ、粘り強くアップデートを続け、新生では今までの仕様をすべて捨てて、皆さんのフィードバックを取り込んだ新UIを実装します。

編: 具体的にどういったものを盛り込むのでしょうか。

吉田氏: PC版でいえば、PCゲームにゲームパッドを繋いで遊ぶというのはグローバルで見てありえないシチュエーションです。マウスとキーボードで、マニュアルを読まなくても当たり前に使えるようになるのが第一目的。同時にスクエニは、コンシューマーゲームを作っている会社ですので、PS3でゲームをプレイするプレーヤーに対して、ゲームパッド向けにより快適な特化したインターフェイスを作ります。もちろんPC版でゲームパッドを選択された方にもゲームパッドモードとしてインターフェイスを提供させていただきます。今の「FFXIV」のややこしさというのは、マウス+キーボードとゲームパッドを同時に達成しようとしたことに起因しています。だから、切り離して2つ実装する必要があるだろうと。単純ですが。

 UIに関しては“マルチ”対応を考えています。ウィンドウに関してはマルチウィンドウであること、リストの表示に関してもアイコン表示とリスト表示をリアルタイムに切り替えられるように設定します。アイコンを使ってドラッグアンドドロップベースで遊びたい方はアイコンベースで、PS3の場合は画面解像度に限りがあるので、すべてアイコン一択にしてしまうとかなり画面の領域をかなり食ってしまう。PS3でプレイする方はリスト表示にしていただいても構わないですし、多少ページ送りが面倒でもアイコンの方が楽という方には、それでも遊んでいただけます。両方やるからには両方徹底して設計しています。

編: 今の「FFXIV」のUIスタイルで遊ぶこともできる?

吉田氏: スキンのデザインに関しては何パターンからか選べるようにしたいなとは思いますが、メモリサイズ次第です。すでに結構きついので(苦笑)。青ウィンドウが「FF」らしくて良いというかたもいらっしゃると思いますし。PC版に関しては、アドオンに対応しますのでプレーヤーの皆さんが、簡単なスクリプトを書いてカスタムフォルダに入れれば動作するように設計しています。僕ら開発よりもプレーヤーの皆さんのほうが、圧倒的にインターフェイスを触っている時間が長いです。海外には本職でゲームを作っている方が、実際にゲームを気に入っていただいて、好きなUIをプレーヤーに配布するという文化がありますので、そういう思想に対応します。PS3に関してはレギュレーション上SCEさんのチェックを受けなければならないので、僕らは世界中で好評だったUIの良いところを取って、差がつかないようにアップデートさせていただこうと思っています。アドオンという概念はMMORPGを長く運営する上で、必要不可欠な要素ですので、UI改修の大きな目的のひとつとも言えます。

編: サーチシステムはどうなりますか?

吉田氏: そこもサーバー改修の大きな目的の1つです。サーチ周りは完全に新しいウィジェットを用意しますので、プレーヤーサーチだけでなく、コンテンツに対して何人入っているかのサーチや、コミュニティのサーチができ、入りたいリンクシェルを捜すことができます。これからやろうとしているフリーカンパニーでスタッフを募集しているところを探すといったこともです。すべてのサーチ機能が、新しいインターフェイスに統合され、より快適に遊べるようにしたいと思います。

編: 新生サービスでは、既存のワールドをまたぐ形、つまりクラスター単位でサーチできるのでしょうか?

吉田氏: サーチは自分のホームワールドの中のサーチになっています。ワールドを越えたサーチは必要ではなく、ワールドを越えた先はもうマッチングです。我々が「コンテンツファインダー」と呼んでいるシステムがあり、これはダンジョンごと、コンテンツごとに利用できるマッチング専用の仕組みです。たとえばパッチ1.18で実装されたゼーメル要塞に行きたいとする。コンテンツファインダーを起動していただいて、インスタンスレイドのタブを選んで、ダンジョン名「ゼーメル要塞」、自分のジョブは「ナイト」、レベルは「50」です、とリクエストを送ると、他のワールドも含めて同じようにゼーメルに行きたいというプレーヤーを探し出して、サーバー側で自動的にクラスバランスを取り、パーティーを組んでアタックしていただける仕組みですね。

 もちろん、これまで通り歩いてもいけますし、パーティーで登録して挑むことも可能ですが、基本的にはコンテンツファインダーでマッチングして、MO空間に入っていくようになると思っていただいたほうが良いと思います。フィールドはパブリック、コンテンツの中はMO空間というのが時代の流れだと考えているからです。

 今回占有という仕組みをはずしたのもそれが理由です。開発側もプレーヤーの皆さんが、40人で来るか50人で来るか分からないものの難易度調整をして、力押しされてしまって、次のコンテンツは力押しされるから強くしておかなければならないと、イタチごっこになる。その時は良くてもコミュニティサイズが小さい後発組はやっぱりプレイできない。難易度もバラバラになってしまいますし、どうしてもバトルが大味になってしまう。それよりは少ない人数で、プレーヤーの人数がこちらもわかっている状態でバランスを取り、小さいコミュニティでもアタックができるようにと考えています。その辺りはまだストレスフルなので、フィールド以外の部分では特にそれを排除していきたいと思います。

編: 新生サービスではMMO空間でのコンテンツというのは存在しなくなるのですか。

吉田氏: そこはクエストとリーヴが大部分を占めていくのかなと思います。今回のパッチ1.19で蛮族砦という形で、エンド向けのかなり攻略難易度の高いフィールドを作ってみています。MMO空間も、僕はまだ可能性があると思っています。みんなでわいわいやれる空間も、パブリックにおいてあって良いのではないかと思いますので、その辺は逆に今のすべての時流に身を任せるのではなく、いろいろなことを挑戦してみたいです。MMORPGは進化をし続けるゲームですので、皆さんの評判やご意見を頂いて、さらなる高みを目指していきたいと思っています。

 特にMMOは初期の3年目まではコミュニティが拡大する方向に進み、巨大化していきます。3年目すぎたあたりから小さくなっていく。この波に合わせてゲームデザインを切り替えるべきだろうと考えています。ずっと肥大化の方向でいくことはないだろうと思っています。「FFXIV」のゲーム内のコミュニティをもっと強く維持して頂くために、パーティー探しやLS探しなどのてこ入れは、サーバー改修前であっても、なんとしても取り組みたいと思っています。

(後編へ続く)


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(2011年 10月 17日)

[Reported by 中村聖司]