「NINETY-NINE NIGHTS ONLINE」運営インタビュー
2D化でカジュアル方向に舵を切った新作「N3」の狙いとは?
12月5日にプレオープンするWindows用オンラインアクションRPG「NINETY-NINE NIGHTS ONLINE」(N3O)について、キューエンタテインメント株式会社のオンラインパブリッシング事業本部運営部マネージャーの君塚靖征氏にお話を伺った。
「N3O」は2D横スクロールのアクションRPGで、Xbox 360で発売された3Dアクション「NINETY-NINE NIGHTS」(N3)シリーズのDNAを受け継いだタイトル。運営はキューエンタテインメント、開発は台湾USERJOY Technology。基本プレイは無料のアイテム課金制で運営され、正式サービスは12月8日開始予定となっている。
ゲーム内容については、体験レポートを掲載しているので先にご覧いただきたい。こちらのインタビューでは、美しい3Dグラフィックスも特徴だった「N3」シリーズが、「N3O」では2Dのオンラインゲームへと方針を変えた理由を尋ねつつ、本作ならではの魅力について伺った。
■ 間口を広げてより多くの人に遊んでもらいたかった「N3O」
オンラインパブリッシング事業本部運営部マネージャーの君塚靖征氏。サービス直前の追い込み時期真っ最中にインタビューの時間を割いていただいた |
「N3O」は初心者にも安心のガイド機能が充実している |
2Dグラフィックスを採用したことで、低いPCスペックでも動作する。広い層に楽しんでもらうのが狙い |
――まず何よりも気になるのは、3Dアクションとして有名な「N3」が2Dになった所です。その理由を教えてください。
君塚靖征氏: 日本ではコンシューマーゲームが発達していて、それによってコアなゲームも発展してきた経緯があると思います。そもそもは、クロスプラットフォームという方針がある弊社が新たに出すものとして、「N3」をオンラインでやろうという企画が発端でした。しかし、これまで低スペックPC向けで、初心者の方もすぐに楽しめるオンラインゲームを制作してきた私たちの経験によれば、日本にはオンラインゲームをこれから始めるという方が多くいるという事実があります。私達はそれを無視できませんでした。
――オンラインゲームにするならば、間口を広くした方がいいとの判断だったのですね?
君塚氏: 例えば、PCとプレイステーション 3の両方で楽しめる「AngelLoveOnline」では、ハードとして高スペックなPS3は持っていても、オンラインゲームはやったことがない方が多くいらっしゃいました。今後のオンラインゲームの発展を考えても、そういった方たちを除外せずに、なるべく広い層の人たちに楽しんでいただこうという狙いがあったのです。
――それは、どちらかと言えばコアゲーマー向けのゲームだったこれまでの「N3」とはターゲット層が全く変わることを意味していますが、その点に対してためらいや不安はなかったのでしょうか?
君塚氏: それはありました。確かに「N3」はあのグラフィックスがあってこそのゲームだったので、今回は「N3」シリーズのファンの方に少なからずとも「裏切られた」という思いを感じさせたと思います。しかし、ゲームの面白さという点では、「N3」らしさである大勢の敵をなぎ倒していくようなアクションと、正義とは何か、悪とは何かというストーリーの部分は活かしています。見た目は2Dにして必要なPCスペックを抑えつつ、そこにこの2つの部分を落とし込んだ結果、今の形になったのです。
――「N3O」ならではのアピールポイントは何でしょうか?
君塚氏: 初心者の方にも入りやすいゲームになった部分です。誰でも直感的にできる操作性や、コミュニティ機能の充実、長時間プレイにも耐えられる大幅なやりこみ要素を盛り込めたのもメリットだと思います。「N3」のコアなイメージとはまた違って、色々な方に興味を持って貰えると思います。
■ 据え置き機を意識したゲームパッドによるアクション
シリーズを通して味わえる、敵をまとめてなぎ倒す爽快感はしっかりと踏襲 |
――では、ゲームの核となるアクションについてお伺いします。「N3」シリーズのボタンを順に押していって攻撃するというアクション操作は本作でも踏襲されていますが、このアクションは本作にどう落とし込んだのでしょうか?
君塚氏: 操作性については、かなり議論を重ねました。攻撃のバリエーションは多く揃っていて、アクションゲームが得意な方ならすぐ理解してプレイできると思うのですが、プレイが複雑になればなるほど、初心者の方にはタイミングが合わなかったり、焦ったりして、難しい部分も出てくると思います。
そこで、本作では上手い人にはそのまま楽しめるようにして、難しいと感じる方にもコンボを予め登録できるようなマクロ機能などで楽しんで貰えるようにしています。様々な人に向けたゲームというコンセプトを打ち出している中で、アクションの「難しいから面白い」という面と、「難しいから嫌」という面の両方のバランスを取るのには苦労しました。
――操作性という点では、ゲームパッド機能の充実も挙げられると思います。ボタンの割り当ても細かく設定できますね。
君塚氏: 好みに合わせて自由にボタン設定ができますので、コンシューマーゲームをやり込んだ方も快適にプレイできると思います。オンラインゲーム初心者の方にとっては、ゲームパッドがあるとなおいいですね。
USERJOY Technologyが開発している「AngelLoveOnline」。元はWindows用のMMORPGだったが、後にPS3版が開発された |
――キーボードのShiftキーのように、同時押しで別の機能を持たせられる複合キー設定もありました。これによってゲームパッドだけでもアクション操作が完結できる作りになっています。ここにはかなり気を使われたのではないですか?
君塚氏: 複合キーを設定できるようにしたのは、実は開発を担当したUSERJOY Technologyさんから提案があったからです。普通ゲームパッドは限られたボタンの中でどう作り込むかと考えてしまうのですが、これはキーボードのキー量をどうゲームパッドで再現するかという発想が元になっています。台湾や韓国ではキーボードが主流となっていて、ゲームパッド文化というのは日本ならではです。USERJOY Technologyさんは「AngelLoveOnline」で初めてPS3の開発をして、だからこそなのか、そこでゲームパッドの大事さに気付いたようです。
――台湾からゲームパッドの作り込みの提案があったというのは面白いですね。お話からも、コンシューマーゲームを相当意識されていることが伝わってきます。
君塚氏: 台湾でコンシューマーゲームを開発している会社はなかなかないので、それもあって開発をUSERJOY Technologyさんにお願いしました。オンラインPCゲームとは言え、コンシューマーゲームをやってきた人にもぜひプレイしてもらいたいですね。
■ 近接攻撃を主体に、長所と短所が明確に出た職業5種
開発内で物議をかもしたという「ハンター」 |
――今回は職業が5種類ありますが、職業の制作で苦労した点などはありますか?
君塚氏: 当初目指していたコンセプトでは、コンボを爽快に楽しんでもらう接近戦を主体として考えていました。そのため、近接攻撃となる「ナイト」、「アサシン」、「バーサーカー」はすんなりと決まったのですが、「ハンター」が物議をかもしてしまいました。
――弓を使う「ハンター」はオーソドックスな職業だと思いましたが、どういうことでしょうか?
君塚氏: 「ハンター」は遠距離攻撃ができるので他の職業と比べても有利で、他のゲームではその分威力を弱めるなどで対応できますが、本作の意図からすると、敵から離れていると打ち上げ攻撃のような売りになるアクション要素を殺してしまう所があったのです。
――しかし、最終的にはゲームに実装されていますね。
君塚氏: これはUSERJOY Technologyさんから「色々な人がプレイすることを考えると、弓のような遠距離攻撃が好きな人もいるはず」という意見が上がり、では「ハンター」をどのように実装するかという話の流れになりました。
――どのように解決したのでしょうか?
君塚氏: 遠距離から攻撃はできるのですが、敵が仰け反らないようにしました。確かに弓は有利ですが、敵はダメージを受けつつも近づいてくるので、そこは不利な点になっています。結果的には、職業の長所と短所がはっきりと出てきたので、ゲームに深みが出ていると思います。
――他の職業ではどのような特徴がありますか?
君塚氏: 先ほど挙げた「ナイト」、「アサシン」、「バーサーカー」は剣を使った近接攻撃の中で、攻撃力の高さと攻撃回数でバリエーションを付けています。「マジシャン」は、スキルによる遠距離攻撃が主体となりますが、さらに属性攻撃魔法を早い段階から覚えられるので、他の職業よりも属性攻撃に秀でているという特徴があります。
■ 「N3」を踏襲した世界観、ストーリーは「N3O」オリジナル
「N3O」の世界はシリーズ過去作と違って雰囲気は明るめ |
――「N3」らしさという点では、アクションの他にストーリーを挙げていらっしゃいました。「N3」の過去作とはパラレルワールドになっているようですね。
君塚氏: 世界観としては、過去の「N3」シリーズとはストーリーの繋がりはなく、別次元の設定になっています。そのため「N3」を知らない方でもすんなりゲームに入っていただけると思います。またシリーズを通して登場している「夜の王」や「オーブ」などのキーワードはところどころに出てくるので、「N3」の世界を知っている方でしたら、より楽しめると思います。
――シリーズとはまた違ったストーリーが展開するようですが、どのように作られたのでしょうか?
君塚氏: 「N3」は暗い雰囲気を持ったゲームでしたが、長時間プレイされる方もいると思うので、どちらかというと平和で明るい世界にしました。またオンラインゲームは終わりがないので、ボスを倒した後どのように続かせるか、どのような世界設定にするかというあたりは、資料を多く作ってからゲーム制作に入りました。
――設定をかなり作り込んだということでしょうか?
君塚氏: 海外ではストーリーとゲーム開発が同時に進み、設定の資料などが担当者の頭の中だけに入っていて形として残っていないという話をよく耳にしますが、今回は、歴史年表などを作成して目に見える形にしました。例えば、人間界で伝えられていた話が実は史実と違っている、というようなエピソードもあります。それ以外にも、裏設定を考えたり、どこにも登場しないようなNPCの名前なども資料に忍ばせて、個人的にも楽しんでいます。
――それらの設定は今後にも活かされると考えていいでしょうか?
君塚氏: 伏線もいくつかあります。設定を作り込んだおかげで、ストーリーは作りやすくなっています。今後の展開を楽しみにしていてください。
■ アクション上級者もオンライン初心者も幅広く楽しめるアクションRPG
ダンジョンにはギミック、「OKD」、「疲労度」など、協力を促す要素がたくさん盛り込まれる |
――他にも、ダンジョンにおいてコミュニケーションを促進させる要素も導入すると伺いましたが。
君塚氏: ダンジョンに入る時に必要になる「疲労度」というものです。ダンジョンには難易度としてイージー、ノーマル、ハードと3種類あって、イージーでは「疲労度」は減りませんが、ノーマルでは少し減り、ハードではたくさん減ります。クエスト達成にダンジョンクリアが必要な場合はイージーに挑戦すれば大丈夫です。ノーマル以上ではアイテムのレア度や経験値が変わるので、そこを楽しんでいただければと思います。
また「疲労度」の消費はパーティを組むことで抑えられます。アクションゲームはチャットをする暇もない程忙しくなるので、コミュニケーションの機会は少なくなると思います。コミュニケーションを取りたい人にはチャンスになりますし、とにかくダンジョンをプレイしたい人にもパーティを組むメリットがあります。運営としては、遊んでいただく上でプレーヤー同士のコミュニケーションもたくさん取ってほしいので、それぞれにメリットがあるような形にしました。
――「疲労度」を導入した意図として他には何かありますか?
君塚氏: ダンジョンでのアイテムのドロップ率を上げられます。プレーヤーによっては1日に100回ダンジョンに挑戦できる時間がある人と、数回しか挑戦できない人がいると思います。この場合、どうしてもレアなアイテムはドロップ率を下げざるを得ないのですが、疲労度を導入することによって、挑戦できる回数が減りますので、ドロップ率を上げても流通量を調節できます。そうすると、ダンジョンに数回しかチャレンジできない人でもレアなアイテムを獲得できるチャンスが増えます。実際にはそこまで極端なバランスにはなりませんが、初心者の方にもレアアイテムを獲得する嬉しさを体験してもらおうという意図のものです。
アイテムが欲しければ欲しいほど、仲間の協力が欠かせなくなる「OKD」 |
――他にも、ダンジョンにはギミック的な要素や、倒したボスにコンボを当て続けないとレアアイテムが獲得できない「OKD」(オーバーキルドロップ)システムなど、協力プレイが欠かせないものになるようですね。
君塚氏: 1つには単調にならないようにしていることもありますが、協力プレイが必要な場面は多く登場します。「OKD」だけでなく、次のマップ開放では、ソロプレイではきついくらいに敵が登場しますよ。
――今後の予定について教えてください。
君塚氏: レベルキャップやマップの開放については、プレーヤーの皆様の様子を見ながら順次行なっていきたいと思います。ストーリーは、これからの作業を考えると、来年内には次のものを実装したいと思っています。
――今回はクローズドβテスト(CBT)を行なわずに、いきなりプレオープンサービス開始となりますが、これは何か意図があったのでしょうか?
君塚氏: CBTはサーバーの負荷を試す意味合いが強いと思いますが、こちらはすでに台湾でサービスが稼動しているので、その心配がないというのが1つあります。またCBTを終えるとよくプレーヤーデータをリセットしますが、そこでプレイを止めてしまう方もいます。プレオープンサービスから始めてすぐに正式サービスに繋げることで、より多くの人に楽しんでもらえるのではないかと考えました。
――それでは最後に、これからゲームを始めるプレーヤーの方にメッセージをお願いします。
君塚氏: 「N3」が3Dではなくなったということで、元々「N3」を知っていた方には心配をさせたかもしれませんが、グラフィックス以外は「N3」を踏襲しています。基本無料ということもあるので、1度触れていただければオンラインならではのコミュニティ機能や、やり込み要素も楽しんでいただけると思います。
また「N3」を全く知らないという人にも、ガイドも充実した2D横スクロールのシンプルな作りになっているので、迷ったり諦めたりすることなくゲームを進められると思います。ゲームパッドにも対応しているので、難しいイメージを持たずに、気軽に1度遊んでみてください。
――ありがとうございました。
(C)2011 Q Entertainment Inc.
(C)2011 UserJoy Technology Co., Ltd.
(C)2011 Microsoft Corporation.
Ninety-Nine Nights is a trademark of Microsoft Corporation.
□キューエンタテインメントのホームページ
http://www.qentertainment.com/
□「NINETY-NINE NIGHTS ONLINE」のページ
http://n3o.qonline.jp/
(2011年12月5日)