NHN Japan、韓国NHN本社メディアツアーを開催

コミュニケーション促進を徹底した拠点「グリーンファクトリー」を公開


7月21日~22日 開催



昨年5月に完成した新社屋「グリーンファクトリー」
「グリーンファクトリー」を解説したイ・ウンジェ氏

 NHN Japan株式会社は、韓国のNHN本社に日本メディアを招くツアーを7月21日と22日の2日間に渡って実施している。

 このツアーは、韓国NHNの取り組みを日本に紹介するために開かれたもの。日本での直接的なビジネスは子会社であるNHN Japanが担当しているが、5月に行なわれた「HANGAME EX 2011」では、これまで以上に日本と韓国の連携を強めていく方針を表明し、本社の取り組みを日本のメディアに伝えるために今回のツアーが企画されることになった。

 その韓国NHNは、韓国の大手テレビ局2社、また大手新聞3社の広告売上を1社で上回る、年間1兆1,000億ウォン(約822億円)の売上を記録。またインターネット検索事業においては、現在も「NAVER」が市場の70%を占有し、スマートフォンにおいても50%を超えて首位を確保している。学生からの就職先人気企業ランキングも韓国国内では16.4%の支持を得て1位と、高い人気を誇っている。それらを生み出している場所が、韓国NHNの本社ビル「グリーファクトリー」だ。

 ツアー初日は、「グリーンファクトリー」の内部ツアーが行なわれた。このビルは2010年5月に完成したNHNの新社屋で、地上28階建て(オフィスフロアは27階まで)のビル。ここには「HANGAME」や「NAVER」といったNHNの主要な業務が集約されており、約3,000人の社員が働いている。ちなみに6年前の着工当初は、ビルの半分をNHNで使用し、残りは貸しオフィスにする予定だったそうだが、見通しよりも会社の規模が大きくなったためNHN単社利用でも収まらず、現在は第2社屋の建設を進めているという。

 内部ツアーの説明は、NHNのSPX(スペースエクスペリエンス)チームでマネージャーを務めるイ・ウンジェ氏が担当した。イ氏は「グリーファクトリー」における社内スペースをどう活用するかを決める担当者で、単純な福利厚生の充実に留まらず、とてもユニークな社内環境を整備している。

 イ氏はその方向性を、「楽しく真剣なコミュニケーションと、社員の健康を大切にする」と説明。開放的でリラックスした空間の中で、社員同士のコミュニケーションを促す施設が数多く用意されている。その具体的な内容は、写真を交えながら紹介していく。


こちらはツアーで使われているNHNのラッピングバス。普段は社員の通勤などに使われており、合計で38台所有している。デザインは複数あり、中にはNHN Japanで近日サービス予定の「TERA」のものも3台ほどある



■ 1階から2階は一般開放。図書館やショップなどを利用可能

 まず大前提として、ビルの1階から2階までの施設は一般開放されている。ここにはNHNのグッズを販売するショップもあるが、それのみならず図書館や展示スペースもあり、ソウル市民であれば自由に利用できる。さらには登録されたプレス関係者が自由に使えるプレスルームまで用意されている。

 図書館には、デザインやプログラミングなどの専門書を中心に約2万冊の蔵書がある。日本や米国など海外から取り寄せた書籍や、社員が自らお薦め書籍を紹介するコーナーなどがある。


図書館は1階から2階に続く広いスペースがとられている。開発者向けの専門書が多いが、特定のテーマで集められた本など、一般書籍も豊富にそろっている
ショップではNHNの商品を販売。PC関連商品からキャラクターグッズまで幅広い商品が扱われている
展示スペースでは、「TERA」の原画イラスト展覧会が行なわれていた。キャラクターの人気投票も実施されている
現地メディア向けに無料開放されているプレスルーム。利用スペースだけでなく、インターネット回線やプリンター、ドリンクまでが用意されている



■ 4階にはカフェを設置。さまざまな形でリラックスできるスペースを提供

 次からは社員専用となるフロア。4階には広々としたカフェのスペースが用意されている。以前はコーヒーショップで重要な打ち合わせをすることが多かったそうで、それならいっそ社内に広いカフェを用意してしまおう、という発想だ。韓国では上司が部下にコーヒーを振舞うという文化があるということもあり、1日に2,500杯のコーヒーが販売されているという。

 テーブルも独特で、海外製品を仕入れた際の大きな木箱を材料に作った、ちょっと荒い印象の木製のテーブルや、ペットボトルをリサイクルして作られたプラスチック製の椅子など、エコなものもある。またテーブル上にレゴブロックが積まれており、自由に遊べるテーブルもある。遊び心にあふれた空間で、社員も大いにリラックスしながら話をしていた。社長からは「これで仕事をしているのかと心配になる」と言われるそうだが、イ氏は「ここでリラックスしてから集中して仕事する方が、社風に合っている」と胸を張って答えた。ちなみにNHN Japanにも数十人が入れる広いカフェがあり、ユーザーを招いたイベントなどでも使われている。


社内に用意された広々としたカフェ。多くの社員がコーヒーを飲みながら談笑していた
レゴブロックで遊べるテーブルや、屋外のスペースも。カップは洗って使えるものも用意され、エコにも配慮している
最新デバイスを体験できるコーナーも用意されており、社員は自由に触れられるコンビニエンスストアも出店している。営業は21時まで



■ 社員向けのサービスは16階に集約。女性に配慮した設備も充実

 次はさらに上がって16階へ。ここは総務的な部署になるのだが、一般的なオフィス風景ではなく、銀行などをイメージしたデザインになっている。社員向けのサポート業務でありながら、「サービス」として提供しようという姿勢がよく表われている。

 このフロアには他にも、PC関連のヘルプデスクや医務室、さらには授乳室も用意されている。社内には300人規模の育児施設もあり、女性の社会進出を強くバックアップしている。実際にNHNの社員は40%が女性だという。


社内の1部署とは思えないデザインを採用したサービスデスク。社員への気配りの一環といえる
他にもPCのヘルプデスクや医務室、授乳室など設備・サービスが充実している



■ オフィスフロアには、必ず通る場所に気軽な会議スペースを設置

 続いて、さらに上のオフィスフロアに移動した。オフィススペースには立ち入り禁止だったが、NHNでは移り変わりの激しいインターネットビジネスに対応するため、3カ月ごとに組織変更を行なっているという。例えば、AppleがiOSでFlashをサポートしないと発表したことを受けて、NHN社内にあったFlashデザインチームを解体するなど、思い切りのいい動きを見せている。

 このフロアにはオフィススペースのほかに、通路脇に会議スペースが作られている。何かの移動の際に必ず通る場所に設置されたこのスペースは「Hive(巣)」と呼ばれており、単なる会議室とは違うユニークな形状をした空間になっている。下のフロアに移動することなく、コーヒーなどを飲みながら気軽に集まって話ができる場所になっており、取材の際にはお菓子を広げて談笑している一団にも遭遇した。


きっちりと区分けされたオフィススペースとは打って変わって、誰もが通る場所「Hive」に独特な形状で作られたミーティングスペースや、イラストを全面に配して遊び心を取り入れた階段もある
ユニークな施設としてはもう1つ、「歯磨き部屋」がある。さらに要望を受けて男女別になっているが、利用率は圧倒的に女性が高いようだ



■ 最上階には多彩な会議室とランチスペースが

 最上階の27階には、それぞれ特色を持たせた会議室が約10室と、ランチスペースが用意されている。自社ビルの最上階と言えば経営陣の部屋があるものと相場が決まっているが、NHNでは社員に使ってもらおうという方針を採っている。

 カフェは4階にもあったが、こちらにはパンやサラダ、ケーキなどもあり、食事もとれる場所になっている。最上階だけあって、街並みを見下ろす外の風景も楽しめる。

 会議室は黒く塗られた落ち着いた雰囲気の部屋もあれば、逆に真っ白で妙に圧迫感のある部屋もある。その時々の気分や用途で使い分けられ、会議しながら気分転換も図れるという仕掛けになっている。


最上階のランチスペース。見晴らしのいい場所で、豊富なメニューが楽しめる。ここでも社員が集まって話をしていた
同じく最上階にある会議室。部屋のデザインがさまざまあり、単調な会議にならないような配慮がされている



 「グリーンファクトリー」の内部ツアーは以上となる。遊び心が入りリラックスできるミーティングスペースを多数用意することで、社員同士のコミュニケーションを少しでも活発にしようという意図が感じられた。あるいはNHNの企業文化を目に見える形に作り上げたのが「グリーンファクトリー」だ、とも言えるだろう。


「グリーンファクトリー」の特徴の1つが、回転する壁「バーチカル・ルーバー」。細かい穴が開けられた緑の板で、日光をさえぎりながらも外が見えるようになっている。外から見ると、このためにビル全体が緑がかって見える
エレベーターには上下のボタンがない。タッチパネル式のスクリーンで行き先を選ぶと、使用するエレベーターが指示され、乗り込むと先に入力したフロアで自動的に止まる。多くの社員を最も効率よく運べるようプログラムされている。またフロアによってエレベーターホールのデザインが違うのも面白い

(2011年 7月 22日)

[Reported by 石田賀津男]