E3 2011レポート

世界最高峰のレースシム「Forza Motorsport 4」プレビュー
キーワードで読み解く「Forza 4」の革新性と多様性


6月7日~9日 開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center



 E3 2010で「Forza Motorsport Preview」として衝撃のデビューを遂げてから1年あまり。Turn 10 Studiosは、E3 2011では「Forza Motorsport 4」というナンバリングタイトルとしてキッチリ仕上げてきた。発売時期は北米が10月11日、日本が10月13日。価格は59.99ドル。日本での価格は未定となっている。

Microsoft「Forza Motorsport 4」コーナー
E3会期中に開催された「Forza 4」のナイトパーティー

 今回のE3では、Microsoft Media Briefingでのタイトルの発表を皮切りに、Microsoft主催のナイトパーティー「Best of Xbox Showcase」では初プレイアブルを出展したほか、Kinectによる試遊も公開。翌日の「Forza Motorsport 4」Night Partyでは、LAのVIPやスーパーカーオーナーを集めて盛大なローンチパーティーを開催。さりげなく、Microsoftの新ハンドルコントローラー「Microsoft Wireless Speed Wheel」の初お披露目も行なった。

 そしてE3会場では、Turn 10自慢の3画面モニターによる試遊のほか、通常コントローラー、Kinect、「Microsoft Wireless Speed Wheel」、Fanatec、MadCatsという5種類のバリエーションで「Forza 4」をアピール。出展面積としても、「Gears of War 3」や「Dance Central 2」を上回る最大規模で、過去最大規模の力の入れようだった。

 彼らがなぜここまで力を入れるのかというと、「Forza」シリーズがレースゲームの世界で実力ではナンバーワンでも、数字やブランドでは「グランツーリスモ」シリーズにまだまだ及ばないからだ。「GT5」の550万本に対して、「Forza 3」は非公表ながら300から400万本程度と推定される。Microsoftとしても、「Forza」シリーズを「Halo」、「Gears of War」に続く第3の柱にしようとしており、Turn 10としてもまだまだストイックに攻め続ける必要があるわけだ。

 そして「グランツーリスモ」シリーズを名実共に上回り、Microsoftの3本柱のひとつになるための決定的な挑戦が今回の「Forza 4」となる。「Forza」シリーズは「Forza 3」でひとつの到達点にたどり着いたフランチャイズだが、それでは「Forza 3」と「Forza 4」は何が違うのか、どの辺りが世界最高峰のドライビングシミュレーターと言えるのか。4つのキーワードから読み解いていきたい。


【「Forza Motorsport 4」最新トレーラー】
無音トレーラーと思いきや中盤のエンジン音からサウンドスタート。Autovistaモードのハイポリゴンモデル、新コース「アルプス」の景観の美しさ、Kinectのヘッドトラッキングによるコックピットビューにおける滑らかな視点移動、高速時のビリビリとした振動などをぜひ自分の目で確認して欲しい。レースゲームは「Forza 4」でまた新次元を迎える

今回Microsoftは自社ブースのあるSouthホールとは反対のSCEAや任天堂がブースを構えるWestホール前に「Forza 4」をFerrari 458 Italiaと共に出展
今回取材に協力頂いたTurn 10 Studiosシニアデザイナーの谷口潤氏。元セガで「セガラリー」の開発経験を持つ

・最高のレース体験

 最高のレース体験に必要なのは、リアルなコース、豊富な車、そしてドライビングシミュレーションの精度、そのバリエーションなどだ。肝心のコースと車は東京ゲームショウ前後での発表が予定されており、正確なところは教えてもらえなかったが、「Forza 4」では80種類のメーカーから500種類前後の車が収録されることが予想される。

 コースは新コース「アルプス」、「Top Gear テストコース」などを含む数十のコースを収録予定。従来のコースについては、オンラインプレイで人気コース、不人気コースは正確に把握できるため、人気コースを中心に再収録。日本のコースは鈴鹿、筑波、もてぎ、富士見街道と4つのコースが収録されているが、新コースもあるかもしれないということだ。

 ゲームの柱となるのは前作同様「キャリアモード」となるが、新しい遊び方の提案として「ワールドツアー」が追加される。これは完全新規のモードではなく、グラフィカルなワールドマップを参照しながら、自分のカーに合ったレースにチャレンジできるというもので、従来のキャリアモードの無味乾燥さを改善する機能と考えて良い。これまでは、イベントごとに車を選び直す必要があったが、ワールドツアーでは車を先に選んで、その車のクラス、メーカー、生産国に合ったレースが自動的に選ばれる。

 また今回、「Forza 3」の際と大きく環境が異なるのは、ハンドルコントローラーが豊富に用意されるところだ。「Forza 4」では後述するKinect対応ばかりが注目されがちだが、Microsoftからは「Microsoft Wireless Speed Wheel」が発売され、海外大手ペリフェラルメーカーのFanatecやMadCatsからも「Forza 4」推奨ハンドルコントローラーが発売される。日本での発売は未定というところが残念なところではあるが、素手によるハンドル操作から、ワイヤレスによるハンドル操作、通常コントローラー、そしてハイエンドハンドルコントローラーと、プレーヤーのスタイルと好みに合わせて環境を整えることができるようになるのは大きい。ちなみにゲームの難易度設定は、イージー、ノーマル、ハード、アドバンス、エキスパートの5種類で、全アシストオプションを自分好みにカスタマイズすることも可能だ。

 そしてシミュレーションの精度については、「Forza」シリーズの売り文句である「1080p、60fps、360fps(解像度、フレームレート、物理シミュレーションレート)」は今回もコミットされる。これは後述する16人対戦でもこれをなんとか実現しようと現在現場で奮闘しているという(現時点ではまだ確約はしていない)。リプレイモードは前作同様30fpsとなるようだ。

 なお、今回の取材では、ドライバーの成長要素がよくわからなかった。レベル制なのか、別の何かなのか。また画面左側にターン、追い越し、ドリフト時などに最大4つのゲージで、その技能性がスコアとして表示される。「PGR」シリーズのKUDOSのようなシステムと思われるが、この詳細についても後日ということのようだ。


【収録車種(一部)】
左上から順にFerrari 458 Italia、Aston Martin V12 Vantage、Mosler MT900S、Jaguar XFR。「Forza 4」の収録車種はまだ非公開。80社のメーカーが参加することは発表されているので、好きなメーカーの車が収録されていることを願うばかり

Autovistaモードのハイポリゴンモデルは、「Forza 4」のウリのひとつ。今回「Forza 4」では、Autovistaモードとレース用で2つのポリゴンモデルを用意する。Autovistaモードのハイポリモデルは、ぐんぐん寄ってもアラが出ないほど素晴らしい出来映えだ。たっぷり眺め回そう

・グラフィックス

 次にグラフィックスについては、「Forza 3」をベースに全面的にブラッシュアップを行なっている。近景の建物等のオブジェクトのクオリティアップ、遠景の風景の見え方の調整、ライティングエンジンのブラッシュアップにより、車の“ふち”への光の乱反射や、太陽光のまぶしさの表現、あるいは水面の煌めきなどが強化されている。

 また、大きなウリとなりそうなのは、コックピットビューの全面改良だ。「Forza 3」ですべてのゲージがフル稼働するコクピットビューを全車に実装してが、「Forza 4」ではそこからさらに進化させてコクピットビューでの動的なライティング、シャドウイング、そしてコース上の微かなバンプを音や振動でシミュレートし、またスピードによっても振動が変化するようになっている。この辺は上記トレーラーを見て頂ければ一目瞭然だ。Turn 10 StudiosクリエイティブディレクターDan Greenawalt氏によれば、高速時のスピード感、恐怖感のようなものをもっと具体的に表現したかったという。

 またコクピットビューそのものの視点も若干後ろになり、車内のインテリアが見やすくなっただけでなく、加速時にはスピード感を出すためにククッと視点が後ろに動き、ブレーキング時は視点がやや前のめりになる。この上さらに、Kinectのヘッドトラッキングを使うと、頭の動きに合わせて視点が縦横に動く。Turn 10ではこれを“ハリウッドスタイルカメラエフェクト”と呼んでおり、この非常に動的な「Forza 4」のコックピットビューを見てしまうと、もはや「Forza 3」以前のレースゲームには戻れない感じだ。

 コックピット外の視点ももちろん強化されている。加速時にはブラーが掛かるようになっており、車のバックファイア、スモークといったエフェクトも再現。さらにタイムオブデイと呼ばれる独自のシステムを採用し、朝、昼、夕方といったいくつかの時間帯をビジュアルの変化で再現する。残念ながら、夜や天候の変化といった要素の実装は見送られた。このあたりは「5」への宿題だろう。


Microsoftの「Forza 4」Kinect体験コーナーは常に満員の人気ぶりだった
「Forza 4」のAutovistaモードをデモするDan Greenawalt氏。Kinectだと体感的、直感的だが、コントローラーのほうがクイックな操作が可能だ

・Kinectへの完全対応

 そしてKinect対応である。Kinectでできることは、Autovistaモードの操作、Autovistaモードでのテストドライブ、ヘッドトラッキング機能、音声によるメニュー操作の4つである。これらはそれぞれモードが異なり、同時に使うことはできない点に注意が必要だ。

 まず、Autovistaモードは、昨年「Forza Motorsport Preview」というコードネームで発表されたモードの正式名称で、文字通り車を眺め回して楽しむモードだ。そのおまけとしてKinectによるテストドライビングも楽しめるというわけだ。

 Autovistaモードは、まず眺めたい/乗ってみたいスーパーカーを選び、後はKinectを使って手や身振りで直感的に操作しながら、スーパーカーの各パーツや性能をテキスト解説やTop Gear人気司会者Jeremy Clarkson氏による音声解説で楽しむことができる。ガルウィングのドアを開いてみたり、車内に入って内装を眺め回したり、エンジンを掛けてエンジンを吹かしたりもできる。さらにそのまま試乗することも可能だ。

 なお、Autovistaモードは通常コントローラーやハンドルコントローラーでも操作可能だ。Autovistaモードに収録されるスーパーカーの数は未定。ハイポリゴンモデルや稼働オブジェクトの実装、テキスト/音声解説の収録などかなりの手間が掛かるため全車種の収録は不可能で、メーカーを代表する名車限定となる見込み。Turn 10によれば、ギミックの多い、眺めて楽しい車を優先的に選んでいるということだ。

 さて、Kinectによるテストドライブは、ハンドル操作とブレーキ操作のみ。基本的にはオートアクセル、オートブレーキで、推奨ラインの上を走りさえすれば、ハンドル操作だけで走りきることができる。難易度設定イージーのさらにその下といったイメージだ。足を動かすことでブレーキ/バック操作も可能だが、ライバルカーを避ける際やクラッシュ時に使うぐらい。基本的にはカジュアルゲーマー向けのカジュアルドライビングモードだ。

 Kinectによるテストドライブがカジュアルゲーマー向けの機能だとすると、ヘッドトラッキング機能はまさに「Forza」ファン、レースゲームファンのための機能だ。「Forza 4」ではキャリアモード等でレースオプションのひとつとして「ヘッドトラッキング」が追加されており、Kinectでしっかり頭部がトラッキングできるようにキャリブレートし、機能をオンにすることで、頭の動きでコックピットビューにおけるドライバーズ視点を自由に動かすことができるようになる。

 もちろん、左90度の動きで、左90度視点が動く設定だと、ゲーム画面が見えなくなってしまうため、実際の動きより視点の振り幅は大きくしてあるということだが、実際に試してみるとなかなか感動的だ。ヘッドトラッキングの世界はPCゲームの独壇場だったが、それが「Forza 4」ではKinectがあれば簡単に実現できる。レースゲームの世界がまた一段と広がった印象だ。

 ヘッドトラッキングについて強いて難点を上げれば、少々酔いそうだなという点と、むしろ1画面の視野角の狭さを実感してしまうため、3画面環境が欲しくなってしまうところだ。もっとも、これにより3画面環境を構築する「Forza」ファンは間違いなく増えるだろう。

 4つめの使い方である音声認識は、音声入力でメニュー操作を行なうというもの。発表会等では音声認識のみがクローズアップされていたが、シングルプレイだけでなく、後述するコミュニティ機能でも使用できるようだ。コマンドの総数は不明だが、基本的な操作は音声とジェスチャーで可能になるという。


【Autovistaモード】
Autovistaモードでは、Top Gear人気司会者Jeremy Clarkson氏による音声解説を楽しむことができる。Top Gearのファンはニヤリとしてしまうだろう

「Forza 4」Night Partyで大人気だったTop Gear人気ドライバーのSTIG。Top Gearとの全面タイアップにより、彼の参戦にも期待したい

・コミュニティプレイ

 Turn 10では、快適なマルチプレイの実装は当たり前の話であり、これからは「コミュニティプレイ」の時代だと認識している。この場合のコミュニティプレイとは、単にネットワークを介して複数人で遊ぶだけでなく、オンラインならではの楽しみ方を指す。

 その実現のために実装されるのがカークラブ機能とライバルカー機能だ。カークラブは、「Testdrive」シリーズのように、オンライン上にクラブを作って、カークラブ専用の機能を使って新たな遊びが楽しめるという機能だ。

 現在検討している機能は、クラブ内での車のシェア、クラブネーム/ロゴの作成、クラブ内レース、クラブ間レース、クラブ内ランキング、クラブ間ランキングなどなど。クラブメンバーが集まるためのバーチャルスペースなどは特に用意しないということだが、1セッションで最大16人まで入れるため、クラブでルームを作り、メンバーでチャットしたり、適当にドライブするのも楽しいかもしれない。

 ライバルカーは、リプレイデータのゴーストカーを使った非同期型のマッチングモード。近いタイムのユーザーをライバルと見定め、そのライバルのタイムを更新すると、そのライバルにメッセージが届き、お互い切磋琢磨できるようになっている。これは単なる意地の張り合いに終わらず、タイムを更新することでクレジット(お金)と経験値が入るため、お互いにメリットが生まれる。クラブ内でやるとより盛り上がりそうだ

 なお、これは厳密にはコミュニティ機能ではないが、「Forza 3」からのセーブデータの引き継ぎが可能となっている。引き継げる内容については現在調整中とのことだが、現時点で確定しているのは、基本的に車は引きつげず、プロファイルデータやペイントデータなどを引き継げるようにすることを考えているようだ。まだ、ドライバーのレベルや車等を見て、キャリアモードの一部を飛ばせるようにするかも知れないということだ。




“Mr Forza”ことTurn 10 StudiosクリエイティブディレクターDan Greenawalt氏

 今回はTurn 10 Studiosの複数のスタッフに取材を行なうことができたが、E3最終日に開発総指揮を執る「Forza Motorsport 4」クリエイティブディレクターのDan Greenawalt氏に、「貴方にとって『Forza』とは何か?」と聞いたところ、少し沈思した後、こう答えた。

 「私の人生は車であり、私は車を愛している。子供も車が好きだし、両親もそうだ。私が車が愛するように、みんなにも車を愛して貰いたい。車には色んな人にとって色んな意味を持っているので、みんなが同じような愛し方はできないのは理解している。ただ、私と同じような情熱で車を愛して欲しいと思っている。スーパーカーでもマッスルカーでも日本の車でも何でもいい。『Forza』を通じて車を紹介することによって、みんなに少しでもその情熱が伝わればいい。そういう気持ちでゲームを作っている」。

 「もうひとつ付け加えるなら、『Forza 4』はみんなに色んな方法で楽しんで貰いたいと思っている。コントローラー、ホイール、ヘッドトラッキング、Kinectといった中から自分の好きな方法で『Forza』を楽しんで貰いたいと思っている。シングルプレイ、マルチプレイもある。プロレーサーのように楽しんでも良いし、子供が車をクラッシュさせてもいい。自然なスタイルで『Forza』を楽しんで貰えれば幸いだ」

 毎年「Forza」シリーズを取材して思うことだが、「Forza」シリーズの強さの秘密は、彼自身の哲学の強固さにある。高みを目指すことに手を抜かずに、同時に新規獲得の施策にも力を注ぎ、幅広い層にアピールする作品に仕上げる。そのためにはKinectだろうが、なんだろうが活用できるものは何でも使う。おそらくKinectの活用法についてはレースゲームファンの間でも賛否があるはずだが、個人的には支持したい。「Forza Motorsport 4」はずばり今年もっとも期待したいレースゲームのひとつだ。


(2011年 6月 11日)

[Reported by 中村聖司]