E3 2011レポート

セガ、PS3/Xbox 360「Binary Domain」プレビュー&インタビュー
名越氏、「1から作ったが、たどり着いたTPSの進化形を見せたい」


6月7日~9日開催(現地時間)

会場:Los Angeles Convention Center



 セガのプレイステーション 3/Xbox 360用ドラマティックアクション「Binary Domain(バイナリー ドメイン)」は、プロデューサーの名越稔洋氏率いる「龍が如く開発チーム」の新プロジェクトとして、注目を集めているタイトルである。

 本作は2012年2月に発売予定で、今回のE3では初めての試遊台が出展された。さらにメディア向けに説明会および、名越氏の囲み取材によるインタビューが行なわれた。本稿ではこれらの取材を通じて得られた情報を元に本作の魅力を紹介していきたい。



■ 「集まれ」、「撃て」、「愛している」……音声認識で反応する仲間達

ゲームのキャラクターの雰囲気を再現したコンパニオン
廃墟の上に摩天楼。本作の舞台となる2080年の日本の姿だ

 「Binary Domain」は、仲間とともに戦うTPSだ。物語の舞台は、2080年の日本。主人公のダン・マーシャルは人に似たロボットの生産を禁じる国際機関IRTAの極秘の潜入査察部隊「ラストクルー」の一員だ。日本での調査に赴いたダン達の前に様々なロボットが襲いかかってくる。「ラストクルー」のメンバーは戦いながら、真実に迫っていく。

 メディア向け説明会では開発スタッフによるデモプレイが行なわれた。「Binary Domain」の最大の特徴は、音声認識とコミュニケーションだという。「集まれ」というとプレーヤーの近くに来るし、「逃げろ」といえばプレーヤーから離れる。仲間が複数の場合は、「フェイ、攻撃」と命令の前に名前を言えば特定の相手に命令を下せる。声のやりとりはヘッドセットを通じて行なう。ヘッドセットがない人のために同梱版も検討しているという。

 戦闘では、協力することでより効率的に戦える。ボス戦では装甲をバズーカではずして弱点を露出させてから、「撃て」と命令すると自動的にその部分を狙うという。「カバーしろ」、「攻撃」、「来い」といった基本的なコマンドは例として画面に出すことができるそれ以外のコマンドにも対応していて、「がんばれ」というと、アグレッシブに攻撃するという。

 慣れてくれば、的確に命令を下し、チームを連携させて戦える。攻撃を食らいすぎて倒れた場合は、「助けて」といえば蘇生してくれる。仲間の要望に「無理だ」と返すことも可能だ。また、ゲームでは戦いの合間に雑談ができ、女性隊員に「愛している」ということもできる。今回の場合は、「何言ってるのよ」と軽く拒否されたが、仲間には信頼度があり、命令や状況で上下する。信頼度が上がれば、会話の展開も変わっていきそうだ。

 仲間は危険を共にくぐり受け、絆を深くしていく。仲間は経験を積むことで成長する。仲間達とどんな物語を重ねていくかも注目だ。仲間にその場を任せて置き去りにしてしまう様な状況もあるという。その時誰を残すか決断が迫られる。

 敵となるロボットは、「人間ではない」という描写に重点が置かれていて、部位を破壊することで、機能を制限できる。機種によって反応が違い、ザコ敵のロボットは頭を破壊すると敵味方の区別がつかなくなる。ボスは前述のようにカバーを破壊したり、間接を狙うことで破壊可能だ。

 デモプレイでは、撃ちまくり、壊しまくりの激しい展開が連続した。敵は耐久力が高く、かなりのダメージを受けないと倒れず、不気味にこちらを取り囲んで来る。バケツのような飛行ユニットにつり下げられているような敵もいた。弾が当たるとロボットはぼろぼろになっていく。また、壁なども銃弾で穴だらけになって崩壊する。本作は独自のゲームエンジンが使われており、描写も注目点の1つだ。

 音声認識は、反応してくれると頼もしい。「集まれ」で火力を集中したり、倒れたときは「助けて」というと助けてくれる。まだ調整中で誤認も多かったが、仲間に声をかけながら進むのは楽しそうだった。ちなみに「愛してる」といっても、現時点では「何を言ってるの」と返されてしまうとのこと。信頼度で、変わったりするのかもしれない。

 舞台となる日本の描写も楽しいところだ。ダンは米人であり、他のメンバーも多くが日本以外の国籍だ。彼ら外国である日本に来てどう思うか、日本ならではの奇妙な部分を意識してステージを制作しているという。このため、「こてこての日本像」を表現したいとのこと。デモプレイでは、澁谷で市街戦が行なわれたが、変わり果てながらも、ハチ公銅像や、通りの雰囲気に現在と共通するものがあった。現実とリンクする要素が楽しい。

 今回体験できたのは英語吹き替え版。パワーアップなどは自動販売機で買うのだが、英語版でも、「いらっしゃいませ」と日本語で言うのだ。日本の自動販売機だから日本語をしゃべらせたかっとのこと。他にも街の住人は、日本語をしゃべるという。こういった細かいこだわりポイントも面白く感じた。


試遊台では音声認識はできなかったが、ボス戦まで体験できた。仲間をうまく使わないと勝てなかった
スクリーンショット。仲間との連携が重要だ



■ 「現在はコンセプトを実現。ここから東京ゲームショウではさらに進化を」。名越稔洋氏インタビュー

プロデューサーを務めるセガの名越稔洋氏

 デモプレイと共に、プロデューサーを務める名越稔洋氏にインタビューを行なった。「現在の開発状況はまだこれからだが、ここから半年で作り込んでいく。今回はなんとかプレイできるものを出したが、東京ゲームショウではさらに進化したものになる」という。

 音声入力、仲間との戦いといった部分が見せたかったところで、まだまだこれからだが、基礎はできたと自負はある。ここから練り込もう、というところまでは完成できたのではないかと、名越氏は自己分析する。敵をバラバラにできるなど、コンセプトは表現できたという。

 一方、ストーリーのテーマに対しては、「敵は瞬時に情報共有してくる。一方、人間は声を出し合って協力する。本作は、『機械と人間』、『貧民と富裕層』など、様々な対立構造を生んでいる。二面性を問い続けていって、最終的に『命』というテーマにたどり着きました」と語った。

 TPSに挑んだ理由は、「日本の開発者では、成功したケースがない、今回は受けいられるための仕掛けを用意しました。もちろん他の作品を参考にしましたが、1から作った。だからこその進化を見せられると思います」と名越氏は答えた。

 名越氏にとって、海外のTPSはかなり難しいハードルが高い。日本ならではの幅広さ、TPSユ-ザーでなくてもうけいられるバランスはあるはずだ。敵との駆け引きなどはもっと作り込んでいく。海外のゲームと比べて、どこから撃たれた方向がわかるなど、自分たちなりの答えを探しつつ作っているという。日本のユーザー向けにきちんと作っている。一方海外ユーザーへは音声認識の要素を見てもらいたいという。

 最後に名越氏は日本のユーザーへのメッセージとして、「日本でもこれから毎月情報を出し、どかんと見てもらおうと思っています。もうちょっと待っててください」と語った。


敵となるロボットの異質さ、ボスの巨大さが伝わってくる

(C)SEGA

(2011年 6月 8日)

[Reported by 勝田哲也]