Rockstar Games、PS3/Xbox 360「L.A.ノワール」先行体験レポート
ゲームシステムと、“時代の空気”を、ミッション「墜ちた偶像」で体感


7月7日 発売予定

価格:7,770円

CEROレーティング:Z(18歳以上のみ対象)


 米Rockstar Gamesは4月、プレイステーション 3/Xbox 360用クライムスリラー「L.A.ノワール」のメディア向け体験会を開催した。「L.A.ノワール」は7月7日、価格は7,770円で発売予定。ローカライズは英語音声、日本語字幕で、CEROレーティングはZ(18歳以上のみ対象)となる。

 今回の体験会ではミッションの1つである「堕ちた偶像」のデモプレイを見ることができた。本稿では「L.A.ノワール」の基本的なゲームシステム、そして全部で20以上あるケース(事件)の1つ「堕ちた偶像」の展開を紹介していきたい。なお、本稿ではケースの展開を細かく描写するので、若干のネタバレがあることをご理解いただいた上でお読みいただきたい。



■ 有名女優の自動車転落事故。相手の表情や仕草から真実を導き出せ

主人公コール・フェルプス。様々な部署へ出世し、時代の闇を見つめていく
事件の始まりのカットシーン。アクセルを踏み込んだ車が、崖下へと転落する。犯人は誰だ?
映画女優のジューン。彼女の表情や仕草から真実を指摘し、事件の手掛かりを得ていく

 「L.A.ノワール」の舞台は1947年のロサンゼルス。テレビが実用化される前、人々が最も映画に熱狂したとも言えるハリウッドの黄金時代だ。しかし、1947年という年は、ロサンゼルスの殺人事件の発生件数が最も多かった年でもある。第2次世界大戦が終結して兵士達は戦場から解放されたが、戦争体験の暗い影を背負ったまま、日常に順応できない人も多かったという。

 本作の主人公コール・フェルプスは沖縄戦も体験した元兵士だ。彼は帰国後、警察に入った。コールはゲームの中で、パトロール課、交通課、殺人課、風紀犯罪課、放火特捜課と、キャリアを重ね、出世していくことになる。各課ではそれぞれの役割で、様々な事件を担当していく。コールは事件を担当しながら、華やかなロサンゼルスに隠されている闇を目撃していくことになる。

 今回の、「堕ちた偶像」は交通課での事件だ。交通課というと駐車違反や交通違反の取り締まりが主な仕事で、殺人事件などには縁のない部署のようにも思えるが、実際には自動車を使った犯罪全般に関わっていく。今回は、ハリウッド女優が車で崖から落ち、崖下の看板に激突したという。ゲームは、崖からダイブする衝撃的なシーンで幕を開ける。“THE FALLEN IDOL”というタイトルも、当時の映画風のフォントが使われており、サスペンス映画のオープニング的雰囲気に溢れている。

 場面は一転して、コールと相棒のステファン・ビコウスキー刑事のブリーフィングとなる。上司より事件の概要を説明された2人は、車に乗って現場へと向かう。ブリーフィングが終わると、いくつかの“手掛かり”と“目標”が提示される。これがプレーヤーへの指標となる。「L.A.ノワール」の基本は「GTA(Grand Theft Auto)」シリーズでおなじみの三人称視点のアクションゲームだ。車に乗り込み、目的地を決め車を運転するところなど「GTA」プレーヤーならばすぐに慣れそうだ。

 1つ大きな違いは、本作ではプレーヤーは法を守る側の人間であること。車で無茶な運転をしてもパトカーに追いかけられはしないが、法を守る立場としてのプレイが求められる。一方、他の車を警察として借りることは可能だという。「警察」であることを意識したゲームプレイは、これまでの同社のゲームとは違った感触を味わえそうである。

 事件現場に到着すると、カットシーンとなる。現場にいる警官の説明によると、事故を起こした車に乗っていたのは、映画女優のジューン・バラードと、まだ未成年の女性ジェシカ。2人の女性は命は別状がないが、ジェシカはダッシュボードに頭をぶつけ病院に運び込まれたという。崖上からダイブし、看板に当たっていなければ、2人とも命がなかったということだ。

 事件の概要を聞いてからは、実際に現場を歩いて捜査する。ここでは“音”が重要となる。手掛かりのある場所では、プレーヤーの注意を促す音が鳴るのだ。ここで手掛かりをチェックすると視点が変わり、手掛かりがアップとなる。事件に関わる物を発見できると、証拠として「手帳」に記録されていく。事件現場の車には、奇妙な物があった。「破り取られた下着」だ。ジェシカの持ち物だという。ジェシカは家出をしてきたらしく、戻って欲しいという家族の手紙も持ち物にあった。また車のアクセルには、映画の小道具に使われる石膏で作られた“干し首”がくくりつけられていたという。

 コールは次に現場検証に立ち会うジューンに質問をする。ここで尋問モードへ移行する。質問は手帳に書き込んだ手掛かりから行なっていく。ここで圧巻なのが、人物の描写である。コールとの会話中、ジューンは様々な表情を見せる。こちらを探るように見たり、目をそらしたり、会話の終わりの表情は内容によって大きく変化する。プレーヤーは彼女の表情や話の内容から、会話の合間に「信用する」、「疑う」、「反証する」の3つのアクションを選ぶ。

 「L.A.ノワール」の目玉の1つがこの尋問シーンだ。この尋問では「正解」が設定されており、プレーヤーは尋問相手の表情やリアクションから、正しい答えを引き出さなくてはならない。間違ってしまってもゲームは進行するが、事件での隠された事実に到達できない場合もある。事件そのものは解決するが、秘密にされたものがそのまま残ってしまうのだ。

 「L.A.ノワール」は1度クリアしたケースは何度でも挑戦できる。たっぷりと駆け引きを楽しみ、全ての事実を白日の下に晒す、やりこみプレイも可能だ。仕草や表情に現われる、キャラクター達のリアルで丁寧な心理描写、そしてお互いの心を探り合う駆け引きといった要素は、本作ならではだ。相手の表情を読み取り、真実に到達する。その爽快感こそが「L.A.ノワール」の大きな楽しみなのだ。


【スクリーンショット】
左はブリーフィングのシーン。中央は交通課での相棒となるビコウスキー刑事。右は現場検証だ。現場を警護する警官とビコウスキー刑事は知り合いのようだ
コールは最初パトロール課の警官としてキャリアをスタートさせる。それ以降、様々な事件を担当することになる。右はビコウスキー刑事の格闘シーン



■ 明らかになっていくハリウッドのスキャンダル。事件は派手な銃撃戦へ

ジェシカへの取り調べ。彼女は“オーディション”を受けたというが……
映画女優ジューンの怪しい行動。見つからないように彼女を調べる
クライマックスは、映画のセットでの銃撃戦。セットの派手さがハリウッドの黄金時代を実感させられる

 「L.A.ノワール」では、1つの尋問がうまくいったとしても、そこで全ての事件は解決しない。まだ隠された事実、その後の様々な展開が待っている。そして1つ1つの真実が、大きな事件の真相へと繋がっていくのだ。ジューンへの質問を終えたコールは、彼女と一緒に転落したジェシカのところへ向かう。

 ジェシカは映画スターになることを夢見る少女だ。最初は嘘でコールをごまかそうとするが、尋問で両親からの手紙で彼女が家を飛び出してハリウッドにいることや、事件前に何があったかを明らかにしていく。彼女は事件前、ある“オーディション”を受けていたというのだ。医師の診断では、彼女には薬物が投与され、暴行されたらしい。彼女は事件のショックで不安定なところがある。質問の態度は慎重にしなくてはならない。

 そして事件は展開していく。コールは、映画女優ジューンの不審な行動を目撃する。ほぼ同時に、事件の鍵を握る映画プロデューサーの家に、暴漢が侵入したという通報が入る。コールは相棒と共にパトカーのサイレンを鳴らして現場に急ぐ。「L.A.ノワール」では、尋問や手掛かりを探すだけでなく、目的地への移動や、アクションによっても展開が大きく変わってくる。

 例えば通報を受けてからプロデューサーの家への到着が遅すぎると、暴漢を捕まえられなくなる。間に合うとその場で暴漢達との殴り合いとなる。コールはボクシングスタイルで敵と対峙する。戦闘はアクション要素が強く、敵に囲まれないように気をつけて戦わなくてはならない。もし倒されても、チェックポイントからの再開が可能だ。ここでは相棒も参戦する。

 プロデューサーの家を襲ったのは、ジューンの夫のマフィアだった。プロデューサーとマフィア、事件の姿が見え始めてくる。そしてジェシカが受けた“オーディション”の会場が浮かび上がってくる。それはある撮影所の異常なサイドビジネスだった。スターに憧れる純朴な少女を利用するハリウッドの暗い闇がコールの前に姿を現わしていく……。

 そしてコールはついに容疑者を追いつめる。容疑者は映画セットを走り回り、コールから逃げる。しかもマフィア達が現われ、容疑者を始末しようとするのだ。コールは容疑者を殺人未遂で逮捕するため、映画セットで激しい銃撃戦を繰り広げる。

 ラストシーンは、「GTA IV」に勝るとも劣らないアクションシーンだ。舞台が映画のセットなのだが、数十メートルはある高さまで組まれた、巨大なエジプトの神殿風なのが楽しい。実際のエジプト神殿でもここまで大きくなかっただろうというオーバースケールで、当時のハリウッドの勢いがどれだけすごかったかを感じさせられる。「L.A.ノワール」は地道で奥深い捜査と、派手なアクションシーンが交差するユニークなアドベンチャーゲームであることが実感できるデモプレイだった。

 本作で特に注目したいのが「時代の再現性」である。「GTA IV」、「Red Dead Redemption」からさらに進化したグラフィックスによる街の再現度は圧巻である。広い地域を再現していたこれまでの作品と比べ、本作はハリウッド周辺とロサンゼルスのダウンタウンが中心というスケールだが、その情報量はこれまでの作品以上にリアルな感触をもたらす。店の1つ1つ、通りの1本1本までこだわって作られた1947年のロサンゼルスを堪能することができる。

 街の再現だけでなく、風俗、そしてメインとなるストーリーも“時代”というテーマが非常に強く反映されている。「L.A.ノワール」のケースは当時のハリウッドで起きた事件をモデルにしている。今回の、「堕ちた偶像」も当時のハリウッドで起きた事件がモデルとなっている。そして現在の様々な国の芸能界でも起こるかもしれない事件でもあるといえるだろう。Rockstar Gamesの作品としても、そしてゲーム全般と比べても“社会派”の雰囲気も持つ作品だと感じた。奥深く、楽しいゲームとなりそうだ。


【スクリーンショット】
映画プロデューサーの自宅を襲ったマフィアとの格闘。ジェシカの証言にあった人魚の像のある映画スタジオ。そしてハリウッドの大きなスキャンダルが明らかになっていく
公開済のスクリーンショットから。様々な場所が、リアルに再現されているのがわかる。ロサンゼルスはプレーヤーの前に様々な表情を見せてくれる

【プロモーションムービー】

レポート掲載と同時に公開されたプロモーションムービー。リアルで美しいグラフィックスだけでなく、キャラクターの心理を現わす表現描写を可能にした技術を紹介している。この技術により、相手の心を読み、嘘を見破る本作ならではの駆け引きが可能になるのだ。もちろん、今回紹介する「墜ちた偶像」でも、相手の表情を読む駆け引きが重要な意味を持つ

(C) 2011 Rockstar Games, Inc.

(2011年 5月 10日)

[Reported by 勝田哲也]