Taipei Game Show 2010現地レポート
Facebookアプリ「Rising Star」でソーシャルゲームに参入するInterserv本社訪問レポート
「M2~神甲演義~」や「玄武戦記Online」などMMORPGも準備中
Interservの本社は、台北市南港区の再開発地区にある |
話を聞かせてくれた、エクゼクティブ・バイス・プレジデントのAria Chang氏 |
2009年に台湾でもっとも流行したものの1つがFacebookだ。Facebookはアメリカで始まり、今や世界中に3億7千万人以上のユーザーを持つ世界一のソーシャルネットワークサービスとなった。台湾でも5年前には上陸したが、2009年初頭までは会員数は4万人と低迷していた。ところがソーシャルゲーム「開心農場」の登場でブームが始まり、一気に会員数500万人を抱える台湾最大のSNSになった。
そんな大ブームを受けて、台湾のメーカーにもFacebook向けのコンテンツを製作する動きが出てきた。日本には「M2~神甲演義~」の開発元として知られる、台湾の老舗ゲームメーカー、Interserv・International(以下、Interserv)はFacebook向けのゲーム「Rising Star(Rising Star)」を発表した。「Rising Star」は作ったアバターを歌手やモデルなどのスターに育てていく育成系のゲームで、2月頭に行なわれたクローズドβテスト(以下、CBT)では短期間に4万人以上が参加した。
今回はInterserv本社で、エクゼクティブ・バイス・プレジデントのAria Chang氏が取材に応じてくれた。「Rising Star」のほかにも、Interservが開発中のオンラインゲームについての情報も聞くことができた。この記事では台湾で人気沸騰中のFacebook向けソーシャルゲーム「Rising Star」の内容を中心に、Interservが開発中のゲームの最新情報をお伝えしたい。
■ 仕事中に接続して社会問題にもなるほど盛り上がった台湾のFacebookブーム
台湾で大ヒットした農場系ゲーム「開心農場」 |
台北市のPCパーツ屋で見かけたリアル「開心農場」セット。ブームの勢いを感じさせる |
台湾で2009年度に大ブームを巻き起こしたFacebook。その火付け役になったのが、中国産のソーシャルゲーム「開心農場」だ。「開心農場」は中国のFive Minutesが開発したソーシャルゲームで「Happy Farm(ハッピーファーム)」という名前で欧米でも人気がある。mixiアプリのソーシャルゲーム「サンシャイン牧場」と同じ、いわゆる農場系ゲームと呼ばれるものだ。
「開心農場」の2010年2月現在の会員数は420万人、台湾のユーザーの5人に4人がこのゲームで遊んでいることになる。ほかにも「Restaurant City」や「Cafe world」などの欧米でも人気のソーシャルゲームが人気を博している。
Facebookは、ソーシャルアプリを開発、公開するためのソースを公開したことで、他のSNSと差をつけた。台湾でもFacebookの利用者は、コミュニケーションツールとして以上に、ゲームを遊ぶためのポータルサイトとしての利用が盛んだ。そしてソーシャルゲームの開発元には多くの中国企業が名を連ねている。そのため、中国語のゲームはかなりの数にのぼり、中国語にローカライズされたゲームが、ソーシャルゲーム全体のランキングでもトップ10に入ることもある。それだけ中国語圏でのソーシャルゲームブームが盛り上がっているということだ。
InterservのFacebook用ゲーム「Rising Star」は、「Rising Star Online」というブラウザゲームがベースになっている。といっても、このブラウザゲームは実はまだ開発中で、後発の「Rising Star」が先に出ることになった。台湾では、MMOを作りながらブラウザで動くカジュアルゲームも、という会社が増えている。「Rising Star Online」もそんな流れのなかで生まれたブラウザゲームだが、育成系というゲーム性がソーシャルゲームに向いているという理由から、ブラウザゲームをベースにFacebook用の「Rising Star」が開発された。開発期間は11人のスタッフで約3カ月だそうだ。
基本的なゲームの流れはブラウザゲームもFacebook版も同じだが、Facebook版ではインターフェイスを明るくリニューアルしつつ、表示する情報を整理して、ブラウザゲームよりもさらにカジュアルさを強調している。さらにソーシャルゲームには必須の、友達を誘うための機能を強化している。Facebook版では友達にプレゼントやメッセージを贈ることで、ゲームに招待することができる。ブラウザゲームは仕事をビジュアル的に楽しみながらスターを育てるという、育成シミュレーション的なゲームに仕上がっているが、Facebook版は育成自体よりも、育成を通じたコミュニケーションに重点が置かれている。
現在は約1週間のCBTが終了して、2次CBTに入ろうとというところで、台湾の旧正月に合わせて正式サービスがスタートする。取材に訪れた時には、ちょうど2次CBTの募集が始まったところだったが、募集のサイトをオープンして数時間後には7,000人の応募があり手ごたえを感じているということだった。
■ 友達みんなでビッグなスターを目指すソーシャルゲーム「Rising Star」
基本のゲーム画面には自分と、友達のアバターが最大10人まで表示される。友達が多い場合は、ゲームへのログイン時間が近い順に表示される |
Facebook版「Rising Star」は、友達と一緒にスターを目指すゲームだ。プレーヤーは最初に自分のアバターを作る。アバターは髪の毛、顔、最初の服、靴、血液型から性格まで実に細かく設定できる。作ったばかりのキャラクターは「素人」からスタートして、夢のスターを目指す。台湾のFacebookブームは女性を中心に盛り上がっているため、本作も女性ユーザーを意識した可愛らしい画面や、着せ替えなど女性が喜ぶ要素がたくさん詰め込まれている。
キャラクターは「艶力」(エネルギーのこと)というステータスの数字ぶんだけ働くことができる。最初は芸能界の仕事はないので、アルバイトをしたり下働きをしたりして経験値を貯めていく。仕事にはそれぞれ作業に要する時間が設定されていて、作業時間が長いものほど才能のステータスが上がりやすい。
仕事を一定の数こなすとレベルが上がって、ステータスが上昇し、受けられるアルバイトの数も増える。開発のテスト段階では、素人で芸能界の仕事がない時には、すぐに終わる仕事をたくさん受けて早めにレベルを上げ、ある程度のレベルになってからステータスを上げるための仕事にシフトするといったプレイをする人が多かったそうだ。
仕事は下積み時代のアルバイトの他、進みたい将来の職業によって「モデル」、「俳優」、「歌手」、「お笑い」の4系統に分かれる。ある程度レベルを上げていくと、タレント養成所の「見習い」から、「明日の星」へとランクが上がり、どの道に進むかを選ぶことになる。例えば「歌手」を選ぶと、歌手になるための仕事を受けることができるようになる。新人のうちは選べる仕事が少ないが、ビッグネームになれば、かなりの仕事を選べるようになる。進む道は「スターコイン」という課金コインを使って変更することができるが、4つの系統はそれぞれ独立しているので、「歌手」を極めても「モデル」道はまた新人からのスタートとなってしまう。
このゲームの1番の特徴は、人生の中で起こる2種類のイベントだ。イベントには「運命」と「チャンス」の2種類があり、スケジュールをこなしていると発生する。イベントには4つの選択肢が用意されていて、正しい選択肢を選ぶとお金が増えたりとボーナスがもらえるが、間違った選択肢を選ぶと凍り付いて一定時間動けなくなってしまう。
動けなくなったキャラクターは友達に助けてもらうことで、早く復活できる。「助けて」というメッセージが来るので、画面上にいない友達でも凍り付いていることがわかるようになっている。
誰にどんな事件が起こって、そのプレーヤーがどの選択肢を選んだかはキャラクターの履歴から見ることができる。さらに、選んだ選択肢に対して面白い面白くないという評価をすることができる。友達を喜ばせるためなら、たまにはあえて茨の道を選ぶことも必要かもしれない。
イベントに並ぶ、もう1つのコミュニケーション要素が、仕事で稼いだゲーム内通貨で購入できる多種多様な衣装で楽しむコーディネイトだ。ゲーム画面を歩いている友達のアバターをクリックすると頭上にアイコンが表示される。それを使って、友達のコーディネイトを褒めたりけなしたりすることでゲーム内通貨を得ることができる。ファッションアイテムにはかなり力が入っていて、パーツは無料で手に入るものと課金アイテムを含めると、かなり膨大な数が用意されている。また、プロモーションの一環として、日本では3月に公開予定のミュージカル映画「NINE」とコラボレーションして、映画の中で使われている衣装を使うこともできる。
友達をたくさん誘って評価すればそれだけコインを稼げる。またコーディネイトを競いあう相手が増えるのも楽しい。友達は一覧から簡単に誘うことができる。ヒットするソーシャルゲームが必ず備えている、知人が知人を誘ってプレーヤーを増やしていくバイラル性を備えている。
Facebookはブラウザ上で言語の設定を変えれば、世界中の言語で使えるため、本作を日本からプレイすることも可能だ。日本語でのリリースや、日本のSNSに向けたサービスの可能性があるのか聞いてみたが、現在の所は予定はないとのことだ。その理由は、大量にあるイベントを、その国の事情に合わせてローカライズするのが大変だからだそうだ。
「いまあるイベントの中には、台湾人には笑えても、他の国の人だと意味がわからないものもあります。もし日本でサービスをするとしたら、日本の事情に詳しいパブリッシャーと契約を結んで入ることになると思います」(Chang氏)ということなので、気になる場合はひとまず中国語でトライしてみて欲しい。
服や靴など着替え用のアバターは、仕事で稼いだゲーム内通貨で買うことができる | ||
画面にいる友達を評価することでゲーム内のお金を獲得する | 本作では、プレイのやり方によって各種の「称号」を得ることができる。称号集めも、本作の楽しみの1つだ | ステータスをあげて、話題になって、ナンバーワンのスターを目指そう |
■ ファン待望の「M2~神甲演義~」や、新作武侠MMOROG「玄武戦記Online」も
復活希望の署名が実り、ついに「M2」が帰ってくる |
ファンタジー武侠のアクションMMORPG「玄武戦記Online」 |
訪問時に情報を聞くことができた他2つのタイトルは、どちらもMMORPGだ。1つは、日本では、2008年に惜しまれながらサービスを終了した「M2~神甲演義~」。こちらは2009年に復活するという情報だけが発表されていたが、その詳細が少し見えてきた。「M2~神甲演義~」は2003年に台湾や日本などで正式サービスを開始したMMORPG。中国のファンタジックな奇書「山海経」をベースに、「神甲兵」というロボットが登場する剣と魔法とSFが融合した世界観が特徴だ。マウスだけの簡単操作で、クライアントが軽いので、ネットブックでもプレイが可能だ。日本のファンの間でゲームの評価は高かったのだが、運営に恵まれず、ゴタゴタが続いた後サービスを終了した。
しかしゲームの終了を惜しんだファンが署名活動を行ない、そんな期待に応えて復活が決まった。なるべく早くサービスを復活させたいといっていたが、いつ復活するかについてはまだ未定だ。今度こそ失敗のないようにと現在は日本のパブリッシャー探しはかなり慎重に行なっているという印象を受けた。
もう1つの新作「玄武戦記Online」は、Interservが自社開発のエンジンを使って作ったファンタジー武侠アクションMMORPG。中国、南宋の時代を舞台に、人間界、下魔界、玄仙界という3つの世界がお互いに対立する世界を描いている。プレーヤーは「武聖」、「剣侠」、「天音」、「軍神」という4つのクラスのキャラクターを操作できる。
戦闘はノンターゲットで複数の敵をなぎ倒していく無双系のアクションで、多彩でスピーディーな戦闘を楽しめる。ムービーではキャラクターが屋根の上を駆け抜けていた。また「霊獣ペット」という機能を持ったペットが特徴で、ムービーには巨大な亀のペットに複数のキャラクターが騎乗して移動している様子が映っていた。マウントできるペットには、他にもトラやゾウ、キリンなど様々な種類がいるようだ。物語は小説家とタイアップして、深みのある物語を目指すのだそうだ。
要求スペックはそれなりに高いが、100人以上の大規模なギルド戦も可能だ。「玄武戦記Online」は台湾ではgamaniaが運営を行ない、2010年の3月にCBT、5月にOBT、夏に正式サービスの予定だ。日本でのサービスはまだ未定だが、話を聞いた感触では可能性はありそうな雰囲気だったので、アクションMMORPGの新作として注目しておきたい。
ここ数年は少々元気がなかったInterservだが、ソーシャルゲームのような新規事業や、新作の「玄武戦記Online」などで、再び台湾のゲームシーンに勝負を挑もうとしている。今後の方針については、大作オンラインゲームから、カジュアルなゲームまで様々なチャンネルを持つことで市場の変化に敏感に対応していきたい、と語った。
「武聖」、「剣侠」、「天音」、「軍神」の4つのクラスで大暴れする。専用のエンジンを開発するなど力を入れて製作したゲームだけに、「他の武侠ゲームには絶対に負けません」と品質の高さに込めた自信を語ってくれた |
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□Interservのホームページ(中国語)
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□Facebookのホームページ
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(2010年 2月 8日)