G-Star 2009現地レポート
アミューズメントゲームゾーン レポート
PCベースの体感ゲームシートやライドアトラクションが登場
G-Star 2009の会場の一角に、「アミューズメントゲームゾーン」と銘打たれたコーナーが設けられている。G-Starでは毎年用意されているコーナーで、さまざまな企業の製品が置かれている。
日本でアミューズメントゲームといえば、対戦格闘やシューティングを主流としたビデオゲームや、メダルゲーム、クレーンゲーム辺りを想像するだろう。韓国でもそういったものはあるが、このコーナーには大きな体感アトラクションもあれば、20年前のデパートの屋上で見たような子供向けのメダルゲームもある。「家で遊ぶ以外のアミューズメント機器」なら何でも置いていいといった、混沌とした雰囲気がある。
このコーナーは、例年は空きスペースが多く、さらに会場全体の中では端の方にあり、他のブースのように飾り付けもないため非常に地味で、お世辞にも人気のあるコーナーとはいえなかった。ところが今年は出展している企業の数が多いのか、コーナーにはびっしりとアミューズメント機器が置かれており、見た目にも派手なものが多かったことも手伝って、コーナー内は常に満員の状態だった。
中でも今回は、PCゲームを流用した体感型のコクピットシートが目立った。大きく揺れるシートに、キーボードやトラックボール、ゲームパッドなどが備え付けられており、日本で見るアーケードゲームとは趣が異なる。これらの製品の狙いについてメーカーに詳しく聞いてきたので、順に紹介していこう。
■ PCベースの体感コクピットシートを2社が発売
「M-cross」。土台が大きく、シートはかなり高い位置にある |
コーナー内で最も目立っていたのが、AMUSEBOXの体感コクピットシート「M-cross」だ。1人乗りのレーシングシートに、モニタとキーボードなどのインターフェイスが搭載され、それがシートごと前後左右に動くというもの。サイズは日本のアーケードゲームで見る体感型ゲームと変わらず、かなりの大型。それが会場に10台近く並んでいて、見た目にもインパクトがあった。
筐体内部にはPCが組み込まれており、Windows用のゲームをプレイ可能。ソフトのインストールもできる。会場ではフライトシューティング「Heroes in the Sky」と、カートレース「Kart Rider」でデモプレイを行なっていた。プレーヤーの操作に応じてシートが動くようになっており、「Heroes in the Sky」では前後左右に、「Kart Rider」では左右にのみ動いていた。稼動範囲はかなり広く、ダイナミックに動く。急激な操作をすると体が振り回されているように感じるほどだ。
シートを動かすために、ゲーム側のソースを書き換える必要はなく、キーボードなどの操作の信号を受け取って、それに応じてシートを動かしているという。このため、前後操作を行なわない「Kart Rider」ではシートの動きが左右のみで、路面の勾配に応じてシートが前後に動いたりはしない。これは逆に言えば、どんなゲームにも対応できるという証明でもある。ゲーム側のソースに手を入れて「M-cross」の挙動を指示する信号を出せるのであれば、より繊細で忠実な挙動をさせることも可能だという。
この製品を作った理由についてAMUSEBOXの担当者に聞いたところ、「韓国ではPCゲームが主流。これとアーケードゲームを融合させたかった」と語ってくれた。日本のようにアーケードゲームの土壌がない韓国でこういったアミューズメント機器を成立させるには、既にあるPCゲームを載せるのが最も合理的、というわけだ。
ちなみにAMUSEBOXはまだ設立から間もない企業で、以前は半導体を作っていたスタッフが中核となり、同社初の製品としてこの「M-cross」を制作したという。量産は2010年1月から開始予定で、価格は1台で2,000~3,000万ウォン(約152~228万円)くらいになるという。「映画館や駅など、置けるスペースがあるところならどこでも売りたい」と語っている。発売前だが既にゲームメーカーから問い合わせがあり、中には日本の企業も含まれているそうだ。
可動範囲が非常に広い。ゲームに支障が出るほど傾くのはどうかと思うところもあるが、体感ゲームならではの楽しさは十分満喫できる |
「BATTLE SEAT」。横のボックスも含めて1セット |
体感コクピットシートはもう1つ、AVEN GAMESからも「BATTLE SEAT」が出展されていた。こちらもシートとモニタ、キーボードやトラックボールなどのインターフェイスが一体になった製品で、ゲームに合わせてシートが左右に動く。ハンドルとフットペダルも付いており、レースゲームをメインターゲットとしている。
「M-cross」と同様、こちらもPCベースで、対応ゲームを問わない。ただシートの動かし方は異なる。「BATTLE SEAT」ではLogitech(ロジクール)のゲームコントローラーで使われるドライバからフィードバック機能のデータを受け取り、シートを動かしている。Logitechのホイールコントローラーは世界的に最もメジャーな製品で、対応しているレースゲームやフライトシューティングは数多い。ゲームからフィードバックされるデータなので、忠実な動きも期待できる。
注目すべきは価格。稼動シートの基本部分のみのパッケージで400~500万ウォン(30.4~38万円)、PCなどを含めたフルパッケージで600~700万ウォン(45.6~53.2万円)と、同様の製品と比べてかなり安価に設定されている。さすがに個人で買うにはまだ高価だが、外装を簡略化してさらに価格を下げた個人向けの製品も用意するという。
「M-cross」に比べると動きは小さいが、必要十分といったところ。価格の安さやLogitechのフィードバックを活用している点など、製品としての魅力は高い |
■ R2NRの大型ライドアトラクションが製品化
「Z-RIDER」の外観。中にスクリーンと4人乗りシートがある |
昨年のG-Starにも出展していたR2NRの4人乗りライドアトラクション「Z-RIDER」が今回も出展していた。シートの前方にはスクリーンがあり、専用の眼鏡をかけると映像が立体に見える。そしてジェットコースターのような映像に合わせてシート部分が動くというもの。
動きがかなり豪快で、前後左右に激しく傾く。シートベルトなど体を固定するものがないので、座席の前にあるバーをしっかり掴んでいないと、振り落とされないまでも座席に頭をガンガンぶつけてしまう。やりすぎだとは思うが、ジェットコースターに乗った後の疲労感に似た感触は得られた。
この「Z-RIDER」は、昨年出展されたものから改良されている。以前はシートを動かすのに4本の支柱を使っていたが、2本に減らしてコストを下げたという。そして現在は製品化され、今年8月から販売が始まっている。「アミューズメント施設などに置かれるのか」と尋ねると、「ソウルに『Z-RIDER』専門店がある」という。映像ソフトは既に10本あり、現在も1カ月1本のペースで制作されているそうで、専門店として運営しても十分楽しめるコンテンツを用意できると考えているようだ。またこの製品は韓国政府から新たなアミューズメントとして注目され支援を受けているという。専門店の設置もそういった支援があってのことだろう。
製品のラインナップもさらに増やしていくそうで、2010年3月には2人乗りのものと、同じく2人乗りのカプセルタイプのものも販売を開始するという。価格はスクリーン版の4人乗りが、インテリアを含めて6,900万ウォン(約524万円)、2人乗りが5,800万ウォン(約441万円)。カプセルタイプは6,900万ウォン(約524万円)。
韓国外に向けては、既にアメリカと中国で契約が済んでいるという。日本にはまだ予定がないそうだが、カプセルタイプはサイズが2,700×3,200×2,100mmと比較的コンパクトに収まっており、場所に余裕のある施設なら導入できそうな大きさだ。
昨年はシートが2×2だったが、今年は可動支柱が2本になったこともあってか、横並びの4シートになった | スクリーンは3D対応で、専用の眼鏡をかけると立体的に見える |
たまたま会場に来ていた4人組の女性にモデルになっていただき、稼働中の写真を撮らせていただいた。シートはとにかく動きが激しく、特に説明されていなくても前のポールをしっかり握ってしまう |
■ 韓国メーカーのRASSENがオリジナルガンシューティングを出展
RASSENブース |
PCベースではない単品完結のアーケードゲームとしては、RASSENが自社ブースを展開して、2つのガンシューティングを出展していた。1つは「MILITARY CAMP」という大型のゲーム。社名の意味でもある「RASS(Real Action Shooting System)」というシステムを使ったゲームで、横幅が7mもあるスクリーンに映し出された鳥などのターゲットを、ライフル型の赤外線銃で狙って撃ち落とすというもの。リアルをうたっているだけに映像もリアル志向で、銃もしっかり反動があったりする。10人以上が同時にプレイできるのも特徴。
2010年1月から販売を開始する予定で、1人用から多人数用のプレイ設備や、赤外線ではなくBB弾を撃つもの、その他のインテリアなどを選択して、トータルの設備として提供する。システムはオンラインでRASSENが常時監視しており、ゲームのアップデートも随時行なうという。
RASSENはこのほか、「VULCAN-M」というガンシューティングも出展した。こちらは機関銃で戦う1人用のゲームで、備え付けられた巨大な機関銃を両手で握って、敵のミサイルや戦闘機を迎撃する。100インチのスクリーンと5.1chサラウンドで、機関銃を掃射する爽快感を存分に味わえる。
横7mの巨大スクリーンに向かって射撃する「MILITARY CAMP」。リアルさを追求した作品 | |
「VULCAN-M」は機関銃を撃ちまくる爽快感を味わえる。コントローラー部の機関銃もいい質感を出している |
■ 日本製アーケードゲームから、ロボサッカー、パンチングマシン、カラオケまで
その他のアーケードゲームは、日本製のタイトルが大勢を占めた。株式会社コナミデジタルエンタテインメントの音楽ゲーム「jubeat」と「DrumMania V6 BURNING!!!!(日本ではBLAZING!!!!)」、ミニゲーム集「ザ・ビシバシ」が出展され、いずれも複数ある試遊台が常に埋まっている状態だった。またアークシステムワークス株式会社は自社ブースを出しており、日本で11月20日に稼動を開始したばかりの対戦格闘「BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT」を出展していた。
KONAMIは「jubeat」、「DrumMania V6 BURNING!!!!」、「ザ・ビシバシ」の3作を出展。筐体は日本語のものもあるが、中身は韓国語になっていた | ||
アークシステムワークスは、日本でも稼動したばかりの「BLAZBLUE CONTINUUM SHIFT」を出展。熱心に技を調べている人も見受けられた |
ゲーム筐体「NEW DELTA 32」。シンプルなデザインだが、機能面では十分 |
韓国のゲーム機器メーカーYOOYOUNGは、同社のアーケードゲーム用筐体「NEW DELTA 32」を出展していた。32インチの液晶を搭載した筐体で、日本で見る筐体と大きな違いはない。ただしスティック部分は日本のようなボール型ではなく、細長い“なすび型”のもので、米国などでも見かける仕様だ。ちなみにゲームは日本製の対戦格闘が動いていた。
その他のアミューズメント機器は、とにかく多岐に渡る。1番人気だったのは、IR ROBOTのロボットサッカーゲーム「MaruBot Football League」。製品としては2人用と4人用が存在するのだが、会場ではさらに大きな6人用も出展。コントローラーにはプレイステーションのようなアナログスティック2本がついたゲームパッドが繋がっており、左スティックで前後移動、右スティックで左右旋回というラジコンのような操作で遊べた。
他にも、懐かしさも感じるパンチングマシンや、バスケットボールを投げるフリースローゲーム、画面のキャラクターめがけてボールを投げるゲーム、握力測定、少人数用の小型カラオケボックス(韓国ではメジャーなもの)など、アミューズメント機器と呼べそうなものは何でも並んでいた。
韓国ゲームはPCが主流で、外でゲームを遊ぶといえばPC房(ネットカフェ)という感覚がある。アーケードゲームは日本に比べて、まだまだ人気も認知度も低いのは間違いない。だからこそ色々な可能性を夢見て、さまざまな企業が新たなアミューズメントを創出しようとしているのが、G-Starの出展を見ていると感じられる。特にここ数年でコンシューマーゲームが浸透してきただけに、「次はアーケード」というような見方もあるのかもしれない。今年は実験作ではなく製品化されたものが多かっただけに、それらが果たして来年どうなっているのかも楽しみなところだ。
(2009年 11月 29日)