G-Star 2009現地レポート
NEXON新作タイトルインタビュー その1
「メイプルストーリー」、新職業EVANは普通の少年が冒険に旅に出る物語が展開「Dragon Nest」、コンテンツ量、AI様々な挑戦を経て生み出される爽快アクション
今回のG-Star 2009ではNEXONが出展した全てのタイトルのインタビューをすることができた。本稿では今回新職業を追加する「メイプルストーリー」と、軽快なコンボ攻撃で敵と戦えるアクションRPG「Dragon Nest」を取り上げたい。
「メイプルストーリー」はたびたび来日し、インタビューを行なっているNEXON内部の開発スタジオWizet Studio本部長のChe Eun Do氏に加え、Maple Contents Team長のKang Wonki氏にお話を伺った。新職業EVANとはどんなものか?彼らが世界に参加したとき、ゲームはどう変わるのだろうか?
「Dragon Nest」は開発会社EYEDENTITY GAMES Global Maketing DirectorのJoongsun Chang氏と、メインプログラマーを務めるTechnical DirecterのTaehun Oh氏に話を聞いた。オンラインゲームでありながら軽快で爽快感を実現するというハードルに挑んだ「Dragon Nest」のこれからの展開は? それぞれのタイトルできになる質問をぶつけてみた。
■ 「メイプルストーリー」新職業EVANを追加! 今後は開発力を強化してより速いペースでのコンテンツ実装を
NEXON内部の開発スタジオWizet Studio本部長のChe Eun Do氏 |
Maple Contents Team長のKang Wonki氏 |
ドラゴンを連れた新職業EVAN。キャラクター自身はこれまでの「メイプルストーリー」の英雄達とは違いふつうの出自だという。ストーリーにも注目したい |
「メイプルストーリー」の新職業「EVAN」に関して質問に答えてくれたのはたびたび日本にも来日しているNEXON内部の開発スタジオWizet Studio本部長のChe Eun Do氏と、Maple Contents Team長のKang Wonki氏。
Kang氏は最初に新職業「EVAN」について説明した。EVANはドラゴンと共に旅をする新しい職業だ。EVANとなるキャラクターは、実はどこにでもいるふつうの子供だったが、彼(彼女)は偶然ドラゴンの卵を見つける。そして卵から孵ったドラゴンと共に冒険をしていくという。韓国では12月17日に実装する予定だ。
試遊台のドラゴンは分身をしたり、瞬間移動をしたり、時には消えたりと、スキルによって様々なアクションを見せるが、時々「実体」を持っているのではなく、精霊のようなエネルギー体か、幻のような存在のようにも見える。Kang氏は「ドラゴンはきちんとした実体を持った存在です。最初は卵の殻を頭にかぶったと影のような生き物で、成長すると神秘的な雰囲気を持った強力な存在に変わっていくのです」と語った。
ドラゴンはキャラクターがレベルアップすることで外見は6段階に変化していく。スキルとしては10の段階が用意されていて、レベルが上がるごとに強力なスキルを習得していける。海賊同様レベル1から育てる全く新しいキャラクターで、転職などはない。これまでのキャラクター同様、レベル200まで育成可能だ。韓国では新職業と同時にキャラクタースロットが追加されるので、韓国の「メイプルストーリー」では全てのプレーヤーがEVANを体験できる。
EVANとドラゴンは一心同体の関係で、ドラゴン独自のステータスは設定されていない。またキャラクター自身は戦闘能力がなく、攻撃はドラゴンが行なう。ステータスを強化していけばドラゴンも強くなる。キャラクターは魔法使い用装備を身につけることができるが、攻撃力強化など装備の特性はドラゴンの攻撃に反映される。EVANはドラゴンを連れているが、他のキャラクターと同じようにペットを連れて行くことも可能だ。
EVANの前に追加されたARANという職業は巨大な武器をふるって敵を倒していくソロプレイが楽しい職業だ。日本ではまだ未実装だが、「格闘ゲーム」のようなコマンドで様々な技を出すキャラクターで、コンボで技をつなげて敵を倒していく。1人で強力な敵とも戦えるソロプレイ向きのキャラクターだ。
それに対してEVANは特に支援スキルが強いキャラクターだ。EVANはパーティーの力を底上げするスキルを多く持っている。受けるダメージを低減したり、他のプレーヤーが倒れても復活させたり、MPを増やすスキルを持っている。一方、攻撃では、火や水、闇など様々な属性を持った攻撃スキルを持っているという。
プレーヤーのキャラクターの操作に合わせて自動的にドラゴンはついてくる。「メイプルストーリー」ユーザーならば今までのキャラクターと同じ感覚で操作可能だ。さらにドラゴンはこれまでのペットと同じように乗ることができる。ドラゴンは50レベルになると乗ることができる。
・ “普通の少年”がドラゴンとの出会いを経て冒険に旅立つストーリー。「日常生活」を表現する新たなチャレンジ
「EVANが入ることで『メイプルストーリー』は大きく変わると思います。特にパーティーの支援スキルの効果が大きい。これまでのユーザー達が苦戦していた敵、かなわなかったボスも、EVANの支援を受けることで戦えるようになるでしょう。EVANはパーティー支援のみでなく、今までと違う形でのペットキャラクターにチャレンジしてみたかったという開発側の思いで実現したキャラクターです。またEVANはこれまで進行していた『シグナス騎士団』とは違う、新しいストーリーが展開します。こちらにも注目してください」とKang氏は語った。
今回展開するストーリーは、メインストーリーであるシグナス騎士団とは違う独立したストーリーだ。そのストーリーはEVANがスタートするレベル20までのスタートフィールドで展開するストーリーだ。EVANはこれまでの「メイプルストーリー」に出てきたキャラクターのような英雄ではなく、海賊などのように特別な力を持った存在ではない。普通の少年・少女がドラゴンとの出会いをきっかけに壮大な冒険へと旅立っていく。EVANはふつうの家庭に育ったふつうの子供で、両親の元で暮らしている。お使いに行ったり、クエストの最初はこれまでとは違うふつうの生活が描かれる。「日常生活」の表現にチャレンジしたという。
今回追加されるコンテンツはEVAN向けに特化しており、そのほかの新要素の追加は行われない。韓国の「メイプルストーリー」の開発体制は、新職業など新しい要素を追加する「コンテンツチーム」のほか、上級者向けコンテンツなどを追加する「アップデートチーム」、ゲーム全体のバランスを見る「LIVEチーム」という3チームで開発している。今回はコンテンツチームの要素でこちらは半年に1度追加される。アップデートチームは1カ月に1回のペースで様々なコンテンツを追加しているという。この他にも国別に開発チームがある。
「メイプルストーリー」は「海賊」以降、半年に1度のペースで新職業が追加されるというアップデートを行なっている。今後の方向もこの新職業追加という流れが続くのだろうか。「新要素の追加に関しては、コンテンツチームの規模の拡大が必要だと考えています。現在、チームの増強を行なっていて今後はさらに早いスパンでの開発を行なっていきたいと思います。今現在は新職業の追加という方向ですが、ハウジングや、PvPなど様々な方向を検討していま。今後は様々な要素も盛り込んでいきたいと思います。現在コンテンツチームは6人ですが、倍にしていくというのが当面の目標です。まず実装のスパンを早くしていきたいですね」とChe氏は語った。
日本のユーザーに向けてのメッセージとして、Che氏は「これまでは韓国中心のコンテンツ追加が行なわれていましたが、今後はもっと世界各国の要望を満たすような要素も多くしていこうと思っています。これまで以上に日本のユーザーに向けたコンテンツも作っていきたいと思いますので、楽しみにしてください」と語った。
【「メイプルストーリー」プロモーションムービー】 |
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試遊台で見ることができた最強レベルのEVANのスキル。支援効果に優れているEVANがゲーム世界にどんな変化をもたらすのだろうか |
■ 「Dragon Nest」はパーティーでのコンボ攻撃に注目、プログラム的ハードルを越え爽快アクションを実現!
EYEDENTITY GAMES Global Maketing DirectorのJoongsun Chang氏 |
Tメインプログラマーを務めるechnical DirecterのTaehun Oh氏 |
クローズドβ時のスクリーンショット。ボスとの戦闘はアクションの腕を試される場面だ |
「Dragon Nest」のインタビューは開発会社EYEDENTITY GAMES Global Maketing DirectorのJoongsun Chang氏と、メインプログラマーを務めるTechnical DirecterのTaehun Oh氏に話を聞いた。
「Dragon Nest」は剣を振るウォーリアー、拳で戦うクレリック、魔法を使うソーサレス、弓で戦うアーチャーの4つの職業で思う存分戦えるアクションRPG。韓国では2次クローズドβテストまでを行ない、現在オープンβテストを行なう予定だが細かい日程は未定だという。近いうちに改めて正式に発表する予定だ。NEXONブースでは他のタイトルに比べても人気が高く、いつまでもプレイ待ちの列が続いていた。
「Dragon Nest」で最初にぐっと引きつけられるのは、なんと言ってもキャラクターのアクションである。プレーヤーの操作でキャラクターはきびきびと動き、敵の攻撃を回避、相手の懐に飛び込んで連続攻撃を繰り出す。アーチャーは、目にもとまらない連続射撃で敵を近づけさせない。ソーサレスは連射のきく魔法で敵を押し込み、炎や氷の魔法で敵に大ダメージを与える。遠距離職は敵を近づけさせないためにフィールドを駆け回る。
通常攻撃でも数発当てると強力な攻撃に変化し敵を吹き飛ばす。ショートカットで出るスキルもいくつかのスキルを連続で繰り出すと簡単につながる。攻撃を工夫をすることで戦いが一層楽しくなる。コンシューマゲームに劣らない小気味いい操作感と、派手で爽快感のある技、駆け引きがうまくなればさらに強くなれるような感覚も持てる。見ているだけでも韓国のゲーム開発者の“成長”が確かに感じられるタイトルなのだ。
Chang氏は「『Dragon Nest』は昨年のG-starそして1次クローズドβテスト、2次クローズドβテスト、そして今回と開発を進めてきました。長い時間をかけて、最もこだわった部分がアクション性です。軽快なコンボ、キャラクターの動き、そういった基本的な要素を評価してもらったと思っています」と語った。
コンボの爽快感は試遊台でも強く感じた。プレーヤーの工夫でどう技をつなげていくかが楽しい。実際スキルを使って、自分のコンボを試しているプレーヤーも多かった。Chang氏は「コンボをつなげやすくする作戦としては敵を壁際に追いつめるのが有効です」と語る。敵を吹き飛ばしながら壁にぶち当て、跳ね返ってきたところをさらに当てる。
ただマウスを連打するだけでなく、ショートカットキーでスキルを使うことでコンボがさらにつながっていくようにしているという。一方で、「アラド戦記」にあったようなコマンド技はあえて入れていない。開発当初はコマンド技も考えていたのだが、操作が煩雑になるため、あえてシンプルな操作性を採用したという。
Chang氏は「パーティープレイでは、攻撃で吹っ飛んだ敵にさらに他のプレーヤーが攻撃を当ててつなげていくと言った、コンボの楽しさがさらに膨らみます。ウォーリアーが剣で空中に敵を跳ね上げ、そこをアーチャーが連続して弓を当てていくということもできます。私が好きなのが、空中で跳ね上げた敵に向かってクレリックが強力な跳び蹴りを加えるという攻撃です。強力で爽快感があります」と語った。
アクション性にフォーカスするためには、オンラインゲームの場合大きなハードルがある。敵をクリックし、自動で攻撃を行なう韓国で主流となっていたMMORPGとは根本から異なるプログラム技術を要求されるのだ。特に困難なのがサーバーとのスムースな通信である。アクション性を高めれば高めるほど、通信につきもののラグは致命的な問題となる。Oh氏はこのサーバーとの通信技術が最も難しいハードルだったと語った。
Oh氏は「『Dragon Nest』はこれまで開発に2年3カ月以上をかけています。アクションに関しては最初の1年で集中して作り込んでいきました。私達は『Kingdam Underfire』や『N3』といったコンシューマーゲームの開発経験もあり、そういった技術の蓄積がこの作品にも活かされています」と語った。
・ ストーリー要素にも注目。日本サービスへの注力は「ゲームコントローラーでのプレイ感」
「Dragon Nest」はMMOフィールドでクエストを受けたり、仲間を募りMOダンジョンに仲間と共に挑む。最大4人のパーティープレイが可能だ。現時点で街は、クレリックとソーサレスの街、ウォーリアーとアーチャーの街の2つからスタートし、大きな街で4つの職業のプレーヤーが集う。そしてレベルを上げ次へ、という展開になるという。最初の街は、チュートリアル要素が強く、プレーヤー達はまず最初の街を出発し、大きな街でパーティープレイなどを体験していくことになる。
メインの大きなストーリーは「メインクエスト」という形で語られ、これをクリアしていくことで次の街への道が提示される。メインクエストにはたくさんの魅力的なキャラクターが登場し、「サブクエスト」ではそれら登場キャラクターにフォーカスを当てたストーリーが展開するという。この他、「冒険者クエスト」が用意されていて、これらはダンジョンのアイテムドロップや、敵を設定された数倒すことでクリアするタイプの、ボーナスクエストだ。
大きな街には14のインスタンスダンジョンが用意されていて、これらに挑戦することでレベルを上げていく。オープンβテストには次のMMOマップとして「城」が用意されている。最初の街が8~16レベル、次で16~24レベルの推奨レベルという形でクエストがあり、キャラクターのレベルキャップはオープンβテスト時に32レベルまでのコンテンツを用意する予定だ。
プレーヤーの成長に合わせてコンテンツを準備するのだが、新作タイトルで問題となるのが「ユーザーのコンテンツの消費量」だ。インスタンスダンジョンでのMOタイプのオンラインゲームは何本か発表されているが、ユーザーのコンテンツ消費量の速度がものすごく、作っても作ってもユーザーがすぐ消費してしまい、「コンテンツが足りない」と言われてしまう。コンテンツを安定して生み出せるパイプラインの確率が急務だった。現在、通信と、コンテンツ生産のパイプラインの問題は解決策が見つかった。
コンテンツ量としては2年後くらいまでは安定してプレイできる量を生み出せる見込みだ。オープンβテスト時には現在の「アラド戦記」に匹敵するくらいの冒険フィールドを用意できるとのこと。ダンジョンは1度プレイしただけでは終わらず、何度も繰り返し遊べるような要素も盛り込む。これによってユーザーのコンテンツの消費速度のバランスをとっていくつもりだという。またダンジョンではモンスターの出現する順番がランダムに変わり、同じダンジョンでもあきない工夫をしている。
AIに関してもチャレンジを行なっている。従来のモンスターはプレーヤーを見つけるとまっすぐつっこんでくるだけだったが、回り込んだり、隙をうかがったり、「手強い」モンスターを目指してAIを作っている。「『Dragon Nest』のモンスター巧妙にプレーヤーを攻撃してきます。だからこそ、そのモンスターを倒す爽快感が大きくなるのです」とChang氏は語った。
ダンジョンには飛び出す針や、転がってくる岩など様々な仕掛けが登場する。レバーを動かして、色を合わせて前に進むといった大きな仕掛けもある。Oh氏は「モンスターのアクションにも注目してほしいです。コボルトというモンスターは大砲を持って登場するのですが、大砲を撃つときのモーションがとてもかわいらしい。モンスターを見つけたらただ倒すだけではなくて、彼らの仕草にも注目してもらいたいです」とコメントした。
日本での運営で、開発チームが注目しているのが「コントローラーへの対応」である。EYEDENTITY GAMESはコンシューマゲームの開発経験もあり、コントローラーへの理解も深い。Oh氏のプログラムチームはコントローラーでの操作も視野に入れて「Dragon Nest」の開発を行なっている。韓国ではキーボードのプレイが中心となるが、NHN Japanが運営する日本では、コントローラーでもプレイできるように開発を進めているという。
オープンβまでの要素としては「スキルの充実」を進めている。クローズドβテストではユーザーからスキルが少ないという指摘があった。さらに複数のパーティーで挑む“レイド”で戦える「巨大ボス」を現在作り込んでいる。ボスモンスターそのものは現在完成しているが、何人で戦うバランスになるかを現在検討中だ。クエストの終盤に登場するボスモンスターは何体も登場しているが、レイドボスというのはオープンβテストの大きな目玉となるようだ。現在2体の巨大ボスモンスターを準備しているとのこと。
これから「Dragon Nest」に触れる日本のユーザーへのメッセージとしてOh氏は「まだ『Dragon Nest』を知らない方も多いと思いますが、このゲームはプレイしてみて、すぐなじむことのできるような、いいゲームを目指して作っていきます。是非プレイしてみてください」と語った。
【Dragon Nest】 | ||
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今回の試遊台ではシングルプレイのみのバージョンを出展していた。プレーヤーの中にハスキルをつなげてコンボを決める人もいて、ゲームに慣れたプレーヤーならばすぐに爽快感のある戦いができそうだ |
http://www.nexon.com/
□「G-Star」のホームページ(韓国語)
http://www.gstar.or.kr/
(2009年 11月 29日)