「VIDEO GAMES LIVE in JAPAN ~ゲーム音楽と映像の祭典~」
初来日公演は大勢のファンが詰めかけ大盛況!
フル・オーケストラと大型スクリーンを中心に、工夫をこらした演出の数々で世界中のゲームファンを熱狂させているコンサートイベント「VIDEO GAMES LIVE」初の日本公演「VIDEO GAMES LIVE in JAPAN ~ゲーム音楽と映像の祭典~」が9月21日、22日に開催された。会場は東京国際フォーラム ホールA。今回は、21日に開催された初日公演の模様をお届けする。
「VIDEO GAMES LIVE」は、トミー・タラリコ(Tommy Tallarico)氏とジャック・ウォール(Jack Wall)氏の2人が始めたゲームミュージックのコンサートイベント。簡潔に表現するなら「フル・オーケストラと巨大スクリーンによる映像演出を中心とした“体感型”ライブ」といったところ。日本公演では、演奏を東京ニューシティ管弦楽団、合唱を洗足学園音楽大学フレーバーコーラス隊、通訳兼司会進行を菊池浬(きくち かいり)さんがそれぞれ担当した。
以前、Game Developers Conference 2008で開催された現地レポートをご記憶のかたも少なくないかと思われるが、本イベントは一見するとクラシックコンサートふうだが、実際はとてもカジュアルだ。大仰な開始の合図などはなく、トミー・タラリコ氏と菊池さん、コスプレ姿の若者が6人ほどフラリと現われたかと思うと、開始前にイベントの盛り上げに一役買おうという形でコスプレコンテストを開催。セガのアクションゲーム「マイケル・ジャクソン ムーンウォーカー」の主人公を中心にすえたパロディムービーと実写版(!?)「パックマン」の映像で会場を暖めた後、指揮者のジャック・ウォール氏が登場。一気に本編へとなだれこんでいった。
なお、本イベントは取材スペースの制限が厳しく、指定された位置からでは3つあるスクリーンのうち手前側のひとつが完全に隠れてしまい、メインスクリーンも一部PAの影などで写真が見づらくなってしまった点、読者の方々にはあらかじめ深くお詫びしておきたい。実際には、3つのスクリーンで効果的な演出が行なわれており、すべてをきちんとお伝えできないのが残念だ。
■ 通常のクラシックコンサートでは考えられない趣向の連続!
スクリーンを使った前フリが終わると、ステージ袖から指揮者のジャック・ウォール氏が登場。いきなり両手をガンガン振り上げて観客を煽るあたり、既に通常のクラシックコンサートからは大きくかけ離れており、観客も当然のように大歓声で応える。1曲目「Classic Arcade」は、1972年に発表されたビデオゲームの元祖ともいうべき「ポン」からスタート。GDC2008公演を現地で観た人に聞いてはいたが、ラケットで打ち返す音やオールドゲームのSEを楽器でいとも簡単に再現する技量には改めて驚かされる。曲構成は他公演と一緒のようだが、念のため以下にアレンジメドレー内のタイトルリストを掲載しておく。
【「Classic Arcade」アレンジメドレー】
1曲目が終了すると、本イベントのプロデューサーであるトミー・タラリコ氏が登場。「私は20年以上にわたって、ビデオゲームの作曲をしてきました。後ろにいる指揮者のジャックも、10年以上にわたってビデオゲーム用の作曲をしています。私たちは今日ここにいられること、日本でこういった大きなライブを行なえることを誇りに思っています。私は小さい頃、好きなものがふたつありました。それは、ビデオゲームと音楽。そして、その頃からの夢が、いつか日本でこういったライブをすることでした。なぜならば、ゲームミュージックにおいて日本とは“特別な場所”だからです。いま1度申し上げたい。夢をかなえさえてくれて、ありがとう!!」とコメント。客席からは盛大な歓声と拍手が贈られた。
トミー・タラリコ氏 | ジャック・ウォール氏 |
「今までとは違った一風変わったライヴにしたい」というトミー・タラリコ氏のメッセージどおり、本公演にはさまざまな「フック(仕掛け)」が用意されていた。まずは、本イベントでは恒例となっている観客参加型ステージ。客席からふたりを招き、KONAMIのクラシックゲーム「フロッガー」をプレイ。1分30秒以内に、もっとも多くゴールさせたほうが勝ちという趣向なのだが、ゲーム中のBGMはすべてオーケストラ演奏で行なわれる。失敗すればミスのBGMが演奏され、リスタートはもちろん、残機がなくなりゲームオーバーになったときのBGMまで、すべてがパーフェクト! あまりの違和感のなさと豪華さに、ステージでプレイしているお客さんたちが心底うらやましくなってしまったほどだ。
フルオーケストラがリアルタイムでBGMを再現! ミスやゲームオーバーに即対応する完璧な演奏と肉厚なサウンドに思わず言葉を失う。参加されたふたりのお客さんには「フロッガー」が遊べるビデオゲーム機など記念品が進呈された |
スペシャルゲストも豪華の一言で、Skypeを使ったRalph Baer(ラルフ・ベア)氏のリアルタイム・インタビューには心底驚かされた。ご存知ない方のためにあらかじめ説明すると、ラルフ氏は“ビデオゲームの父”と呼ばれるドイツ生まれのアメリカ人発明家。1968年、ラルフ氏は自身を主人公にした映像機器「BROWNBOX」を制作。スクリーンには、BROWNBOXについて操作説明を行なう当時のラルフ氏の貴重な映像が上映された。御年89歳、現地時間で朝の4時30分という早朝にも関わらず、元気な姿でスクリーンに生出演したラルフ氏。今回はSkype経由だが、直接来日した経験はないという。1960年代はTVエンジニアとして仕事をしており、映像技術に詳しかったため「TVを使い、なにか楽しいことはできないか」と考え「BROWNBOX」を発案したという。
ゲストはこの他にも、国内で演奏を披露するのは初という山岡晃氏(「サイレントヒル」など)、日比野則彦氏(「メタルギアソリッド3」など)、近藤浩治氏(「スーパーマリオブラザース」など)のほか、Martin Leung氏が「ファイナルファンタジー」ピアノソロを披露。また、アンコール最終曲の「Dracula(Castlevcania)Rock」では、「悪魔城ドラキュラ」の作曲で知られる山根ミチル氏と山下絹代氏がステージ上にて挨拶を行なった。Martin Leung氏は本イベントのレギュラーメンバーだが、日本での演奏はもちろん初めて。初めてづくしのゲスト攻勢は、会場を訪れたファンにとって歓喜をともなう一大サプライズの連続だった。なお、日本公演のセットリストは以下のとおり。
- 【第1部】
【第2部】
【アンコール】
“ビデオゲームの父”ことラルフ・ベア氏。Skypeで会場との生中継を実現。当時の貴重な映像を交えつつ、ビデオゲーム発案のキッカケなどを語ってくれた |
山岡晃氏 | 日比野則彦氏 | 近藤浩治氏 |
Martin Leung氏。レギュラーメンバーだが来日するのは今回が初だという | トミー・タラリコ氏も「Halo Suite」と「Dracula(Castlevania)Rock」で熱演を披露 | 山根ミチル氏(上画像・右)と山下絹代氏(同・左) |
ワールドワイドでツアーを行なっている本イベントだが、日本公演は「あぁ、これはまさしく“日本のコンサート”だなぁ」と(もちろん良い意味で)しみじみ思わされた。海外、特に南米などでは客席がロックコンサートのごとき激情的な盛り上がりを見せるという「VIDEO GAMES LIVE」だが、日本のファンは自然発生的に手拍子で盛り上げるなど「盛り上がる自分自身」ではなく、「曲」や「演者」たちを中心に、イベントを総体的に楽しみたい人が圧倒的に多いように感じられる。決してノリが悪いわけではなく、シャイすぎるわけでもない。日本のライヴやコンサートならではの“人の暖かさ”に包まれ、大盛況のうちに幕を閉じた日本公演初日。早すぎるかもしれないが、再来日公演が行なわれることを切に願う。
余談ながら、ロビーの物販コーナーも大盛況。オリジナルグッズ3点を購入すると公演終了後に出演者と握手ができる特典つき。こちらも人気を博していた |
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□「VIDEO GAMES LIVE in JAPAN」のホームページ
http://videogameslive.jp/
□「VIDEO GAMES LIVE」のホームページ(英語)
http://videogameslive.com/
(2009年 9月 24日)