マーベラス、Wii「王様物語」先行体験会開催

開発スタッフも登場し、自らゲームを紹介


9月3日 発売予定

価格:7,140円

CEROレーティング:A(全年齢対象)



 株式会社マーベラスエンターテイメントは、9月3日発売予定のWii用王国ワラワラRPG「王様物語」の先行体験会「王様物語 スペシャル体験会 ~王いなる宴 プライスレスな30分へご招待~」を、8月23日に都内にて開催した。

 この体験会は、“王様”気分が味わえる豪華な空間の中、くつろいだ雰囲気でじっくりと「王様物語」を体験してほしいというコンセプトで開催されたもの。招待された約20組は、30分という時間を使ってじっくりと体験プレイを楽しんでいた。

 また、本作のエグゼクティブプロデューサーの和田康宏氏と、ディレクター&プロデューサーの木村祥朗氏も登場し、体験会の参加者と直接ふれあうなど、まさに“プライスレスな30分”となったのではないだろうか。

 その会場で、和田氏と木村氏にこの体験会の意図や発売直前の心境、ゲームの見所などを語っていただいたので紹介する。

“王様”気分が味わえるように、おおきなシャンデリアのある豪華な場所を借り切って行なわれた豪華なソファーでくつろぎながら、集中して体験プレイ。参加者の中には家族連れで一緒に楽しんでいる姿も見られた
体験会場に現われた和田氏と木村氏。時折、一般の参加者のところで、ゲームの説明や一緒にプレイを楽しんだりしていた



■ ディレクター&プロデューサーの木村祥朗氏のコメント

社内では“きむP”と呼ばれている木村祥朗氏

――完成した今の心境は?

木村氏: スッキリしたのでイースター島まで旅立ちたい感じ(笑)。僕はゲーム作り終わると、ゲーム作るのが嫌になるんですよ。ほんとに今回もまたやりきった感があるのでちょっと休憩したいんだけど、今回ディレクター兼プロデューサーなので、ディレクターをやり終わっても(プロデューサーとして)別の仕事が待っているみたいな。いろいろな段取りをゲーム開発が終わった瞬間にやり始めているので大変だったなぁ……体験会ができてよかったです(笑)。

――今回のこの場所や1人30分という体験会の目的は?

木村氏: 体験会というと1回5分とか10分交代で列に並んでもらってというのが多いじゃないですか。「王様物語」はアクションゲームではなく、RPG的なものなので、ほぼ個室のような空間で集中し、最初のボス倒せるくらいまでの長い時間をまわりに邪魔されずに1人で遊んでもらって雰囲気を味わってもらいたい。ほんとは2日、3日と続けて、たくさんの人に体験してもらいたいんだけど(笑)。

――開発は長かったですか?

木村氏: 長かったねぇ。ほんとに山あり谷ありだった。最初の1年はプロトタイプを作っていて、プロトタイプを作り終わって数カ月後にTGS2007(東京ゲームショウ2007)で発表して。2008年の3月頃かな、このままではゲームがよくなってないなっていうのがあって、このまま出したらだめだということになって、和田さんと相談したら「きむP(木村プロデューサー)、福岡へ行け」と。そして現場で「私がディレクターをやりましょう」とバトンタッチして。いやぁもうねぇ、僕は開発現場でスタッフにああだこうだやってるほうが合うみたい(笑)。みんな一生懸命やるからね、私が言うとね。おもしろいゲーム作りたいと思って集まってる人ばかりだから良かったんだけど、かみ合わせが良くなかった。

 “(開発場所が)遠い問題”だけど、距離はやっぱりあった。恋愛と同じでさ、遠距離恋愛は難しいでしょ。東京のスタッフのほうの進行度ってすごく良かったし、アートワークもキャラクターデザインもBGMもムービーもスパッて行ったし。でもゲームのレベルデザインとかルールっていうのは、一瞬混沌としている時期があって、すごく整理してかかりました。王様がシナリオ的にもゲーム的にも“オレは偉いぞ”っていうことをちゃんと表現しようとして、ちゃんと決めたのはいいんだけど、その次に「この王様に対してはこのジョブが得意」みたいなゲームの設計思想が必要で、AIの発動条件などを整理、整理、削除、削除とやっていた時期があって……それが大変でした。

 今まで自分が作ったゲームの中で、これが1番丁寧で綺麗だと思う。僕のゲームをやっている人は「お話はおもしろくて思想はいいけどゲームとしてはどうかな」っていう引っかかりがあったと思う。だから今回は世界観もゲームの感じも気合い入れて作っています。

――ゲームが現在の形にまとまるまでは結構かかりましたか?

木村氏: ほぼすべての要素は最初からあったんですが、要素が多いと整理するのが大変。そこがうまく動いてなかった。例えば、「お金を持ってくる→新しい家を建てる」、「エリアのボスを倒す→新しいエリアが広がる」というのを、どういう順番でこねくり返していくかっていうのがゲームのリズムになるのですが、組み合わせが良くなくて調整した。開発のメンバーそれぞれはちゃんと仕事していて、各要素は上がってくるんだけど、それを整理する人がいなかったんだね。

――レベルデザインではプラットフォームがWiiということを意識されましたか?

木村氏: 序盤から難易度の調整というのは手をかけていて、最初の1時間はすごく調整しまくっているし、後半のボスの強さもすごく調整しました。さっき言った設計の整理をして、テストプレイした後に何度も調整を重ねていて、アクションの上手い人はアクションが上手いなりのクリアの仕方、戦略が上手い人はジョブの編成なんかを考えて知恵で乗り越えていくっていう、この辺のバランスはよくできています。

 最初の30分ほどプレイしてもらえれば、ノリがわかって、新しいゲームなのにまるで知っているゲームであるように遊んでもらえる自信があります。牛がモーって鳴いたり、通行人が暢気だったりと、まったりしているんだけど、ゲームのテンポがいいっていう不思議な感じ。これが大事なところです。

――最初のステージをクリアすると“就職率0%”とかいきなり大笑いなんですが

木村氏: それね(笑)。最初はまだ“のんきな国”なんだよね。のんきな大人がいて、そいつらを使うっていう設定は最初からありました。「ジョブがない状態っていうのは何?」という話になって、「のんきな大人だろう」ってことに(笑)。NPCに「やきそばさん」っていう人がいるんだけど、「私はのんきなんです。宝探ししかしたことないです」というやつが“農夫”になった瞬間に「のんきな大人には戻れません。もうまじめに仕事したいです」って言い始める。このギャップがいいの(笑)。

 “ライフシミュレーション”というNPC同士の動きのコントロールが普通の街よりも凝っていて、“したっぱ兵士”に“のんきな大人”が近づいてくると、蹴る(笑)。“のんきな大人”は蹴られて「けけけ」みたいな。アクションゲームとしての派手な部分だけではなくて、こういう街の中の細かい部分も注目してほしい。

――海外で先に発売した理由は?

木村氏: 発表後のリアクションの多さ。特にヨーロッパからのリアクションが多くて、すごく悩みました。

日本版独自のマニュアル。パンチョ氏が描いたというネタになっている

――最初から海外での販売も考えていたのですか?

木村氏: 考えていました。オープニングムービー(のどの言語でもない演出)は5言語化するときに、音声を5言語収録するよりも、全部の人に字幕でいいように全部デタラメ語にしてやれっていう思想です。日本に住んでいるロシア人、アメリカ人、イタリア人、ドイツ人、スペイン人など18人くらいの人にいろんなものを読んでもらって、そこから感情を込めていろんな素材を作ってもらって、それを組み合わせて作っています。

 その延長線上で、(NPCが)鼻歌歌います。ゲームのプレイ中に外人や友達に歌わせた鼻歌を、街の人が歌いながら歩いているので楽しみにしてください(笑)。

 ちなみにマニュアルは、日本のだけは絵本っぽい雰囲気にして、パンチョ氏が描いた本というネタにするなど、頑張っています。




■ エグゼクティブプロデューサーの和田康宏氏のコメント

「ミーハーなので『モンハン』や『ドラクエ』もやっています(笑)」とプライベートまで披露してくれた和田康宏氏

――「王様物語」が完成した今の心境は?

和田氏: ほんとに出来上がってほっとしました。やっとみんなに遊んでもらって、ああだこうだ言ってもらえるのがすごく楽しみです。

――ゲームのポイントは?

和田氏: 見た目よりも結構歯ごたえのあるゲーム性。もっとゲーマーの人にも遊んでほしいと思います。また、すっごい隅々までこだわって、緻密な作られ方をしているので、そういうところを見つけて、ニヤニヤしながら楽しんでほしい。

――新しいゲームは作っていますか?

和田氏: まだたくさん作っています。Wiiはもちろん、プレイステーション 3やXbox 360、ニンテンドーDS、PSPとか。プラットフォームについてはゲームのビジネスにおいて大事なことなので注目されますけど、ゲームは遊んでなんぼなので、作る側としてはどのハードで作りたいとかいうことはあんまり考えていなくて、いかにみんなが遊んだときに喜んでくれるかみたいなことを考えて作っています。

――「王様物語」のようにオリジナルの新作を作る意図は?

和田氏: シリーズものやキャラクターものみたいなものは多いですし、マーベラスとしてもそういうものに頼らざるを得ないところはあるんですけど、みんながそういった決まり切ったものがゲームだって思われると、ゲームの世界が縮こまっていくというか、どんどん去っていく人が多くて、いつかゲームが滅びてしまうのではないかという危機感を持っています。いろんな楽しみ方ができるゲームを挑戦して作って、「ゲームっていろんな楽しさがあるんだな」ってことをわかってもらえることで、ゲームの世界もだんだん広がっていくんじゃないかと信じているので、そのために自分たちができる範囲でできることを頑張っています。

――ゲームのダウンロード配信は考えていますか?

和田氏: 今もいくつか作って進めています。今はまだ数自体が少ないんですけど、すごくいいチャレンジの場になるとは思うんですね。それから、世界にはまだまだすごくおもしろいゲームがあって、日本の人にも遊んで欲しいんだけど、そういう機会がないといっている開発者が世界中にいるので、そういうゲームを日本に紹介していくようなこともやりたいなと思っています。

――次回作は?

和田氏: きむPの跡を継いで現場をとりまとめている池田君ときむPで、今、企画の草案みたいなものを作っているんですけど、どうなるかは秘密です。

――マーベラスの目指すところは?

和田氏: マーベラスのゲームって最近になってようやく少しずつ良くなったって思ってくれる人が一部に出始めている状況だと思うんですね。「どうせマーベラスなんだろ」っていうくらいのブランドイメージを、「新規のものなんだし、よくわからないけど、あそこのメーカーが出すんであれば買ってみてもいいのかな」って思えるようなものにしていきたいです。そのためには、「王様物語」だけではなくて、出すソフトを全部おもしろくしたり、魅力的にしたり、そういう努力を続けていきたいと思います。


【スクリーンショット】

(C)2009 Marvelous Entertainment Inc. All rights reserved.

(2009年 8月 24日)

[Reported by 滝沢修]