China Digital Entertainment Expo 2009現地レポート

China Digital Entertainment Expo 2009が中国上海にて開幕
中国メーカーの盛況ぶりが目立つショウ、ブラウザゲームに多数の新作

7月23日~26日(現地時間)

会場:上海 新国際博覧中心

 

 中国最大規模のゲームショウChina Digital Entertainment Expo 2009(China Joy)が、現地時間の7月23日より、中国上海の新国際博覧中心において開幕した。

 日本列島南西部と同様に、あいにくの悪天候で皆既日食フィーバーも不完全燃焼気味に終わった7月22日が明けて、翌23日から開幕した第7回目のChina Joyだが、今年は例年一定のプレゼンスを見せていた日本や韓国のメーカーがほとんど出展を見合わせ、ここ数年来で最も海外企業の出展が少ない回となった。

 この背景には、中国進出にもっとも熱心だった韓国や日本のオンラインゲーム企業の大半が、直接の運営イニシアティヴを諦めて中国パブリッシャーに運営権を委ねるようになったことに加え、折からの金融不況もありそうだ。中国ゲーム市場へ投資して“未来を買う”海外企業の動きは現在かなり下火な様子で、中国大手メーカーと並んでChina Joyの顔だったSCE Asiaも出展を見合わせた。

 もっとも、会場の規模やブースの数やサイズを見る限りでは、全体としては例年並みかそれ以上で、中国メーカーに限っては意気軒高に見える。ショウの目玉となるような大作には恵まれなかったが、開発・運営コストが旧来のゲームよりずっと低いブラウザゲームが、じわじわと地歩を広げつつある。

 中国在来の中小作品は明らかに洗練されてきているし、独自のゲーム開発技術も蓄積が進んでいる様子。派手な話題には事欠くものの、中国ゲーム市場の現在がわかるという意味で、やはりChinaJoyは見逃せない。各社の出展作品と、そこから読み取れる中国ゲーム市場の現在のトレンドに関する情報をお届けしたい。




■ ビジネスソフト大手のKINGSOFTがオンラインゲームに本格参入

控えめに見積もっても900万人のプレーヤーを誇る中国最大規模の2D戦闘ゲーム「征途」(巨人網絡)は、続編を開発中

 今年のChinaJoyで注目すべきは中国のゲーム開発会社の技術蓄積である。それを象徴するのが、中国におけるビジネスソフト&パッケージゲームの代表的メーカーであったKINGSOFTの「剣侠情縁III Online」だ。「であった」と書いたのは、KINGSOFTがすでにパッケージゲームビジネスから完全に手を引いているためだ。海賊版の横行は作品の国内産国外産を問わず、中国におけるゲームビジネスの手法を制約し続けている。

 話を「剣侠情縁III Online」に戻すと、この作品はKINGSOFTが5年の歳月と1,000万米ドルを投じて開発した独自ゲームエンジンを用いて作られる、第1号作品に当たる。中国政府は国内におけるゲーム開発技術に助成を行なっていて、「剣侠情縁III Online」はそうしたプロジェクトのひとつである「863計画」の支援を受けて作られている。

 同世代の海外製エンジンと比べたとき、話を聞く限りこれといった独自性を持っているわけではないようだが、会場に用意されていたデモ機を見てみたところ、水面における光の反射処理がプログラマブルシェーダ 1.1の世代以降よく見るタイプのシミュレーションではなく、独自の、直線的でややクセのある動き方をしていた。全面的に独自開発のエンジンであるという説明に偽りはないようだ。

 ゲーム内容としてはオーソドックスな武侠モノの3D MMORPGで、8月末には中国国内でオープンβテストに移行するという。この作品そのものもさることながら、今後同じエンジンが、同社製のMMORPGに広く用いられる見通しであることがより重要だ。例えば韓国には多数のMMORPGがあるものの、海外製のGamebryoエンジンを用いた作品が圧倒的多数を占める。そうした意味で中国のゲーム会社が独自の開発技術を構築しつつあることは、興味深い話題といえそうだ。


【剣侠情縁III Online】
会場で確認できた「剣侠情縁III Online」開発途上版の画面。プロデューサーの易 露玉氏としては、日本支社を含め同社の海外の拠点を通して、バイヤー/運営パートナーを募り、海外サービスにも乗り出したいとのこと
いずれもムービーのみの出展だが、9Youのブースで見かけたSFアクションRPG「侠道金剛」(CITY TRANCEFORMER ONLINE)と、武侠RPG「神兵伝奇」は、かなり手慣れたメカのモデリングを見せていた



■ 子供向けのオンラインゲーム市場が拡大傾向、ブラウザゲームの流行も追い風か

網元網では、SFゲームの「星際帝国」、マネーゲームがモチーフの「商戦 飛黄騰達」に続いて、「覇者春秋」を発表

 次にChinaJoy会場を彩る中小作品に目を移すと、子供向けのグラフィックスデザインがかなり洗練され、子供向けのオンラインゲーム市場への準備が着実に整いつつある印象を受けた。昨年NetEase(網易)がリリースした「鹿鼎記」あたりを皮切りに、中国在来のモチーフをアニメキャラクターのように可愛らしい3Dキャラクターで描く手法がかなり定着してきた様子。モチーフにさほどなじみがなくとも、日本でも可愛らしさとアバター要素で受け入れられそうなMMORPGが多数見られた。

 また、中国市場でもここ数年で静かに広がりつつあったブラウザゲーム市場だが、最終的に見込まれている市場規模を考えたとき、昨年から今年にかけてが最大の開花期と目されている。それを反映してか、会場では大小さまざまなブースでブラウザゲームが展示されていた。やはり1番多いのは戦争モチーフの作品だが、春秋戦国時代を舞台としたRPGといった中国らしい作品もある。

 実際にプレイしたときのテイストはさておいて、取り上げられるモチーフについては、ヨーロッパにおけるトレンドと、さほど開きがないように感じられた。一般にブラウザゲームはプレイ内容的にゲーム内資産に依存する度合いが低く、多くのプレーヤーが小額のアイテム購入を行なうことで運営が賄われているケースが多い。結果として、組織的なハッキングの対象となりにくい、つまり個々のプレーヤーを狙ってもおいしくない点が、流行の下支えとなっている可能性がある。

 海外勢で目立っていたのは、今回数少ない海外からの出展となるElectronic Arsや、新たなパートナーであるNetEaseブースで展開されていたBlizzard Entertainmentの2社だろうか。明日以降も引き続き注目すべき中国の作品とメーカーを中心に、情報をピックアップしてお届けしていくので、楽しみにしていてほしい。


【情天Online】
子供向けというには、ややあざといグラフィックスのライト系MMORPG、網元網の「情天Online」。オートラン、所定位置での自動狩りなど、アバター要素を重視したRPGとしてのゲーム性については、かなり中国製らしい割り切った仕様の作品でもある。ビジネスモデルはアイテム課金

【戦国】
「戦国の七雄」をモチーフとしたストラテジー、火■(■はのぎへんに「中」)遊戯の「戦国」

【九洲戦記】
The 9(第九城市)が出展していた、春秋戦国時代を背景にしたRPG「九洲戦記」主人公キャラ一人の剣術や弓術の能力を高め、育てていくゲームで、周期的なリセットは存在しない。戦闘は自動処理だ

【熱血三国】
JoyPort(楽港)のブースでは、ファンタジーRPGの「魔晶幻想」と、開発ストラテジーの「熱血三国」が展示されていた

NetEaseのブースの一画では「World of Warcraft」に続いて新たに獲得したBlizzard Entertainmentの次期タイトル「StarCraft II」のムービーが公開されていたEA「BATTLEFIELD ONLINE」ブース展示のモチーフは大型輸送機Storm Entertainment(暴風娯楽)が展示していたキッズ向けタイトル「兔跳帝国」。独特のセンスが感じられる

(2009年 7月 24日)

[Reported by Guevarista ]