カプコン、PS3/Xbox 360「バイオニック コマンドー」
プロデューサーのベン氏が本作の魅力をプレゼン

6月24日 開催

6月25日 発売予定(ゲームソフト)

価格:7,340円

CEROレーティング:D(17歳以上対象)

 

 株式会社カプコンは、6月25日にプレイステーション 3とXbox 360で発売予定の新世代スウィングアクション「バイオニック コマンドー」のプレス向けプレゼンテーションを開催した。プレゼンテーションには、本作の開発プロデューサーを務めたベン・ジャッド氏が登場し、本作の魅力について語った。



■ 難産のすえに生み出された新世代スイングアクション

ベン・ジャッド氏

 筆者がベン氏に初めてお会いしたのは、昨年8月にリリースされた「バイオニック コマンドー マスターD復活計画」のプレゼンテーション取材時。前回同様、流暢な関西弁で軽いギャグを飛ばしつつプレゼン開始。「いよいよ明日(25日)発売。2年以上の想い、気持ち、苦労……色々入っているタイトルです」と、感慨深げにコメント。発売日が大幅にずれこんだタイトルだけに、部外者ながらその苦労のほどが偲ばれる。

 続けてベン氏は、日本国内と海外における初代「バイオニック コマンドー(日本名:トップシークレット)」の人気や知名度の差を説明。社内でも知らない人が多かったことに驚いたベン氏は、開発部長の稲船氏や信頼するプロデューサー諸氏に相談したところ「海外での認知度が高いのなら、海外の開発会社とチームアップして、完全に任せるのではなくコラボレートする。カプコンが得意とする分野を活かそう」という答えにたどり着いたという。

 「こんなことをいっていいのかどうか、わからないけど……」と前置きしつつベン氏は「自分は、個人的に日本のゲームが大好きです。洋ゲーは、ちょっと(部分的に)楽しさがわからない、私には伝わらないようなところがあるんです。それで、海外の開発会社を使ってうまくいくんかな~? ぶっちゃけ、そういう気持ちはあったんですね。それやったら、カプコン社内のチームばかり使って作りたいわ! と思ってしまったところはある。ただ、サードパーソンシューティング(TPS)となると、海外(ディベロッパー)のほうが経験がある。それで探したところ、GRINに(たどりついた)」と説明する。

 ここまできくと「なんだ、本作は海外向けに作られたのか」と思ってしまうが、そうではない。ベン氏は「どっち向きに作るかという1番大きな課題がありました。当然、海外メインに考えていれば、日本のユーザーを無視してしまうところがある。それはやりたくなかった。なぜなら、自分は日本のゲームが好きだから、自分を無視するようなことになるので。だからといって、カプコンが作っているんだから日本のユーザーをベースに作っていくというのも、ちょっと違う。ずーっと2年以上のなか、どれくらいの割合でライト~ハードコア、どこにゲームを落としていくか。それが何よりも1番苦労したところ」とコメント。

 GRINから最初に提出されたものは、ワイヤーアクションに補正がかからない細かいシステムだったという。開発スタッフは全員「これでいい! 行きたいところにいける!」と絶賛したが、ベン氏がプレイしたところ「死にまくり。『なにこれ、全然難しすぎるやん! これやったら日本人ユーザーも私も全然ついていかれへんから、アカンやん』とお互いにぶっちゃけ話をして、そこから再調整して、やっとこの形……新世代スイングアクション……になりました。日本のユーザーはスイングについていけるかな? と色々(不安に)思ったんですが、ここ数週間、色々なイベントや体験会をやってみたら、わりとついていけていることに気づいた。それは何より嬉しかったですね。2年以上の時間と想いをかけて物を作って、結局『なにこれ、難しすぎる。いらん!』と評価されたら、それは悲しいこと。スイングに慣れるまでは10分くらいかかると思うんですが、そのうち間違いなく楽しくなると思います」と説明する。

 続いて、ベン氏みずからゲームのデモプレイを披露。ゲーム後半に登場するイベント性の高いステージで、飛行中のレシプロ機に飛び乗った状態から、ワイヤーアクションで外部から操縦系をのっとり、前方のレシプロ機に近づいて同様の手順で先頭のレシプロ機までたどりつく。「バイオニック コマンドー」らしいダイナミックかつ繊細なワイヤーアクションの特徴がいかんなく発揮されているシーン。格好よくのっとって先に……と思いきや、いきなり機体から振り落とされてしまうスペンサー。シュールな落下シーンに大笑いするプレス一同。「まぁでも、日本のユーザーもこの『ゲームオーバー』という単語を毎日のように目にすると思います。慣れておいたほうがいいんじゃないかと(笑)」と照れ笑いするベン氏。実際本作は、いわゆる「死んで覚える」ゲームで、僭越ながらレビューを担当させていただいた筆者も、クリアまでに何度死んだことか。「お前は今までに食べたパンの枚数を覚えているのか?」てな具合に、まさしく数え切れないほどリトライを繰り返したものだ。

 次に披露されたのは、巨大なメカ全体が足場と化したステージ。「でかいメカを入れたい。それは、カプコン側もGRIN側も思っていたところ。そういうのがないとつまらないという気持ちがあったので『コンストラクター』という、物凄くデカい“歩くプラットフォーム”みたいなのを入れたんです。GRINのアイデアとして、歩くと振動を感じたりとか。ゲームの中盤くらいから、この『コンストラクター』が背景で歩いているのが見えるんですけど、最後は実際にのって戦うというのがコンセプト」と説明するベン氏。コンストラクター上には3つのリアクター(発電機)があり、周辺にいる敵を一掃しつつ3つすべての破壊を目指す。本ステージに限らないが、スペンサーの前にたちはだかる敵兵の動きがなかなか秀逸で、いわゆるCPUならではのずるい動きではなく、キャラ=特徴付けがきちんとなされているのがいい。

 主人公スペンサーの動作スピードについて、ベン氏は「走るスピードは、わざと遅くしている。なぜかというと、それによって“スイングしたい!”という気持ちをユーザーに持ってほしいから」と説明。遅いといっても別段イラつくほどではないが、スイングを駆使すればただ普通に走るよりも早く動きまわることが可能だ。


【プロモーションムービー】

■ 特典映像は“兄貴”こと水木一郎氏が歌うテーマソングのフルサイズPV

 本作は「バイオニック コマンドー マスターD復活計画」に引き続き、“兄貴”の尊称でつとに有名な歌手の水木一郎氏、作曲家の田中公平氏とコラボレート。そもそも、なぜ水木氏と田中氏に白羽の矢が立ったのかについては前回のプレゼンテーション記事をご参照いただきたい。

 日本版には、水木一郎氏が歌うテーマソングPVが特典として収録される。海外のユーザーコミュニティにも本件は伝えてあるといい「『悔しい、俺も欲しい!』、『誰か早くYoutubeにアップしてくれ!』と。アカンやろ!(一同笑)」とベン氏。水木氏は海外でも特に認知度が高く、ベン氏によれば「Wikipediaでもっとも検索されている日本人」だという(2位は黒澤明監督)。会場では、水木氏のメッセージビデオと収録特典のフルサイズPVが披露された。

 PVは、1番こそ「バイオニック コマンドー マスターD復活計画」で公開されたものと同じだが、2番に「バイオニック コマンドー」の映像がフィーチャーされたフルサイズ版。PVに登場する水木氏はバイオニック・アームを装着しており、撮影中は数時間つけっぱなしで大変だったが、それでも笑顔を絶やさなかったというから驚き。同行した弊誌編集部員も装着したが、短時間なので大変というよりは「嬉しくてもう仕方がない」といったところ。(下写真参照)

 カプコンでは、PS3「Playstation Store」とXbox 360「Xbox LIVE アーケード」で配信中のワイヤーアクションゲーム「バイオニック コマンドー マスターD復活計画」について、6月29日までの期間限定でプライスダウンセール(半額)を実施中。連動要素として、同作を購入した人は「バイオニック コマンドー」でスペンサーのコスチュームをオリジナルに変更できる。

ファン感涙の映像特典フルサイズPV。「記事として写真配分がおかしい」とか「そもそもコレは何の記事なのだ」?とか、そんな瑣末なことはどうでもいい、兄貴の熱きおたけび、魂が「バイオニック コマンドー」と融合した珠玉の映像に対する感動は、この程度ではあらわしきれない。気になる人はぜひゲーム本編とともに心の底から楽しんでいただきたい


「バイオニック コマンドー マスターD復活計画」購入者は、特典としてオリジナルコスチュームのスペンサーでプレイが可能。ドレッドヘアもいいけど、こっちもやはり捨てがたい


E3で海外プレスやファンに大好評だったバイオニック・アームの実物が目の前に! 同行していた弊誌編集部員がさっそく猫まっしぐら状態で装着。ゲーム本編ではほとんど見えない親指パーツなど細かいディティールも確認でき、赤い透明パーツは電池で点灯するといった凝りよう


ショートコントにも使える、とっても便利なバイオニック・アームマルチプレイ大会の賞品の一部



■ スイングが命。好き嫌いが激しいゲーム

 プレゼンテーションの最後に、プレスとの質疑応答が行なわれた。約1カ月ほど先行発売された海外ユーザーの反応についてきかれると「海外の評判は、まさに自分が想像したとおり。1980年代のファミコン版、当時そんなに雑誌は海外になかったんですが、あったとしたら似たような評価を受けると思います。スイングを理解して楽しさがわかる人には結構高めのスコアをもらっているんですけど、スイングの良さがわからない人は……楽しくないですね、ぶっちゃけ。スイングが命のゲームなので、そういう人は低い評価。中間は少ない。めっちゃ好きか、めっちゃ嫌い(笑) 好き嫌いが激しいゲームになってますね」とコメント。

 バランス調整については「ゲームのなかで移動スピードは大事だけど、もっと大事なのは敵との距離。当然、敵に近づけば近づくほど倒す手段が増える。近ければパンチでも倒せるし、ちょっと離れたらワイヤーも使える、遠ければスナイパーライフルや特殊武器が使える。1番ややこしいのは、ワイヤーは1発で遠くまでいける。たとえば、遠くに敵スナイパーがいても、スイングを2回くらいやったらめっちゃ近くまでいける。だから、そこいらへんの調整。距離的に、どんな敵をどこに置くか。その敵は、どのような強さを持っているか。1番苦労しました。最終的な答えとしては、どんな方法でも、敵でも倒すことはできるが、『ロックマン』チックな感じで『この武器もしくは方法で倒せば有利』というようなデザインにはなっている」と説明した。

 アクションが苦手な人へのアドバイスをきかれると「(苦手な人を)デザイナーとして完全に無視したらあかん。わりと、見えないところで補佐は入っています。たとえばスイングですけど、ワイヤーボタンを押しっぱなしにすると、どこか高いところから飛び降りたとして、近くにフックできるものがあると自動的にワイヤーがフックしてくれる。だから、タイミングよく押さなあかんとか、そういうのはないですね。最初は『どうやってスペンサーを成長させるか』を考えていた。チャレンジシステムというのが入っていて、敵を5体ヘッドショットで倒すと銃が強くなる、パンチで敵を倒すとアーマーが強くなる、など。苦労しているライトユーザーさんは、まずそれを見て『こういうことをしていれば強くなる=進みやすくなる』というフォローは入れています」とコメント。

 プレゼンテーションの最後に「明日(25日)、『バイオニック コマンドー』発売です。新世代スイングアクション、本当に革新的なゲームだと思います。マンネリが入っているゲーム業界ですけど、こういう“新鮮”なものを、ぜひともユーザーのみなさんにプレイしていただきたいと思います」と述べたベン氏。近日掲載のレビューでも触れているのだが、オリジナル作品を最大限リスペクトしつつ、アクションゲームの本質を突き詰めた“新旧融合”の良作。筆者も、なるべく多くの人にプレイしていただければと思う。


【訂正】
 掲載当初掲載しておりました「ゲーム大会」とはユーザーを対象としてものではありませんでした。ここに訂正して記述を削除いたします。

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(2009年 6月 25日)

[Reported by 豊臣孝和]