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「ディビジョン」、11種類5派閥の敵AI設計思想
“「Tom Clancy」のシューターRPG”を実現するAI開発のこだわり
(2016/3/15 17:37)
日本では3月10日に発売されたオンラインRPG「ディビジョン」のAIに関する講演が、GDC 2016で実施された。
登壇したのは、Ubisoftの開発スタジオMassive Entertainment Game DesignerのDrew Recher氏と、Massive Entertainment Senior AI ProgrammerのPhilip Dunstan氏。講演では主に、敵AIの設計方針と具体的な内容について話されていった。
5つの派閥ごとに変化するAIのふるまい
「ディビジョン」のAI設計思想として大きなポイントになってくるのが、本作がRPGであり、なおかつシューターであるということ。特にRPGという部分は大事で、プレーヤーはキャラクターの成長過程で前線を張ったりサポートに回ったり、また遠距離から狙撃をしたり、様々な役割を選択できる。
またステータス、プレイスキルの両面でプレーヤー自身も成長していくが、そのプレイ過程で楽しさを失うことなく、さらに「Tom Clancy」シリーズで要求される「リアルさ」も実現しないといけない。
そこで開発チームが用意したのが、11タイプのAIの雛形と、5種類の派閥だ。11タイプの雛形を書き出してみると、通常の撃ち合いをするAssault、近接攻撃をしかけてくるRusher、遠距離からこちらを狙うSniper、グレネードなどを放ってくるThrower、タレットなどを設置するControllerとそのTurret、速射性の高い重火器を扱うHeavy Weapons、高い体力と攻撃力で向かってくるTank、周りの行動に影響を与えるLeader、体力回復役のSupport、そして特殊な行動規範を持つSpecial。
そして派閥とは、ゲームに登場するRioters、Cleaners、Rikers、そしてLast Man Battalionのこと。Last Man Battalionは強さが2段階あるため、合計5種類となるのだが、つまり本作では、雛形を元にした5つの派閥ごとのAIが存在することとなる。
大事なのは、派閥ごとにAIの質が微妙にコントロールされているということ。プレーヤーはRiotersにはじまり、Cleaners、Rikers、そしてLast Man Battalionと段階を経て対峙していくこととなるが、AIの賢さも徐々に上がっていくようになっている。
Riotersの段階では連携せず、スキルも使わないが、Cleanersでは組織的な動きを見せたり、初めてTankが登場したりする。またRikersになればさらに同調し、扱う技術も上がってくる。その最強ランクに当たるのが、Last Man Battalionの第2段階というわけだ。
実際にはさらに、プレーヤーのアクションに対応するプロファイルが設定されていたり、一部のNPCはさらに特殊な役割が与えられていたり、ほかにもカバーの動き、連携の方法、スキルの使い方などの行動が細かく設定されている。
会場ではRiotersとの戦闘デモ、Last Man Battalion(第2段階)との戦闘デモが連続で上映されたが、Riotersは動きが無防備な上てんでバラバラで倒しやすい一方、Last Man Battalionはこちらを囲むような動きをするなどかなり嫌らしい連携を取る上、装備品が上等なので非常に厄介な戦闘となっていた。
特に本作において、AIの設計はゲームデザインと深く関わっている。シューターとしての面白さを損なわず、ストーリー上自然でありながら、なおかつRPGとしても成立させる。段階ごとに敵が強くなっていくのは当然ではあるのだが、こうして改めて講演を聴いてみると、その1つ1つにかなりのこだわりを感じられた。「ディビジョン」をプレイする際は、これら敵AIの動きも意識してみると面白いだろう。