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エヌシージャパン、大型MMORPGの無料化施策「NCZERO」インタビュー

なぜ無料化なのか? 疑問と不安を各タイトルプロデューサーに直撃

3月1日に発表された「NCZERO」キャンペーン。「ブレイドアンドソウル」だけでなく、「タワー オブ アイオン」の基本無料化、「リネージュ2」の無料サーバー設置などが発表された

 3月1日にエヌシージャパンより公表された大型MMORPGの無料化キャンペーン「NCZERO」。詳細は発表会の記事で紹介したとおりだが、「ブレイドアンドソウル」の基本無料化をはじめとして、「タワー オブ アイオン」、「リネージュ2」、「リネージュ」も含めて無料で遊べるコンテンツを大幅に増やすという意欲的な施策だ。

 今回は、その無料化にともなう今後の展開について、エヌシージャパンのチーフプロデューサーである三浦周氏、「ブレイドアンドソウル」プロデューサーの合田真二氏、「リネージュ」プロデューサーの中村直樹氏に、それぞれお話を伺ってきた。メインコンテンツを無料化するエヌシージャパンがどのような形の運営方針を目指すのかを、ぜひ確認していただきたい。

大型MMORPGの無料化で何が変わるのか。気になる今後のクオリティとビジネスモデルに迫る

チーフプロデューサーの三浦周氏
「ブレイドアンドソウル」プロデューサーの合田真二氏
「リネージュ」プロデューサーの中村直樹氏

――まずは、今回エヌシージャパンの主力コンテンツである、大型MMORPG各タイトルを無料化するに至った経緯についてお聞かせください。

三浦氏: こちらは、弊社が今後予定している新規タイトル、モバイル分野への進出といった新サービスを展開していくにあたり、現在の主力サービスである定額制MMORPGのユーザーさんだけを対象とするのではなく、より多くの方に楽しんでいただこうということからこのような形を決断しました。

 2014年の経過も見つつ慎重に検討を重ね、そこでは定額制のサービスを維持しながら、といった意見も当然ありましたが、最終的にはユーザーさんを増やしていく方向を選択し、年明けからこの形を目指して動いてきた次第です。

 昨今では軽いゲーム、面白い部分まですぐに到達できるようなゲームが増えてきています。それに対して、エヌシージャパンのゲームはコンテンツを深く遊んでもらうタイプのゲームなので、そのためにはまず皆さんに広く遊んでもらいたいと。世に出ている多くのゲームと比較しても、うちのタイトルは決して魅力がないわけではないと思っていますし、市場競争をしていくうえでも推していけるのは、その「じっくり遊べる部分」だろうと考えています。もちろん、ブランディングも兼ねてという点もあります。

――今回「ブレイドアンドソウル」の基本無料化が発表されましたが、「龍翔会」という課金型サービスも発表されました。これについてはどのようなものをお考えですか?

合田氏: 「ブレイドアンドソウル」に関して言えば、ゲームとしては無料で一通り楽しむことはもちろん可能です。そのうえで「龍翔会」というサービスをご利用いただくことで、これまでよりもワンランク上のゲームプレイを楽しめる、というものになっています。詳細な内容に関しては最後の部分を詰めているところでまだ申し上げることはできないのですが、快適なプレイができるものとなるように考えています。

――「ブレイドアンドソウル」のこれまでのプレイ料金を考えると、それが無料になるということは運営側に負担があるのではと考えられます。このことで、これまで販売していた有料アイテムなどに変化がでてくるのでしょうか?

合田氏: 既存のサービスについてはこれまで通りの形を維持し、現在の販売物の価格がアップするといったことはありません。無料化以降はそれにプラスした形で、先ほどご説明をした「龍翔会」といったサービスを新たにスタートしますが、これが今後のビジネス展開の主力といった形になっていくかと考えています。基本無料になるからといって、ゲームとしてのクオリティが落ちるということもありません。

 これはほかのタイトルについても同様で、無料化にともなう現行サービスのダウングレードなどは一切考えておりませんが、「ブレイドアンドソウル」についてはプレイ商品購入時に得られていた「プレイ特典」がなくなるため、その点だけはご理解いただければと思います。なお、プレイ特典に代わる新サービスについては、「龍翔会」にてご案内していく予定です。

――「リネージュ2」と「タワー オブ アイオン」に関しては、これまでも一定の部分までは無料プレイ可能という形でのサービスを行なっていますが、改めて新サービスの概要を説明していただけますか?

三浦氏: 「タワー オブ アイオン」は月額定額制を撤廃しますが、「リネージュ2」に関しては、基本無料の新サーバーを設置した上で、現状を維持した形(レベル80まではプレイ料金無料)でも継続します。これは、ゲーム内のバランスをどうするかという部分や、月額料金無料による新たなビジネスモデルの構築、不正利用者への対応など、検討に時間を要する問題が多く残されているためです。

 「リネージュ2」はプレーヤー人口が最も多いタイトルでもあるので、ここについては慎重に対応させていただきたい、というところです。そういう意味でも、発表会にてご紹介した「クラシックサーバー」の提供をまずは無料でやらせていただき、将来的には全サーバーの無料化も検討していく、という考えです。

――「タワー オブ アイオン」に関しては、有料サービスの「ゴールドパック」を利用したユーザーのキャラクターに対して、PvP(対人戦)で有利なバフがかかる、といったものも発表されていました。その場合の、無料で楽しんでいるプレーヤーとの対戦バランスというものはどのように想定されているのでしょうか?

三浦氏: バフについては極端にキャラクターを強化するものではなく、あったらいいな、というぐらいの数値になるように調整しています。「タワー オブ アイオン」のPvPは、うちの「リネージュ」や「リネージュ2」などと比較しても、スキル選択やキャラクターの操作といった部分、つまりプレーヤースキルの比重が高めとなっているので、対抗することは十分に可能だろうという考えです。そのため、バフは少しでも勝率を高めたい、という方に利用していただくことになるかと思います。

「無料化してもサービスについてはより向上させていく」と語る各プロデューサー
「ブレイドアンドソウル」における新サービス「龍翔会」の内容選定は大詰めを迎えている状態だという
「タワー オブ アイオン」の「マスターサービス」や「リネージュ2」の「クラシックサーバー」は、かつてゲームを楽しんでいたプレーヤーを対象としているとのこと
「リネージュ」は、今後の目玉となっている新クラス「戦士」の実装などをはじめとして、他のMMORPGに負けないようなサービスやアップデートの強化を図りたいとされた

――無料化にともなうビジネスモデルとして、たとえば「ガチャ」のような販売物の数を増やすということはあるのでしょうか?

三浦氏: ガチャなどはすでに導入されていることもありまして、そちらを増やすというよりは、「ブレイドアンドソウル」の「龍翔会」といったVIPサービス的な部分を充実させていきたいと考えています。例えば、毎日プレイをしていただければ、そのプレイ継続に対して何かしらの報酬があるなどという形です。

 ゲーム中で扱っている販売物に関しては、ユーザーの方がゲームを遊んでいる際に、「これがあったら冒険も便利になるね」という自然な流れの中で購入を選択できるようになる、といったものを目指しています。

――無料化で人数が増えると、チート行為なども増加してくるかと思います。予想される不正利用者の増大について、具体的に対策を講じられたりしているのでしょうか?

三浦氏: 不正利用でもっとも心配しているのはbotで、現状においても会員登録やログインの方法をbotでは行ないづらい形にしたり、セキュリティ自体を向上させるなどで対応しています。デバイス認証やGoogle 2次認証なども導入し、もちろん内部スタッフによる監視なども含めて対応していきます。

――今回の無料化でユーザーがプレイするための敷居は低くなりますが、「ブレイドアンドソウル」や「タワー オブ アイオン」などについては、ハード的なところで高性能なものが要求されるかと思います。そういった部分では、たとえば低スペックマシンへの対応なども考えたりされているのでしょうか?

三浦氏: オプションを設定することで、場合によってはそれなりのスペックのマシンでもお楽しみいただくことは可能なので、基本的にはそちらで対応いただくということになるかと思います。また、弊社のサービス全体をご覧いただければ低スペックでもプレイできるものもたくさんあり、例えば「リネージュ」のように、低スペックマシンでもコミュニケーションやPvPといったMMORPGの醍醐味が十分に味わえるタイトルも用意しております。そこはご自身の環境に合わせて選択いただければというところです。

――「リネージュ」について、今回は「タワー オブ アイオン」や「リネージュ2」のように、ゼロからスタートとなる新サーバーのお話などはなかったのでしょうか?

中村氏: じつは、検討内容としては持ち上がっている内容です。実際にやるとなった場合でも準備そのものはすぐに可能ですので、期間はそれほど要しません。もし新サーバー増設を実施するとなれば、5月の「戦士」アップデートにともなって行なうのがタイミング的にもベストだと思っているのですが、現状すでに7つのサーバーが稼働しています。新しいサーバーを用意することで、現在「リネージュ」プレイをしているユーザーさんが移動してしまい、既存サーバーにいる人が少なくなってしまうようであれば、何かしらの方策を考えてから実施しなければならない、というところです。

――最後に、今回の無料化のタイミングにおいて、ユーザーさんにお伝えしたいことを、それぞれのプロデューサーの方からお願いいたします。

合田氏: 「ブレイドアンドソウル」は3月1日から世界が大きく変わります。これまで多くのユーザーの方をお待たせしてきましたが、今回のアップデートでは、皆様が驚くような内容を実装できたかと思っております。以降の新しいサービスでは、さらにお楽しみいただける内容をご提供できるであろうことを、僕自身も期待しています。

三浦氏: 「タワー オブ アイオン」は、マスターサービスの導入によって“潜入”や「ドレドギオン」といった、かつてプレイされていた方に最も楽しまれていたコンテンツが再現されているところにご注目いただきたいです。バランスとしてはシビアですが、そういうカオスな状態を楽しまれていたユーザーの方には、とくにオススメしたい部分です。自由に人と戦ったり、冒険することができたあの頃の楽しさを、ぜひもう1度ご体験ください。

 「リネージュ2」でもクラシックサーバーを導入したことで、アップデートによって調整された職バランスの部分を、調整以前の状態で当時の雰囲気そのままに再現しています。パーティにおけるロールプレイの重要性を存分に味わうことができますので、とくに昔ながらのプレーヤーの方にお楽しみいただければと思います。

中村氏: 「リネージュ」以外のMMORPGが無料化、また「リネージュ2」が一部無料化したことで「リネージュ」のユーザーの方が他タイトルに行ってしまわれないよう、さらなるサービスやアップデートを提供して参りたいと思っています。発表会では「戦士」のアップデートをお伝えしましたが、年内で言いますとほかにも大きなアップデートを3つ予定しておりまして、そのうち2つは韓国版にはない内容です。このように、まだまだ「リネージュ」スタッフ一同頑張って参りますので、ぜひともご声援をよろしくお願いいたします。

――本日は、どうもありがとうございました。

(泊 裕一郎)