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【特別企画】「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES」PC版の4K対応を検証する
KONAMI・小島プロダクション × NVIDIA共同開発で実現したクオリティや如何に?
(2014/12/18 09:00)
KONAMIの小島プロダクションが贈る「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES」のPC版が、12月18日(日本時間:12月19日午前3時)、ついにSteamで全世界一斉に配信スタートする。しかも海外だけでなく国内ユーザー向けにもきちんと日本語版が配信されるのだ。
ちなみに、「MGS」シリーズのWindows PC版が、海外限定ではなく、国内向けにも正式にリリースされるのは、シリーズの歴史の中で初めてのことだ。個人的な感想としては、コンソールゲームとPCゲームの間に厳然と存在したやっかいな垣根のようなものがまたひとつ崩れた感じがし、PCゲーマーとして素直に嬉しいところである。それに、もともと「メタルギア」はMSXというPC向けのゲームであったわけだし……。
それに加えて今回嬉しいのは、本作が“単にPCでも動くようにしたバージョン”ではないということだ。完璧主義の小島プロダクションは本作のPC版を用意するにあたり、NVIDIAの技術協力を受けて最高のPC版の実現を目指した。このため本作はNVIDIA GeForce GTX 900シリーズのグラフィックスカードに最適化され、必要な環境さえあればPS4版およびXbox One版を超える品質で快適にプレイできる作品になっている。
そういった形で本作のPC版が登場したということは、本作をプロローグとして将来登場予定の本編「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」でも、GeForce向けの最適化や、本作と同等以上のクオリティなどが期待できるということである。
さて、最高の「MGS V」をプレイしたいゲーマーは大枚はたいて高性能ゲーミングPCを買うべきか否か? GeForce GTX 980搭載のゲーミングPCと、4K(3,840×2,160ドット)解像度のモニターというPCゲーマーの欲張りセットを使って検証してみよう。
こなれた感じすらある、PC版としての理想的な作り込み
まずは本作「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES」が、PC版としてどの程度きちんと作りこまれているかを見てみよう。
インストールサイズは3GB程度。ステージデータが1種類しかないプロローグ版だとしても、この品質のゲームとしてはかなり小さめだ。それなりの高速回線を使っていればSteamでの購入、ダウンロード、プレイ開始までわずか数分である。
ゲームの操作方法は、ゲームパッドを使う場合Xbox 360系コントローラーに完全準拠。インゲームの操作説明もXbox 360/Xbox Oneコントローラー風だ。もちろんキーボード+マウス操作にも対応していて、PCのFPSで標準的なWSAD系操作でも快適にプレイできる。
ちなみにキーかマウスを触れると即座に操作方法のインジケーターがキーボード+マウスを前提としたデザインになるし、ゲームパッドとの同時使用もできる。キーの割り当て変更も自由にできるなど、操作周りは全般的にマルチプラットフォームタイトルのPC版としてお手本レベルのこなれた作りである。
グラフィックスの設定も柔軟だ。今年1月にリリースされたスピンオフ作品「METAL GEAR RISING: REVENGEANCE」では1,920×1,080ドット(2K)を超える解像度に対応していないのが残念なところだったが、本作では最大4K解像度まで対応しており、モニタ側が対応するあらゆる解像度をネイティブで利用できる。せっかく超高解像度モニタを買ったのに意味がなかった、ということにならないのはPCゲームとして実に素晴らしい。
NVIDIAによれば、本作の超高解像度への対応は開発元のKONAMIの小島プロダクションでも力を入れた部分だそうで、本作では4K表示をターゲットとした高解像度のテクスチャやジオメトリをグラフィックスオプションで利用できるようになっている。ただでさえ描写の緻密な作品であるだけに、解像度を上げれば上げるほど見応えのあるビジュアルが現われる。このあたり、次章できちんと検証してみよう。
グラフィックス面でちょっと残念なのは、フレームレートの上限が60fpsに設定されていることだ。このため本作ではPC版の売りである120Hz、144Hzといったハイリフレッシュレートのモニタの利点を活かすことができない。とはいえ、比較的に落ち着いたペースで進行するステルスアクションが主となるゲームなので、死ぬほど忙しいレースやスポーツ系のFPSほどの痛手があるわけではないのが救いだろうか。
フレームレート上限の仕様を除けば本作はPC版として実に満足できる作りだ。PC版として満足、というのは、ユーザーそれぞれの持てる環境に合わせて最大限の品質でプレイできるということである。特にハイエンドな環境で何を得られるか、という点がPCゲーマーにとっての最大の関心事であり、ゲーム環境としてPCを選ぶ主要な動機のひとつだろう。続いてそのあたりを見ていく。
画質は迷わず最高設定に! PS4/Xbox One版を大幅に超える映像品質
本作のゲームエンジンは、KONAMIの小島プロダクション謹製の最新「FOX ENGINE」だ。GDC 2013で初披露されたこのエンジンは、現在開発中の「METAL GEAR SOLID V: THE PHANTOM PAIN」を含め、次世代プラットフォームをメインターゲットに据えて開発されているもので、物理ベースライティングを基本とし、フォトリアルなオープンワールドを描写を得意とする強力なソリューションだ。詳細については、GDC 2013の小島秀夫氏の講演レポートで取り上げているのでそちらを参照いただきたい。
「FOX ENGINE」は既にKONAMIのサッカーゲームシリーズ「ウイニングイレブン 2014」以降で採用されているが、もともとは現在開発中のシリーズ本編「METAL GEAR SOLID V: PHANTOM PAIN」での実装を睨んで設計されているエンジンである。そこで、いわば本編の実証プロトタイプとも言える本作「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES」にて、どこまでカッティングエッジな映像品質を引き出せるかが「FOX ENGINE」の底力を知る上で、また、シリーズの将来を占う上でもゲーマー的に興味を惹くところだ。
というわけで本作PC版では、ライティングから各種のポストプロセスに至るまで、PS4/Xbox One相当を上回る画質設定の項目が用意されており、ハイエンドゲーミングPCを用いることで本作のフルパワー画質を確認できる。特に大きな違いを以下に挙げていくが、その差は一目瞭然である。
光源処理の規模とライティングの高品質化
まずPS4/Xbox One版とPC版の最高設定で最も大きな違いとなっているのが、光源の数だ。下の画像を見比べていただければおわかりのとおり、施設内の各所、特に兵士が巡回している鉄柵付近や道路沿いに、PC版でだけライトアップされている部分がいくつもある。
これにより画面全体の情報量や映像の厚みが向上し、基地内部のレイアウトも把握しやすくなっている。PS4版で省略されている遠方の光源は近づくことで可視化されるため“明るい場所では発見されやすい”というゲーム性そのものが変わるわけではないが、遠景の光源もケチらずに表現できるPC版では、より遠くから光源の位置を確認できるため、より臨場感のあるプレイが楽しめる。
よりリアルになった反射表現
本作のメインシナリオでは大雨の基地内に忍び込むことになるが、その“雨が降っている感”もPC版の描写でグレードアップ。地面の各所にできた水たまりが周囲の風景を反射する様子が確認できる。
ちなみに「FOX ENGINE」ではオブジェクト同士の相互反射をある程度の粒度で表現するライト・プローブ式の大局照明技術が搭載されているが、PC版では水面への直接的な反射(白いプレハブの建物が写っている部分)や、薄く濡れた地面への淡い反射(カーキ色のコンテナの下部)といった表現が加わることで、大局照明がつくる空気感も一段とリアルなものになっている。これも高性能ゲーミングPCで得られる大きなアドバンテージのひとつだ。
超高解像度レンダリング
本作のように絵作りが緻密なゲームでは、画面解像度が上がることによるメリットはとても大きい。例えば遠方に見える監視塔の構造や、最上階の人影。PS4/Xbox One水準の2K解像度では潰れてしまう情報も、3K(2,560×1,440ドット)、4Kといった解像度ではきっちり見えてくるのだ。
実際に本作を4Kモニターでプレイしてみたが、まずドット感の全く感じられない緻密な映像でとてもリッチな気分になれる。しかも、双眼鏡でズームしなくても遠方の状況がだいたい把握でき、偵察に使う時間が減って全体のプレイがかなりスムーズになった。本作は4K解像度でも見劣りしない高解像度テクスチャを使用しているので、遠景だけでなく近景のクオリティもしっかり高まるのがいい。本作PC版の開発で、4K対応が大きなウリとして注力されたゆえんがよくわかるデキだ。
DSRでの超高解像度レンダリング
超高解像度モニタを使用していない環境でも、上記のメリットを得られる方法がある。DSR(Dynamic Super Resolution)を利用することだ。DSRはゲームを仮想的な超高解像度でレンダリングしてモニタサイズにダウンサンプルするというGeForceのドライバ機能で、最近のアップデートでGeForce GTX 500シリーズ以降のデスクトップGPUで広く利用できるようになった。(NVIDIAサイトのサポートGPU一覧)
最終的に出力される解像度が1,920×1,080ドットでも、内部的に4K解像度でレンダリングされた情報量はしっかり活きてくる。例えば植物や金網などの細かい模様、あるいはキャラクターの表情や、ゴテゴテとした装備品のシルエット。ネイティブな4Kモニタへの表示に比べるとややシャープさは劣るものの、本来の解像度では見えなかった細部がきちんと把握できるというのは大きい。画質上の満足度が高まることはもちろん、ゲームプレイ上においても大きなメリットだ。
2Kはもちろん3Kも期待以上の軽さ。4Kも十分にプレイアブル!
PC版では画質が良いのはわかった。しかし動作パフォーマンスはどうだろうか。その点、本作はNVIDIAの技術協力を受けたということもあって、GeForce GTX 900シリーズによく最適化されているようだ。各条件での実測フレームレートを見ていこう。
計測環境のPCは、CPUにCore i7 4790K、GPUにGeForce GTX 980のシングルという構成。現行のハイエンド(ウルトラまではいかないが)環境にて、本作「METAL GEAR SOLID V: GROUND ZEROES」をパーフェクトな品質で楽しめるかどうかを見る。
本作にはベンチマーク機能がないため、外部ツールにて平均フレームレートを計測した。メインミッション最初のカットシーン、ミッション開始時のゲーム状況、それぞれ冒頭1分を計測対象としている。グラフィックス品質はデフォルト設定と、すべての項目を最高の“Extra High”としたものを比較する。
2K(1,920×1,080ドット)
PS4版と同等の1,920×1,080ドット表示、いわゆるフルHDでは、カットシーン、ゲーム内ともに60fpsの上限に張り付く結果となった。今回の検証環境のようにGeForce GTX 980クラスのビデオカードを使う場合、より高解像度のモニタを使うか、DSRで内部解像度を高めるなどしないと、せっかくのマシンパワーがもったないという感じだ。
3K(2,560×1,440ドット)
ASUSのモニター「ROG SWIFT PG278Q」にてネイティブの2,560×1,440ドット表示、いわゆる3Kの検証を行なった。このモニターは最大144Hzの高速リフレッシュレートに対応しているが、本作では60fps上限があるため十分に生かせないのが残念である。
ベンチ結果としてはデフォルト設定では完全に60fpsに張り付き、Extra High設定ではゲーム内で50fps近辺まで下がることが時々ある、という数字となった。「ROG SWIFT PG278Q」はGeForceシリーズの可変リフレッシュレート技術「G-Sync」に対応しているため、50~60fpsの範囲内でフレームレートに揺らぎがあってもカクつきなどの違和感は全く感じられず、快適だ。GeForce GTX 980では3Kあたりの解像度がベストバランスと言えるかも。
4K(3,840×2,160ドット)
いわゆる4K解像度。検証にはASUSの4K/60Hzモニタ「PB278」を用いた。デフォルト設定ではカットシーン、ゲーム内ともに50~60fpsを行ったり来たりという感じで、十分に快適なプレイが可能な範囲。Extra High設定では負荷が一気に高まり、30fpsをやや上回る程度のフレームレートとなった。
Extra High設定についてはオーバー60fps原理主義なPCゲーマーにとってはやや厳しい数字だが、4K+最高画質というのは映像のスゴさという面ではやはり感動的だ。本作のPS3/Xbox 360版は30fps動作となっているので、その感覚の延長で遊ぶための設定として、本作のグラフィックスオプションで「30fps固定」という設定があるので、これを利用してフレームレートを安定させるとわりと快適だ(フレームレートが30~40を行ったり来たりする状況よりはカクつき等の違和感が低減される)。
DSR 仮想4K(3,840×2,160ドット、DSRによる仮想解像度)
前述したDSRを用いて、1,920×1,080ドット表示の一般的なゲーミングモニターで擬似4K表示を行なった。結果としてはネイティブの4K表示に、ダウンサンプリングのちょっとした負荷が加わったぶん、0.1~1fps程度下がる数字が出たという形だ。
1080pモニターで60fps動作を優先するなら、仮想解像度を4KにこだわらずDSRでの倍率を下げ、上記の3K(2,560×1,440ドット)程度の仮想解像度で動作させるのが無難だろう。仮想4Kにこだわる場合、デフォルトの画質設定で我慢すれば60fps近くを確保できる。しかし、やはりExtra High設定で得られるリッチな光源の表現や、水たまりの反射といった、世界観を深めてくれるディティールは捨てがたい。いずれにしても十分にプレイアブルなパフォーマンスが得られるので、お好みで4K&Extra Highも悪くない。
まとめ:PC版「MGS V: GROUND ZEROES」はハイエンドPCゲームの新基準だ!
以上、「MGS V: GROUND ZEROES」PC版の、PCゲームとしての出来栄えを見てきた。総合的に見て、本作がその開発において、NVIDIAの技術協力を受けるという選択に間違いはなかったように思う。
最先端のゲームメーカーがフラッグシップタイトルを開発するにあたって、GPUメーカーと協力するということには複数の意味と効果があるが、ゲーマーにとっておそらく最も重要なことは、今後いろいろなPCゲームを楽しんでいくにあたって期待する“クオリティ”に、新たな基準が打ち立てられるということだろう。
世界的にも押しも押されぬビッグタイトル「MGS」シリーズが4K対応を謳い、GTX 980レベルのGPUを視野に入れてクオリティを上げてきている、という事実は今後開発される他のゲームにも少なからず影響を与えるはずだ。いずれPCゲーマーにとって、伝統的な1,920×1,080ドットという解像度は物足りないものになっていく。そんな中で今後ゲーミングPCを見繕うにあたって、本作が理想的な条件で動作するかどうかは重要な判断基準になる。「MGS」ファンなら言わずもがなである。
今回、ハイエンドPCゲームの新しいスタンダードを提案する動きが日本のゲームメーカーから出てきたことが個人的にはとても嬉しい。これに続いて、“PCで遊べるのは洋ゲーばっかり”という風潮もさらに変わってくれば言うことなしなのだが、果たして?