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【Unite Japan 2014】強力な“コラボレーション”がゲーム開発を変える!
Oculus VR創設者Palmer Luckey氏も登壇し重大発表の基調講演レポート
(2014/4/7 22:20)
2日間にかけて開催されるゲームエンジンUnityのカンファレンス「Unite Japan 2014」が4月7日、ユニティ・テクロジーズ・ジャパンの主催により開幕した。初日冒頭に行なわれた基調講演ではUnity Technologies創設者CEOのDavid Helgason氏に加え、VRヘッドセット「Oculus RIFT」を開発中のOculus VR創設者のPalmer Luckey氏も登場。
その中ではUnityを取り巻く最新状況の報告や、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパンが推進する新しいコミュニティの枠組み「Unity県人会議」の立ち上げ報告、また7月出荷予定「Oculus RIFT Development Kit 2」の日本優先割り当てが約束されるなどビッグな発表が相次いだので早速ご報告しよう。
Unityを巡る“強力なコラボレーション”がゲーム開発を変える
最初に登壇したDavid Helgason氏は、Unityがゲームエンジンとしての産声を上げた10年ほどの昔から現在までを振り返り、テクノロジーの発展とともにゲーム開発者のコミュニティが大きく成長してきたこと、またそのコミュニティに参加するひとりひとりの取り組みが呼び水ともなって、Unityそのものが多数のゲームタイトルを生み出す存在となったことに感謝の言葉を述べた。
話題の焦点はUnityゲーム開発者たちが織りなす“コラボレーション”だ。Helgason氏は、Unityを様々な技術を持った人々によるコラボレーションを促進するためのツールであると定義する。それを最も象徴しているのが、Unityビルトインのコミュニティマーケット機能である「Asset Store」に多種多様な、しかしそれぞれに優れてカッティングエッジなアセット(3Dモデル、テクスチャ、プログラムモジュールなどUnityで使えるあらゆるもの)が存在するようになったことだ。
例えば「UFPS: Ultimate FPS」というアセットを用いれば、「Battlefield」や「Call of Duty」といったAAAクラスのFPSに用いられているような高品位なFPSカメラ制御を誰でも簡単に実装できる。単にカメラ制御といえども、最先端のFPSタイトルにおける魂とも言える部分であり、高度な知見を持つ専門家でなければ作れないほどのノウハウの塊だ。ほかにもAsset Storeには、様々なゲームジャンルや、様々な技術カテゴリに特化したアセットが多数存在し、誰もが、誰かの最高の成果の上に新しいゲームを構築することができる。
そういったものが、Asset Storeを通じて持ち寄られ、無数の開発者によるコラボレーションが成立している。Helgason氏はこれを“stand on the shoulders of giants(巨人の肩に乗る)”と表現する。Unityでのゲーム開発に参加する誰もが、新たなゲームをさらなる高みに引き上げる“巨人”を、さらに強く逞しく鍛え上げているというわけだ。Unity Technologiesが掲げるスローガン“ゲーム開発の民主化”は、まさにこうした新局面の最中にある。
・ゲーム体験のソーシャル共有システム「EveryPlay」
数あるアセットの中には、非常に重要なトレンドを含むためUnity標準と化すものもある。そのひとつが、この日紹介された「EveryPlay」だ。これはフィンランドの企業Applifier(3月14日にUnityが買収)による、ゲームビデオ&評判共有システムで、PlayStation 4のシェア機能のようにお手軽にプレイ動画を録画・共有できる仕組み。環境が許せばプレーヤー自身の自画撮り映像をオーバーレイさせ、その体験をより濃密に伝えることもできる。
また、他のユーザーはその動画にアクセスすることで、そのゲーム本体にすぐリーチできる仕組みがあるのだ。ユーザーが優れたゲームにリーチする方法として最大の影響力を持つ“口コミ”を、Unityビルトイン機能と化した本システムが強力にサポートするわけである。
・ゲーム開発の水準をベースアップする「Unity 5」
“巨人”の足腰を鍛える取り組みも抜かりない。講演ではエンジン本体の次期バージョンであるUnity 5の新機能もアピールされた。遂に物理ベースレンダリング(Physically Based Rendering: PBR)を標準機能として搭載するようになり、物理的に正しいライティング、人類共通の直感的な知識によって制御可能なマテリアルシステム、そして説得力のある絵作りを基礎レベルでサポート。
これに加えてイメージベースドライティング、リアルタイムのグローバルイルミネーションなどなど、次世代機水準の最新のライティング・シェーディングシステムをビルトイン。その他アニメーションシステム、エディターUIなどなど新機能は多岐にわたり、ハイエンド系エンジンと目されるUnreal EngineやCryEngine等にも比肩、あるいは凌駕する水準へと基本機能がベースアップされる模様である。Unity 5はすでに先行予約を受付中だ。
・地元にもUnityコミュニティを!「Unity県人会議」
そしてUnityを巡る“コラボレーション”を日本国内でさらに強化する取り組みが、この日始まった。それがユニティ・テクノロジーズ・ジャパンが支援する「Unity県人会議」だ。紹介した日本担当ディレクターの大前広樹氏によれば、Unityに関する勉強会のためUnityスタッフが各地に派遣された回数が昨年だけでも80回以上に達しており、大都市だけでなく地方都市でもUnityコミュニティを求める機運の高まりを感じているのだそう。
それを支援するため、各地で“Unityのコミュニティを作りたい”、“コミュニティに参加したい”、“それを支援したい”と考える人たちの情報を集約し、マッチングの手段を提供するのが「Unity県人会議」だ。このシステムは本日よりスタート。公式サイト上にて企画者、支援者、参加者の登録が可能だ。地元にUnityコミュニティを作りたい、参加したい、支援したいという人はぜひサイトをチェックしてみよう。
Oculus VRのPalmer Luckey氏、日本コミュニティへの重点支援を表明!
続いて、Oculus VRの設立者のPalmer Luckey氏が演壇に立った。「Oculus RIFT」の生みの親であり、今まさに、業界全体を覆わんとするVRゲーミングへの大奔流を引き起こした張本人だ。Luckey氏は自身の組織が20億ドルもの大金でFacebookに買収されたことなど“大人の話題”には一切触れず、まるで少年のように目を輝かせながらゲーム技術の進化とその先にあるVRゲーミングへの未来を情熱的に語った。
自身を“人生をVRに捧げた者”というLuckey氏は、ゲームは技術によってこそ進化してきたことを2度、3度と念入りに語る。これまで技術の進化によりたくさんのゲームプラットフォームが登場してきたが、その先にあるVRゲーミングについて“これまでの進化とは質が違う(Different)”、“最後のプラットフォーム(Final Platform)になる“、“VRは世界を変える(Change the world)”と熱狂的な三段論法を展開。視野角や低い遅延の実現、また既存のゲームを単純に移植するだけではVRゲームに足り得ないことなどの難しさも語りつつ、しかし今まさにそのVRゲーミングがすぐそこまで来ていることを喜んだ。
その中で、これまでの進化で複雑化したゲームの操作系を、来るべきVRゲーミングの世界で直感的な体系に革命すること、そして人々を新たな方法でつなぐものにすることが最も重要であると語り、自身としてはすでにモーションセンシングやハプティクス(触覚インターフェイス)の研究開発に乗り出している状況を明かした。また、「RIFT」の製品版ではディスプレイの周波数を90Hzにターゲットしていることなど、最善のVRデバイスとする意欲も表明している。
そしてLuckey氏は自身が「攻殻機動隊」、「.hack」、「ソードアート・オンライン」など日本のサイバー&メタバースコンテンツのファンであることを明かし、日本の開発者が生み出すコンテンツへの大きな期待を表明した。これを動機のひとつとして、「Oculus VR」の日本オフィスを開設し、日本のゲームデベロッパーを支援していく計画があることを披露。その上でなんと、7月に出荷が予定されている「Oculus RIFT Development Kit 2」の限られた生産数を、日本向けの注文について最優先で割り当てることを表明した。世界中から注文が殺到し、品薄となっても日本のゲームデベロッパーには必ず届けるという決意である。
その具体的な理由などを含め、弊誌ではLuckey氏に単独インタビューを行なう機会を得ることができ、そのあたりにも突っ込んだ話を聞くことができた。これについては別稿で詳しくお伝えしたいと思う。
いずれにしても日本のゲーム開発者に強力な支援を申し出た「Oculus VR」。Unityを中心に拡大する強力な開発コミュニティにとっては“巨人”に金棒である。今後それらが緊密に手を取り合うことで、日本発のコンテンツがさらにユニーク性を増し、あるいは世界に羽ばたいていくことが大いに期待できる。これが今回のUnite Japan 2014における最も大きな収穫のひとつとなるのではないだろうか。