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台湾MSI本社で、未発表の新型ゲーミングノートPCを見た!

オフィス内にゲーム専用ルームを完備。プロチームやゲーミングを積極的に支援

1月訪問

会場:台湾MSI本社

 台湾MSI(Micro Star International)は、AcerやGigabyteといった台湾PCパーツメーカーに並ぶ大手PCパーツメーカーの1社だ。主力商品はマザーボード、ビデオカード、そしてゲーミングPC。近年では特にゲーミングノートPCに力を入れており、日本を含む海外市場に積極的に展開している。

 今回日本の担当者から、「台北の本社まで来てくれれば、おもしろいものを見せられる」と誘ってくれたため、MSI本社まで足を運んでみた。そこで見せて貰ったのはGaming Roomと名付けられた、そのものズバリのPCゲームに特化したゲーム専用の部屋だ。ここでは同社が主要事業のひとつとして掲げているe-Sports支援事業の一端と、ゲーミングノートPC関連の様々な試みが行なわれていることが確認できたほか、なんと現在開発中の新型ゲーミングノートPCに触れることができた。本稿ではMSI本社訪問を通じて見えてきたMSIのゲーミング事業への取り組みについてレポートしたい。

【MSI本社】
台北市から川を渡った南側にあるMSI本社。もともと倉庫として使っていたということで、業務用の巨大なエレベーターを使って上り下りする。現在PC事業でもっとも力を入れているのはゲーミングノートPCだ

MSI独自のゲーム事業に特化した専用施設Gaming Roomとは?

今回取材をアテンドしていただいたMSIチャネルマーケティングマネージャーのNick Chiang氏(左)と、プロダクトマネージャーのJoseph Shih氏
ゲーミングPCのストラテジーについては、シニアディレクターのSam Chern氏に伺った
MSI本社の会議室ゾーンの一角にGaming Roomはある
中に入ると異風の空間が広がる
表にはMSIがスポンサードしているプロチームが紹介されている
2013年までスポンサードしていた台湾のプロチームGama Bears

 Gaming Roomは、MSIのゲーミングノートPC「G」シリーズのイメージカラーである赤を基調とした部屋で、左右対称に5台ずつマシンが用意され、5対5の対戦がすぐ実施できる環境が整えられている。ちょうど部屋に足を踏み入れた際、先客のドイツメディアがいて、担当者と質問をかわしていた。

 台湾でゲーム専用部屋というと、メーカー所属のプロゲーマーチームを想起してしまうが、意外にもMSIはプロチームを所有していない。その代わり、世界で日本や台湾を含む11のプロチームをスポンサードしている。世界中のプロリーグやゲーム大会でMSIのロゴが散見されるのはそのためだ。

 具体的なスポンサードチームとしては、英国のプロチームFnaticのスポンサードをしていることはよく知られているが、台湾では大手ゲームメーカーGamaniaが抱えるプロチームGama Bears、日本では「Alliance of Valiant Arms(AVA)」のプロクランGalacticなどをそれぞれスポンサードしている。

 プロチームの練習場ではないとすると、それではこの部屋は何のためにあるのか。担当者によれば、この部屋の目的は3つあるという。1つは、ここでプロアマを含めたゲームの試合を行なえる環境を整えることで台湾内外のe-Sports活動を支援するため。2つ目がゲーミングデバイスの製造メーカーとして日頃からゲームに慣れ親しんでもらうために、社員に対してゲームが気軽に遊べる環境を整えるため。そして3つ目は、新たに開発するゲーミングノートPCの製品開発における各種フィールドテストを行なうためだという。

 ここで台湾でのe-Sportsについて簡単に説明しておくと、台湾ではTESL(Taiwan e-Sports League)と呼ばれるプロチームが参加するプロリーグが存在しており、Yoe Flashwolves、Gama Bears、Yayi Spider、Thermaltake Apolloの4チームで、「Kart Rider」、「Special Force」、「Starcraft II」の3つの種目でリーグ戦が戦われている。ちなみにGama Bearsは2013年のプロリーグで、上記3種目とも優勝を逃したため、MSIはスポンサーを下りることにし、2014年はまた別のチームをスポンサードする予定なのだという。

 また、社内には、アマチュアのチームが存在し、就業後にみんなで集まって対戦をしているほか、著名なプレーヤーを招いてエキシビションマッチを行ない、その内容をライブストリーミングで流したりもしている。TESLが定める会場設備はまだすべて整っていないため、プロの公式戦の会場にすることはできないということだが、今後はそうしたことも行なえるように設備投資を行なっていくつもりだという。

 目的の3点目については、現在設計中のゲーミングノートPCを持ってきて、プロゲーマーや一般のゲームファン、そして関係者などに触ってもらうという。実はすぐ目に見えるところに、見慣れないデザインをしたゲーミングノートPCがこれ見よがしに置かれていた。MSIの担当者のいう“おもしろいもの”とはこれのことのようだ。しかも1つだけでなく、4つほど確認できた。GX、GP、GE、そしてフラッグシップとなるGSシリーズの新モデルのようだ。

 一部はCESでメディア向けにも公開したもので、スペックや価格は一切発表していない。プロトタイプはすでに完成しており、Windows 8.1搭載PCとして正常駆動していた。以下、簡単なインプレッションをお届けするが、まだ開発中のモデルであるため、発表時には仕様が変わっている可能性があるのでご注意いただきたい。

 GSシリーズの最新モデルを触ってみた。気になる内蔵PCパーツはきっちり1年分刷新されており、Gシリーズオリジナルの内蔵アプリも入っていたが、それがなんであったかはハードベンダーの正式発表までは一切言及できないのであらかじめご了承いただきたい。

 現時点で言及できるのは外装周りとキーボード、そしてモニターだ。外装は表面はアルミ製、裏面が強度や熱対策のため合板が使われている。重量は2kgを切っていて大きさの割にすこぶる軽い。

 また、外装表面は完全にフラットではなく、サメの尾びれのような微妙な突起が2本浮き出している。イメージとしては外車のフロントをイメージしているようで、Gaming Roomには車の表面を映した写真をプリントしたものが何枚も張られていた。単純にフラットなデザインにしなかった理由は、何かデザインをあしらった方がゲーミングPCとしてカッコイイからだという。外装表面の中央には、2013年から採用されている龍をあしらったGシリーズのロゴが置かれ、電源を入れると龍が白く光る。

 PCを開くと、真っ先にSteelSeries製のスタイリッシュなキーボードが目に飛び込んでくる。硬質で打ちやすく、ハードなゲームプレイにも耐えられるタフなパーツ、指10本による同時押下などもサポート。暗所だとキーボードバックライトも点灯し、いかにもゲーミングノートという雰囲気になる。さらに、今回は試せなかったが、担当者の話によればSteel Seriesとのパートナーシップによって専用のドライバーを導入しており、オンラインゲームやストラテジーゲームなどで活用できる非常に細かいマクロ機能を備えているという。そのほか、独自のオーディオ機能やゲーム動画配信機能なども搭載しているようだ。

 モニターは、ここ数年、長らくゲーミングノートPCのスタンダードだったフルHD(1,920×1,080ドット)から、一気に2,800×1,620ドットまで拡大されており、圧倒的に広い作業領域が確保されている。HDMI端子を使ったモニター出力は、4K(3,840×2,160ドット)までカバーしており、MSIとしては2014年モデルから「4Kサポート」を表明するつもりだという。ただ、4K解像度のHDMI接続は、HDMIの仕様の制限から、リフレッシュレートが30以下に制限されるため、一足飛びにゲームまでサポートとは言い切れないようだ。

 ちなみに、MSIのラインナップにデスクトップモデルが見当たらない理由を尋ねたところ、かつてMSIはあらゆるタイプのPCを手がけていたが、台湾メーカーを含む多くのPCメーカーと泥沼の価格競争に突入して多くの損失を出したため、会社の方針として、全方位展開は止め、コストパフォーマンスモデルは最小限に抑えながら、ハイエンドモデル、とりわけゲーミングノートに力を入れることにしたという。

 また、ゲーミングPCのラインナップにデスクトップPCがない理由については、ノートPCが外装やモニター、キーボードなどこだわれる部分が多い一方で、差別化が難しく、単純な価格競争に陥りやすいためだという。2014年も引き続き、ゲーミングPCはノートPCのみに特化してグローバルに展開していく方針だという。

 今回はゲリラ的に新モデルを見せていただいたため、発売時期や価格についてもお知らせできないのが残念なところだが、パーツのチョイスも含めて大きなサプライズはなく、順当な進化の上に、MSI独自のゲーミング機能やクールなデザインを載せているという印象。MSIでは例年以上に、日本市場に対してコミットしていくということなので、PCゲームファンはぜひ注目しておきたいところだ。

【Gaming Room】
壁には参考資料やラフスケッチが掲示され、研究室といった趣が強い。部屋の隅には無造作にプロトタイプの外板が置かれてたりしていて、おもしろい部屋だた

【新モデル】
Gシリーズの新モデルはひととおり置かれ、各種テストが行なわれていた。GSシリーズは薄く、軽く、高性能になっており、ゲーミング環境を持ち運びたいゲーマーにとっては最高のソリューションとなりそうだ

(中村聖司)