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スクエニ安藤氏が開発者に鋭く切り込む「ぶっちゃけトーク」

制作予算から課金周りまで、モバイルゲームメーカーの悩みを暴露

9月19日~22日 開催(一般開催日:21日~22日)

会場:幕張メッセ1ホール~9ホール

入場料:
1,000円(中学生以上・前売)
1,200円(中学生以上・当日)
入場無料(小学生以下)

スクウェア・エニックスの安藤武博氏
ジクシーズの井坂友之氏
オルトプラスの小林陽介氏
エイリムの高橋英士氏

 「東京ゲームショウ2013」のグリーブースでは「ブラウザとネイティブのぶっちゃけトーク(仮)」と題し、「拡散性ミリオンアーサー」などのタイトルでお馴染みのスクウェア・エニックスの安藤武博氏、「ドリランド 魔王軍vs勇者!」の開発元であるジクシーズの井坂友之氏、「エンペラーズ サガ」などの開発元オルトプラスの小林陽介氏、「ブレイブフロンティア」の開発元エイリムの高橋英士氏が登壇し、昨今のソーシャルゲームについて本気のトークバトルを展開した。

 安藤氏は「最近のソーシャルゲームは2010年の黎明期に比べるとグッとゲームらしくなりましたよね」と切り出し、「その分開発費が膨らむと思うのですが、『ブレイブフロンティア』はどの位の開発費がかかりましたか?」と高橋氏に向かって直球な質問をした。高橋氏によると「企画が始まったのは2011年末くらいからなのですが、最初の半年くらいは5人位でやってたので思ったほどかかってないです」と回答した。

 「ドリランド 魔王軍vs勇者!」の場合は、「30人位の規模で3カ月で作りましたが、最近のリッチなゲームだと30人でも辛い部分がありますね」と井坂氏は話す。「ジクシーズの強みはスピード感にあるので、長くても半年くらいの期間で、開発費は1億以下くらいでやっていきたいです」と述べた。

 安藤氏によるとスクウェア・エニックスの「拡散性ミリオンアーサー」や「ケイオスリングス」は1億7,000万円位の予算規模で制作されたという。しっかりと時間をかけてデバッグなどを行ない、コンソールゲームと同じくらいのクオリティで作っている。

 そしてまだ詳細は明かせないとしつつも、更に大規模な規模のスマートフォン向けゲームの開発も進んでいるという。安藤氏からは「コンソール規模の予算でスマートフォン向けゲームを作るなんて、僕ら(スクウェア・エニックス)じゃないとできないじゃないですか。あえて地雷原に突っ込んでみました」と、イベントタイトル通りのぶっちゃけトークが飛び出した。

 しかし安藤氏によると「ソーシャルゲームはリッチになる傾向があるのですが、演出やストーリーなどもリッチになると、テンポが悪くなって離脱するユーザーが増えてしまうという悩みもあります」と話す。これには高橋氏も思うところがあったそうで「無料なので多くのユーザーが集まってくれますが、そのまま定着してくれるユーザーは確かに少ない場合もあります」と話す。この悩みについてはクリエイティブな悩みとして、「試行錯誤し続けるしかない」と安藤氏は語った。

 その後トークはソーシャルゲームと切っても切れない課金関係の話題に入った。安藤氏は「『サイクルと循環が大事』と言われていますが、それだけを考えていても売れないと思います」とバッサリ。「ユーザーにどんなバリューが提供できるかが大事なんです」と続ける。

 小林氏も「KPI(重要業績評価指標)などの数字を強く見るようにしています。それはただ数字を追いかけているわけではなくて、数字を注意深く見ることでユーザーの“体験”や“感情”が見られるのです」と話した。

 その後ユーザーの体験や感情を自分でも感じるために、自社のタイトルをプレイするのは当然であると口を揃えて話した。作り手がやりこむことでコア層に寄った考え方になるのでは? という問いに高橋氏は「コア層の体験は自分で感じて、ライト層はユーザーの意見を参考にします」とバランスの取り方を紹介した。

 最後に安藤氏は「『東京ゲームショウ』はどちらかというと家庭用ゲームのお祭りですが、モバイルゲームのユーザーと家庭用ゲーム機のユーザーはどうなっていくと思いますか?」と問いを投げかけた。

 その問いに対し高橋氏は「面白いものを作れば売れると思います」と話すと、安藤氏も賛同して「面白ければプラットフォームは関係ない」と続けた。小林氏は、「モバイルのユーザーと家庭用ゲーム機のユーザーが融合していったら面白いと思います。ゲームが素晴らしいのは、ゲームをきっかけにコミュニケーションが生まれることです。コミュニケーションを介せばモバイルと家庭用ゲーム機の垣根もなくなっていくのではないでしょうか」と話した。

 安藤氏が話したスクウェア・エニックスで開発中の新作は、コンソールゲーム機への進出も視野に入れているという。モバイルゲームユーザー、コンシューマーゲームユーザーの垣根を越えることができるのか、注目していきたいと思う。

(八橋亜機)