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【CEDEC2013】遠藤雅伸氏がゲーム制作者に問う「面白さって何?」

繰り返し遊びたくなるゲームを、すごろく作りから考える

8月21日〜23日 開催予定

場所:パシフィコ横浜

受講料:15,000円(デイリーパス)〜

 モバイル&ゲームスタジオ取締役の遠藤雅伸氏は、「すごろくで体感!もう一度プレイする気にさせる“バランスブレイカー”というゲームシステム」というタイトルでワークショップ(体験型講座)を行なった。

 この講座では受講生達がすごろくを作り、遠藤氏のアドバイスの元、改良を繰り返し、プレイを重ねていった。すごろくはマス目に様々なルールを設定することができ、そのバランスは大きく変わっていく。現場で実際にゲームを作り出している現役のゲームクリエーター達がすごろくというレガシーなゲームで、どのようなルールを作り、何を学んでいったのだろうか。

 バランスブレーカーとはともすればゲーム性を破壊しかねない存在である。今回の講座で面白いのは、方向性が「良いゲーム性のすごろくを作る」ではなく、「面白いものを作れ」と遠藤氏が求めたところにある。受講者達にとって、自身のゲーム作りの概念を問われるワークショップとなった。

ゲーム性を破壊するバランスブレーカー。“変なもの”は面白いのか?

モバイル&ゲームスタジオ取締役の遠藤雅伸氏
受講生達は議論をしながらすごろくを作っていった
バランスブレーカーを意識すると、いきなり勝ってしまう人も。いきなりの勝ちは実感を伴わない、という感想を持つ人もいた。遠藤氏は「勝った人はお祝いしなきゃ」とアドバイスをしていた
矢印でワープを設定したり、ジャンケンしたり、様々なルールを盛り込んでいく。「ドラえもんの真似をする」といった要素も

 遠藤氏が今回提示したすごろく作りのテーマは、「リプレイモチベーション」である。「もう1回プレイしよう」とユーザーに言わせるために、ゲーム時間を短縮し、敗北感を軽減するという、勝敗を決するゲームルールを揺るがす「バランスブレーカー」という要素を入れ、リプレイモチベーションを高めようというのだ。

 バランスブレーカーというのは、運でいきなり勝ったり、逆転したり、勝敗そのものが大きく動く仕掛けだ。その存在はともすればゲーム性を破壊し、「もうプレイしたくない」と思わせる危険性もある。その要素をうまく使うことで、“もう1回やりたい”と思わせる。それは何なのだろうか。

 受講生達はいくつかのテーブルにわかれチームを作り、そこで自由に内容が書き込めるマスが描かれた「ループ式すごろく」を前にした。そのすごろくにルールを設定し、プレイすることで内容を改良していった。講座は非常に人気が高く、すごろくを作るための席はすぐにいっぱいで、それ以外の受講生はすごろくを作っているテーブルを見て回り、作っている人達のアイデアを見る、という形となった。

 最初、遠藤氏は受講生達に自由にすごろくを作らせ、プレイさせた。すごろくは周回できる「ループすごろく」で、1周するとコインがもらえる。規定数のコインを集めたプレーヤーが勝ちとなる。遠藤氏は「できるだけ早くできるものを作ってね」と何度も言ったが、多くのテーブルは中々ゴールできなかった。1プレイに時間がかかりすぎていたのだ。遠藤氏はプレーヤーをもう1度ゲームに遊ばせるにはできるだけ1プレイを短くするのが大事だと語った。

 遠藤氏は受講生のプレイを見ながら「サイコロを使わないゲームは、頭の良い奴や、記憶力の良い奴、ゲームのことを知っている奴が確実に勝つ仕組みになっている。初めてやった人は負け続けて不機嫌になる。偶然性を取り入れることで初心者のモチベーションが維持できます」とアドバイスした。

 1プレイが終わった時点で遠藤氏は「これらのすごろくは繰り返しプレイするとつまらなくなる」と指摘した。“何も書いてないマスのガッカリ感”、“スタートに戻るというマスの嫌な雰囲気”、他にも誰のコインを取るか、といった「マイナス要素」は初心者に不快であり、ゲーム時間が増える。1人のコインを取るのではなく、他の人全員にコインをあげる、といったように全てをプラス要素にしていくべきだと遠藤氏は語った。

 これらのアドバイスを受けて、受講者は2枚目のすごろくシートに取りかかった。今度は全てがプラスになる様にする。何マス進む、ボーナスコインがもらえる、ワープするなどプラス要素が多く描きこまれ、駒はドンドン進み、あっという間にコインが貯まりゴールするようになった。「あまり早く終わりすぎてもつまらないかも」、「とにかく勝つのは気持ちいいね」など様々な意見を交わしながら受講生はすごろくを改良し続けていった。

 複数のマスの効果が重なり“コンボ”を組み込んだり、複雑なルールを設定していくチームもあった。その中で多くのチームが取り入れたのは「逆転要素」だ。“1番多くコインを持っている人と同じ数だけもてる”と言った、1番の人に追い付くルールなど、勝負が振り出しに戻ってせめぎ合う要素が見られたが、遠藤氏は「シーソーゲームは疲弊するので、繰り返しプレイしようとは思わなくなる」と指摘した。

 「何度もすごろくを作っていけば、“渾身の面白いすごろく”はできるが、それをもう1回遊んでといわれると『まだやるのか』と言う気持ちになる。皆さんは徹夜でゲームをプレイした経験があると思うけど、渾身のすごろくでは徹夜ができない。それはつまり、渾身の出来のすごろくは面白くないんですよ。頭で考えて面白いと信じている、思っている、今までの経験から決めているだけで、それはあなたを徹夜させたゲームよりつまらない。実際の面白さと、頭で考えている面白さはずれてるところがあるんです」と遠藤氏は語った。

 そしてここで遠藤氏は今回のテーマである「バランスブレーカー」を提示した。何度もプレイを重ねることで生まれる“ゲーム性”や“バランス”、しかしそういうものを考え模索するよりも、1人が一気に突き抜ける状況をさらに強調する要素を考えて欲しいという。偶然の産物での勝利、「このコマに止まってもう1度サイコロを振り、1が出たらそれで勝ち」というくらいのルールを作ってみようというのだ。

 もちろん単純に勝つのではなく、気持ちよさをどうするか、「早めに上がらせる」ということも意識する。頭1つ抜け出した人がそのまま勝てるという形にするなど、どうすれば気持ちよく、すぐに勝て、そしてもう1回やれるのか、そこを考えるために、遠藤氏は3枚目のシートに受講生を向かわせた。

 もう1つ遠藤氏が指示をしたのは「変な要素を入れよう」ということだった。ちょっとそれはないんじゃないのか、企画会議でみんながおかしいだろうと言われる様な要素を入れて欲しいというのだ。

 変なもの、というところに受講者はアイディアを出しあっていた。コマにたどり着くと意味もなくバンザイする、メガネを変える、何かネタを考える、さらに“ドラえもんの物まねをすると3マス進める(パスも可)”というものもあった。ここで遠藤氏は「物まねをするだけにしちゃえ」とアドバイスをして、さあ早く早くと受講者をせかした。

 この遠藤氏のアイデアは、ギャラリーの立場としてとても面白かった。誰が止まり、ドラえもんの物まねをするのか、勝敗に関係なく観戦者が楽しめるのだ。面白い、というところにも様々なレイヤーがあることを実感させられた。

 バランスブレーカーという点では、「そのコマに止まったらいきなり勝ち」というシンプルなものから、「周回を重ねるとコインが貯まり、そこにプレーヤーが止まったら総取り」というものもあった。「そのコマに止まったら全てのプレーヤーのコインがもらえると」いうるーるでは、ゲーム序盤でコイン総取りのコマに連続してプレーヤーが止まり、1枚のコインが行ったり来たりするとい場面もあった。

 最後に遠藤氏は「バカゲーみたいになったけど以外に面白かった。入れてみたら変な面白さが出てきた。意外性のあるものもあったと思います。面白さというのは、頭で考えたもの以上に変なところにあるということを理解してもらいたいと思います。バランスを考えずあっという間に終わる方が、次をやる気になれるといったモチベーションのコントロールがわかっていただければ良かったかな、と思います」と語った。

 少し驚いたのは、最後に受講者のすごろくを評価したり、良いルールを取り上げたり、そういった「ワークショップとしてのまとめ」を遠藤氏が全くしなかったところだ。「皆でゲーム作りの正しい方向性を導き出す」というのではなく、「より自由な思考をして欲しい」という受講者の意識を広げる方向性を提示して講座は終わった。遠藤氏ならではのユニークなワークショップだったと感じた。

(勝田哲也)