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【ChinaJoy 2013】「China Digital Entertainment Expo」が中国上海にて開幕
躍動するモバイルゲームプラットフォーマー。日本のコンテンツの存在感も増大
(2013/7/26 01:58)
中国最大規模のゲームショウ「China Digital Entertainment Expo(ChinaJoy)」が7月25日、中国上海の上海新国際博覧中心において開幕した。本日より最新の中国産タイトルや、日本タイトルの中国展開の模様をレポートしていきたい。本稿では、ChinaJoyの初日の模様と全体の概況をお届けしたい。
ChinaJoyは毎年7月に開催されるため、世界で最も“暑い”ゲームショウとして知られるが、今年も最高40度という灼熱という言葉がふさわしい暑さの中で幕を開けた。しかも会場の上海新国際博覧中心は、ホールを移動する際にいったん外に出る必要があり、これがまた暑さを助長している。会場の内外には、冷たいドリンクを売る業者や、無料で飲料水を配るメーカーが軒を連ね、一種の風物詩になっている。この時期はすでに学生たちは夏休みに入っているということもあり、初日から学生の姿も多く見られ、朝から超満員だった。
出展ホールはBtoCが5ホール、BtoBが1ホールと、例年よりBtoCが1ホール増えている。ただ、5つ目はゲームやアニメ関連グッズの即売コーナーやコスプレイベント会場になっており、メインの会場も例年より空きスペースをたっぷり取ったレイアウトになっていたため、全体としての広さは昨年と同等か、少し狭い程度といったところだろうか。
出展メーカーは、Shandagames(盛大)、Netease、Tencent、Giant、SOHUといった大手を含め主要なメーカーはすべて顔を揃えており、名物となっているダンス合戦やコンサート合戦を大音声で繰り広げ、ゲームファンを集めていた。今年のChinaJoyの印象としては3つほどあった。
1つ目は、なんといってもスマートフォンやタブレット向けのモバイルタイトルが急激な勢いで存在感を増していたことだ。
世界のゲーム市場と中国のゲーム市場の最大の違いは、中国のゲーム市場にはコンソールゲームとGoogle Playがないことだ。だから、中国ではPCゲームが独自の爆発的な発展を見せ、PCからモバイルへの移行が速やかに進んだだけでなく、Googleの中国参入が膠着状態に陥っている間に、Android市場は、400とも500とも言われる独自プラットフォームが乱立し、Googleの代わりに独自プラットフォーマーにロイヤリティを支払ってビジネスをするという世界的にも類を見ない独自の生態系が生まれている。もっといえば、iOS市場も、Appleがフルコントロールしていると思いきや、ジェイルブレイク市場が存在し、そこにも無数のプラットフォームがあり、無数のモバイルゲームが提供されており、Appleにロイヤリティを支払わずに、ゲームビジネスを展開する無法地帯が存在する。
ChinaJoyで見ることができたのは、そうしたプラットフォーマー達の躍動だ。日本の場合、モバイル系のプラットフォーマーと言えば、DeNAとGREEの2強だが、中国の場合は2強とか、10強とかそういうレベルではなく、ChinaJoyに出展していたほとんどすべてのゲームメーカーが、AndroidやiOS上に独自のプラットフォームを持っており、同じようなコンテンツ、同じようなサービスで、ユーザーを誘い込み合っている。たとえば、DeNA Chinaは、自社でプラットフォームを展開しつつ、100近くのプラットフォームに対してもゲームコンテンツを供給している。
ここまで来ると完全にバブル状態だが、関係者によればビジネスとして成立しているのは10以下であり、今後、淘汰が進んでいくだろうとのことだ。
2つ目は、日本コンテンツに対する関心の高さと、意外なほどのユーザー側への浸透の深さだ。今回、日本のメーカーの出展は、BtoBにかろうじてDeNA ChinaとAimingが出ていた程度だが、盛大ブースでメインを張っていた「拡散性ミリオンアーサー」(スクウェア・エニックス)は、そのキャラクターイラストが大人気だったし、即売コーナーでは、「ワンピース」や「エヴァンゲリオン」、「ファイナルファンタジー」シリーズなど日本のアニメやゲームをモチーフにしたフィギュアやグッズばかりで、他のブースでも日本の影響が強いポスターやイラストが散見され、予想より遙かに、日本のコンテンツが中国において浸透しつつあると感じた。
ChinaJoyに日本メーカーが出展しないのは、単純に中国では単独ではビジネスができず、合弁会社にした場合も意思を統一するのが難しかったり、キャッシュを得るまでの道のりが遠かったりなど、要するにメーカー側の都合だが、少なくとも中国のゲームファンやアニメファンは、日本のコンテンツを強く強く求めていると感じた。実際、カードゲームなどで使用されるイラストについても、日本人の絵師が描く、日本テイストの絵が中国で求められているケースが増えているという。あくまで直感的な印象に過ぎないが、潮目が変わってきた感がある。
日本から受けるイメージだと、多くの中国人が反日的な感情を持ち、その延長線上で日本のコンテンツを毛嫌いし、ごく一部だけが隠れキリシタンのように、隠れながら日本のコンテンツを楽しんでいるような錯覚に陥るが、実際にはまったくそんなことはなく、ChinaJoyに来るようなゲームやアニメに関心の高い中国人は、そのほとんどが日本のコンテンツを好み、積極的に消費しようという強い意欲を持っている。これは意外な発見であり、日本のメーカーにとっては中国市場には大きなチャンスが眠っているという印象を受けた。
3つ目は、中国におけるコンソールゲーム市場の終焉である。昨年、SCE Asiaが4年ぶりの出展を果たし、プレイステーション 3やPlayStation Vitaを展示した。期間中、ポリフォニー・デジタルの山内一典氏や、カプコンの小野義徳氏がイベントを行ない、多くのゲームファンを集めたが、今年はSCEJと合併し、戦略転換の最中にあるため出展が見送られた。
このため、今年のChinaJoyではコンソールゲームの出展がゼロに戻った。唯一、Electronic Artsのみ、「NFL 2013」を参考出展していたが参考出展レベルで、EA自身も、メインはモバイル向けの「Plants vs. Zombies 2」や「Need For Speed Most Wanted OL」で、コンソールゲームではない。
コンソールゲームの展開には時間が掛かる。iPhoneやAndroidなどすでに電話として使っているデバイスに対してゲームを供給するのではなく、ゲームソフトを遊んでもらうために、まずはゲームプラットフォームから買って貰わないといけないからだ。中国展開するタイミングとしては次世代機に移る今年が最適だったはずだが、SCE、任天堂、Microsoftの3社ともまったく出展していないと言うことは、中国展開する意思がないと思わざるを得ない。
中国のコンソールゲーム市場は現状のまま、つまり、並行品のみの市場が今後もだらだらと続くのはほぼ間違いないようだ。並行品の場合、正規品と比較して値段が割高で、正規サポートも受けられず、当然、自国向けのオンラインサービスやコンテンツも利用できない。コンソールゲームは、日本のメーカーが数多く参画し、日本のコンテンツが揃っているため、中国でもそれを利用したい考えるユーザーは多く、当然需要も高いはずだが、その機会をプラットフォーマーとして提供できていないのは残念なことだ。
ゲームコンソールに限って言えば残念な状況だが、全体的には日本のメーカーの中国展開はこれからが本番だと感じた。GAME Watchでは本日以降、中国メーカーの最新タイトルや、日本のメーカーの中国展開の動向をレポートしていくつもりなのでどうぞお楽しみに。