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【GDC 2013】発表! 「良いレベルデザインの10の原則」

「ゼルダの伝説」、「Bioshock」「Fallout 3」、「Burnout」、「Infamous」などに見る、優れたレベルデザインの原則とは何か?

3月25日〜29日開催(現地時間)

会場:San Francisco Moscone Center

 GDC 2013最終日の3月29日の最後のコマで実施されたSquare Enix Montreal Dan Taylor氏のセッション「Ten Principles for Good Level Design(良いレベルデザインの10の原則)」は、2年前のGDC 2011の最終日最終コマにBioware AustinのDamion Schubert氏が実施したセッション「The Loner: Why Some People Play MMOs Alone(なぜ人々はMMOをひとりでプレイするのか?)」を彷彿とさせる、とても良いセッションだった。

 共通点は、自己分析を10の要素に洗い出し、具体的なケースと共に解説を加えている点と、ゲームクリエイターであるにもかかわらず、本来は誇るべき自社タイトルについてほとんど言及していない点だ。

 Dan Taylor氏は、15年以上のキャリアを持ち、Electronic Arts、Rockstar Games、Ubisoftと華麗なジョブホップの遍歴を重ねている。そして現在は、Square Enix Montrealで「HITMAN ABUSOLUTION」のシニアレベルデザイナーを務めたばかりであり、彼がごく普通のクリエイターなら、「HITMAN ABUSOLUTION」のレベルデザインを語っていたはずだ。

 そうでないところがまずおもしろいし、彼自身古今東西のレベルデザインを学ぶために実に多くのゲームをプレイしており、優れたレベルデザインを褒めることをためらわない。さっそく、彼が考える10の原則を見ていこう。

良いレベルデザイン その1「ナビゲートが楽しい」

 遊び手を目的のところまでナビゲートするにあたり、ビジュアルをメッセージとして使うことで、ナビゲーションそのものが楽しみをもたらす。Taylor氏は、EA DICEの佳作「Mirror's Edge」を例に、白いフィールドに赤い色を配し、赤いオブジェクトが進行上のキーになることをビジュアルメッセージで伝えている。これによりプレーヤーは、迷わず、楽しく目的地まで進むことができるわけだ。ただ、Taylor氏は、わかりやすいことだけが正義ではなく、時には混乱させることも楽しいという。

良いレベルデザイン その2「言葉に依存しない」

 ストーリーを伝えるのに文章による説明は必要ではない。Taylor氏がサンプルとして上げたのは「Bioshock」。「Bioshock」は、まったく説明がないまま海底の世界に潜り込むことになるが、凝りに凝った舞台装置から、ゲームの舞台設定を把握していく。ゲームへの没入感を、文章で読ませることで下げてしまうが、舞台装置で伝えれば、むしろ没入感はさらに上がる。Taylor氏は好例として「HITMAN」の名も重ね、テキストによる説明がなく、プレーヤーが自ら考えて解放を選ぶ点が良いとした。

良いレベルデザイン その3「やり方までは伝えるな」

 何をすべきかまでは教えても、それをどうやるかまでは教えるべきではない。ゲームの遊び方についてすべて事前に説明すると、やらされている感が生まれ、おもしろくない。Taylor氏は「Skyrim」を例に、目的はある程度、漠然としていたほうがいいと言い、さらに「ラチェット&クランク」を例に、遊び方について常に複数の選択肢があるべきだという。

良いレベルデザイン その4「教え続けよ」

 プレーヤーに対して常に新しいことについて教える続けること。マニュアルだけ、あるいは最初期のチュートリアルだけで教えることを放棄してしまうゲームはダメなレベルデザインのゲームと言うことになる。人間は、パターンを分析する生き物であり、新しい教え、新しい要素がなければ、飽きられてしまう。Taylor氏は、ベストサンプルとして日本が誇るアクションアドベンチャー「ゼルダの伝説」シリーズを例に挙げ、「ゼルダの伝説」はすべてのダンジョンに新しい学びの機会、チャレンジの機会が用意されており、プレーヤーはそれらを習得することで、違った形でダンジョンを楽しめ、ボスを新しい学びの一種の卒業試験として挑むことができる。この学び、習得、チャレンジ、驚きのパターンは、「Fallout」のほか、いくつかのゲームにおいても見ることができるという。

良いレベルデザイン その5「驚きを与えよ」

 レベルデザインとは、ジェットコースターのように、予測できるようで予測できず、時間の経過と共に、強弱の驚きが襲ってくる。だからおもしろい。Taylor氏がお気に入りの例として上げたのは「Dead Space 2」。巨大な宇宙ステーションで巻き起こるストーリー展開はまさに驚きの連続だ。またTaylor氏は、プレーヤーにリスクを取らせることで、驚きと楽しさを与えることができるという。例として上げたのはミリタリーFPSの古典「Medal of Honor」。Taylor氏は、“Granade Pazzle”という表現で、バンカーにおけるリスクの取り方を表現した。

良いレベルデザイン その6「プレーヤーに自由を与える」

 Taylor氏は、放送禁止用語を口にしながら、現実世界は失望させられることが多いといい、ゲームはそれに対する一時的な逃避として役割も果たしているという。そういったユーザーを満足させる方法は、プレーヤーに対して大きな自由裁量を与えることだ。Taylor氏は、「Infamous」を例に、現実世界を模したオープンワールドを舞台に、不思議な力を得た主人公がもたらす力を行使することの楽しさを伝えた。

良いレベルデザイン その7「難易度設定ができる」

 Taylor氏は、ほとんどのプレーヤーは、ミディアム難易度をプレイするが、それでは飽き足らない人や、逆にそれでは難しいと考える人のために、複数の難易度設定を用意すべきだと考えている。その際に、リスクとリワードはバランスを取るべきで、高難易度にチャレンジする価値があることを明示する必要がある。Taylor氏が例として取り上げたのは意外にもレースゲーム「Burnout Paradice」だ。「Burnout」には、通常のコースに加えて、必ず細い道が隠れており、それらを探しだし、踏破することでコースをショートカットすることができる。それらの道はバリケード等のビジュアル言語でそれとなく明示されてはいるが、道は狭く、未舗装だったりするため、チャレンジにはそれなりのリスクがある。もうひとつの例として「Dishonored」を挙げた。「Dishonored」は、完全ステルスプレイも可能だし、敵の前に姿を現わして、敵を倒しながら進めることもできる。

良いレベルデザイン その8「効率的であること」

 ゲーム開発は限られたリソース、ハードウェア、スケジュールの中で取り組まなければならず、その中で最高のものを仕上げることがレベルデザイナーが果たすべき責任となる。このために必要なのは効率的なレベルデザインの重要性だ。Taylor氏は、「レゴ」のイメージを出しながら、レベルデザインをモジュラー化する必要性を訴えた。レベルデザインをモジュラー化した上で、新しいレベルを作成する際のハードルを下げ、本来レベルデザイナーが傾注すべき新しいチャレンジに挑むべきだというわけだ。その上で、Taylor氏は「Halo」や「Gears of War」、「ASSASSIN'S CREED」などを例に、ノンリニアかつ価値のあるゲームプレイを提供すべきだと考えているようだ。

良いレベルデザイン その9「感情を呼び覚ませ」

 現実世界の美しい建築様式などと同様に、ゲーム世界もそれが美しく、素晴らしく、価値のあるものであるなら、プレーヤーに感動を与えることができる。どのようにして世界に感情移入して貰うかも、レベルデザインの重要な課題となる。例として挙げたのは「トゥームレイダー」。広大なレベルを舞台に、リアルなジャングルを生み出している。そこでまさにプレーヤーの感情を呼び覚ますようなゲームプレイが味わえる。Taylor氏は、エモーショナルな要素については、過去に学ぶのも良いという。

良いレベルデザイン その10「ゲームメカニクスを駆動する」

 ゲームは、本や映画などと異なり、自らストーリーを展開してくれず、プレーヤーのインタラクションに依存している。優れたレベルデザインは、プレーヤーをインタラクションを促し、ゲームメカニクスをも大きく動かす。レベルデザインそのものは、ゲームシステムではなくゲーム内の現実を映す舞台設定に過ぎないが、メタフィジカルなメッセージをさりげなく埋め込むことで、ゲームデザインに影響をもたらすことができるという。Taylor氏は、お気に入りのゲームだという「Deus Ex Human Revolution」を例に深く掘り下げて説明してくれたが、同作のレベルデザインは、それそのものがステルスやコンバット、オーグメントといった諸要素を使用するためのショウケースになっているという。「Deus Ex」は若干露骨な例だと思われるが、レベルデザインがゲームそのものを大きく動かすこともできるということのようだ。

 Taylor氏は、まとめのスライドの中に、マリオを持ってくるなど、最後まで偉大なレベルデザインを生み出したゲームに対するリスペクトを忘れず、締めくくりのスライドの中にも、今回の10の原則がすべて自らの発想ではないことを明示するために、MMOクリエイターのRaph Koster氏や「Skyrim」や「Fallout 3」を手がけたTodd Howard氏の名前も挙げていた。

 欲を言えば、「HITMAN ABUSOLUTION」のレベルデザインの手法や、スクウェア・エニックスタイトルも含めて、あまり良くないレベルデザインなどについても言及して欲しかった気がするが、このまとまりの良さの中でそれらの情報を入れても蛇足に終わるだけだろう。ともあれこうした高度な知見が寄り集まるのがGDCの素晴らしいところであり、今後は日本サイドからこのような情報がもっともっと発信できるような環境になることを期待したい。

(中村聖司)