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DeNA China、Taipei Game Showに初出展
中国本土から台湾、香港、澳門の繁体字圏への進出を開始!
(2013/2/1 00:47)
今年のTaipei Game Showでは珍しいタイプの出展があった。DeNAの中国法人DeNA Chinaがブースを出展していたのだ。DeNAが出展するのも初だが、中国法人が出展するケースも非常に珍しい。
というのも、長年、中国企業は台湾への投資が制限されており、また、台湾人の中国企業に対する印象が良くないこともあり、その上中国だけで十分過ぎるほどビジネスになるため、あえて台湾に展開する中国企業はなかなか現われなかったのだ。そうした中、DeNA Chinaは日系企業としてブース出展し、2012年10月よりスタートしたばかりの「Mobage」の繁体字版をアピールしていた。本稿では、DeNA Chinaブースの模様をお伝えしたい。
中国から台湾へ。従来とは逆のアプローチで中華圏制覇を狙うDeNA
DeNA Chinaは、昨年7月に中国上海で開催されたゲームショウ「ChinaJoy 2012」のBtoBコーナーに出展し、中国市場に本格的に展開していくこと表明していたが、その後、順調にビジネスは推移し、ChinaJoy以降に、中国上海スタジオ初のオリジナルタイトル「忍者天下」のリリースや、中国産コンテンツのラインナップの強化、そして今回出展のきっかけとなった繁体字版「Mobage」のサービスなどをスタートさせている。
繁体字版「Mobage」は、台湾を始め、香港、マカオでサービスされており、これでDeNAとしては、日本、欧米(英語圏)、韓国(Daum Mobage)、中国(簡体字)に続いて5つ目のサービスエリアとなる。DeNAのコンペティターであるGREEは、「GREE Platform」として世界で単一、多言語のプラットフォームを採用しているが、この点DeNAはマルチプラットフォームで展開しており、基本戦略が大きく異なる。
今回、ブースでは中国から来たスタッフに取材することができたが、昨年のChinaJoyでの取材では、「まだ自慢できるほどの成績ではない」と控えめだったが、今回の取材では具体的な数字を聞くことができ、中華圏の展開にかなり自信を深めている様子が伝わってきた。
まず、中国市場から紹介すると、これまでに120タイトル以上を中文簡体字版「Mobage」向けにリリースし、ユーザー数は1,200万人。うち、約50タイトルが日本の「Mobage」で提供されているものの中文版で、残り約70タイトルが中国を中心としたパートナーのタイトルになるという。つまり、すでに現地タイトルのほうが多いという状況になっている。
技術的には、「まだ日本産のほうが上」と冷静に分析しつつも、「ただ、ジャンルがほとんどカードゲームばかりなので、これだけでは1,200万人の会員を満足させられない」と日本タイトルのウィークポイントを指摘。このため、DeNA上海スタジオでは、中国のゲームファンが求めるカードゲーム以外のMMORPGやアクション、シミュレーション系などの開発を進めているという。
開発体制については、UnityやHTML5を導入しながら、すべてスマートホン向けのネイティブアプリのみを手がけているという。スタッフに寄れば「この点はむしろ日本の方が特殊」と言い、日本ではフィーチャーフォン向けのモバイルゲームがブレイクしたため、未だに一定の需要に応えるために、日本や北米ではWebベースのアプリも作られているが、中国ではフィーチャーフォン市場がゼロに等しいため、何の障害も無くスマートフォン向けのネイティブアプリの開発に移行できたという。
DeNA上海で開発された「忍者天下」は、村ゲーにベルトスクロールアクションの要素を混ぜ合わせたようなオンラインアクションゲームで、動作は若干もっさり気味ながら、アクション性を好む中国や台湾のユーザーに受けているという。「大話龍将」もベルトスクロールタイプのオンラインアクションゲームで、こちらはDeNA Chinaと中国NetDragon Websoftとの合弁会社である91DeNAの開発となる。DeNA Chinaは、自前のリージョンでヒット作を生んでいるところが強みといえそうだ。
一方、台湾については、繁体字版「Mobage」のサービス開始からまだ3カ月しか経っていないにもかかわらず、100万人のユーザーを獲得しているという。台湾の人口が2200万人で、スマートフォンでゲームを遊んでいるユーザーが500~600万人ということを踏まえれば上々の数字だと判断しているようだ。
ラインナップは30タイトルほどで、まだ活動をスタートさせたばかりだという。運営については、台湾にもスタッフを置いているというが、ハンドリングは基本的に中国から行なっているという。客単価については中国より若干高めで、1日当たり数元、1カ月では100元(約310円)を越えているという。
人気タイトルは中国産の「忍者天下」や「大話龍将」のほか、日本でも人気の「神撃のバハムート」や「逆襲のファンタジカ」など。この傾向は中国とほぼ同じと言うことで、中華圏のユーザーもカードゲームが嫌いというわけではないようだ。
また、今回ブースでも見ることができたが、台湾サービスで特徴的なのは、中国法人でありながら、現地メーカーと提携しながら展開しているところだ。ポータルサイトYahoo! Taiwanや、台湾を代表するプリペイドカードMy Card、台湾のスマートフォンメーカーのPandora Phoneなどと提携しながら集客を進めており、ブースでは登録することでポイントや賞品などが貰えるキャンペーンを行なっていたが、今後も同じような施策を通じて会員数を増やしていきたいという。目標は、台湾のスマートフォンゲーマーをカバーする500万人と、非常に高い目標を設定している。台湾ではスマートフォンが急速に普及しており、スマートフォン市場そのもの成長率を考えれば難しい目標では無いという。
通常日本企業が中華圏に展開を図る際は、まずは台湾から始めて、台湾をゲートウェイに中国を狙うというのが常道だったが、DeNAの場合は、まず中国に進出し、時間を掛けて足場を固め、足場がある程度固まった段階で台湾や香港、マカオにも展開するという、従来とはまったく逆のアプローチで展開しているのが非常に興味深い。DeNA Chinaの台湾進出は、台湾のスマートフォンゲーム市場にどのような化学反応をもたらすのか、今後も引き続き注目していきたいところだ。