東京ゲームショウ2012、ホビー関連レポート
「MTG」のWotCがブース出展、スクエニの“伝説の鎧”、カプコンの“こんがり肉”に注目!!
本稿では、東京ゲームショウ2012をホビーという視点から取り上げたい。今年ホビー関係で1番目立つ存在だったのがウィザーズ・オブ・ザ・コースト(WotC)だ。カードゲーム「MAGIC The Gathering(マジック:ザ・ギャザリング)」の会社として知られるメーカーだが、東京ゲームショウ2012で大きなブースを出展し注目を集めていた。トレーディングカードゲームメーカーとしての戦略も聞くことができた。
物販ブースでは、スクウェア・エニックスとカプコンブースの2社を筆頭に、フィギュアやグッズ販売に力が入れられており、一般公開日は大変な盛況だった。今後弊誌でも取り上げていきたいフィギュアの試作品の展示もあったので、合わせて紹介したい。
■ 世界一のプレーヤーは日本人!? 日本市場を重要視するウィザーズ・オブ・ザ・コースト
ウィザーズ・オブ・ザ・コースト東京オフィスのキーアカウントマネージャーを務める森慶太氏 |
「MAGIC The Gathering デュエル オブ ザ プレインズ ウォーカース 2013」。シングルプレイも楽しめる |
ウィザーズ・オブ・ザ・コーストブースが大きくアピールしていたのは、「MAGIC The Gathering デュエル オブ ザ プレインズ ウォーカース 2013」というタイトルのオンラインカードゲームだ。プレイステーション 3/Xbox 360/Windows/iOS版が6月20日よりダウンロード販売されており、基本的なビジネスモデルは基本プレイ無料、アイテム課金となっている。
ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは「MAGIC The Gathering」のデジタル化にも積極的であり、近年は毎年出す新しい拡張パックと共に連動したゲームも販売している。日本では昨年「ザ プレインズ ウォーカース 2012」の日本語版をプレイステーション 3で展開しており、これをアピールするため、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは昨年よりゲームショウへの出展を行なったという。ゲームファンに「MAGIC The Gathering」をアピールし、カード版とデジタル版の楽しさ両方を知ってもらおうという戦略だ。
デジタルゲーム版は基本的にはシングルプレイで、敵を倒していくことで新たなカードがアンロックされていく。カードの最新パックと連動しており、カード版の強力なキャラクターが、デジタル版のボスとして登場することもある。
今回ブースで、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト東京オフィスの「MAGIC The Gathering」代表営業統括キーアカウントマネージャーを務める森慶太氏に話を聞くことができた。ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは十数年前から日本でビジネスを展開している。“トレーディングカードゲーム(TCG)”市場は、実は日本が世界で最も大きいという。
低年齢層のユーザーから年配のユーザーまで、最もプレイ人口が多いのは、実は北米ではなく日本。「MAGIC The Gathering」はヨーロッパ、アジアの11の言語で翻訳されているが英語版の次に日本語版が売り上げが多いという。
「MAGIC The Gathering」は日本で初展開から十数年がたっているが、最初はホビージャパンが代理店となり、ここ数年はタカラトミーだった。そして今年の7月からはウィザーズ・オブ・ザ・コーストが複数の代理店を通じて日本で直接展開するようになった。カスタマーサポートもウィザーズ・オブ・ザ・コーストが担当するようになり、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト自身が戦略を立て、より日本市場に力を入れた展開を行なうようになっている。
「MAGIC The Gathering」が生まれて20年、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストは単にカードを売る会社だけではなく、カードで遊ぶ環境そのものの構築に力を入れるようになった。コミュニティ、世界大会、ゲームの展開もその路線にある。こういったより幅広い環境作りによって、ここ数年、北米でのシェアNo1を達成しているという。
ところが、実はウィザーズ・オブ・ザ・コーストの製品で日本で1番売れているのは「デュエルマスターズ」だという。小学館のコロコロコミックスとタッグを組んで展開しているカードゲームで、低年齢層のユーザーを中心に人気を博している。北米ではアメコミ調に絵柄を変えて展開している。日本では「デュエルマスターズ」と「MAGIC The Gathering」の2つの柱で、ビジネスを展開している。
「MAGIC The Gathering」に話を戻すと、日本大会、世界大会は毎年行なわれており、ここ数年は日本人選手が優勝している。2012年の大会でもTop5のうち3人が日本人だった。カードゲーム業界において、日本人プレーヤーは一目置かれる存在だ。こうした中、世界大会も大きな変化を迎えているという。これまで大会は個人戦だけだったが、次の大会は選ばれた各国のプレーヤーがチームを組む“チーム戦”も行なわれる。日本勢はこの新競技方法で、どう活躍するのだろうか。
さらに2013年は「MAGIC The Gathering」が生まれて20周年となる。そこで、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストに限らず、「TCG生誕20周年」として、カードゲーム業界で何か大きな事をしたいという動きがあるとのことだ。こちらに関しても今後注目していきたいところだ。
ゲームとカードゲームの楽しさを繋げるブース。コンパニオンはゲーム内の重要な人物のコスプレで登場 | ||
「MAGIC The Gathering デュエル オブ ザ プレインズ ウォーカース 2013」の英語版スクリーンショット |
■ “伝説の鎧”も出展されていたスクエニブース。カプコンは“こんがり肉”が大人気
赤と黒のスタイリッシュなブース構成で、多数のフィギュアを展示していたスクエニブース |
カプコンは会場限定のフィギュアも販売。“怒り”状態なので体表の一部が異なるのだ |
東京ゲームショウの物販ブースは、ホビーファンにとっても注目要素がたくさんあった。特にスクウェア・エニックスと、カプコンブースは様々なフィギュアや、アクションフィギュアが販売されているだけでなく、展示もされていて“見応え”があった。
特に展示に力を入れていたのがスクウェア・エニックスだ。スクウェア・エニックスは「プレイアーツ改」というアクションフィギュアブランドで、自社のゲームキャラクターに限らず、「メタルギアソリッド」や「鉄拳」といった国内タイトル、さらには「マスエフェクト」等海外のゲームキャラクターもアクションフィギュア化している。
特に海外作品のフィギュアはこれまで工程的にも、造形的にも甘いものが多く、低年齢向けというものも少なくなかった。「プレイアーツ改」はここに新しい流れをもたらしたシリーズと言える。武器や表情の異なるパーツなど付属品も多く、“遊びやすさ”にも注力されている。物販ブースでは、これまで販売されているもの、今後販売が予定されているものを大量に見ることができた。
また、「ドラゴンクエスト」シリーズのフィギュアやグッズもスクウェア・エニックスの注目商品である。今回は「天空の装備編」として“伝説の鎧装備”が出展されていた。こちらも人気を得そうなフィギュアである。
カプコンは「クリエイターズモデル」というブランドで、「モンスターハンター」シリーズに登場するモンスターをフィギュア化している。コレクション性の高いミニフィギュアも人気だ。ブースにいた担当者に少しだけ話が聞けたのだが、「モンスターハンター」のフィギュアの魅力は、普段は激しく動き、必死の戦いを広げるモンスター達を、あらゆる角度から見ることができる点だという。
ゲームで表現しづらい部分、例えば羽の先と肘に当たる部分では鱗の生えている方向が異なるなど、フィギュア化することでより生物としての整合性がとれるところもある。このため、ゲーム担当者と、フィギュア造形師が相互で補完し、時には開発者がフィギュア専用の設定を描き起こすような場合もあるとのこと。
カプコンブースで面白かったのは、「1/1 こんがり肉クッション」。「よく焼けました!」でおなじみの、骨の周りに肉のついた、古典的なマンガを思わせる“マンガ肉”とも呼ばれる肉だが、つい欲しくなるグッズだ。中にはお土産用なのか複数買う人もいて、巨大な骨付き肉を持ちながらレジに並ぶ人達、という光景は面白かった。
「ヒットマン」の47や「トゥームレイダー」のララ、「鉄拳」のキャラクターもプレイアーツ改で登場予定。右は「伝説の鎧」 | ||
カプコンで人気だった「モンスターハンター ハンティングトロフィー マグネットコレクション」と、こんがり肉、右はねんどろいどの女性ハンターの試作品 |
■ 物販ブースではスタート直後に「アイマス」人気爆発。その後どのブースも黒山の人だかりに
各ブースは待機列用のスペースももきちんと確保しているが、それでも密度はとても高かった |
また、物販コーナーと言えば、かつてはオープン直後に「ファンが走って目当てのブースめがけて詰めかける」というのが風物詩だったが、非常に危険な行為であり、現在では禁止事項になっている。運営側も走らないように常に注意をしたり、販売側も数量限定の商品は置かず、むやみに煽らないようにする、といった対策を行なっている。それでも小走りになってしまう人もいたが、大きな混乱は発生しなかった。
観察していて面白かったのが、開始直後のコーナーの人気に大きな偏りがあったところだ。他のコーナーにはまだ人がほとんど並んでいないのに、バンダイナムコブースだけ数百人の列が形成されていた。狙いは「アイドルマスター」シリーズの缶バッチやTシャツ。
購入者になぜ真っ先に買ったのかを聞いてみたところ、取材日に行なわれる「アイドルマスター」のステージイベントの整理券を得るため、早朝から並ぶ人が多く、整理券を入手してからこちらに来たとのこと。また、他のタイトルよりも“熱い”人が多いのではないかと言うことだった。彼らはお目当てのグッズを買った後、昼時の混雑を避けるためにすぐ飲食コーナーで食事し、それから各ブースにいくという。こちらもノウハウが確立しているなあと感じた。
開場直後は大きな偏りを見せていた物販コーナーだが、30分もしないうちに各ブースが同じような盛況となり、移動も難しいような混雑となった。ブースの周りにグッズ見本を展示しているところも多く、撮影したり、品定めをしている人達は盛んに友人と言葉を交わしていてとても楽しそうだった。
(2012年 9月 24日)