海外パビリオン、インドネシア、マレーシアなど新たなアジアメーカーが登場

アニメ風RPGや忍者など日本テーマが人気? XPECは新アクションゲームを発表


9月20日~9月23日 開催(20日、21日はビジネスデー)

会場:幕張メッセ1~8ホール

入場料:前売り1,000円、当日1,200円、小学生以下無料



 東京ゲームショウ2012の海外パビリオンの大きな特徴は、「アジアニュースターズ」という新コーナーが登場したことだ。規模そのものは小さなものの、インドネシア、マレーシア、ベトナム、イランのゲームメーカーが出展し、日本に向けて自社タイトルをアピールしていた。

 今回はこのアジアニュースターズから、インドネシアのaltermyth、マレーシアのSherman3D、Fun &Cool Venturesの3社を取り上げたい。ユニークなのはaltermythは忍者をテーマにしたアクションゲームを作っており、Fun &Cool Venturesの第1作は寿司をテーマにしたもの、そしてSherman3Dでは日本のRPGへのリスペクトとも言える作品を発表しているところだ。どのゲームも日本文化を取り入れており、ゲームにおける日本の存在感の大きさを感じた。

 さらに本稿では毎年取り上げている台湾のXPECからは、新作タイトルとして硬派なアクション「Do Not Fall」と、ブラウザゲーム「Tank 3D Online」をデモムービーと共に紹介したい。





■ 忍者アクション「The Legend of Majumaru」を展開するインドネシアのaltermyth

altermyth Public & Community Relation ManagerのShafiq Husein氏

 インドネシアのaltermythは2003年に設立されたゲームメーカーで、インドネシアの最も古いゲームメーカーの1つだという。インドネシア初の3DMMORPG「Nusanta Online」をサービスしたメーカーとして知名度を上げたが、残念ながらこの作品のサービスは終了してしまったという。現在はスマートフォンのタイトルを中心にFacebook向けのタイトルや、ブラウザゲームなど様々なタイトルを発表している。

 「PANCIPON」という“釣り”をテーマにしたゲームは、altermythの新作タイトルで、年末に世界に向けて販売する。釣り竿を持ったキャラクターは騎士のような甲冑を着ており、海にいるのはゴブリンのようなモンスターで、ファンタジー風の世界観が面白い。餌をモンスターの口に近づけ、食いつくと本体を跳ね上げひっかける。それから画面の丸い部分をタッチパッドでぐるぐると回すと釣り上げることができる。キャラクターはかわいらしく、魅力的なタイトルだ。

 「The Legend of Majumaru」はAndroid向けの忍者をテーマにしたゲームで、英語版の他、ハングル版も制作されているという。こちらもサービスしたばかりの新作タイトルだ。キャラクターが登場するストーリーモードが用意されていて、襲いかかってくる忍者と戦いを繰り広げる。画面に現れた敵に向かって刀で切るように指で線を引くことで倒す。画面奥の敵には、タップすることで手裏剣で倒していく。

 今回インドネシアのゲーム事情も聞いてみたのだが、インドネシアではスーパーファミコンあたりからゲームが普及し始め、メガドライブも入ってきたが、スーパーファミコンの人気が高かった。ソフトは英語版だったとのこと。より一般的に普及していったのはプレイステーションからで、ユーザー1人1人が持っているのではなく、「プレイステーションカフェ」といった、レンタル形式の店舗があった。現在もコンシューマーゲーム、ネットゲームはカフェで楽しまれている。一方、携帯端末としてブラックベリーが大きなシェアを持っている一方で、Android端末がゲームユーザーに人気だという。


“釣り”をテーマにした「PANCIPON」。ファンタジーな世界観が面白い
こちらは忍者がテーマの「The Legend of Majumaru」。指でスライドさせて斬り、タップで手裏剣を投げる




■ マレーシアではJRPGリスペクトタイトルや、寿司ゲームが登場

Sherman3D FounderのChin Sharman氏
Fun &Cool Ventures代表取締役社長兼CEOであるGanesan Velayathan氏

 マレーシアはSherman3D、Fun &Cool Venturesの2社を取材することができた。Sherman3Dは2003年設立で、アウトソーシングメーカーとして様々なゲームを作っているとのこと。自社タイトルとしてFounderのChin Sharman氏がプッシュしているのが、「Alpha Kimori」というRPGだ。

 このゲームの開発ツールは、なんとエンターブレインの「RPGツクール」ということで、現在Steamでも配信されている。人類が植民を行なった惑星を舞台としており、SFとファンタジーが融合した世界観。主人公の青年が、惑星開拓の方針で対立する勢力のお姫様に恋をしてしまうというストーリーだという。壮大なストーリー展開で、現在はエピソード2まで発売されており、エピソード3も現在制作中とのこと。

 Sharman氏は日本のRPGが大好きで、リスペクトの気持ちもあり、「古典的なJRPG」を意識して本作を制作しているという。キャラクターデザインなども日本風のテイストを重視している。時期は未定だが、日本語版の発売も予定しているとのことだ。

 もう1社Fun &Cool Venturesはマレーシアに開発スタジオを、シンガポールにパブリッシング用のオフィスを持つメーカーだという。ゲームの展開はこれからという、新しい会社だ。代表取締役社長兼CEOであるGanesan Velayathan氏は日本で暮らし、非常に流暢な日本語を操る人物だった。Velayathan氏は日本のゲームを海外でローカライズし、世界に日本のゲームを展開すべく活動中だという。

 同時にFun &Cool Venturesはマレーシアの開発スタジオでオリジナルタイトルを制作し、多数のタイトルを展開する準備を行なっている。スマートフォン、タブレットPC向けで、第1弾となるのが「Susi Friends」という寿司屋をテーマにしたゲーム。12月にサービス予定だ。客が注文する寿司に合わせ、シャリやネタのあるところから、中央のまな板にドラッグすることで寿司を握り、客に向けてドラッグする。

 ビジネスモデルは基本プレイ無料のアイテム課金を予定しており、有料アイテムで寿司屋の背景を変えることができる。背景は宇宙や、「オタク風」まであり、オタク風にすると店にアニメのポスター等が飾られる。Facebookのアカウントと連動しており、フレンドを客として呼ぶ事も可能だ。グラフィックスはポップで要素も充実している印象を受けた。Fun &Cool Venturesはこの作品を皮切りに、1カ月に1本という速いペースでどんどんタイトルを投入すべく、量産体制を整えているところだという。

 ちなみに、マレーシアでは、アメリカからゲームが入ってくることが多かったという。コンシューマーではメガドライブがマレーシアの子供達に衝撃を与えた。またアーケードゲームでは日本のゲームが人気だった。30代のゲームファンは欧米系のゲームを好むが、90年代からは日本のアニメが一気に入ってきて現在の20代の人達は日本のアニメファンが多いとのことだ。


日本の古典的なRPGをリスペクトしたという「Alpha Kimori」。タイトル画面もアニメテイスト
寿司屋をテーマにした「Susi Friends」。Velayathan氏がマレーシアに帰国したとき、日本の寿司が食べたいとしみじみ思って生まれたゲームだという

■ XPECの新発表タイトルは硬派なアクション「Do Not Fall」と、カジュアル戦車ゲーム「Tank 3D Online」

「Do Not Fall」はゲームパッドでプレイできる
MMORPG「Weapon of Mythology」と「Maze Myth」も出展していた

 今年のXPECは新作のアクションゲーム「Do Not Fall」と、MMORPG「Weapon of Mythology」と「Maze Myth」を出展していた。「Weapon of Mythology」はChina Joyで出展されていたものと同じもので、「Maze Myth」は2010年の東京ゲームショウで初めて紹介されたブラウザ向けのMMORPGで、グラフィックスを強化して作り込みをしているという。

 今回初登場の「Do Not Fall」はかわいらしいキャラクターと美しいグラフィックスのコア向けアクションゲーム。Steamで展開予定で、Xbox Liveやプレイステーション ネットワークなどコンシューマー向けダウンロード販売も予定している。発売時期は未定。ブースでもゲームコントローラーで遊ぶことができた。

 本作は「ドリンク」がテーマになっている。ミルクや緑茶、様々なジュースなど、プレーヤーは自動販売機の中でドリンクを作る“妖精”として迷路を突破しゴールに到達することでドリンクを作っていく。見おろし型の画面で、ダッシュとジャンプを駆使してフィールドを駆け抜けていく。

 かわいらしいテーマとは裏腹に難易度は硬派だ。足場の狭いフィールドを突破していくのだが、フィールドのほとんどは1度乗ると崩れてしまうブロックで構成されており、ルートを計算しないと先に進めなくなる。さらにキャラクターをはじき飛ばす鉄球や、鍵を手に入れないと進めない扉などもある。プレーヤーはまず視点を動かし、フィールド全体を見回してルートを考えて進んでいかなくてはならない。高い難易度が逆に中毒性を生む、コアなアクションゲームとして好感を持った。

 もう1つクローズドのコーナーで「Tank 3D Online」を見ることができた。ブラウザゲームで、プレーヤーはデフォルメされたタンクを操り、迷路内で戦う。タンクはカスタマイズ可能だ。地形は障害物や川などで分断されており、激戦区となる場所での駆け引きが熱い。派手な必殺技もあり、ワイワイ楽しめるゲームとなりそうだ。

 デフォルトのタンクタイプに「劉備」や「関羽」といった三国志の英雄の名前がついているところがいかにも台湾のゲームらしくて面白い。サービス時期は未定だが、カジュアルなゲームとして注目したい作品だ。


かなり硬派なアクションとなる「Do Not Fall」

【Do Not Fall】


【Tank 3D Online】


(2012年 9月 23日)

[Reported by 勝田哲也]