Taipei Game Show 2012レポート

【Taipei Game Show 2012特別編】最喜歡日本的玩具了! 台湾ホビーレポート
タカラトミー台湾担当者に聞く、台湾へのアプローチ、台湾版「Hobby JAPAN」、「電撃HOBBY」編集長の読者への働きかけ


2月2日~6日開催

会場:南港展覧館

入場料:大人200元、子供100元


 最喜歡日本的玩具了!(日本のおもちゃ大好き!)。これまで弊誌では台湾ホビーショップ特別レポート Ver.2010台湾ホビーショップレポートといった形で、台湾でのホビー事情を取り上げてきた。2010年にはバンダイ台湾に取材を行ない、商品展開やイベントなどの台湾市場へのアプローチを聞くことができた。

 今回はバンダイナムコと並ぶ日本のホビー(おもちゃ)メーカー大手である、タカラトミーの台湾での取り組みを、メールインタビューという形で行なった。タカラトミーは、香港にアジア支店があり、台湾もこの香港からビジネスを展開しているという。

 また、台湾ではタカラトミーが発売するミニカー「トミカ」のイベント「トミカ博」をアジアで初めて、台湾で開催する予定とのことで、タカラトミー香港アジア支店の担当者および、トミカ博担当者にメールインタビューを行ない、台湾での人気や、今後の台湾展開を取材した。

 さらに、「Hobby JAPAN」と「電撃HOBBY」という、日本のホビー業界を牽引するホビー雑誌の台湾版を一手に引き受け、両雑誌の編集長を務める青文出版の孫豊澤氏に話を聞いた。日本のおもちゃが大好きで、そのまま台湾ホビー業界のオピニオンリーダーになった孫氏の、ホビー業界への取り組みを取材した。



■ 日本からアジア展開への“入口”となる、台湾おもちゃ市場

トミカの専門コーナー「トミカスクエア」のある新光三越の信義新天地店。台中にも「トミカスクエア」があるという
台湾高速鉄道のプラレール
日本でも大きな人気となった「ベイブレード」

 タカラトミーは、香港にアジア支店があり、台湾もこの香港からビジネスを展開しているという。また、台湾ではタカラトミーが発売するミニカー「トミカ」のイベント「トミカ博」をアジアで初めて、台湾で開催する予定とのことで、タカラトミー香港アジア支店の担当者および、トミカ博担当者にメールインタビューを行ない、台湾での人気や、今後の台湾展開を取材した。

 台湾はアジア支店が管轄する、中国をのぞく香港や韓国など9カ国で全体の15%のシェアを占める市場で、韓国に次ぐ2番目の市場となる。台湾では代理店を通じて商品を展開しており、関係は30年以上だという。特に、“男の子向け”商品が強く、一昨年からTVアニメの放映もスタートした、「ベイブレード」が現在でも人気だ。

 「トミカ」、「プラレール」の人気も高く、台北と台中にはトミカ専門店の「トミカスクエア」があり、こちらも好調だ。また、“ガールズドール市場”においても、他のアジア各国とは異なり、「リカちゃん」が健闘しているとのこと。特にタカラトミーは新光三越などの“百貨店”に注力して商品を展開している。米マテルの「バービー」や、中国の特撮もの、韓国のドールなども入って来ているものの、百貨店の玩具売り場の80%以上は日本の玩具ではないか、ということだ。

 IRCでコントロールできる「ベイブレード」が発売された際は、台湾では日本以上のヒットとなった。日本では自分でカスタマイズし、友人と競うという「ベイブレード」本来の遊び方が重視されたのに対し、台湾ではアニメ作品のように自由に「ベイブレード」を操作するギミックが受けたようだ。「ベイブレード」はアジアチャンピオンシップも開催され、成功したという。「ベイブレード」以前は、「ゾイド」や「ビーダマン」も大きなヒットになったとのことだ。

 担当者個人の分析としては、台湾の子どもたちは東南アジアと比べてもアニメキャラクタに対する思い入れが強いように感じられるという。キャラクタをしっかり育てた玩具は継続的にヒットしている。

 「イナズマイレブン」や「ポケモン」のような、メディアミックス展開は、現地のライセンサー、代理店と協力し、アニメ放映に合わせた商品展開、プロモーションを行なっている。現在日本のアニメは、日本より1年遅れで放映されているが、ネットの普及などにより情報の伝達が近年著しく早くなり、現状の1年遅れでは遅すぎるのではないかとも感じているという。

 「台湾は大きな市場であるというだけでなく、日本の成功例をアジアへ移植するための拠点であるという面でも非常に重要な場所だと考えています。タカラトミーの大きな財産であるトミカ、プラレール、リカちゃんといった定番ブランドをアジア全体に広げていく中で、台湾を強化するということは非常な重要な意味がありますし、それが私たちの自信にもなっていきます。さらに強固なタカラトミーブランドを形成できるよう、がんばっていきたいと思います」と担当者は台湾市場への意気込みを語った。

 一方、「トミカ博」に関しては、台湾には「トミカ」のファンクラブが組織化されており、コアユーザーを中心としたトミカ市場が既に確立している。この点は他のアジア地域と大きく異なる。台湾には成熟した市場が存在しているという。

 大規模なイベント「トミカ博」で成功するためには、トミカブランドの認知度の高さと、数万人規模のトミカユーザーが必要であり、トミカ博担当者は、台湾にはその可能性を感じているとのこと。また、パートナーとして、一緒にイベント事業を取り組んで行ける現地代理店との友好関係がある点も大きい。

 トミカ博に先がけ、2010年の夏休みに、台北新光三越の催事場にて、トミカの40周年を記念した「トミカフェア」を初めて開催し、日本の百貨店イベントと同等の結果が得られたという。今後もこのような規模のイベントを台北で定例化、台中ではスポット的に行ない、実績を積みながら、成功失敗分析をしていこうと考えている。

 そして大きな目標としているのが、海外初となる台湾での「トミカ博in TAIPEI」だ。現在予定は未定であるが、2014年の1月末か4月、あるいは夏休みあたりに5日間程度で実施していきたいとのこと。その際のトミカ博担当者の“夢”としては、日本のトミカ博で出展されるよ日本列島ジオラマのように、「台湾」をイメージしたランドマークを用いた「台湾ジオラマ」とか「台北市内ジオラマ」など企画してみたいとのこと。

 入場記念トミカも、台湾オリジナルがやれると面白いと思っているとのことだ。これらはまだ何の裏づけも無いアイディアレベルではあるが、スタッフは様々なアイディアをふくらましている。トミカ博担当者は「トミカ博in TAIPEI」に向けて、「イベントをきっかけにトミカユーザーが増えることも期待したいのですが、なによりも、これまで台湾のトミカ市場を支えてきてくれたファンの方々に、トミカ博を楽しんでもらうことが私の目標です」と語った。


「トミカスクエア」は様々なトミカが展示販売されている。下段左と中央は台湾の60年代をモチーフとしたペーパークラフトのジオラマ。ペーパークラフトは台湾メーカーのものだが、この時代に合わせた商品コーナーを作っていた。トミカのラインナップの豊富さ、ユーザー年齢層の幅の広さがあるからこそ可能な企画だろう
こちらは台北駅周辺の新光三越のおもちゃ売り場。女の子向け玩具もタカラトミーの商品が多い



■ 2つのホビー雑誌で台湾読者に提示していく、日本のプラモデル・おもちゃのの楽しみ方

「Hobby JAPAN」と「電撃HOBBY」の台湾版編集長を務める青文出版の孫豊澤氏
書道家である孫氏のお父さんに依頼したという「大和號」の文字

 「Hobby JAPAN」と「電撃HOBBY」の台湾版の編集長を務める孫豊澤氏が、ホビー関係の出版業務を始めたのは、1992年、日本の少年誌「コミックボンボン」の台湾版「ジャンボジャンボ」の編集スタッフから。「電撃HOBBY」の台湾版は2003年から、「Hobby JAPAN」の台湾版は2011年から刊行を開始している。

 日本の2大ホビー誌を一手に手掛ける様になったのは、青文出版の社長が、イベントで台湾を訪れていた「Hobby JAPAN」関係者に働きかけて実現したという。「電撃HOBBY」の台湾版は毎月18日、「Hobby JAPAN」の台湾版は毎月5日に発売とのことだ。

 2つの雑誌は台湾では大きく編集方針を変えている。「電撃HOBBY」の方は日本のものをできるだけそのまま出していくことを心がけているのに対し、「Hobby JAPAN」は台湾のプロモデラーによる記事を積極的に入れているという。ここ数年で台湾のモデラーも成長しており、彼らの作品を毎月掲載している。台湾のプロモデラーは、台湾版のガンダムエースのコンテストなどでも優秀な成績を残し、バンダイ台湾から仕事を依頼されることもあるという。

 台湾モデラーが生まれてきた土台に関しては、昔よりも台湾に日本のおもちゃやプラモデルが入ってくるようになり、ホビー系のラインナップも充実してきたこと、この数年はメディアも情報が多く発信できるようになり、ホビー系の充実に貢献できている。雑誌に加えインターネットでのユーザー同士の情報交換も盛んになっている。プラモデルなども昔に比べて作りやすくなるなど、商品の質、量共に大きく向上しているため、ホビーの裾の自体が広がっているという実感も持っているとのことだ。

 両雑誌ともページ数は日本版の3分の2程度。このため内容の取捨選択を行なう。台湾独自の情報も盛り込む。「Hobby JAPAN」はオリジナルページを20ページ用意する。そのうち12ページを台湾モデラーの作例に振り分けている。孫氏は「台湾のモデラーは技術では日本のモデラーに負けないところがありますが、発想がまだ弱い」と語る。現在のところは、基本的に自由にモデラーに作ってもらうことが多い。

 読者の反応は、「電撃HOBBY」が出たときはインターネットもまだ盛んではなかったため台湾での本格的なホビー雑誌が出たと言うことで好評だった。現在はユーザー同士がインターネットで情報を得ている人も多くなった。「Hobby JAPAN」の台湾モデラーの作例は、賛否両論で応援してくれる人がいれば、一方で「日本のモデラーにはかなわない」という人もいる。雑誌展開は、2つの異なる編集方針でアピールし続けていく。

 ここからは、、「日本のプラモデルやおもちゃが好きでこの仕事をしている」という孫氏自身のことを聞いてみた。孫氏の最初の衝撃はなんと2才の時、「宇宙戦艦ヤマト」のかっこよさにしびれたのだという。「孫氏のヤマト好き」は社内でも有名とのことだ。もちろん2万円以上する超合金魂の「宇宙戦艦ヤマト」、そしてヤマトよりもさらに大きくて高価な「地球防衛軍旗艦アンドロメダ」も購入した。

 台湾は湿気が多い気候なので、湿気対策したプラスチック製の収納箱でコレクションは保存している。お気に入りのアイテムは“保存用”に2個買う。孫氏は高校と大学は日本のプラモデルを作る「模型部」に所属していた。孫氏のポリシーは、「箱にある“完成写真”そのままをプラモデルで再現する」というもので、パッケージの方向性そのままの塗装も行なっていたという。最近は仕事が忙しく、プラモデルを作れず箱を詰んでいるのが悩みだ。ヤマト以外は「ガンダム」シリーズ、「聖闘士星矢」が好きだという。

 特に孫氏は「聖闘士星矢」のキャラクター、“紫龍”が大好きだという。「聖闘士星矢」のコミックスを青文出版が出すことになったとき、“書道家”である孫氏のお父さんに発注し、紫龍の必殺技「廬山昇龍覇(ろざんしょうりゅうは)」の文字を書いてもらい、その字をコミックスに使ったという。また、「Hobby JAPAN」でもこだわりのヤマト特集だったとき、「大和」の文字を書いてもらった。

 孫氏は今後、台湾版「Hobby JAPAN」を通じて“自分でプラモデルを作る喜び”を、台湾版「電撃HOBBY」を通じて“新しい商品をどう遊ぶか”ということを提示していきたいという。



(2012年 2月 7日)

[Reported by 勝田哲也]