Taipei Game Show 2012レポート

【Taipei Game Show 2012】台湾台北市にてTaipei Game Show 2012が開幕
コンシューマーゲームやe-Sports関連が人気。中国メーカーも増加


2月2日~6日開催

会場:南港展覧館

入場料:大人200元、子供100元


 台湾最大規模のゲームショウ「Taipei Game Show(台北国際電玩展)」が台湾台北市の南港展覧館において開幕した。会期は2月2日から6日までの5日間で、入場料は大人が200台湾ドル(約520円)、子供が100台湾ドル(約260円)。本稿では、ゲームショウの概要と、初日の模様をお届けしたい。

【即売コーナー】
Taipei Game Showといえば即売コーナー。人気が高いのはコンシューマーゲーム関連だが、PCゲーミングデバイスやPCゲーム、あとは同人グッズ等の販売も行なわれている



■ 依然としてコンシューマーゲームが人気。中国メーカーが急増

Taipei Game Showの全景図。テーマパークのようなデザインになっている。中央がSCET
SCETはPS Vitaを全面プッシュ。Wi-Fi版は2011年12月に発売済みだが、3G/Wi-Fi版は2月17日にリリースされる。まさにこれからが本番となる
Microsoftはブースの半分以上をKinectに割いていた。台湾ではKinectは大ヒットしており、今回の一押しも「Kinectスター・ウォーズ」だった

 「Taipei Game Show(台北国際電玩展)」は、Taipei Computer Association(TCA)が主催している台湾を代表するゲームショウ。元々は「電脳多媒体展」の1テーマとして、PCやPCパーツと共に出展され、即売コーナーでPCゲームをバナナのたたき売りのように売りまくるという特異なゲームショウだったが、オンラインゲームの勃興と共に大きく成長し、Sony Computer Entertainment Taipei(SCET)やMicrosoft Taiwanといったゲームプラットフォーマーの参加などを経て、単体のゲームショウとして今日に至っている。

 今年からは、ショウの会場をPC関連の展示会Computex Taipeiの会場として使われている比較的新しいコンベンションセンターである南港展覧会に移し、より快適な環境で最新のゲームが楽しめるようになっている。昨年に比べるとメーカー数、広さは微増だが、日本の東京ゲームショウや韓国のG-Starと比較すると半分以下で、2~3時間もあればすべて見られるぐらいの規模に留まっている。

 ゲームショウとしては、完全にコンシューマーゲームのショウで、このショウだけでは台湾のゲーム市場はまったく見えてこない。近年のショウの顔となっているSCETとMicrosoft Taiwanの2社だけで、全体の2~3割を占めるのではないかというぐらい大きな存在感を放っている一方で、台湾大手といわれるGamaniaやSoftworld、Wayi、Funtown、Softstarなどはいずれも出展していない。これは台湾大手が、台湾だけではビジネスとして成立しにくいため、必然的に海外展開を目指している、つまり外を向いているのに対し、Taipei Game ShowはあくまでTCAの施策のひとつとして、台湾のゲームファンに向けたイベント、つまり内向きであるため、両者の噛み合わないためだと思われる。

 ちなみに昨年2011年はXPECやX-Legendといった独立系デベロッパーが台湾で上場を果たすなど、台湾のゲーム開発力の成長を内外に示す年となったが、これらメーカーもやはり出展していない。ニューフェイスとしては久之遊信息技術(9you)や上海火遊網絡科技、蘇州星雲網絡、新浪遊戯などなど、これまでほとんど見られなかったが中国系のメーカーが目立ったのが特徴で、中国と台湾の経済面での親密度の高さを伺わせた。

 ただ、中国メーカーは、“とりあえず出してみた”というレベルで、出展したスタッフもどう台湾のユーザーに押していけばいいのかわからないという感じで、武侠のコスプレをしたコンパニオンを用意する以外に手がないという雰囲気だった。ゲームの内容的にも、全体的に硬質で、日本や韓国の影響を受けながら独自の価値観で磨き上げられてきた台湾のオンラインゲーム市場で、中国のオンラインゲームが一定の評価を受けるにはまだ時間が掛かるという印象を持った。

 そのほかにはWebゲーム(ブラウザゲーム)やモバイルゲームの出展もいくつか行なわれていたが、まだまだ黎明期という印象を持った。日本や欧米のそれらジャンルのゲームタイトルの進化と比較すると、これらジャンルはビジネスそのものが停滞している印象で、台湾から世界を席巻するようなブラウザゲームやモバイルゲームは期待できそうにない。

 台湾で“オンラインゲーム”というと、やはりPC向けのオンラインゲームを指しており、エンドユーザーレベルでは、ブラウザやスマートフォンでオンラインゲームを遊ぶということに大きな抵抗を感じているようだった。その一方で、台湾のデベロッパーは、オンラインゲームの開発手腕を世界から大きく評価されており、日本を含む、台湾外のメーカーと提携して、ブラウザゲームやモバイルゲームが生まれる可能性は大いにありそうだ。


【SCETオープニングセレモニー】
毎年恒例となっているSCETのオープニングセレモニー。セクシーアイドルの安心亜さんの歌から入り、SCE Asiaプレジデントの安田哲彦氏が挨拶。安田氏は、「正規ソフトが売れるようになり、世界のクリエイターに注目していただき、台湾に来ていただけるというポジティブスパイラルが生まれている」と、台湾ゲーム市場が世界のクリエイターにとって魅力的になりつつあることをアピールした

【SCETブース】
SCETはPS Vita以外では、“ストクロ祭り”の櫓を構える「ストリートファイター X 鉄拳」(カプコン)、「グランツーリスモ5 SpecII」(SCEJ)、「ファイナルファンタジーXIII-2」(スクウェア・エニックス)の3つのタイトルを大きくアピールしていた

【Microsoft Taiwanブース】
Kinectのヒットで波に乗るMicrosoftは、「Kinectスター・ウォーズ」と「Kinect RUSH」という2本のKinectタイトルを大プッシュ。「Kinectスター・ウォーズ」は本体&Kinect同梱版も発表され、白いKinectが初披露されていた。Kinectは子供にも人気が高いのが特徴だ。明日以降は「Dragon's Dogma」(カプコン)や「Steins Gate」(5bp)など、日本のクリエイターを招いたステージイベントを開催予定



■ Taipei Game Showの高集客力の理由は即売とe-Sports

オンラインゲームで一番目立っていたのは、Softworldグループの子会社Zealot Digitalの新作MMORPG「古龍争覇」。姉妹会社Chinese Gamerが得意とする武侠系のMMORPGだ
多くのユーザーの関心を集めていたのがRunewalkerが開発しているファンタジーMMORPG「Dragon's Prophet」。台湾のゲームとしては非常にグラフィックスにこだわったMMORPGとなっている
ゲーミングデバイスメーカーばかりが集まった一角。左から順に、Cooler Master、Razer、GIGABYTE、サーマルティク

 さて、Taipei Game Showでは台湾ゲーム市場の主役である大手メーカーのオンラインゲームが出展されていないため、ユーザーもあまり来ないと思われがちだが、実は連日朝から多くの来場者で賑わっており、土日は通路が人であふれかえるほどになる。台湾ゲーム市場のトレンドと、ショウの実情はズレがあるにも関わらず、多くの人を集めてしまうところが、Taipei Game Showのゲームショウとしておもしろいところだ。

 Taipei Game Showが高い集客力を誇る理由は、ひとつは即売会としての側面がある。来場者は最新のコンシューマーゲームを見たり、体験したり、各種イベントに参加したりするだけでなく、遊んでみて欲しくなったゲームやゲームハードを、イベント特別価格で購入できるというわけだ。

 今回のお目当ては、ゲームハードではPS VitaやXbox 360 Kinect。ゲームソフトでは「ファイナルファンタジーXIII-2」(中文版)や各種Kinectタイトルなどが挙げられる。プラットフォーマー以外に、その周囲には多くの提携ゲームショップが出展しており、値段を見比べながら、お目当てのタイトルを買えるというわけである。

 Taipei Game Showでコンシューマーゲームの出展が盛んなのは、ひとつは試遊して買うという流れを作りやすいため。もう1点は、なかなか店頭では試遊スペースを確保できないPS MoveやKinectといった体感型のデバイスをアピールして、そのまま売ることができることだ。これら周辺機器は利幅が大きいため、メーカーとしても積極的にプッシュするメリットがあるというわけだ。

 一方、台湾大手メーカーは、主力商材がオンラインゲームとなるため、この面でもあまり出展のメリットがない。台湾のオンラインゲームは、日本以上に基本プレイ無料のところが多く、会場で遊んでその場で買うというワンストップの流れが作りにくい。過去には、プリペイドカードを値下げしたり、特典を付けて売るということも行なっていたが、あまり効果がないためか、現在ではほとんど見られない。

 Taipei Game Showが高い集客力を誇るもうひとつの理由は、e-Sportsショウとしての側面だ。これはまさにここ数年で急成長している分野で、Taipei Game Showの新しい見所といっても過言ではない。

 具体的にはサーマルティクやクーラーマスター、GIGABYTE、Razerといったペリフェラルメーカーが軒を連ね、それぞれ自社が誇るゲームデバイスを出展しているのだ。ゲーミングマウスやマウスパット、キーボード、ヘッドセットはもちろんのこと、近年ではBYOC(LANパーティー)用のど派手なPCケースや、ゲーム動画配信用のビデオキャプチャボードまで何でもござれという状況になっている。

 そして彼らの客寄せのキラーコンテンツが、プロゲーマーによるエキシビションマッチだ。各社が抱えていたり提携していたりするプロゲーマーを呼んでメインステージで対戦を行なう。対戦する種目は、台湾のプロリーグで採用されている「Special Force」(Dragon fly)、「カートライダー」(NEXON)、「Starcraft II」(Blizzard Entertainment)の3タイトルを中心に、今年は2011年最もヒットしたオンラインゲーム「League of Legends」も目立った。

 こちらもまた彼らプロゲーマーの試合を見て、彼らが使用しているゲーミングデバイスをその場で買うという流れが作られており、通常のデバイスと比較して高額のゲーミングデバイスが飛ぶように売れているのを見ると、Taipei Game Showの魅力の源泉は即売にあることが実感できる。GAME Watchでは、本日以降、Taipei Game Showレポートを通じて、様々な形で台湾ゲーム事情をお届けしていくのでぜひご期待いただきたい。


【中国メーカー】
今年のトピックのひとつは中国メーカーの出展。久之遊信息技術(9you)や上海火遊網絡科技、蘇州星雲網絡、新浪遊戯などのメーカーが規模は小さいながらも中国産タイトルの出展を行なっていた。開放派の馬英九氏が総統選で再選されたことで、この流れは今後も強化されることになりそうだ

【ブラウザゲーム&モバイルゲーム】
台湾のブラウザ&モバイルゲームは、まだまだ黎明期。ブースには人もまばらで、タイトル的にもインパクトのある製品はまだない。あとはタブレット向けが多いのも特徴

【ゲーミングデバイス】
Taipei Game Showにおけるゲーミングデバイスの出展は数年前から本格化したが、年々パワーアップし、ますます大きな盛り上がりを見せている。台湾のプロリーグが人気を集めていることも追い風の要因として上げられそうだ

(2012年 2月 3日)

[Reported by 中村聖司]