EA、PS3「FIFAストリート」、PS Vita「FIFA ワールドクラス サッカー」メディア向け体験会を開催
間口を広く、新機能を積極的に! 牧田和也氏の新たな挑戦


12月22日開催

エレクトロニック・アーツ本社



 エレクトロニック・アーツ株式会社は12月22日、東京新宿の本社オフィスにて、プレイステーション 3用ストリートサッカーゲーム「FIFA ストリート」及びPlayStation Vita用サッカーゲーム「FIFA ワールドクラス サッカー」のメディア向け体験会を開催した。

 「FIFA ストリート」は2012年春に発売予定で、価格は7,665円。ローカライズはテキストのみで、音声は英語のままとなる。開発はEAカナダスタジオで、「FIFA 12 ワールドクラスサッカー」のゲームエンジンを使用し、ストリートサッカーならではの体験が楽しめる。PS Vita「FIFA ワールドクラス サッカー」は同じく2012年春発売予定で、価格は5,980円。こちらは音声も含めたフルローカライズだ。

 今回は本作の先行体験に加え、エレクトロニック・アーツ カナダにて「FIFA」シリーズのエグゼクティブプロデューサーを務める牧田和也氏にインタビューを行なうことができた。インプレッションとインタビューをお伝えしたい。


■ 初心者でもかっこよく決められる! カジュアルで熱い「FIFA ストリート」

体験会はEA本社会議室で行なわれた
様々な試合会場も本作の面白さ

 「FIFA ストリート」は、世界各地で行なわれているストリートサッカーを、「FIFA 12 ワールドクラス サッカー」と同じゲームエンジンで表現、いわゆるストリート式と呼ばれる特異なドリブルスタイルや、少数の対戦により、1対1の局面での個人技による力の比べ合いが楽しめる。通常のサッカーゲームとは異なるベクトルが魅力の作品だ。

 35カ所以上の国の名高いサッカークラブに所属するスター選手に加え、実在のストリートサッカー選手とが選手として登場。オリジナルの選手も作成可能だ。倉庫や駐車場といった対戦の場所は、世界の様々な都市を舞台としている。キーパーを含めた6対6の対戦から、少人数の対戦まで様々なルールで戦うことができる。本作の発売後にも数々のゲームモードなどが配信される他、ソーシャル要素も盛り込まれている。

 今回は英語版を体験することができた。「FIFA 12 ワールドクラス サッカー」と比べてまず思うのはフィールドの“狭さ”だ。敵ゴールと味方ゴールが近く、キーパーのキックで敵ゴールに蹴り込めそうだ。フィールドのどこからでもボールをとったらすぐにシュートができそうな距離である。こうなるとすぐにゴールできそうだが、相対的にゴールは狭くなっており、簡単にはシュートは決まらない。また選ぶフィールドやゴールの大きさは変化するという。フィールドの大きさが統一されていないというのも新鮮だ。

 選手の数は4~6人、ゲームモードによってはキーパーがいないこともあった。さらに四方には“壁”があり、ボールをぶつけて跳ね返す“壁パス”も可能だ。フィールドが小さいためボールに選手達が集まる。通常のサッカーゲームだと、ボールは広大なフィールドを大きく動き、両選手がかなり長い距離を走るのだが、本作は常にゴール前の攻防戦のような密集状態となる。

 それでいながら相手の裏をかき、敵をすり抜けることでノーマークにもなれる。反対にパスミスなどで相手にボールが渡った瞬間、大ピンチに陥ったりする。ピンチとチャンスが早いスパンで入れ替わる攻防は、本格的なサッカーゲームとはまた違った楽しさを感じた。サッカーでの思わず興奮させられるシーンが凝縮されているような印象だ。

 また、先述したように様々なゲームモードが入っているのも本作の特徴で、5人とキーパー1人の6vs6での対戦だけでなく、4vs4でスタートし、点が入る度に入れた方からメンバーが減っていく「LAST MAN STANDING」や、相手の足の間をボールをくぐらせディフェンスを抜くと点が入るという「PANNA RULES(Pannaは“股抜きという意味”)」といったゲームモードも用意されている。ルールをカスタマイズしたり、複数のコントローラーを使った対戦、オンライン対戦モード等も用意されていた。

 実際にプレイしてみるとかなり手軽にプレイでき、ボタンをある程度適当にパシパシ連打しているだけでも選手達がスーパーテクニックを披露してくれる。現在開発中のため操作体系は変更される可能性があるが、ボールをキープ中にR1ボタンを押すとボールをリフティングし、相手を翻弄できる。パス回しは直感的にでき、特に壁を使った跳ね返りを利用してパスを繋ぐといったテクニックが決まるととても爽快だ。スティックとボタンをタイミング良く組み合わせることで連続してパスを回し、シュートを打てるのは非常に爽快だ。そのめまぐるしいスピードは、サッカーゲームと言うより、アクションゲームのような感覚だった。

 思わず声を上げてしまう熱さと、「やり込んで思い通りにボールコントロールをしてみたい」と思わせる要素は、「FIFA 12 ワールドクラス サッカー」も持っていたが、本作はそこからさらに有り得ないようなスーパーテクニックを目指したいという遊び心が大きくなってくる。初心者でも楽しめ、上級者はスーパープレイを自慢できる作品になりそうだ。今回は対戦を中心に楽しんだが、思わず熱中してしまった。友人を呼び遊んでみたいゲームだと思った。


ストリートルールで有名選手達がぶつかりあうのが面白い


■ タッチしたところにピンポイントでパス! 「FIFA ワールドクラス サッカー」

PS3版やXbox 360版にも負けないグラフィックスと内容

 「FIFA ワールドクラス サッカー」は、「FIFA(国際サッカー連盟)」公認の「FIFA ワールドクラス サッカー」シリーズのPS Vita版だ。PS3/Xbox 360「FIFA 12 ワールドクラスサッカー」に勝るとも劣らないボリュームを携帯ゲーム機で実現、世界の500以上の公式クラブと対戦を楽しむことができる。

 本当のサッカーの試合のような「Be A Pro」モードや、世界中で行なわれている実在の大会を50以上体験できる「トーナメントモード」に加え、「キャリアモード」や「オンラインモード」(1対1)など8種類が搭載されている。そしてPS Vitaならではの機能、「タッチスクリーン」、「背面パッド」を利用したアクションも盛り込まれ、PS3版やXbox 360版とはひと味違った作品となっているのだ。

 こちらで感じたのは、PS3やXbox 360版のリッチさを感じさせるゲームプレイが、そのまま携帯ゲームで展開してるという感触だった。“本格さ”もそのままで、CPUがかなり強く、慣れてないと簡単にボールを奪われてしまう。「練習してうまくなりたい」と思わせる硬派なバランスのゲームだ。

 面白いのはタッチスクリーン、PS Vitaの背面スクリーンを使ったギミックだ。タッチスクリーンではボールを持っているときに任意の場所を触るとその触ったところに選手がパスする。スティックより正確に、ピンポイントにパスできるのは爽快だった。背面スクリーンは、シュート範囲に来ると背面スクリーンをゴール正面に見立て、触ったところめがけてボールをキープしている選手がシュートする。背面スクリーンの縁近くを触ればコーナーぎりぎりに向かって選手が蹴り込むのである。

 「FIFA ワールドクラス サッカー」は展開が早く、エキサイティングな試合が楽しめる。このため思わず興奮してボタンを連打して意図しない動きをしてしまったり、スティックの操作で望んだ方向と違う場所にボールを蹴ってしまったりする。ここをどう習熟していくかが本シリーズの楽しさであるのだが、このタッチスクリーンでのボールコントロールには、スティックとボタンとはひと味違う可能性を感じた。

 特に指先1つでピンポイントにパスできるのは面白い。本作を極めると他機種とは全く違うゲームプレイができそうだし、対戦風景も変わったものになりそうだ。こちらも登場が待ち遠しい。


ゲームエンジンは最新のもので、ハードの特性を活かした機能が盛り込まれている

■ 点を入れるだけじゃない楽しさ「FIFA ストリート」、新デバイスへの挑戦「FIFA ワールドクラス サッカー」

エレクトロニック・アーツ カナダにて「FIFA」シリーズのエグゼクティブプロデューサーを務める牧田和也氏
ストリートスタイルで、これまでとは全く違う楽しさを目指す「FIFA ストリート」
PS Vitaならではのプレイが楽しめる「FIFA ワールドクラス サッカー」

 「FIFA」シリーズのエグゼクティブプロデューサーを務める牧田和也氏は、1999年、エレクトロニック・アーツ カナダに入社し、この時からFIFAシリーズの製作15タイトル以上に携わっているという。

 2004年に「FIFAトータルフットボール」のプロデューサーを担当、2006年には「FIFA」シリーズのゲームプレイエンジン開発チームプロデューサーに就任した。2009年からはFIFAプロジェクト統括プロデューサーとしてサッカープロジェクト全般を担当している。現在の「FIFA」シリーズの人気をもたらした中心人物である。

 まず最初に質問をしたのは「FIFA ストリート」制作の経緯だ。エレクトロニック・アーツ カナダの牧田氏のチームがPS3/Xbox 360版向けゲームエンジンを作り上げ、「FIFA 12 ワールドクラス サッカー」に実装した。そして次のステップとして、このゲームエンジンを活かして新しいゲームを作れないかと考えた。そこで候補として上がったのが「FIFA ストリート」だったという。

 「FIFA ストリート」は過去には1~3までのナンバリングタイトルが出ているが、4年くらい続編が作られなかった。これまでの「FIFA ストリート」は別のチームで制作されていたが、今回は牧田氏のチームで「FIFA 12 ワールドクラス サッカー」エンジンを使った上で、企画そのものを見なおし、「本格的なストリートサッカーゲーム」を作ろうという目標で制作がスタートしたという。

 「ストリートサッカー」というジャンルを選んだのは、様々な国をリサーチした上での結論だ。牧田氏のチームは世界各地でのサッカーボールを使った遊びを調べていった。イギリスではフットサルが盛んだ。ブラジルやアムステルダム、オランダではゴールにボールを入れることよりも“相手を抜く”事を目的とするストリートサッカーが盛んなのだ。調査の中で開発チームは「スキルムーブを使い、相手を抜くことにフォーカスしたゲームが作れれば楽しいのではないか」という着想を得て、今回の「FIFA ストリート」の方向性が決まっていったという。

 通常のサッカーゲームよりも、個人技、「1対1でどう動くか」というポイントが強調されることになった。「『俺こんな抜き方をしたんだぜ見てくれよ!』というところを作り込んだ作品です」と牧田氏は語った。このテーマを実現させるため、ゲームエンジンの基本は「FIFA 12 ワールドクラスサッカー」と同じものではあるが、「FIFA ストリート」のチームは方向性の異なる作り込みを行なっていった。「FIFA ストリート」は通常のサッカーとはピッチ(フィールド)の大きさも、選手の数も違う。AIは全く独自のものが必要になるし、大部分が独自の仕様となった。ストリートサッカーならではのスキルムーブも多数盛り込まれている。

 「最も大きく違うのは、“誰でも遊べるものにしよう”というユーザーに対しての視点です」と牧田氏は語った。基本操作はシンプルに、選手は常にゴール方向を向いているようにした。そしてオフェンスのドリブルは「ブレーキとアクセル」の感覚を取り入れた。R2で走り、L2で止まるのだが、R2で高速で前進しながら敵を前にしたらL2で急停止、そこから右スティックでキャラクターの向きを変え、全く違う方向にダッシュするといったこともできる。アクセル・ブレーキ感覚で、直感的に高度なテクニックが使える独自解釈のシステムを作り出したのだ。

 加えて牧田氏は、本作は通常のサッカーとは違うテクニック、より瞬時の判断が重要になるところもストリートサッカーの面白いところだと語った。牧田氏に「ストリートサッカーで牧田氏が1番楽しいと感じるところはどこか」と質問してみたところ、牧田氏は「点を入れなくても楽しめるところ」と答えた。

 この牧田氏の想いはゲームに強く反映されており、「FIFA ストリート」はスキルムーブで相手を翻弄すると「エンタテイメントポイント」が加算されるようになっている。「FREESTYLE MUCH」はエンタテイメントポイントを競うルールだ。また、“Panna”という“股抜き”の言葉を冠した「PANNA RULES」は点を入れるよりも、抜くことに目的がフォーカスされている。本作ではゴールを目指すことだけが勝利の条件ではないのである。

 ゲームモードは、実際にあるストリートサッカーのものだけでなく、アレンジや、ゲームオリジナルのルールもある。「LAST MAN STANDING」はオリジナルのルールで4vs4でスタートし、点が入る度に入れた方からメンバーが減っていく。このルールは初心者と上級者でも楽しく遊べることを目指した。ストリートサッカーにこだわり、ゲームならではの面白さを提示する上で、牧田氏は開発スタッフに「面白さ、遊びやすさ」を目指すべきところとして提示し続けてる。サッカーゲームをやってなかった人にもわかる楽しさ、より間口の広い面白さの実現が本作の目標だという。

 また、世界の名だたるチームメンバーがストリートサッカーをプレイしているという“絵”も本作の面白いところだ。今作の選手は人気と実力から選択されている。彼等が発揮するテクニックはストリートサッカーのものだが、これらの技は実際のサッカーでも目にすることが多いもので、架空の技は入っていない。成功率などで選手ならではの個性が出るようになっており、各選手は技の得手不得手がある。しかし、「この選手だからこの技が出ない」ということはない。

 この他のセールスポイントとして、プレーヤーはオリジナルの選手を作ることができる。この選手は試合を重ねることでレベルアップしていき、レベルに応じてスキルムーブを習得できる。自分の目指す選手を作ることが可能だ。オリジナル選手はソーシャル要素でさらに活躍の場が広がる。「FIFA 12 ワールドクラス サッカー」から開始されたオンラインサービス「EA SPORTS Football Club」と本作も連動しており、オリジナルキャラクターをフレンドから借りることで強いチームを作れる。友人のチームをダウンロードし対戦することも可能だ。

 「FIFA ストリート」をプレイし続けることで“ポイント”が溜まり、このポイントを使ってコンテンツをアンロックできる。また、「FIFA 12 ワールドクラス サッカー」のポイントも溜まるというサービスもある。この他、試合の内容を録画、編集し、YouTubeにアップすることにも注力していく予定だ。

 PS Vita「FIFA ワールドクラス サッカー」に関しては、「PS Vitaでいかに『FIFA』を楽しんでもらえるか」を目標に開発が進められている。画面をタッチしたところにパスを送る、「タッチスクリーンパス」。画面をフリックした軌跡でフリーキックの軌道が変わる「タッチスクリーンフリーキックコントロール」。さらに背面タッチパッドをゴールに見立て、触ったところにめがけてシュートする「背面タッチパッドシュート」といった機能がある。

 「FIFA ワールドクラス サッカー」はPS3/Xbox 360の「FIFA 12 ワールドクラス サッカー」と比べ、基本的な要素は一緒だ。ただし、携帯機という特性を考慮し、「FIFA 12」でより細かくなったデフェンスシステムでは操作が複雑になると言うことで、あえてシンプルだった「FIFA 11」のシステムを採用しているとのこと。

 「FIFA」シリーズはスマートフォン向けにも発売されているが、今回のような操作性はPS Vitaが初めてだ。日本だけでなく海外でもスマートフォンはもちろん、携帯ゲーム機にもEAは力を入れていく予定で、「FIFA」シリーズも継続していく予定だという。

 最後にユーザーへのメッセージとして牧田氏は「まず、PS3『FIFA ストリート』は私達の新たな試みです。1対1の遊び方の楽しさ、ソーシャル的な部分を現在作り込んでいます。これまでのファンの方も、そうでない方も、どんな方でも1度触ってみてその楽しさを味わってみて下さい。PS Vita『FIFA ワールドクラス サッカー』は“どこでもFIFA”という遊び方をしたい人におすすめしたいです。PS Vitaの能力を活かしたグラフィックス、クオリティには自信を持っていますので、ぜひ手にとって見ていただければなと思います」と語った。


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(2011年 12月 22日)

[Reported by 勝田哲也]