バンダイナムコ、劇場用3Dアニメーション「ドットハック」製作発表会を開催
全編フルCGで作成された映像が3D映画として楽しめる


8月23日開催

会場:東京・秋葉原UDXシアター

2012年1月より全国劇場公開予定


「ドットハック」タイトルロゴとメインビジュアル

 株式会社バンダイナムコゲームスは8月23日、2012年1月に公開を予定している劇場用3Dアニメーション「ドットハック」の製作発表会を、東京・秋葉原にある秋葉原UDXシアターにて行なった。本作は、2002年の発足以来、ゲームやアニメ、コミック・小説・ラジオなど幅広いメディアで展開し、数多くのファンを生み出してきた「.hack」シリーズの最新作で、シリーズを手がけてきたトップクリエイターたちの手による最先端3DCG技術で製作された、フル3DCGの立体視映画としての登場となる。

 発表会では、実際に3Dメガネをかけて立体視を楽しめる特報映像の上映のほか、製作スタッフや主要キャラクターの声を演じる俳優陣が登壇し、作品に関するトークに花を咲かせていた。ここからは、この発表会の内容について紹介していこう。




■ 日本のクリエーターの才能を世界に羽ばたかせたい!
  鵜之澤氏が本作にかける意気込みを語る

本作のエグゼクティブプロデューサーである、株式会社バンダイナムコゲームス代表取締役副社長の鵜之澤伸氏

 発表会が始まると、まず本作のエグゼクティブプロデューサーである、株式会社バンダイナムコゲームスの鵜之澤伸氏が登壇。鵜之澤氏は「.hack」シリーズでも初めてとなる劇場版映画を制作することになった経緯について「9月3日から公開が始まる『鉄拳 ブラッド・ベンジェンス』の3DCG映画、これを第1弾として公開させていただくことになりました。

 それに続いて、来年この『ドットハック』を劇場公開させていただこうと考えています。『.hack』シリーズは2002年から始まって、10年近く経ちますが、最新の技術でアニメのように見えるけれども3DのCGでできている現実世界と、ゲーム世界をすべてフルCGで全編を作成しています。これは後ほど登場します『.hack』シリーズと『NARUTO -ナルト- ナルティメット』シリーズで、かなり映画に近いクオリティのゲームを作ってくれるサイバーコネクトツーという開発会社がゲームで培ったノウハウと映像でクオリティをあげていったものを使って、1本の劇場映画に仕上げた形です。本作が第2弾になりますが、今後、皆様の評価がいただければこういった形でいろいろ展開していきたいなと思っています」と説明した。

【お詫びと訂正】記事初出時、記事見出しおよび記事本文において、劇場版「ドットハック」のパッケージ化に関して、ゲームとのハイブリッドに関する記述がございましたが、これは「鉄拳 ブラッド・ベンジェンス」に関するものです。お詫びして訂正いたします。(8月24日追記)

本作の配給を手がけるアスミックエースエンタテイメント株式会社、代表取締役社長の豊島雅郎氏

 次に、配給会社であるアスミックエースエンタテイメント株式会社の豊島雅郎氏が登壇。豊島氏は「今回、ご縁がございまして、バンダイナムコゲームスさんの作られた『ドットハック』、それから『鉄拳 ブラッド・ベンジェンス』、こちらのほうも私どもで配給のお手伝いをさせていただくことになりました。これまでも何本かアニメ映画を公開してまいりましたが、これまで手がけたことがないゲーム会社さんの作る世界に照準を向けた3DCGアニメをお手伝いできるということで、今までのアニメ映画とは違ったものだという認識を持っていますし、これまでのアニメ映画とは違った切り口での宣伝・劇場営業をしないといけないなと思っています。我々も『鉄拳 ブラッド・ベンジェンス』、『ドットハック』を成功させて、3作目以降もユニークな形でお手伝いできるように頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします」と本作にかける思いを披露していた。


■ 続いて製作スタッフたちによるトークショーがスタート
  随所に「.hack」シリーズならではの要素が感じられた

プロデューサーである株式会社バンダイナムコゲームスの三戸亮氏が簡単なストーリーの説明を行なった

 続いて、プロデューサーである株式会社バンダイナムコゲームスの三戸亮氏による、作品概要の説明がスタート。「本作の舞台となるのは、今から13年後の未来である2024年の日本の地方都市を舞台にした物語。世界はあたり前のようにネットワークでつながり、子供たちは生まれたときからその環境の中で生活している。そんな中、今作の主人公である中学生の女の子は、友人たちに誘われ全世界で大人気のオンラインゲーム「THE WORLD」に参加。最初は乗り気でなかった彼女も、ゲームの面白さを知るにつれ仮想空間での冒険に夢中になっていく。しかし、やがて「THE WORLD」で起こった事件をきっかけとして、現実世界でも重大な事態が起こり始めてしまうことに。現実世界とゲーム世界、2つの世界で巻き起こるスペクタクルアクセスストーリーにご期待ください」と、「.hack」シリーズのお約束を含めて、簡単なストーリーラインを紹介していた。

 続いて登壇したのは、監督の株式会社サイバーコネクトツーの松山洋氏と、脚本を努める伊藤和典氏。まずは、松山氏が本作の製作が始まったきっかけについて「4年前に企画からスタートして、ほどなく伊藤さんに10年ぶりに一緒に『.hack』やりませんか?とお声がけをしました」と紹介。すると、伊藤氏は「そんな丁寧な声かけではなかった(笑)。パイロット的な映像を見て、『これ書いて!』って(笑)。それから4年前の春ぐらい、ロケハンに行ったのが夏くらい、そこから書き始めて初稿があがったのは翌年の1月。『.hack』 10年分の思いのたけをぶち込みました!」と思い入れの強さを語っていた。

 続いて松山氏は「今回の舞台は2024年ということで、遠いようでそんなに遠くない未来の話です。『.hack』って今までいろいろなメディアで展開してますけれども、『.hack』の定義というものがありまして、架空のオンラインゲームである『THE WORLD』というのが常に物語の中心にあります。『.hack』というのは2面世界になってまして、現実世界とゲーム世界の両方を描くようになってまして、ネットワークが今の社会でおかしくなってしまったら、どれだけ社会的な影響があるか?ということを考えたときに、影響があるのは東京だけではなく世界中で、どちらかというともっと我々の身近にある田舎のような舞台ですらトラブルに巻き込まれる、というようなことをしっかりと描けるのではないか?ということで、今回の舞台は九州の方でやっています。なので、地元ではありますが東京のスタッフも連れてロケハンにも行って、膨大な資料を作ったのと、今回福岡県や福岡市、あと舞台となる柳川市さんにもご協力いただいて、各種地名・舞台が実名で出ています。というわけで、我々にとっても非常になじみのある映画が作れたのではないかと思います」と本作のこだわりについてコメント。

 また、伊藤氏が「これまでに、4、5本3Dの映画を見てきているのですが、今までの3D映画の感想だと『俺、3D嫌いだわ』になる。でも、『ドットハック』は試写とかを見ている限りでは全然負担のない3Dというか、これはいい3Dだと思います」とコメントした場面では、「現実世界のパートも立体の視差、奥行きの部分は控えめにしています。その分、舞台の中ではメガネをかけてゲームをプレイしています。なので(観客の皆さんには)3Dメガネをかけてもらいつつ、ゲームの世界に入るとすごく壮大なCGのゲームで作られた世界が広がっていますので、そこで現実世界とゲーム世界の違いを感じてもらえるのではないかと思います」と松山氏は紹介し、「.hack」シリーズならではの仕掛けも披露。

 さらに、「今回、全国公開の劇場映画ということで、スタッフともども気をつけたこととして、何の前準備もなしに楽しめるものにするということ。今まで『.hack』シリーズといえばシリーズが長いのですが、10年分の知識がないと楽しめないんじゃないか?という作品にするのではなく、軽い気持ちで1本の映画として見に来ても100%楽しめる、何の前情報もいらない、気軽な映画として作らせていただきました。」と、映画製作時に気をつけた点についても紹介していた。


本作の監督である、株式会社サイバーコネクトツー代表取締役社長、松山洋氏脚本を手がけた伊藤和典氏は、「.hack」プロジェクトの創設メンバーの1人でもある

■ 主要キャスト陣のトークではアフレコ時のエピソードが多数披露

 続いて、いよいよ特報映像の上映がスタート。この映像も立体視対応になっており、3Dメガネをかけることで、奥行き感が感じられるようになっていた。また、松山氏が紹介したように、現実世界のパートでは奥行き感が少ないが、主人公の有城そらが「THE WORLD」にログインした場面では、ゲーム内の広大な世界が見事な奥行きで再現されているほか、市場のシーンでは、ほかのキャラクターたちの立体感も増すことで、より存在感が高くなっているのを感じることができた。

 特報映像の上映の後は、主要キャストの声を演じる、桜庭ななみさん、松坂桃李さん、田中圭さんが登場し、キャスト陣のトークがスタート。

 桜庭さんは「3DCG映画では映像の中でリアルな口の動きが再現されているので、それに合わせてアフレコをしなくてはいけないため、何度も録り直しになった」と苦労したエピソードを紹介。

 松坂さんは演じるキャラクターである田中翔について「ボソボソとしゃべるタイプで、何を考えているかわからない、マイペースな男の子です。監督から『もっとおとなしく演じてくれ』と注文を受けることがあり、これまでに『もっとテンションあげて!』とはよく言われるんですが、『もっとおとなしくしてくれ』と言われたのは初めてで、新鮮な経験でした」とコメント。

 田中さんは「普段のお芝居だと、目を見たり相手に話しかけるように演じるのですが、同じようにセリフを読んでいても目の前の人間ではなく向こう(スクリーン)に話しかけることになるので『これ、届いているのかな?気持ち悪いな』という感覚がありました。でも、慣れてくると自分たちができないことを映像でやってくれているのが楽しいなと思えるようになり、貴重な経験でした」と、それぞれアフレコ時のエピソードを紹介していた。

主人公の有城そら(ゲーム中のキャラクター名は“カイト”)役を演じる、桜庭ななみさん田中翔(ゲーム中のキャラクター名は“ゴンドー”)役の松坂桃李さん岡野智彦(ゲーム中のキャラクター名は“バルドル”)役の田中圭さん

 最後に、松山氏は「サイバーコネクトツーとしてゲームソフトを作ってきましたけれども、今回初の全国公開劇場アニメーションということで、我々ゲームクリエイターが持つさまざまなノウハウを映像という分野で発揮させていただきました。おそらく既存の映像作品と一味も二味も違う、新しい映像作品になっていると私自身感じています。そして、同時に映像に命を吹き込んでいただきました、こちらの3名の方々ですね。声が入って初めて1つの映像作品として完成したと感じています」と挨拶。

 さらに、「見終わった後、すごく幸せな気持ちになれる、気持ちのいい映画を目指して作ってきました。当然、中にはミステリーの要素ですとか、単純にアクションですとか、いろいろと見どころがありますが、『見てよかった』と思って思える映画になったと思います。実は作業はもう少し続きますが、このまましっかりと仕上げていくので、来年の公開を楽しみにしていただければと思います。今日はありがとうございました」と発表会を締めくくった。

【ストーリー】

 ごく普通の女子中学生、“有城そら”は、友人たちに誘われ、オンラインゲーム「THE WORLD」(ザ・ワールド)に参加することになる。最初のうちは乗り気ではなかったが、ゲームの面白さを知るにつれ、いつしか仮想世界での冒険に夢中になっていく。しかし、やがて不穏な気配が彼女の周辺に迫り始める。

 「THE WORLD」で発生した異変が、加速度的に現実をも侵食していく。現実とゲーム空間、2つの世界を救うため、そらは異変に立ち向かうことを決意するが……。

 本作では、「どこか懐かしい」現実世界と「豪華壮大な」仮想世界が交差し、二重性のあるドラマが展開される。未だかつて誰も体験したことのない、スペクタクル・アクセス(接続)・ストーリーが今、始まる。

【有城そら】【田中 翔】【岡野智彦】
本作の主人公。中学2年生。明るい性格で活発だけど、頑固者で芯の通った強い性格。ゲームは未経験で他の同世代よりハイテクに依存していない事もあり、流行りの話題にはうといタイプ。ゲームには興味がなかったが、オンラインゲーム「THE WORLD」に興味を持って始めることに「そら」をサポートする同級生の男の子。一見クールに見え、物静かで何を考えているのかわからない雰囲気があり、マイペースな感じのタイプ。ゲームマニアで「THE WORLD」は流行前からプレイしていた「そら」とは幼馴染でクラスの人気者。陽気でポジティブでノー天気な性格。1人よりもみんなで遊ぶことが好きなタイプ

【「THE WORLD」での姿】
左からバルドル、カイト、ゴンドー

【スクリーンショット】

【ティザームービー】

(C).hack Conglomarate

(2011年 8月 23日)

[Reported by 菅原哲二]