SCE、E3で日本・アジアのプレスを集め「PS Vita」のタイトルをプレゼン
「Japan/Asia Media Conference」で実機によるデモを披露
会場では実機によるデモが行なわれた。 |
株式会社ソニー・コンピュータエンタテインメントは現地時間の6月10日、米国で開催中のゲーム関連の展示会「E3 2011」の会場近くの「Bonaventure Hotel」において新型携帯ゲーム機「PlayStation Vita」の開発タイトルに関するプレゼンテーションを行なった。
今回のプレゼンテーションは日本およびアジアのプレスに向けての内容で、タイトルも絞り込んだものとなったが、各プロデューサーが現在の開発状況を説明する貴重な機会となった。今回取り上げられたのは4タイトル。定番のスポーツゲーム「みんなのGOLF NEXT(仮)」、重力を操る新感覚のアクション「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動(仮称)」、そして期待のアクションアドベンチャー「アンチャーテッド For “PS Vita”」、そして唯一ザードパーティからの発表となった「STREET FIGTER × 鉄拳」の4タイトルだ。前半は日本のプレスのみ、そして後半2タイトルはアジアのプレスに向けても発表された。
ここでは1タイトルずつ気になったところをお伝えしていく。ちなみに会場ではほんの少しだが試遊することもできた。そこで個人的なPS Vitaの感想だが、すでに電池で駆動するPS Vitaであったため、電源コードもなにも付いていない本体を手に持ってのプレイとなったが、第1印象としては非常に「軽い!」と感じた。大きさは若干PSPより大きくなったがその中で感じたのは有機ELの大きなディスプレイだ。美しくコントラストのはっきりした美しい画質は、これまでの携帯ゲーム機とは一線を画すものとなりそうだ。
また、アナログスティックの操作性もなめらかでよかった。ただ、ボタンの配置で言えば、Lボタンの横に配置されている電源ボタンを間違って押さないだろうかという点だけ。それも形状が違うのでそうそう、そういった状況に陥ることはないと思うがけっこう近いため、少し気になってしまった。逆に音に関しては非常にクリアで迫力ある再生音が確認できた。
今回は非常に短い体験プレイであったことと、カメラなどのデバイスは利用できなかったので、本当にさわりの部分だけだったが、ガジェットとしても楽しみなデバイスに仕上がりそうだ。
背面タッチパッドがある背面。色々な使い道が考えられるデバイス | 上面。電源などが用意されている | 下面には端子やヘッドフォン用端子が用意されている |
■ 「みんなのGOLF NEXT(仮)」
プロデューサーの池尻大作氏がプレゼンテーションを行なった |
「みんなのGOLF NEXT(仮)」は言わずと知れた人気ゴルフゲームシリーズの新作。タイトルについてはまだ検討中で仮称となっている。プレゼンテーションを行なった池尻大作氏によれば、オール新作で全てのキャラクター、コースが新しくなると言う。これだけパワーを割いて製作されているが、ナンバリングタイトルではないのだという。しかし、ナンバリングタイトルに近いタイトルで、「そうとう頑張って(池尻氏)」作っているということだ。
基本的な操作は従来シリーズを踏襲しており、これまでのファンでもすんなり入れるようわかりやすくまとまっている。ショットもゲージとアドバンスドショットの2種類が用意されており、戦略的にも重要な要素となるパワーショットにはさらにその上をいくフルパワーショット、そしてさらにパワフルなエクストラパワーショットが新設される予定となっている。操作は変わらずこれまでのシリーズ通り手軽に爽快感を味わえるようになっており、PS Vitaのタッチ系の新インターフェイスをこれまでにない追加要素に割り振っているのだという。
例えばゲームに直結するところだと、何メートルまで飛ぶかを調べる時、従来のボタン操作だけでなく、直接グリーンをタッチすることで距離がわかるなど初心者にとっては直感的にわかるようなっている。このほかにも、グリーンには落ち葉が落ちていたりする。これらを画面の表面を払うようになでてやると、ホウキで掃いたように落ち葉が飛んでいく。
さらに打つ時にティーの位置を変えることができるようになり、キャラクターを左右にスライドさせることができる。表の液晶タッチパネルと背面タッチパネルを使いキャラクターをつまむ(表と裏を同時にタッチする)といった面白い要素も予定されている。パワーアップされたマシンパワーを使い、美しいコースが再現され、森の木々を触ったりすることもできるという。これらのことで、アイテムなどが手に入ることもあるといった進化を見せている。タッチパネルを通してキャラクターとのコミュニケーションを図ることができ、(キャラクターに)元気を与えるといった要素も考えられている
面白い機能としては搭載されたカメラを使い撮影された画像を上手くコースの背景などに使えないかと考えているという。例えば部屋の写真を撮影し、トロフィーなどを飾る部屋の背景にするといった事も可能だという。
オンラインにも対応することが決定しており、ビジュアルロビー、リアル大会、4人でのストロークなどがオンラインでプレイできるようにと企画されている。
池尻氏は「『みんなのGOLF』はハードのローンチか近いタイミングで発売されている」と言い、今回もPS Vitaの発売に近いタイミングでリリースを目指して開発が進められているという。PS Vitaの新機能を多数使っており、Vitaの楽しさを感じられるショーケース的なタイトルになりそうだ。
■ 「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動(仮称)」
外山圭一郎氏 |
これまで「サイレン」などを手がけてきた外山圭一郎氏のディレクションタイトルとなるのが、全く新しいフランチャイズの「GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において、彼女の内宇宙に生じた摂動(仮称)」となる。
基本的にはアクションアドベンチャーで、重力を操り3D空間を駆け巡る大冒険活劇となっている。重力嵐により崩壊寸前の都市「ヘキサヴィル」を舞台に、黒い猫の力により重力を操る力を得た記憶喪失の少女・グラビティ・キテゥンとして冒険を繰り広げることとなる。
Rボタンを押すとキテゥンの力が発動しプレーヤーの周りが無重力になる。この時ジャイロセンサーを使いPS Vitaをあちこちに向け、自分の行きたい方向にセット。自分の真正面が重力のある方向として認識されたところで再度Rボタンを押すとその面に落下していく。この力を使えば壁だろうがなんだろうが、背景として見えるところはどこでも行けるという。ステージの構造としてはオープンフィールドとなる。実際にはこの力を使うパワーが必要になるというが、3D空間の中を好きなように移動することができるようになる。
キテゥンの攻撃方法はキックだが、この重力を操る力をうまく使い、「重力キック」と呼ばれる強力な攻撃を繰り出すことができる。無重力状態で浮き上がり敵のいるところに重力を設定して、敵めがけてキックをすればスピードとパワーにあふれた攻撃を繰り出すことができる。この攻撃は次々に繋げていくことも可能なので、慣れてくるとコンボとして非常に爽快感あふれるアクションを繰り出すことができる。
ステージにはジェムと呼ばれるエネルギーのようなものがあり、これを集め、キテゥンをパワーアップさせることができる。この時、例えばスピードを重視したりいくつかあるパラメータに割り振る形となるので、自分好みに成長させることができる。
ふわっと浮かび上がる瞬間の無重力な気持ちよさ、そこからスピーディに動く爽快感とアクションはこれまでにないもので、PS Vitaの特徴を活かしたアクションとなりそうだ。これでネットワークを使ったマルチプレイができれば面白いが、ルールを設定しバランスを取るのがかなり難しくなり時間がかかるため、今回は1人で楽しむゲームとして作り込みが行なわれる模様だ。
全体的にアートコミックテイストな世界感とビジュアルで、スタイリッシュな雰囲気。外山氏によれば「これまでの携帯ゲーム機では難しかった」表現を実現しているという。非常に楽しみな1作だ。
■ 「アンチャーテッド For “PS Vita”」
安次嶺クリス氏 |
海外では「Uncharted Golden Abyss」とタイトルが発表されているが、基本的には日本では発売されるかどうかも決定しておらず、よってタイトルも未定となっている。とはいえ、CEROレーティングは「C」を予定していると言うことで、日本で発売する意思は高いとみて良いだろう。
PS Vita版の魅力は、「映画をプレイする」というフランチャイズの最大の魅力をそのまま携帯ゲーム機に持ってくることにあると、プレゼンテーションを行なった安次嶺クリス氏は言う。ストーリーは第1作目の「エル・ドラドの秘宝」よりも以前の物語で、ネイサン・ドレイクも20歳ころの駆け出しの冒険者としての成長を描いていく。舞台は中央アメリカ。
モバイルトレジャーハンターとしていつでもどこでも楽しめる仕掛けを多数盛り込む仕掛けだという。また、PS Vitaの特徴の1つであるタッチパネルの使い方については、既存のコントロール方法を置き換えるのではなく、タッチプレイでよりよくすることを目的として使用しているという。例えば崖では、指でなぞったところを自動的に捕まりながら進んでいったりする。
また、プレイステーション 3やGPSとの連動も予定。例えばGPSではロケーション通信でその場に行かないと手に入らないお宝を販売したり交換できるといった仕組みを考えているという。
ジャイロセンサーによるぶら下がり、背面のタッチパネルを使ったロープの上り下り、モーションセンサーによるエイム、指で画面を擦ると浮かび上がる紋章、息を吹きかけると現われる隠されたシンボル……などなど、PS Vitaを使用したアクションが多数用意されている。これらを使用することで、誰もがそれぞれのスキルに応じて冒険を存分に楽しめることができるというのが今作の重要なところだろう。
■ 「STREET FIGHTER × 鉄拳」
相変わらずサービス精神旺盛なカプコンの小野義徳プロデューサー |
最後に登場したのは、唯一のサードパーティとなるカプコンの小野義徳プロデューサー。相変わらずサービス精神の旺盛な小野氏で、今回も色々な新事実がそこかしこに顔を見せた。
SCEAの基調講演において「PS Vita」で「STREET FIGHTER × 鉄拳」を発売することを電撃発表し、さらに実機によるデモも行なってみせて我々を驚かせた小野氏だが、「STREET FIGHTER × 鉄拳」はプレイステーション 3版とほぼ同じ構成で出来上がりつつあるという。同じ体験が可能だと言い、違いは解像度の違いだけだという。
また、「inFAMOUS」からの参戦が決まっているコールが登場するのはPS Vita版からではなく、プレイステーション 3版からだという。また小野氏は「参戦するのはコールだけかと聞かれるが、僕のサービス精神はこんなものじゃないですよ」ということで、他にも参戦キャラクターが登場しそうだ。PS VitaはPS3との親和性は高く連動要素などを通して新しい格闘ゲームの体験をしてもらうべく頑張っているのだという。
ちなみにニンテンドー3DS用「ストリートファイターVI」では任天堂と共同開発を行なうことで3DSのネットワーク機能を拡張してみせたが、今回もSCEと共同でなにか新機能の開発を行なっているようだ。小野氏は「クローズドな環境ではなくPSファミリー全てが繋がっている体験ができる」と語り、「東京ゲームショウ頃にはお見せできると思う。これはぜひ書いてください。そうすればSCEの開発者のプレッシャーにもなると思うので」と続けたためだ。今回のE3ではプレイアブル版は出展されなかったが、その新しい楽しさを提示できなかったためだという。
「STREET FIGHTER × 鉄拳」については「鉄拳」ユーザーのために、4つのボタンで再現できるようになっているという。これに強パンチ、強キックを加えコンボの幅が広がるよう設計されている。「鉄拳」ユーザーにも敷居が高くはないということに気に掛けていたという。また、「ストリートファイター」の楽しみ方は読みあいから技の掛け合いと言うことになるが、「鉄拳」は浮かして技をいかに正確に入力し、たたき込むことだと小野氏は解説。これをマージする形で生まれたシステムがランチアタックだという。また、「ストリートファイター」シリーズではおなじみのキャンセルを組み込んだシステム「キャンセルチェンジ」などがある。ほかにもクロスラッシュといった初心者救済のシステムも用意されている。
小野氏は最後に「格闘ファンのためのギミックが詰まっている」とアピールしプレゼンを終えた。
(2011年 6月 10日)