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イグニッション・エンターテイメント・リミテッド、PS3/Xbox 360「El Shaddai」
注目の話題作が本日発売! 〜ファーストインプレッション〜


発売中(4月28日 発売)

価格:各7,980円

CEROレーティング:B(12歳以上対象)


パッケージアート

 イグニッション・エンターテイメント・リミテッドは、プレイステーション 3/Xbox 360用アクション「El Shaddai ASCENSION OF THE METATRON(エルシャダイ アセンション オブ ザ メタトロン)」を4月28日に発売した。価格は各7,980円で、CEROレーティングはB(12歳以上対象)。今回、弊紙は発売1週間前にイグニッション・エンターテイメント・リミテッド本社にお伺いして、チャプター0〜5まで体験させていただいた。ここでは、そのインプレッション記事をお届けする。

 発売前から、各方面で大きな反響を呼んだ本作。いまさら基本事項に触れるのも気がひけるが、まずは予備知識のない人向けに、本作の世界設定などから簡潔に触れておきたい。「エルシャダイ」は、旧約聖書の偽典とされている「エノク書」をモチーフにしたアクションゲーム。天界、地上界、冥界を舞台に、壮大なストーリーが展開される。ちなみに「エノク書」は、旧約聖書の「ノアの方舟」のきっかけとなる話で、人類を監視していた天使が人間と交わりを持ったことから混乱を招き、天界の牢獄に幽閉される物語などで構成されている。

 ゲームは、チュートリアル的に展開していくチャプター0(ゼロ)からスタート。プレーヤーが操作するのは、人間でありながら天界の書記官を務める「イーノック」。神の命令により、他の守護天使たちとともにイーノックをサポートする大天使「ルシフェル」が作り出した仮想空間で、イーノック(プレーヤー)は自らの使命と目的を知らされる。ざっくり説明すると、地上界の監視を命じられた「グリゴリの天使たち」が、人間に憧憬を抱き“堕天”という禁忌を犯す。キレた天界は洪水で地上界を一掃しようとするが、イーノックは堕天使たちの捕縛を条件に洪水計画を中止するよう嘆願。ひらたくいえば、7人の堕天使たちを捕まえるのがゲームの目的となっている。


【イーノック】
本作の主人公。清く強い心によって、神に選ばれし青年。人間ではあるが、神の意志により天界に召し上げられ、エルダー評議会で書記官を務めている。堕天使の計画している洪水計画を止めるため、調停役として地上に降り立つ
【ルシフェル】
赤い目の天使。天界で1、2を争う大天使。時間を自在に行き来する能力を有している。神の代理として様々な時代に現われ、世界を見聞している。神の命により、他の守護天使と共にイーノックをサポートする。イーノックを気に入っており、常に協力的である

 漆黒で彩られたチャプター0から一転、チャプター1は白銀を思わせる眩い世界が広がっていく。ここで「イーノックの衣装といい、本作のイメージカラーは『白』ということでしょうか?」とかたわらにいたPR・マーケティング部の塩見卓也氏に質問すると、それはちょっと違うとのこと。各ステージは7人の堕天使たちにより作られた各々が思い描く理想郷であり、それぞれ様相がまったく異なるという。筆者がプレイできたのはチャプター5までの限定的なものではあったが、実際やってみるとあまりの違いに驚くと同時に、心の底から湧き上がる興味を抑え切れなくなった。


チャプター0と1は実質的にチュートリアルのような位置づけだが、冒頭から印象的なシーンや台詞回しが多く、グイッと惹きこまれる

 人間への憧憬から、禁忌を犯し天界の目を欺いて作り上げた世界は、その堕天使の心情風景ともいうべきもの。堕天使たちが、何を想い、これらの造形を創りだしたのか。新たな領域に足を踏み入れていくたび、心の奥底にある“想像の翼”から、小さな羽音が響く。導入部の宗教絵画的なシーンもそうだが、各ステージは「常にどこかが変化し、動き続けている。一瞬たりとも“ずっとそのまま”という状況はない(プロデューサーの木村雅人氏)」という演出が施されており、絶え間のない静と動のコントラストが、プレーヤーの視界に心地よい漣(さざなみ)をたて続ける。体験した全ステージにいえることだが、細やかな色使い、BGM、演出の積み重ねが、適度な奥行きや幅となり、作品全体を通して“やんわりと包み込まれるような感覚”をプレーヤーに与えてくれる。初回プレイ時は画面内のインフォメーションを徹底的に排除したというが、その成果は確実に見て感じ取れる。


各チャプターには、禁忌を犯した堕天使たちが天界の目を欺いて作り上げた“それぞれの世界”が登場する。印象的な造形とBGMが織り成す独特の雰囲気がたまらない

【ネフィリム】
堕天使と人間のあいだに生まれた生命で、極度のさみしがり屋。意志はないが、己が存在してはいけないことを自覚している、悲しく寂しい生命たち。物語の核心にかかわる重要なキャラクターだという

 バトルシステムは、ここ数年来の一般的なアクションゲームに比べると使用ボタンの少なさにまず驚かされる。攻撃、ジャンプ、防御、浄化の4つで、その他は特殊移動(ジャンプ+防御)、特殊攻撃(攻撃+防御)、必殺技のオーバーブースト(防御+浄化)といった同時押しがあるくらいだ。

 チャプター3からプレイする体験版では気づかない人も少なくなかったようだが、本作は攻撃ひとつとっても、コンボの途中でボタンを押すタイミングを変えたり、押し続けることでタメを作るなど、さまざまな攻撃バリエーションが編み出せる。このあたりはゲーム中にきちんと説明されるが、取り扱い説明書にも明記されているので、製品版を購入したら最初に目を通しておくことをオススメする。難易度をイージーにすれば連打コンボでもある程度ゲームを進められるが、慣れてきたら攻撃ボタンの入力タイミングや種類を色々と変えてみるといい。「こいつ防御が固くてイラつくわ!」という敵も、攻撃ボタンをワンテンポずらして入力する「防御崩し」を覚えれば難なく倒せるはずだ。

 最初は徒手空拳で戦うイーノックだが、気絶した敵を“浄化”させて武器を奪えば、戦闘力が飛躍的にアップする。武器を奪われた敵は文字どおりパワーダウンして倒しやすくなる。武器は使い込むごとに“穢(けが)れ”て色がくすみ威力も落ちるが、浄化ボタンを押すとリフレッシュされ一定レベルまで威力が戻る。この“戻る”というのがポイントで、塩見氏に「これって完全に元通りになるんですか?」と質問したところ「最初の状態をピークとすると、その半分くらい。威力は敵に攻撃をヒットさせたときのエフェクトの色でも判別がつきます」とのこと。


何も持っていない状態は肉弾戦あるのみ。とはいえ、攻撃力が低いため心許ない。早くなにか武器を……
一定のダメージを受けて気絶した敵は青いエフェクトに包まれる。このとき接近して浄化ボタンを押すと相手の武器を奪える。こちらはパワーアップ、相手はパワーダウンで一石二鳥!

 ゲーム中に登場する武器は「(Arch)アーチ」、「(Gale)ガーレ」、「(Veil)ベイル」の3種類。それぞれ“3すくみ”の関係にあり、アーチはベイルに、ベイルはガーレに、ガーレはアーチにそれぞれ有利。敵はたいてい持っている武器が異なる組み合わせで出現するため、奪う敵の順番を考えて戦うと実に効率よく倒していける。戦闘時以外でも、これらの武器は使い勝手が大きく異なる。アーチはジャンプ後の落下中に滑空できるし、ガーレは空中ダッシュが可能と、それぞれ落とし穴や高低差があるステージで実に頼りになる。ガーレは、絶対的な攻撃力と防御移動で戦闘時に最大性能を発揮するが、ステージ攻略ではあまり役に立たない。


【アーチ】 【ガーレ】 【ベイル】
3種類の武器は、それぞれ使い勝手が異なるほか“3すくみ”の関係にある。敵が所持している武器はたいていワンセットになっており、3すくみを意識してプレイすれば効率よく敵を倒せるようになる

【オーバーブースト】
戦闘を繰り返してポイントをためていく。一定量たまるとイーノックの身体が炎に包まれる。浄化+防御ボタンでオーバーブーストモードに突入。発動中は攻撃力アップ、鎧が回復、特定の技を出すと具現化したウリエルが一緒に戦ってくれるなど、いいことづくめ
【ブーストスキル】
オーバーブースト発動中に1回だけ使える必殺技。3つの武器ごとに異なる技が繰り出される。威力は絶大だが、発動するとゲージ残量に関わらずオーバーブーストが終了し通常状態に戻ってしまう

 最初は「いまどき武器アイテムが3種類は少なくないか?」と思ったが、前述のポイントを踏まえて断続的にプレイを重ねていくと、自分なりの戦略やテンポが構築できて、どんどん楽しくなってくる。こうした要素は複雑化させるのも手だが、アクションゲームとしての本質を突き詰めていくならば、必要最低限が望ましいともいえる。攻撃バリエーションに関しては、前述の入力タイミングによる変化でさまざまな奥行きが与えられる。やりこみ派の人は、その奥行きも含めて徹底的に詰めていくもよし。そこまでするのが面倒な人は、3すくみや得意の武器でゴリ押しするもよし。このあたりは、遊ぶ側の我々プレーヤーの感性や嗜好次第といったところか。


同時に出現する敵の数は決して多くないが、そのぶん考え抜かれたシビアな攻めを仕掛けてくる。ボタン連打で何も考えずプレイしていると、難易度イージーでも中盤にたどり着く前に限界がくる。能動的にプレイする人ほど楽しめる作りなのだ



■ 作り手の強靭な意志を感じさせる珠玉のアクション 〜10年に1本あるかないかの稀有な作品〜

 本作は、某掲示板コミュニティに端を発し、一段落した頃に動画サイトにネタが伝播し人気が大爆発。東京ゲームショウ2010では、某著名クリエイターとインタビューの合間に「今回、なんのゲームに注目してます?」と質問したところ「エルシャダイ(ニヤリ)」と即答されるほど、さまざまな方面から関心が寄せられていた。

 筆者は東京ゲームショウ2010で担当ブースが異なったこともあり、4月14日の体験版配信まで現物をプレイできずにいた。「見た目や動きはもちろん、雰囲気やレベルデザインも凄くいい。あとは実際の“手触り”だけなんだけどなぁ。どんなもんだろうか」とモヤモヤする日々。ただ、その一方で「ネタゲーとして正式発売前に消尽されてしまわないだろうか」という心配もあった。だが、そんな杞憂は4月14日の時点で完全に吹き飛び、体験プレイにおうかがいした4月22日の時点で確信に変わった。

 確信とは、なにか。それは、本作が古典的なアクションゲームに備わる“魂”を持った作品ということだ。ここで「えっ、『エルシャダイ』って色々なところで『誰も見たことがない』って書かれてるのに、古典的っておかしくないか?」と言われそうだが、初老ゲーマーの筆者は、ゲームが産業となり開発も分業がデフォルトになった現在、ほぼ完全に失われた……作り手側の“強靭な意志”を、画面、音、コントローラーを通して実感する。1970〜1980年代、身体の芯に刻み込まれたビデオゲームのインタラクティブな楽しさ。原始衝動に等しい感性に訴えかける、電子が織り成す独特のサジェスチョン。それが、なんのてらいもなく剥き出しのままプレーヤーに手渡される。現代的な工程を経ているにも関わらず、だ。これが驚かずにいられるだろうか。

 これは初老ゲーマーの戯言みたいなものだが……黎明期や過渡期ということもあり、1970〜1980年代、特にアーケード作品の多くは少人数により制作されるのが常だった。当然クオリティには大きなバラつきがあったが、ゆえに個性的な作品も数多く見受けられた。人間が遊ぶものである以上、その感性に訴えかける要素は大きく変わらない。だが、制作工程の変化は、かつて許容されていた開発者の“意志の反映”を、どんどんスポイルしていった。味覚のように「これちょっと甘すぎない?」、「いや、もっと辛いほうがいいよ」など、さまざまな人の意見が集約され、その影響を受けていく。プログラム、グラフィックス、音楽、レベルデザイン、パブリシティなどなど、すべてをひとりでこなせるなら、話は別だが、今時インディーズゲームでもチームを組んで制作するケースは珍しくなく、ましてや本作のような大規模な資本投下がなされた商業作品が、たったひとりで作れるわけもない。

 最大公約数的に受け入れられるゲーム。もし本作がそれを目指して作られていたなら、落とし穴があちこちにあるジャンプ主体のアクションとレベルデザインは、まったく違うものになっていたのではないだろうか。もしかしたら、落ちた直後にすぐ手前からリスタートする現状のシステムにも、もの凄い逡巡や葛藤があったのかもしれない。すべてお膳立てされ、スプーンで口元に食事を運ばれることに馴れきったプレーヤー層は、これでも文句を言うかもしれない……と。極限までインフォメーションを廃した画面構成に、古典アクションに通じるレベルデザイン、表層をなぞるだけで手を伸ばすことすら面倒くさがる人たちに一切媚びないバトルシステム。演出ひとつとっても、他社ではなかなか見られないような内容が、目白押しだ。

 チャプター5までという限定ではあるが、筆者が抱いた感想は「これだけの商業規模で、ここまでブレのない純然たる新作ジャンプアクションは稀有。もしかしたら、今後10年以上は出てこないかもしれない」というもの。イグニッション・エンターテイメント・リミテッドは、大手ではないかもしれない。だが、ゲーム制作に関わる人数は平均以上だったであろうと推察される。ディレクターの竹安佐和記氏が脳内に描くビジョンを、開発チームの面々がどれだけ共有できるか。これは、竹安氏に対する信用、信頼と置き換えることもできる。長期間に及ぶ両者のプレッシャーとストレスは察するに余りあり、ちょっと安易には言葉が出てこない。実際、体験プレイを終えて部屋を出る際も、どう伝えればいいか何度も言葉に詰まってしまったほどだ。

 繰り返しになって恐縮だが、筆者は本作をプレイしていて、ついつい過去の名作アクションを思い出してしまう。たぶん、それらはディレクターの竹安氏もプレイ経験のない古いタイトルが大半だろう。だが、かつて己の感性を武器に、ユーザーの五感に訴えかけるゲームを作っていた人たちの意志や情念。その結晶ともいうべき成果物に通じる、匂い、味わい、そして手触りみたいなものを「エルシャダイ」から感じる。偉そうに言わせていただくなら、尖っていつつも、その実しっかりとアクションの王道を貫く……筆者の目には、そんな小気味のいい胸のすく作品として映るのだ。


本作が単なるエゴではなく、徹頭徹尾“ベスト”が追求された作品であることを示す一例。ステージアクション中に落下すると、指スナップの音とともに一瞬で落下直前の状態に戻る。これはルシフェルの特殊能力で、彼が時間を巻き戻してくれるという設定。ただし、落ちるたびにわずかながら鎧がダメージを受ける。ジャンプアクションとしてテンポを殺がないよう、さりとてプレイが雑にならないよう最大限配慮されている

すべての鎧がはがされ戦闘に負けると、瞳が閉じられる演出が挿入される。このとき特定のボタンを連打すると、鎧が一定量かいふくした状態で復帰できる。ただし、復帰するたびに次の復活に必要な連打回数が増える

(c) Ignition Entertainment Ltd. All Rights Reserved.

(2011年 4月 28日)

[Reported by 豊臣孝和]