東京ゲームショウ2010レポート
Ignition Entertaimentブースは新作「El Shaddai」を大量展示
竹安佐和記氏率いる国内スタジオのデビュー作は簡単操作でスタイリッシュな3Dアクション!
Ignition Entertainmentブース |
東京ゲームショウ 2010会場の4ホールにIgnition Entertainmentが大きなブースを構え、2011年春に発売予定の3Dアクション「El Shaddai」の試遊台を大量に展示中だ。Ignition Entertainmentは、本社を英国に置く海外系のゲームパブリッシャー。しかしその新作となる「El Shaddai」は、海外ゲームではない。日本に設立されたIgnition Entertainment Japanの国内スタジオで開発が行なわれている全世界に向けた純国産のアクションゲームなのだ。本稿ではIgnition Entertainmentの目玉タイトルであるこの「El Shaddai」について詳しくお伝えしたい。
■ Ignition Entertainment国内スタジオデビュー作「El Shaddai」
ブース内には数十台の試遊台が設置されている |
「ベイル」を装備する主人公イーノック |
会場でプレイできる白銀の世界 |
3Dシーンをクリアすると突然2Dアクションのステージとなる |
Ignitionのブース全体を使って展示されている新作「El Shaddai: Ascension of the Metatron」(エルシャダイ ~アセンション オブ ザ メタトロン~)」は、2011年にプレイステーション 3/Xbox 360向けに発売予定の3Dアクションゲームだ。ブース内には数十台の試遊台が設置されており、ゲーム開始から15分間ほどのシーケンスがプレイできる。
「El Shaddai」の舞台は、人類の文明が成立するよりもはるか昔の世界。旧約聖書に描かれた「方舟伝説」を元としたシナリオをベースとし、人間に憧れて堕天という罪を犯したグリゴリの天使たちと、その捕縛のために天界から遣わされた主人公イーノックの戦いが主題となっている。
ゲームシステムとしては、攻撃、防御、ジャンプを組み合わせて敵を倒していくスタイリッシュなアクションが基本だ。基本的に戦闘で使用するコマンドはたったの3つで、ボタンを連打しているだけでも様々なコンボ攻撃が飛び出してくれる。押すボタンの組み合わせや、タイミングによって、非常に変化のあるバトルが楽しめるようになっている。印象としてはカプコンの「デビル・メイ・クライ」シリーズに近い。
ちなみにブースでプレイ可能なバージョンはゲーム序盤のものということもありそうだが、登場する敵の数はそう多くなく、1体の敵との戦いに多くの時間をかける内容となっている。敵はこちらの攻撃をしっかり防御してカウンターを狙ってくることもあり、攻撃ボタンをタイミング押すことで発動する「ガード崩し」のような技を適宜おりまぜて戦いを組み立てるような形だ。
敵の武器を奪って自分のものにするということも本作の特徴。ゲーム開始時の主人公は武器を持っていないが、ダウンした敵から武器を得ることでパワーアップすることができる。現在のところ登場武器は弓のような形をした「アーチ」と、盾のような形をした「ベイル」の2種類が公開されている。使用する武器によっても攻撃の組み立てが異なるようになる仕組みで、ボタン3つだけという簡単操作ながら多彩なアクションを実現している点が面白いところだ。
それに輪をかけて本作でユニークなのは、3Dアクションのシーンをクリアしたかと思うと、今度はサイドビュー形式の2Dのアクションシーンが始まること。2Dシーンは「穴から落ちたら終わり」というプラットフォームアクションになっており、3Dアクションのシーンとは全く違った遊びが提供される。2Dシーンで見られる壁一面に巨大なステンドグラス、という演出は、本作の神秘的な世界観を強調してくれる。
3Dアクションシーンでボス戦をクリアして、2Dアクションシーンで足を踏み外すことなくゴールに辿りつけたら、ブース内でプレイできる内容は終了。主人公の案内人である天使ルシフェルがジーンズに黒シャツという現代的な風貌で現れて、本作の独特の世界観を教えてくれる。筆者は今回はじめて本作をプレイしたが、独自路線のアクションゲームとしてカッチリまとまっている印象を受けた。
そして本作のアクション全体に漂う独特のテイスト。それは本作の開発を担当する主要スタッフの経歴に由来しているかもしれない。本作のプロデューサーを務める木村雅人氏と、ディレクターを務める竹安佐和記氏は、かつてカプコンでゲーム開発に携わっていたというバックグラウンドを持つのだ。
いよいよ本作への興味が増した筆者は、会場内にてディレクターの竹安氏にインタビューを行なった。竹安氏はディレクター兼キャラクターデザイナーとして本作の方向性に深い影響を与えている。
【El Shaddai】 | |
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独特のアートスタイルで表現されたグラフィックスと、簡単操作で楽しめるスタイリッシュアクション。新約聖書をベースとする世界観を構成しており、敵や味方として様々な天使、堕天使たちが登場する |
■ 「決してユーザーを退屈させないゲームを」。 竹安佐和記氏インタビュー
「El Shaddai」ディレクター、竹安佐和記氏 |
本作のアクションに用いるボタンは全部で3種類。そのタイミングや組み合わせにより多様な動きが飛び出す |
「El Shaddai」のディレクターを務める竹安佐和記氏は、カプコンで「デビル・メイ・クライ」シリーズ、「鉄騎」のキャラクターやメカのアートデザインを手がけ、クローバースタジオにて「大神」の妖怪デザインを担当後、独立。株式会社crimを設立し、代表取締役として数々のゲーム開発に携わっている。
「El Shaddai」に関わることとなったきっかけは2007年頃にさかのぼる。当時SCEの「God of War」が話題を呼んでいた時期で、英国のIgnition Entertaiment本社から「旧約聖書をテーマとするゲームを制作して欲しい」という打診があったという。
かねてより神話を題材としたゲームアイディアをいくつも温めていた竹安氏はその打診を受け、現在本作のプロデューサーを務める木村雅人氏を誘ってプロジェクトを立ち上げた。そういった裏付けもあり、世界設定、キャラクター作りといったゲーム企画そのものもスムーズに進行したようだ。
開発体制はかなり大規模だ。現在、Ignition Entertainmentの新宿開発スタジオには80名ほどのスタッフがおり、外部スタッフを含めると全体で120名ほどの体制で「El Shaddai」の制作に携わっているという。そして竹安氏が本作の開発にあたって重視したのは、「誰でも簡単にプレイできること」、そして「決してユーザーを退屈させない」ということ。
そのために「El Shaddai」では、基本となる3Dアクションシーンだけでなく、合間合間に2Dのプラットフォームアクションシーンが挿入されるようになっている。変わり続ける画面。それぞれのシーンでゲームの見せ方、遊び方も大きく異なっており、メリハリのある「退屈しないゲーム展開」が提供されるというわけだ。クリアまで10数時間というボリュームのアクションゲームを実現するにあたって重要なポイントである。
「現在のゲーム市場はコアとライトの2極化が進んでいます。私たちはその中間にターゲットし、両方のユーザーが遊べるものを目指しました」と語る竹安氏は、本作のアクションについても言及した。たった3つのボタンでいかに多くのアクションを実現するか。そのために本作ではボタンを押す状況、タイミング、同時押しといった形でアクションのバリエーションを豊かなものにしている。そういった点を含め、本作のバトルは「格闘ゲーム的なテイストもある」と竹安氏。
しかし竹安氏は、特に同時押しを要求するアクションについてはまだ改良の余地があるかもしれないと感じている。今回、TGS2010の会場にたくさんの試遊台を設置したのは、そういった操作面に対するユーザーからのフィードバックを得るためでもあるそうだ。ブース内では試遊したユーザーにアンケートを行なっており、協力してくれた方には「El Shaddai」特製タトゥーシールをプレゼントしているということなので、みなさんもぜひいちどプレイして、開発へのフィードバックを行なってみてほしい。
海外ゲームパブリッシャーによる日本発の新IP「El Shaddai」。Ignition Entertainmentの国内スタジオデビュー作としてワールドワイド展開を狙い、相当気合の入った作品になることは間違いない。TGS2010でのユーザーフィードバックを受けて、完成形がどのようなものになるか楽しみだ。
【スクリーンショット】 | |
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【BLACKLIGHT TANGO DOWN】 | |
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近未来の米国を舞台にした、独自のCoopや多彩なマルチプレイモードを搭載するFPS。PlayStation NetoworkおよびXbox LIVE Arcadeにて、オンライン配信予定。Xbox 360版は9月22日リリースで1,200マイクロソフトポイント。PS3版は年内配信予定で価格は未定 |
【swarm(スウォーム)】 | |
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命知らずの謎の生物“スウォーマイト”の群れを操作してミッションクリアを目指す特攻バトルアクションゲーム。PlayStation NetworkおよびXbox LIVE Arcadeで2011年春に発売予定 |
(c) Ignition Entertainment Ltd. All rights reserved.
□東京ゲームショウ2010のホームページ
http://tgs.cesa.or.jp/
□Ignition Entertainmentのホームページ
http://www.utvignition.com/jp/
(2010年 9月 18日)