DeNA、「モバゲーオープンプラットフォームForum2010」を開催
PC向けソーシャルゲームポータル「Yahoo!モバゲー」は10月スタート!


6月4日 開催

品川インターシティ インターシティホール


会場は入りきれないほどの混雑で、大量の立ち見が出た

 「モバゲータウン」を運営している株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)は、品川インターシティにて、ソーシャルゲームデベロッパーを対象にしたプライベートフォーラム「モバゲーオープンプラットフォームForum2010」を開催した。

 DeNAの代表取締役社長兼CEOの南場智子氏や、ヤフー株式会社の代表取締役社長井上雅博氏らが登壇し、ヤフーとDeNAが提携して展開するPC向けのソーシャルゲーム専門新プラットフォーム「Yahoo!モバゲー」の概要や、DeNAの今後の事業展開などを紹介した。会場には、多くのデベロッパーが参加し、会場の両脇にずらりと立ち見が出るほどの盛況だった。




■ デバイスと国境を越えてソーシャルゲームはシームレスの時代に

冒頭に事業展開を語った、DeNA代表取締役社長兼CEOの南場智子氏
DeNAの事業展開のキーワード

 「オープン化して4カ月、ユーザーさんはオープン化の前よりもハッピーになった」とDeNA代表取締役社長兼CEOの南場智子氏は笑顔で報告した。これまで携帯ゲームのポータルサイト「モバゲータウン」を中心に事業を拡大してきたDeNAは、2010年に「モバゲーAPI」をオープン化してソーシャルゲームへ舵を切った。フォーラムの冒頭、南場氏は、オープン化の結果が予想以上だと語った。

 オープン化以来、「モバコイン」というモバゲータウンのゲームマネーは急激な伸びで拡大しており、月の売り上げが1億円を超える企業が複数現われている。今回のフォーラムでは、さらなる展開として「X-device(クロスデバイス)」、「X-border(クロスボーダー)」という2つの戦略が提示された。「携帯を超える」と南場氏が言うこのキーワードは、携帯、スマートフォン、PC、タブレットなど、複数のデバイスでユーザが楽しめるようなゲームのシームレス化を目指すというもの。IDを共有したり、APIやライブラリを整備していくことで、多言語にも対応した世界規模の市場に日本のポジションを築いていくという壮大な構想だ。

 日本において戦略の目玉となるのは、今年の4月に発表された「Yahoo!モバゲー」だ。「これまで日本でだけ、なぜPC向けのソーシャルゲームが携帯向けほど拡大していないのか? それはヤフーとモバゲーが組んでいなかったからです」と南場氏は語る。

 世界市場では5月にiPhone/iPad向けのゲームポータルサイト「Mini Nation」をスタートして、日本で人気の携帯向けソーシャルゲーム「怪盗ロワイヤル」の海外版「Bandit Nation」などをサービスしている。他にも3Dアバターなど、モバゲーで人気のある要素をiPhone向けに最適化して提供している。日本でPCの市場形成を目指すのとは逆に、世界では、英語圏のスマートフォンや中国の携帯市場など、これから拡大が予想されるなモバイル市場へ勝負を挑んでいく。

「この30年以内に0から生まれて、世界でしっかりとしたグローバルリーダーシップを発揮している日本の会社を思い浮かべようとしても、すぐには思いつきません。事業家として、1つの大きな成功事例を作りたいと思っています。若い企業が力を合わせて、本当のグローバルリーダーシップを発揮していくことが、日本の勇気になるのではないかと思っています」と南場氏はこの事業に込めた夢とともに、話を締めくくった。


オープン化後、ゲームマネーの需要が急激に伸びた1つのゲームを多プラットフォームに展開できるようなフォーマットの整備多言語開発をサポートして、海外へも積極的に進出
PC向けソーシャルゲームポータルとなる「Yahoo!モバゲー」海外でiPhone/iPad向けに展開中の「Mini Nation」クロスデバイス、クロスボーダーの概念図




■ 「Yahoo!モバゲー」と「モバゲータウン」が連動した形で遊べるゲームを提供

ヤフー株式会社代表取締役社長の井上雅博氏
ヤフーはマーケティング面からのサポートを積極的に行なう

 「Yahoo!モバゲーは略すとヤバゲーになるため、ずっと(仮)がついていましたが、もう諦めました。この名前で皆さんに親しんでいただきたい(笑)」と語ったのは、ヤフー株式会社代表取締役社長の井上雅博氏。井上氏は、「Yahoo!モバゲー」でソーシャルゲームに参入する意気込みと意義をヤフーの側から説明した。

 現在、世界のソーシャルゲーム市場は4,000億円ほどに成長しており、今後も高い成長が見込まれている。だが、そのなかでモバイルの占めるシェアは、アメリカでは8%、イギリスでは12%にすぎない。中国でも1億人いるというソーシャルゲームユーザーの大半はPCのユーザーが占めている。しかし日本では、ソーシャルゲームはイコール携帯ゲームというほどにモバイルが主流だ。

 井上氏は、日本にも潜在的にはPCのソーシャルゲーム市場があるのではないかと言う。携帯のソーシャルゲームは10代から20代の若者がメインユーザーだが、海外ではソーシャルゲームのユーザーは30代から40代と少し年齢層が高い。年齢層が高いと、それだけ1人当たりが使う金額は大きくなるので、日本でもPCのソーシャルゲームのプラットフォームが作れたら、マーケットとして期待が持てるのではないかというのが、今回ヤフーが提携を進めた理由だ。ヤフーとしては、日本におけるPC向けソーシャルゲームの中核を担うプラットフォームになりたいという野望もある。


海外のソーシャルゲーム市場は右肩上がりの伸びを見せているアメリカ、イギリスのソーシャルゲームはほとんどがPCでプレイされている中国も独自の形でソーシャルゲームユーザーが増加している

ヤフーのコンシューマ事業統括本部長、宮坂学氏
DeNA取締役ソーシャルメディア事業本部長兼COOの守安功氏

 「Yahoo!モバゲー」の具体的なプランについては、ヤフーのコンシューマ事業統括本部長、宮坂学氏とDeNA取締役ソーシャルメディア事業本部長兼COOの守安功氏が説明した。「Yahoo!モバゲー」は、「Yahoo! JAPAN ID」で利用できるサービスで、「モバゲータウン」の携帯認証とひもづけることで相互にサービスを行き来させることができる。例えばモバゲータウンで購入した「モバコイン」をPCでも利用したり、モバゲーのアバターを使ったゲームをPCで遊べるようになる。

 サービスが始まると、「Yahoo! JAPAN」のTOPページや「Yahoo!メール」、「Yahoo!メッセンジャー」、「Yahoo!ゲーム」にソーシャルゲームのアクティビティやフィードが表示されるようになる。また、ローンチ時期に合わせて、TVCMも含めた総額10億円規模のプロモーションを行なう予定だ。

 DeNAの守安氏は「ソーシャルゲーム市場の成長は予想以上」と言う。1年前にオープン化を決めた頃には、3年程度で1,000億円規模の市場になるだろうと想定していた。しかし、その目標は2010年度中には越えていきそうだ、と守安氏。「スマートフォンやPCのユーザーをきっちりと取りこめていけば、普通に見積もって2,000億円、うまくいけば3,000億円というマーケットができるのではないか」と予想している。2009年度の、家庭用ゲームのソフトウェアのみの市場が約3,200億円なので、「2、3年後には家庭用ゲームとソーシャルゲームの市場規模が同じくらいになっているのではないか」と語った。

 だた、ソーシャルゲーム市場を拡大してくためには、その地盤となるコミュニティの成長が重要だ。「単純にトラフィックをぶつければ成長できるという簡単なものではなく、いかにユーザーのニーズにあったコミュニティを提供できるかが重要」と守安氏。そのためには、すでに出来上がっている「モバゲータウン」のコミュニティと、「Yahoo!モバゲー」のコミュニティを連動したゲームを提供して欲しい、と参加したデベロッパーに訴えた。モバゲーの3Dアバターを使った、PC向けのソーシャルゲームもすでに複数のタイトルが開発をスタートさせているらしい。


【Yahoo! JAPANの「Yahoo!モバゲー」へのプロモーション計画】
ヤフーが行なうプロモーションの模式図トップページに友達からのアクティビティや、デベロッパーのフィードを掲載「Yahoo!ゲーム」のトップページの展開予定
「Yahoo!ゲーム」のプレイ画面にも広告を掲載する「Yahoo!メール」に友達の情報をフィードする「Yahoo!メッセンジャー」に、友達が遊んでいるゲームの情報を掲載
インセンティブの入る友達紹介プログラムローンチ時には「Yahoo! JAPAN」のトップページで大規模プロモーションを展開TVCMを使ってメディアミックス戦略をとる

【「Yahoo!モバゲー」のサービス概要】
「Yahoo!モバゲー」の全体図「Yahoo!モバゲー」のTOP画面イメージ「Yahoo!モバゲー」のゲーム画面イメージ
ソーシャルゲームならではの誘導プラン「モバゲータウン」とのIDの関連性デベロッパーに向けたマネタイズのサポート
「モバゲータウン」の3DアバターをPCでもサポートAPIの公開予定、その1APIの公開予定、その2
ユーザーが入力する掲示板やチャットのテキストの扱いについて2つのプラットフォームが連係して1つのゲームをサポートデベロッパーに向けた「こんなゲームが欲しい」というメッセージ



■ 「Yahoo!モバゲー」のグランドオープンは10月1日を予定!

DeNAのソーシャルメディア事業本部プラットフォーム統括部統括部長の大塚剛司氏
ベクターのモバイルゲーム部部長の尾崎雄一氏
「Yahoo!モバゲー」のサービススケジュール

 モバゲーのオープンプラットフォームの今後の展開については、DeNAのソーシャルメディア事業本部プラットフォーム統括部統括部長の大塚剛司氏が3つの取り組みについて説明した。

 1つ目の取り組みとして、ゲームの開発や運営の指標となるデータの分析ツールを提供する。また、エンジニアをサポートするため、各種言語の開発用ライブラリを提供したり、ゲームのAPIを公開していく。さらにデベロッパー向けに勉強会を開催するなどして、DeNAが積み重ねてきたノウハウをシェアしていく。

 またデベロッパー代表として、株式会社ベクターのモバイルゲーム部部長の尾崎雄一氏が登壇し、ベクターのモバイルゲーム事業への取り組みを説明した。ベクターは2009年4月にブラウザゲーム、8月に携帯向けゲームの事業を開始した。参入のタイミングとしてはかなり後発だが、現在は利益の半分をゲーム事業が占めるほどに成長している。この6月には2本の新作携帯ゲームを発表予定、秋にはiPhoneとAndroid向けのゲームも発表する予定だ。「Yahoo!モバゲー」にも携帯の人気恋愛ゲーム「恋する私の王子様」やシミュレーションゲームなど3本程度をローンチする。

 携帯ゲームを着火点に、いよいよ本格的に動き始めてきた日本のソーシャルゲーム市場。「Yahoo!モバゲーというソーシャルゲームに特化したプラットフォームが登場することで、日本にPCの大きな市場ができ上がっていくでしょう」と守安氏。「モバゲータウン」のオープン化時には、トラフィックを考えて段階的にデベロッパーを増やしていくという措置が取られたが、「Yahoo!モバゲー」では数の制限は行なわず、すべてのデベロッパーが同時にゲームのサービスを開始できる。

 サービススケジュールは、7月22日ごろに開発用のサンドボックスを開放、9月21日ごろにβ版をリリース、10月1日ごろグランドオープンの予定だ。


【モバゲーのオープンプラットフォームの現状と今後】
パートナー数、ゲームタイトル共に伸びているモバコインの1日当たりの消費量オープン化から現在までの取り組み
「モバゲータウン」の人気タイトルを並べて紹介目指すは月商1億円6月3日から分析のための詳細なデータの提供をスタートした
開発のためのライブラリやAPIをサポートしていく初夏には、マネタイズのための勉強会を開催予定2つのキーワードに沿って、事業を展開していく

【ベクターのゲーム事業の紹介】
ゲーム事業開始からの流れと、ローンチタイトルモバイルゲームのローンチ後、収益が急増「Yahoo!モバゲー」にも3タイトルを提供する予定だ


(2010年 6月 4日)

[Reported by 石井聡]