東京ゲームショウ2010レポート

Razerブースレポート&AP担当VP Sanjeev Gupta氏インタビュー
最新製品の展示やプロチームのエキシビジョンを開催


9月16日~19日 開催(16日、17日はビジネスデイ)

会場:幕張メッセ

入場料:1,000円(一般/前売り)、1,200円(一般/当日)、小学生以下は入場無料


 ゲーミングデバイスメーカーのRazerは、TGS 2010の会場に小規模のブースを出展し、近く発売予定の最新キーボードやXbox 360用ゲームコントローラーを始めとする最新製品を展示した。このほかブース内ではWeMade Onlineの最新オンラインFPS「Quake Wars Online」の試遊台を設置。会期3日目の9月18日には韓国のプロゲーマーチーム「WeMade FOX」が来場して、国内強豪チーム「Vae Victis」とのエキシビジョンマッチを行なうなど、PCゲーマーのためのブースとして様々な展示を行なっていた。

 本稿では、展示が行なわれたRazerの最新製品の情報や、TGS 2010の開催に合わせて来日したRazerのアジア・パシフィック地域バイスプレジテント Sanjeev Gupta氏へのインタビューなどを交えてRazerブースの模様をお届けする。




■ Razerがついにコンシューマー機市場へ参入。「Starcraft II」仕様のスペシャルキーボードも

Razerブース
メカニカルキーボード「Razer BlackWidow」
Xbox 360コントローラー「Razer Onza」
「Starcraft II」仕様キーボード、マウス、ヘッドセット

 Razerブースは決して大きくはないスペースながら、10台の試遊用PCを設置してRazerの各種デバイスを装備した環境をデモンストレーションしていた。今回展示されていた最新製品は、ゲーミングキーボード「Razer BlackWidow」、Xbox 360用コントローラー「Razer Onza」、そして「Starcraft II」のスペシャル仕様キーボードとヘッドセットの4種類。このうち「BlackWidow」と「Onza」は試遊台で実際に触れることができた。

 まずゲーミングキーボード「Razer BlackWidow」。日本では10月29日に発売が予定されており、Razerとしては初のメカニカルスイッチを採用したフルサイズのキーボードとなっているのが特徴だ。全てのキートップにはLEDが装備されておりRazerらしく光る仕様に目が行きがちだが、「BlackWidow」の最大の特徴は、各キーにチェリー青軸(チェリー製MXスイッチ青軸)を採用していることだ。

 これにより本製品のキータッチはシャキッとした上品なメカニカル感が得られるようになっており、実際に触ってみた感触としては、往年の名機として知られるIBMの「5576-A01」に近いものを感じられる。つまり、タイピング用途の高級キーボードに劣らぬ感触を実現しているのだ。違う点があるとすれば、キー押下後の「戻り」が非常に鋭いこと。スプリングに工夫を凝らすことにより、さらなる高速打鍵を実現する仕様のようである。これはゲーマーのみならず、良いキーボードを求める多くのPCゲーマーにフィットする製品になりそうだ。

 もうひとつの試遊が可能だった製品はPC/Xbox 360用ゲームコントローラー「Razer Onza」。こちらはまだ発売日が公表されていないものの、スタッフによれば非常に期待している製品とのことで、国内でも発売したい意向であるようだ。米国などではXbox 360用ゲームのプロフェッショナルな大会も多く、「Razer Onza」はそういった競技志向のゲーマーのためにデザインされた製品だ。その「Onza」の機能的な特徴は、任意のボタン機能を割り当て可能な追加ボタンを装備していることと、各アナログスティックのばねテンションを調整する機構を備えることだ。

 追加ボタンはRB付近に3つめのショルダーボタンとして装備されている。背面にある機能割り当て開始のスイッチを入れつつ任意の通常ボタンを押すと、その追加ボタンに機能が割り当てられる仕組みだ。例えばFPS系のゲームで、ダッシュが左スティックの押し込みとなっているタイトルが多いが、これを追加ボタンに割り当てれば、操作性の向上が期待できる。テンション調整機構はダイヤル式の装置としてスティック下部に張り付いており、中間くらいでオリジナルのXbox 360コントローラーと同じ程度のテンション。これを非常にゆるい状態や、非常にきつい状態まで自由にカスタムできる。

 このほかRazerブースにはBlizzard Entertainmentの最新タイトル「Starcraft II」向けの特別仕様キーボードとヘッドセットが展示されていた。キーボードレイアウトとしては、特殊キーまわりを切り詰めた省スペース型になっており、キーボード全体に配置されたLEDがゲーム内の状況に応じて色を変え、点滅するという機能が追加されている。こちらの製品は国内発売のスケジュールはまだ未定ということだが、スタッフは「必ず発売したい」と語っていた。


「Razer Onza」。LBの上にカスタム可能な追加ボタンがある。また各アナログスティックにはテンション調整用のダイヤルを装備
10台の試遊台では「Quake Wars Online」の試遊が可能だった




■ 韓国プロゲーマーチーム「WeMade FOX」 VS 国内最強チーム「Vae Victis」

エキシビジョンマッチには沢山の観戦者が訪れた
「CS 1.6」で対決する日韓両国の代表チーム
勝者インタビューに答える「WeMade FOX」のリーダー、Solo選手。「練習してまたいつかやりましょう」と相手をねぎらった

 会期3日目にはRazerブースに韓国のプロゲーマーチーム「WeMade FOX」が登場し、国内最強といわれるチーム「Vae Victis」とのエキシビジョンマッチが行なわれた。使用ゲームは両チームの専門である「Counter-Strike 1.6」。15ラウンドハーフ、前後半30ラウンドのマッチを2回行なうというルールで両チームが対決。ブースには多くの観戦者が訪れて足の踏み場もない状況を呈した。

 「WeMade FOX」は、韓国の大手オンラインゲームパブリッシャーWeMade Online傘下のプロゲーマーチームだ。2009年アジア室内競技大会「Counter-Strike」部門ゴールドメダル、「Counter-Strike Online」東アジア大会優勝などの実績を誇っており、その実力はまさにワールドクラス。対する「Vae Victis」は、かつて国内で無敵の強さを誇ったチーム「4dN」のメンバーが中心となって結成された国内のアマチュアチーム。アジア最強VS日本最強という構図でエキシビジョンマッチが行なわれたというわけだ。

 第1試合は定番のマップ「de_dust2」。「Vae Victis」はカウンターテロリストチーム(CT、防衛側)、対する「WeMade FOX」はテロリストチーム(T、攻撃側)でゲームをスタート。装備がハンドガンのみとなるファーストラウンドでは「Vae Victis」が勝利し、続くラウンドでも勝利するかと思われたが、その後連続でラウンドを勝利したのは「WeMade FOX」。チーム連携、個人の射撃能力ともに上回っており、装備に差があってもものともしない強さがあった。

 13対2というスコアで攻守交替して折り返した後半では「WeMade FOX」のメンバーに余裕が生まれ、わざと味方を打つなど明らかに手を抜いていると思われる動きも見えた。その隙を突いて「Vae Victis」が数ラウンドを連続勝利したものの、力及ばず。第1戦は総合スコア16対9で「WeMade FOX」の圧勝となった。

 「de_inferno」マップで行なわれた第2戦も「WeMade FOX」が強さを見せた。特にチームリーダーであるSolo選手は、壁抜き射撃を多用して牽制しつつ、残り弾数10発という状況で2人以上を倒すなど大活躍。とにかく距離を問わず、照準のスピードと精度が高く、ほとんどの撃ち合いで一方的に勝利していた。こうした力の差があるためか、第1戦と同じく余裕のプレイが多くなる「WeMade FOX」。「Vae Victis」は後半で巻き返しを図ったが、総合スコア16対11という僅差で「WeMade FOX」が勝利した。

 やはり職業として日々訓練を続けているプロゲーマーチームの強さというのは、簡単に打ち破ることができないものか。おそらく「WeMade FOX」が徹底的に本気のプレイを見せていれば、より多くの差がついたことだろう。余裕のあるプレイは相手に華を持たせるためという見え方もしたが、むしろ、「Vae Victis」のメンバーが本気で挑んだのにもかかわらず敢え無く負けてしまった、という結果がより重く感じられるようなエキシビジョンだった。いずれ世界の舞台でリベンジを果たして欲しいものだ。

序盤は公式のクラン戦さながらに緊迫した戦いが続いたが、第1試合の前半を終えて勝利を確信した「WeMade FOX」側は、だんだんとプレイに余裕が見られるようになった
日本代表として臨んだ「Vae Victis」だが、後半巻き返しを図ったものの前半でついた差を埋めることはできず敗北を喫した。多くの来場者から応援を受けていただけに、いつか雪辱を期したいと考えたかもしれない




■ Razer、アジア・パシフィック地域担当バイスプレジデント Sanjeev Gupta氏インタビュー

インタビューに答えるSanjeev Gupta氏

 TGS 2010の開幕に合わせて多くのRazer関係者が来日しており、弊誌ではアジア・パシフィック地域担当バイスプレジデント、セールスマネージャーを務めるSanjeev Gupta氏にショートインタビューを行ない、Razerの現在と今後について話を聞くことができた。今年のRazerはついにコンシューマー機向け製品の投入を行なうなど、ゲーミング市場の変化に鋭く対応しつつある。そのあたりを中心にインタビューの模様をお届けしたい。

──今回はRazerの現在と今後に向けたビジョンについてお話をいただきたいと思います。

Sanjeev Gupta氏:Razerはゲーム関連プリフェラルのグローバルリーダーとして、ビジネスのコアをPCゲームエクスペリエンスに置いています。「By Gamers、For Gamers」をスローガンとして、機能性、デザイン、イノベーションにフォーカスして製品を開発しています。日本市場にも積極的に進出していきたいと考え、今回は最新のキーボードとゲームコントローラーを会場にて展示しております。

──現在、ワールドワイドでのビジネス規模はどのくらいになっているのでしょうか?

Sanjeev Gupta氏:非上場企業であるため詳細は公開しておりませんが、非常に急速に成長しています。今期の売上の規模としては、だいたい3桁ミリオンドル(100億円単位)以上のスケールとなっています。

──製品開発の拠点や規模について教えてください。

Sanjeev Gupta氏:Razerの研究開発部門はサンフランシスコにあります。100人以上のスタッフが携わっており、研究開発、製品デザイン、マーケティングに特化しており、ゲーマーコミュニティとの密接な関わりを重視して情報を収集しながら製品を開発しています。

──今回の大きな動きとしてXbox 360用コントローラーを出すということがありますが、なぜ、コンシューマー機の市場に参入しようと考えたのでしょうか。

Sanjeev Gupta氏:最近の変化として、これまでPCでゲームをしていたハードコアゲーマーが、コンシューマー機でもゲームをプレイするようになったということがあります。そこで我々のブランドをさらに広げていくためにコンシューマー機の市場に参入しました。

──ということは、Xbox 360に限らず他の機種にも製品を提供したいと考えていますか?

Sanjeev Gupta氏:今現在公開できる情報はありませんが、主要なパートナーとの話し合いを進めているところです。ゲーマーの中にはRazerの熱狂的なファンも多く、我々としてもEスポーツやプロゲーミングといった文化に精通していますので、彼らが求めるものをリサーチして製品に活かしていくという考え方で進めています。

──日本のユーザー、日本のマーケットについてはどのような印象を持っていますか?

Sanjeev Gupta氏:日本は世界の中でも大きな市場規模があり、コンシューマーゲーム市場とPCゲーム市場のどちらも大きなものになっています。したがって我々にとって大きなポテンシャルががある市場です。また多くのゲーム開発企業があり、彼らに良いデバイスを提供することでより良いゲーム体験を作り出すためのお手伝いをしていきたいと考えています。また日本市場はしっかりとしたローカライズが必要でもあり、日本向けにデザインされた製品を考えてデザインしていきたいとも考えています。

──Xbox 360への参入も驚きでしたが、新たな路線としてモーションコントローラーの開発を進めていることも大きな転機になりそうですね(参考:http://www.razerzone.com/motionsensing/)。

Sanjeev Gupta氏:はい、年末の発売を目指してPC用のモーションコントローラーを開発しています。今回は展示しておりませんが、日本市場に向けて非常に適切な製品になると考えています。特徴としては非常に正確で、反応速度が速く、PCゲームに向いたデザインとなっていることです。

──こういった新しいタイプのデバイスを出すことで、ますますゲーム開発企業との連携も重要になるかと思いますが。

Sanjeev Gupta氏:もちろんです。今回の来日で、複数のゲーム開発企業と話し合いを行なっています。Razerとしてはこれからの12ヶ月から24ヶ月の間が日本市場における成長機会の最も重要な時期であると認識しています。世界的な市場の中で日本の比重が少しづつ高まっていくことと思います。例えば、今回のメカニカルキーボードや、コンシューマー機向けのデバイスは日本に大きなマーケットがあると認識しています。

──今後の展望として、どういった方針で製品をリリースしていきたいと考えていますか?

Sanjeev Gupta氏:今のところお話できるのは既に公表したものだけですが、引き続きゲーマーのための製品開発に特化して事業を進めていきたいと考えています。ゲーマーのため、という核は絶対にブレることはありません。日本においてはマーケティングの努力をさらに高めていき、ゲーマーコミュニティとのコネクションを強化していきます。日本のゲーマーにふさわしいプロダクトを届ける努力を最大限に続けていきます。また、そのためにも日本のゲーム開発会社との連携を深めていくつもりです。

──日本のユーザーからのフィードバックも必要と感じていますか?

Sanjeev Gupta氏:もちろん、それは非常に有効ですし、Razer ファンコミュニティのサイトに参加して、是非ご意見を頂きたいと思います。今のところ日本語フォーラムはないのですが、すぐに実現できるよう進めていきたいと思います。

──ありがとうございました。


(2010年 9月 19日)

[Reported by 佐藤カフジ]