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CESA Developers Conference 2010(CEDEC 2010)レポート

CESA Developers Conference 2010がパシフィコ横浜にて開幕
CEDECフェロー松原氏「課題の顕在化が叡智を呼び起こす」


8月31日〜9月2日開催

会場:パシフィコ横浜



 社団法人コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は8月31日、ゲーム開発者を対象にした国内最大規模のゲームカンファレンス「CESA Developers Conference 2010(CEDEC 2010)」をパシフィコ横浜にて開催した。会期は8月31日から9月2日までの3日間となっている。

 CESA会長の和田洋一氏によるオープニングスピーチを皮切りに、50以上のセッションが開催された。本稿では、CEDEC 2010の概要と共に、初日の模様をお伝えしていく。GAME Watchでは本日以降、CEDECレポートをお伝えしていくので、どうぞご期待頂きたい。




■ さらに充実度を増したCEDEC。ポスター発表とCEDEC CHALLENGEが人気

会場のパシフィコ横浜。朝から汗ばむ陽気。今年のCEDECは暑い!
ずらりと並んだセッション発表コーナー。今年は33のポスター発表が行なわれている

 今年で12回目を迎えたCEDECは、昨年に引き続きパシフィコ横浜会議センターを会場に開催された。一部、アネックスホールも利用しているものの、開催規模はほぼ昨年と同等規模。ただし、内容的には激変と言っていいほどにまで手が加えられている。

 もっとも大きな変化は、ポスター発表と受講者参加型イベント「CEDEC CHALLENGE」の存在だ。ポスター発表は、学会等で良く採用されるスタイルで、大判のポスターに研究内容等を記述し、PCを使ったデモを併用する形で、受講者にアピールする。CEDEC CHALLENGEは、囲碁AIのコンペティション「超速碁九路盤 AI対決」、アーティストの技を間近で見られる「Photoshop ペイントマスター」、文字通り3日間でソーシャルゲームを完成させるコンテスト「三日でゲームを作ってみる」という3つのチャレンジングな企画で構成されている。

 いずれも会議センターの空きスペースを有効活用し、担当者を常設させる形で、受講者の都合の良い時間に参加できるようになっていた。休み時間についつい足を止めて眺める受講者が多く、CEDECが掲げる受講者同士のコミュニケーションのフックとしても有効に機能していた。米国のゲームカンファレンスGDCにはない、CEDECの独自色として今後定番になりそうな魅力的な企画と言える。

 昨年多くの学生を集めた学生版CEDEC「『ゲームのお仕事』業界研究フェア 2010」は今年も経済産業省から委託を受ける形で実施されている。昨年と比較するとセッション数は減っているものの、IGDA日本代表の新清士氏をモデレータに起用し、パネルディスカッションを大幅に増やす形で、学生らが直接参加できる機会を与えている。

 肝心のセッションについては、こちらも好印象だった。今年から大規模な公募制が取られ、公募に選ばれなければセッションができなくなっている。このため、結果としてモチベーションの高い開発者や、情報共有に強い目的意識を持っている開発者によるセッションが増えたようで、例年以上のクオリティの高さが感じられた。


【会場の様子】
セッション会場以外のフロアではポスター発表がやはり目立っている。定例の展示コーナーは、SCEやCRIミドルウェア、Unityなど25社が出展を行なっている。右下は無料でRedbullを配っているコンパニオンのお姉さん

【超速碁九路盤 AI対決】
囲碁ファンで知られるCEDEC組織委員会委員長の吉岡直人氏の肝いりで実施された「超速碁九路盤 AI対決」。囲碁入門講座も行なわれていた。右の写真のように、片方のAIがパスを繰り返して一色になることも

【三日でゲームを作ってみる】
DeNA代表取締役社長南場智子氏が引き当てたお題を3日間で形にするという無茶なチャレンジ。お題は「mixiとGREEとモバゲーが激しく社員を奪い合って売り上げを競うゲーム」。完成が楽しみだ



■ 「進化への対応が遅い」。厳しい意見も飛び出したCEDECフェロー松原健二氏の基調講演

「非常にお暑い中ありがとうございます。動画でご覧になってる方は賢明な選択ではないかと」と笑みを浮かべながら挨拶を行なうCESA会長和田洋一氏
基調講演を行なうCEDECフェロー松原健二氏
日本のゲーム産業に対して松原氏は「進化への対応が遅い」と苦言を呈した
松原氏が掲げた「CEDECのもたらすもの」

 さて、CEDEC 2010は、CESA会長を務めるスクウェア・エニックス代表取締役社長和田洋一氏のオープニングスピーチでスタートした。和田氏が開幕に挨拶するのはCEDEC初となる。

 和田氏は、「日本は欧米に比べて遅れてるのではないかという“へんちくりん”な情報がありますが、そんなことはありません」と切り出し、「世界中の開発者は同じ論点を悩み、呻吟しているという点でまったく変わらない。しかし、ひとつだけ大きく違うのは情報を共有してディスカッションして進歩していくという風土です」とし、「CEDECという場がどんどん活性化されて、一種習慣となり、日本のゲーム産業の文化となっていくということを願っております」とまとめた。

 「情報提供に意味があるのか?」という根本的な問いかけに対して、和田氏は3つの処方箋を提示した。ひとつは「情報や知恵は自分が与えた分だけ帰ってくる」。2つ目は「クリエイターという人種は、まったくのゼロから新しいものを作り出すわけではなく、少しずつの工夫の積み重ねが知恵の塊になっていく」。3つ目は、「情報が盗まれるのではないかと思われがちだが、情報交換で得られるのは手段(How)であり、肝心のWhatは頭と心の中にあるので誰も盗めない」。和田氏は「どうか思う存分議論頂きたいと思っております」とまとめ、オープニングスピーチを終えた。

 続いて、その和田氏から、「ゲーム会社にはクリエイター、プロデューサー、元締めがおります。業界重鎮の中でこの3種を生きたという希有な人材がいます。それではトップバッターお願いします」と紹介されて姿を現わしたCEDECフェローの松原健二氏が、基調講演「CEDECとは? −そのもたらす価値の追及−」をスタートさせた。

 松原氏の基調講演は、前2回の基調講演とは打って変わって、マーケティングデータや自社(コーエーテクモゲームス)戦略の紹介などはすべてカットし、自身の日立時代のマイクロプロセッサ系エンジニアとして経験から、エンジニア間の情報共有の場と、情報共有そのものの重要性をひたすら解くという迫力ある内容だった。

 スライドは最小限に抑えながらも、その内容はメッセージ性に富み、この1時間だけはコーエーテクモゲームス代表取締役社長の立場から解き放たれたような印象だった。特に印象に残ったキーフレーズとしては「進化への対応が遅い」、「顕在化(共有化)が叡智を呼び起こす」、「モノ作りが使命(売れてナンボ)」など。誤解を恐れないハッキリとした物言いが印象的だった。

 「進化への対応が遅い」というのは、欧米のゲーム市場に対して、日本が劣る点として挙げた言葉。松原氏はこれを自身の1980〜1990年代のマイクロプロセッサ市場での“敗戦の記憶”と重ね合わせながら説明してくれた。「follow IBM(IBMを追え)」のかけ声で常に2番手に甘んじてきた当時の日本のマイクロプロセッサ業界を松原氏は、「危機感の欠如」、「戦略の欠如」、「課題共有の欠如」という激しい言葉で罵り、これを繰り返すことの愚を訴えた。

 その当時を振り返ると、国内で開発者が集う場はほとんどなく、あっても閉鎖的な状況だったという。こうした状況から脱する機会を与えてくれたのが、当時提携先のひとつだったHewlett Packardのスタッフだったという。松原氏は、北米のマイクロプロセッサ系のイベントHot Chipsに参加し、情報共有の意義と、開発者同士が切磋琢磨する場の重要性に気づいていく。この当時の経験が、CEDECへの関与という形に繋がっているという。

 松原氏はゲーム開発者がすべきこととして、進化の認識、危機感の共有、進むべき方向性の確認の3つを挙げ、「自分を育てるのは自分です」と自己研鑽を解いた。また、こうした要素を確認できる場がCEDECであり、プログラマのみならず、すべてのゲーム開発者を対象にしたカンファレンスであることを強調した。

 その上でCEDECのもたらすものとして「ゲーム開発の抱える課題を顕在化」、「情報・知識の共有」、「開発者同士の研鑽、交流」の3つを挙げた。松原氏は自身の反省から、CEDEC参加時の注意点として「周囲に吹聴しすぎないこと」を挙げた。参加者と不参加者ではそもそもの温度差の違いから、舞い上がった状態でカンファレンスの素晴らしさを伝えても、冷たく受け止められたり、反発を招いてしまうこともあるという。

 松原氏は3年間の取り組みとして、規模の拡大、イベントの品質の向上、ゲーム業界内外での認知の向上等を挙げ、具体的な数字として、3年間で参加者数が倍になったという。CESAフェローの立場として期待する「これからのCEDEC像」については、具体的な言及は避けながらも、CEDEC参加者が何を望んでいるかが重要だとし、CESAには日程の延長や首都圏以外の開催、海外との連携、デジタルアーカイブ、価格等々、様々な意見が届いており、CEDECの未来像には無数の形が考えられることを紹介した。

 松原氏は「CEDECからどれだけ刺激を受けて明日の仕事に繋げていくか。CEDECはゲーム開発者にお役に立てるし、その価値の向上は組織委員会だけでやるのではなく、皆さん自身の働きかけによって実現される。今日は私の精神論ばかりお話しさせていただきましたが、何を話そうかと考えたときに、何故私はこれだけCEDECにこだわってきたのか、その価値を皆さんにお伝えして、それを周りの人にも伝えていただきたい」とまとめ基調講演を終えた。CEDECそのものの価値を語るという基調講演としては一風変わったものとなったが、元エンジニアの松原氏らしい素晴らしい基調講演だった。


(2010年 8月 31日)

[Reported by 中村聖司 ]