セガ、DS「サカつくDS ワールドチャレンジ2010」
開発スタッフとガチンコ対決! 開発者インタビュー
5月27日に発売された「サカつく」シリーズの最新作、「サカつくDS ワールドチャレンジ2010」をみなさんはもうプレイされたであろうか? 本記事では、先日レビュー記事を執筆させていただいた不肖筆者が、記事の掲載後も15シーズンにわたり手塩にかけて育てた自慢のチームを引っさげ、本作の開発スタッフとワイヤレス対戦を敢行した様子をリポートするとともに、攻略のヒントとなるアドバイスも交えた開発者インタビューもバッチリ掲載しているので、すでにソフトを購入した人はもちろん、興味はあるがまだソフトは買ってない、という人もぜひご一読いただきたい。
なお、対戦時のレギュレーションはレアカテゴリーの選手は1人までとし、チームコストの合計が70以下というルールで行なわれた。はたしてその結果やいかに……!?
株式会社セガ 第一CS研究開発部 第一企画セクション プロデューサー 椎野真光氏 | 株式会社セガ 第一CS研究開発部 第一企画セクション ディレクター 鈴木信宏氏 |
筆者のチーム「Watchミラノ」 |
さて、対戦の模様を紹介する前に、筆者のチームのプロフィールから紹介しよう。フォーメーションは最近流行の4-3-3システム。筆者が鹿島ファンという超私的な理由によりキャプテンには秋田豊(レア選手)を指名、またDF、MF、FWの各ポジションにも岩政大樹、小笠原満男、大迫勇也を配置している。試合中は、ディフェンス時は4人のDFと中盤のアンカー阿部勇樹の5人、オフェンス時は3人のFWと2人のサイドMFの5人が担当するように操作して、鹿島以外の選手については個人能力よりも連携のつながりやすさを重視して選出している。
■第1試合:VS.椎野プロデューサー
椎野プロデューサーのチーム 「チェ★八重山」 新旧日本代表クラスをずらりと並べ、OB選手の奥大介を右のワイドに張らせた変則の4-4-2システム。キャプテンはチェコ代表のゴールキーパー、ツェフ(レア)が務める堅守がウリだ |
試合開始早々の6分、「チェ★八重山」の岡崎慎司にフリーでシュートを撃たれるも、キーパー藤ヶ谷陽介の好守で難を逃れた「Watchミラノ」。試合が動いたのは前半19分、右サイドに「サイド攻撃Lv1」の監督スキルを指示すると、「サイド攻撃の要」の個人スキルをセットした右ウイング、坂田大輔の「バズーカシュート」(※75パーセントの確率でゴールが決まるスキル)が炸裂! 名手ツェホの牙城を見事崩して先制ゴールをゲットした。しかし喜びもつかの間、「チェ★八重山」も同じく「サイド攻撃Lv1」を発動させて右サイドの奥にボールを集めて反撃に出ると、中盤から上がってきた遠藤保仁の豪快ミドルが炸裂! すぐさま同点に追いつかれてしまった。
その後はお互いに譲らず、後半60分に筆者は流れを変えるべく右サイドMFの佐々木勇人に代えて岡崎慎司を、ボランチの阿部に代えて青木剛を投入し、2点目を取って試合を決めるべく勝負に出たが、こう着状態は依然として崩れない。そしてこのまま試合終了かと思われた後半82分、岩政がペナルティエリア内に進入した遠藤を倒して痛恨のPK献上……。しかし、ここで頼れる守護神、藤ヶ谷が岡崎のPKのコースを見事に読んでこれをストップ! 試合はこのままタイムアップとなり、白熱の好試合は引き分けに終わった。
前半19分、中澤の執拗なチャージをかわした坂田のゴールで「Watchミラノ」が先制! | ||
「チェ★八重山」の遠藤ヤットが左足を一閃! 試合はあっという間に振り出しに…… | ||
試合は筆者チームのキーパー藤ヶ谷が大当たりで再三にわたりチームを救った。後半には絶体絶命のPKのピンチもスーパーセーブ! 見事ドロー劇の立役者となった |
■第2試合:VS.鈴木ディレクター
鈴木ディレクターのチーム 「エルフシュリット藤枝」 こちらはトップに前田遼一を据えた4-5-1システム。ご本人が「ジュビロ党」ということもあり、成岡翔、名波浩、岡田隆、駒野友一、大井健太郎とサックスルブルーの面々がズラリ。さらにレアカテゴリーの選手も静岡出身の長谷部誠を起用するという徹底ぶりである |
前半6分、「エルフシュリット藤枝」が「特攻Lv1」のチームスキルを発動させると、フィールドプレーヤーがこちらのゴール前に向かって一斉に上がってくるのでビックリ仰天。「どうやって守ろうか」とあれこれ思案しているうちに右サイドを山田暢久に突破され、センタリングを前田にダイレクトボレーで撃たれるも際どいところでゴールを外れて命拾い。一方、「Watchミラノ」はキャプテンの秋田(右サイドバック)がオーバーラップを仕掛けて反撃をするも、シュートを撃つ直前で相手DFにことごとくボールを跳ね返され、決定機がまったくといっていいほど作れない。そうこうしているうちに、前半21分に長谷部誠のスルーパスに反応した前田遼一の強烈なシュートを浴び、先制点を許してしまった。
前半こそ0対1だったが、後半になっても「特攻Lv1」をうまく対処するための方策がいっこうに見つからない。そんな「Watchミラノ」をあざ笑うかのように、「エルフシュリット藤枝」の駒野、前田、さらにはOB選手の奥寺康彦と次々にシュートを浴びせられ、終わってみれば0対4となすすべなく完敗。キャプテン秋田が再三にわたるオーバーラップを仕掛けて孤軍奮闘するも、ついに敵の牙城を1度も崩すことができずに無念のタイムアップとなってしまった……。
前半の前田の先制弾を皮切りに、以後「特攻Lv1」の対策がつかめないままズルズルと失点を繰り返すことに…… | ||
右サイドバックの秋田がパワフルな攻撃参加で孤軍奮闘するも、決定機を作るには至らず完敗となった |
■ 熱戦を終えて……椎野プロデューサー&鈴木ディレクターに開発者インタビュー
――まずは、先ほど対戦をさせていただいたご感想からお伺いします。
椎野 今まで他のメディアの方と対戦して負けたことがなかったので、正直「もし負けたらこりゃヤバイな」と思いました(笑)。まずこちらが先制して、後はキーパーのツェホの力を利用して守り切るパターンに持ち込むつもりだったのですが……。でも、かなり白熱してとてもいい試合になりましたね。
鈴木 私と対戦したときは、(筆者のチームが)中盤の真ん中が比較的スペースが空いていてチェックが遅かったので、そこをうまく突いて攻撃することができました。ですので、試合中はもう少し中盤の選手を全体的に中央に寄せておけば、シュートコースをある程度塞ぐことができていたハズですよ。まああれだけ点が入ったのは、さっきの試合の様子をじっくり見たおかげでバッチリ対策が立てられたのが大きいのですが(笑)。守備の面では、右サイドバックの秋田の攻撃参加を抑えるために、途中でこちらのボランチ(守備的MF)の選手をサイドライン際に寄せて対処したのが効果を発揮したと思います。
――第1試合の先制点は「バズーカシュート」でのゴールでしたが、このシュートは説明の画面に書かれているように、誰が相手でも必ず75%の確率で入るようになっているのですか?
椎野 そうです。発動すればいつでも75%の確率で入るようになっています。
――すると、相手キーパーが「パーフェクトセーブ」(※必ずシュートをキャッチできるスキル)などのスキルが発動しても関係ないわけですね?
鈴木 「バズーカシュート」が発動し、ゴールが決まる場合には「パーフェクトセーブ」は発動しません。矛盾してしまいますので。ですから、相手GKのスキルや能力に関係なく75%の確率で入ります。
――正直、PKになったときは負けを覚悟しました。キーパーの藤ヶ谷を海外に期限付き移籍させたり、コーチトレーニングを優先的にやらせて育てたかいがありました(※筆者注:藤ヶ谷のPKのパラメーターは81)。
椎野 PKは岡崎じゃなくて、遠藤に蹴らせるように設定しておけばよかったですかねえ……。
鈴木 そうかもしれませんね。ちにみに遠藤は100%の確率で決まる「パーフェクトPK」というコロコロPKのようなスキルを持っていますよ。
――最初の試合は拮抗した勝負になりましたが、2試合目はいいように攻められて完敗でした……。
鈴木 GAME Watchさんのチームは「サイド攻撃」を多用していましたが、実は「サイド攻撃」はある意味諸刃の剣みたいなところがありまして、サイドライン際に能力の高い選手を配置すると効果的なのは確かですが、実は日本人選手だとあまりウイングを得意とするようなタイプの選手がいないんですよ。それとさっきの試合では、こちらが守りを固めてボールホルダーを2対1で囲んでかなり取れるようになっていましたね。
――鹿島勢以外にも松田直樹や阿部勇樹、山口智など新旧の日本代表クラスの選手をたくさん集めて育てたので磐石かと思いきや、まだまだ甘かったですね……。
椎野 でも、松田はホントにいい選手ですよね。私が横浜出身で松田選手が大好きということもあって、松田に関してはかなり能力が高めに設定して……あるかもしれませんよ、もしかしたら(笑)。個人的に、2002年に活躍していた頃からずっと注目して見ている選手なんですよ。
――元日本代表のOB選手は何人ぐらいデータが入っているのですか?
鈴木 全部で47人います。今回は1993年のJリーグが開幕した頃から活躍していた選手を重点的に登場させています。当時からの歴代の名選手を集めて、プレーヤーごとに自分好みの日本代表チームをぜひ作って楽しんでほしい、という考えで作ってあります。
椎野 今作ではOB選手の使用コストは高めに設定されているのですが、実は能力的には現役の日本代表選手もOBたちに決して引けを取らないんですよ。
――今回も歴代「サカつく」シリーズでおなじみの河本龍将や辻本孝允など、能力がとても高い架空の日本人選手がたくさん入っていますよね? もはや彼らは、長年のシリーズファン向けのお約束としては欠かせない存在になった感があります。
椎野 実は開発中は彼らを入れるべきかどうか悩んだ時期も若干ありました。もうそろそろ出すのをやめてもいいんじゃないかなあ、と……。もっとも、以前からシリーズを重ねるにつれて人数を徐々に絞り込んではいるんですけどね。
鈴木 昔の「サカつく」シリーズの場合ですと、Jリーグのレギュレーションで海外の強いチームと戦った場合には能力的にかなり差が出てしまいますので、架空の日本人選手を登場させることで戦力差を縮める意味があったんですよ。ただ今作のシステムにおいては、実在の日本人選手でもいい選手が十分にそろっていますので、必ずしも無理に登場させる必要性はなかったんですけどね。
――この間遊んでいたら、海外のチームと戦うカップ戦で「ジョホールバル」というチームが出てきて、往年の元日本代表選手がズラリとそろっていて実に懐かしかったですね。サッカーファンとしては思わずニヤリとしてしまう演出が楽しかったですね。
鈴木 はい、私も一介のサッカーファンですから(笑)。
――ゲーム中に監督は全部で何人登場するのですか?
鈴木 51人ですね。
――監督にはSからEまでアルファベットでランク付けがされていますが、やはりランクの高い監督を使うほど有利に戦えるわけですよね?
椎野 アルファベットはあくまで参考値ですね。どの「チームスキル」を持っているかで、だいたいこのへんのランクだろうと我々の主観で決めたものです。ただ、ランクの高い監督であれば有効な「チームスキル」をいろいろと持っていますので、プレーする際はアルファベットだけを見て選んでいただいても多くの場合は大丈夫だとは思いますよ。
鈴木 監督によっては、守備または攻撃戦術を同時に3つ以上セットすると消費する指示力(ゲージ)の消費量が減る効果が得られる場合があるのですが、これをうまく利用すると試合中ずっと好きな戦術を使用した状態でプレーすることも可能になりますので、かなり強い戦いができると思いますよ。
――なるほど~! たいへん勉強になります。
鈴木 それから、ランクSの監督は確かに強いのですが、一部の「チームスキル」が固定されていてプレーヤーが設定を変えられないようになっていますので、すべてのスキルを総取替えできないデメリットもあったりします。1度契約が切れた監督でも、契約を更新すればすぐにまた使えるようになるのも、本作ならではのシステムになっています。ですから、例えばリーグ戦では育成に長けた監督を起用したり、カップ戦では試合に監督に代えるといった戦略がとれたりするわけですね。中には登場する条件がかなりややこしい監督もいたりしますので、いろいろ試しながらぜひ探してみてください。
――選手も監督もものすごい数が登場するので、全部集めようと思ったら相当なやり込みが必要ですね。
椎野 はい。選手や監督のコレクション以外にも、クエストやサポートミッションもたくさんありますので、ボリュームは相当あると思いますよ。
――そうなると選手データの管理も大変になりますよね?
鈴木 はい。データについては社内にサッカーのあらゆるデータに詳しいエキスパートがおりますので、そのスタッフによって。それからサッカーに関する資料ついても、何十年も前の昔の雑誌や関連書籍などをたくさん用意してあります。とにかくものすごい量の資料がそろっていますので、保管している部屋はまるで要塞みたいになっていますよ(笑)。
――J1リーグから海外リーグへ移籍した当初は、いきなり難易度が上がってなかなか勝てなくなったので正直驚きました。
椎野 そうですね。開発中はもっと難易度を下げようかなとも思ったのですが、やはり「レベルの高いリーグに来た」という手ごたえを出したかったので少し難しくなるようにしました。いろいろ調整した結果、最終的にはちょうどいい難易度になったと思いますよ。
――イタリアリーグですと、たとえば特にミラノとかピエンモンテとかにはワールドクラスの選手がゴロゴロいますしね。
椎野 ええ。そのあたりのチームになると、ヘタすると無敗のままリーグ優勝しちゃうこともありますので、倒しがいはかなりあると思いますよ。
――リーグ戦はホーム&アウェー方式ではなく、1回戦総当りにしたのは何か理由があるのですか?
鈴木 テンポよくゲームが進むようにするためです。ホーム&アウェーですと、どうしても長丁場になってしまいますからね。
――海外リーグに移籍すると、それまでに建設したスタジアムやオフィスの施設が全部リセットされるようになっているので、資金繰りが結構難しい印象があったのですが?
椎野 これはプレーヤーが「新しい別のチームで戦うぞ!」という実感を出したかったのでそのような形にしました。
――それでは最後に、読者のみなさんにメッセージをお願いします。
椎野 今作ではWi-Fi機能が追加されましたので、ぜひ通信対戦も楽しんでいただきたいですね。全国ランキングが集計されたり称号がもらえたりしますし、それから「すれ違い通信」をすると(本編で新しい選手が獲得できる)抽選券がもらえたりもしますので、こちらもぜひお試しいただければと思います。
鈴木 いろいろな選手を集めながらスタメンを誰にすればいいのか、あるいはどんなスキルを組み合わせれば最強のチームができあがるのかを極めるまで研究していただければ嬉しいですね。それから本作では、試合中は状況に応じて選手のポジションを動かすことで有利になりやすいように調整して作ってあるんですよ。今回は特にこのあたりのところをスタッフみんなで頑張って作りましたので、もうとことんまで遊び尽くしてください。
――本日はお忙しいところ、ご協力ありがとうございました!
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(2010年 6月 23日)